有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/16 15:00
【資料】
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【項目】
146項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)企業理念、行動基準/行動指針
当社は、「わたしたちはお客様を念(おも)い、仲間を想(おも)い、社会を憶(おも)い、高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルである人と人との接点に新たな価値を創造していきます。」を企業理念として掲げております。
当社の活動する現場は、人と人との接点の場であり、お客様、仲間、社会それぞれへの思いを大切に活動してまいります。
◆お客様 = 最も大切な存在 『念う(一心に思う)』
◆仲間 = お互いに尊敬しあい、大切にする存在 『想う(感情をこめて思う)』
◆社会 = 深い問題意識を持ちつつ貢献していく 『憶う(深く思う)』
当社の保守サービス事業、ソリューション事業、人材サービス事業の現場は、人と人との接点にこそあります。
医療機関に導入されている電子カルテシステムやレセプトコンピュータ等の機器、あるいは企業に導入されているパソコン、サーバ等のIT機器の設置や保守といった業務は、実際に病院やクリニック、企業に当社の社員が出向いて作業を行います。そこで機器を利用する方々の使用状況を伺いながら、エンジニアの視点からの機器使用についてのアドバイスを行うこと、顧客の要望に応えるべく現場毎に適切な作業を行うこと、それが高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルを担う当社に求められた使命であると考えております。
上記企業理念に加えて、以下6項目を行動基準/行動指針として掲げております。
わたしたちは、お客様第一で行動します。
そのために、お客様の期待を超えるサービスを提供します。
わたしたちは、プロフェッショナルとして行動します。
そのために、日々の研鑽を怠らず、スキルの習得に努めます。
わたしたちは、チャレンジ精神で行動します。
そのために、前向きに努力し、常に挑戦し続けます。
わたしたちは、コンプライアンス意識をもって行動します。
そのために、ルールを正しく理解し厳守します。
わたしたちは、チームワークを大切に行動します。
そのために、仲間の個性と価値観を尊重します。
わたしたちは、社会貢献を喜びとして行動します。
そのために、社会の一員として責任を果たします。
これらを実現することにより、法令を遵守した継続的かつ安定的な企業成長を目指し、社会的責任を果たしてまいります。
(2)経営環境
わが国経済は、2020年より続く新型コロナウイルス感染症の断続的な感染再拡大により、停滞が続いておりましたが、緊急事態宣言等が解除された2021年10月以降は景気の持ち直しの動きが見られ始めました。2022年春頃には感染拡大が落ち着いてきたため、6月以降は入国制限が緩和され、外国人観光客の受け入れが再開したことにより、経済の活性化が期待されました。しかし、現在第7波を上回る第8波の到来により、経済動向は不透明感を増しております。加えてウクライナ情勢の悪化や円安進行による物価上昇もあり、今後も厳しい経済状況が続くと思われます。
当社の事業領域であるIT分野は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年から回復傾向にあります。2022年は前年に引き続き世界的な半導体不足、円安、ウクライナ情勢による品不足等様々な不安要素はあるものの、国内IT市場は伸長傾向にあります。
そのような環境の中、IT人材不足が深刻な課題となっております。経済産業省の調査では、2030年には全体需要が129.7万人から192.0万人に対し、16万人から79万人の人材不足が予測されております(経済産業省ホームページ https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf 2019年3月時点データ)。これにより当社の人材サービス事業では、今後CE、SEの派遣需要が増加することが見込まれます。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)による企業変革、新たなビジネス展開に向けた取り組みが本格化しており、業務効率化や非対面チャネル強化、既存システムのクラウドシフトを推進するIT支出の拡大が予測されております。ソリューション事業においては、これに伴う機器の販売、設定設置等の需要が増加することが見込まれ、そこに付随して保守サービスにおいてはオンサイト保守の他、故障機器を送付し修理や代替品との交換を受けるセンドバック修理の需要が増加することも期待されます。
当社は、顧客からの情報収集、営業提案、ネットワークの設計、構築、機器の設置展開等ソリューション事業から
保守サービス事業へ引き継いでの運用管理、オンサイトサービスまでをワンストップで提供できるという強みがあります。更にメーカーに属さない独立系企業であることから、顧客要望に合わせた柔軟な対応が可能です。
企業のDX推進等、IT支出が拡大する中で、このように柔軟なワンストップサービスを提供できる点が評価され、近年取引先からの依頼が増加傾向にあります。
当社が得意とする医療分野は、長引くコロナ禍により、病院の経営状況が厳しく、IT支出の抑制傾向が継続しており、他の産業に比べて低い成長率となっております。一方で、社会インフラとしての医療機関整備の重要性が高まりを見せております。厚生労働省が推進するオンライン資格確認の導入は2021年10月からスタートしており、2023年4月より導入が原則として義務付けられたため、現在当社の主要な保守サービス提供先である医療機関や薬局において体制整備が進められております。(2023年1月27日には「令和4年度末時点で、やむを得ない事情がある保険医療機関・薬局については、期限付きの経過措置を設ける」と改正され、期限が遅くとも2023年9月末まで延長されました。)医療機関へのサービスの提供は、診療の妨げにならないよう、各病院、クリニック等の休憩時間中に行う等、独自のルールがあります。1973年よりPHC株式会社製レセプトコンピュータの保守を開始し、約50年に渡る医療機関における保守実績のある当社へは、既存顧客だけではなく、オンライン資格確認用端末メーカー等からも多数の依頼が来ており、2023年9月末にかけて機器の導入支援を行ってまいります。また、厚生労働省が推進するデータヘルス改革や、地域包括ケアシステムの整備等、当社の長年の医療機関を対象とした保守の経験を生かして貢献してまいりたいと考えております。
(3)経営戦略
変革するIT市場において、当社は様々な機器への対応スキルの向上と、高度なネットワーク技術を核として、セキュリティ対策等、新たな価値を創造してまいりました。今後は更に、お客様企業の成長を支援し、新たな付加価値を提供できる会社へと、一層の変革を進めることを目標として事業セグメント毎に戦略を立てております。
保守サービス事業では利益拡大を目指し、多種多様な機器への対応を可能にするため、技術資料、マニュアル等を電子化し、オンサイト先でも利用できるよう、全保守員にiPadを配備しております。加えて、最近ではスマートグラスを用いた遠隔作業等、DXを活用した取り組みを始めております。更に、従来帰社後に行っていた業務報告等の事務処理を業務の合間にiPadで対応できるよう電子化し、業務プロセスの効率化を図っております。その他、顧客からの障害発生の連絡受付内容をエンジニアが閲覧することのできる機能や、管理者がエンジニアの作業進捗を把握するための機能があります。これらの情報はテクニカルセンターにて一括管理しており、細かな技術支援を行っております。
当社のテクニカルセンターでは、運用・保守に関する顧客からの問合せを受けるコールセンター業務及び全国展開案件の管理を行っております。
コールセンターにおいては、人工知能(以下AI)を活用した自動会話プログラムである「チャットボット」を導入し、顧客からの問い合わせ対応の効率化を図っております。AIの活用及び、2012年に導入した品質管理システムにより、対応履歴の記録、故障部品の傾向等ナレッジの蓄積が可能となります。保守サービス事業の主軸であるPHC株式会社製の電子カルテとレセプトコンピュータは、機器の新規導入やリプレース時に最も重要視される項目として、サービス品質があります。当社ではPHC株式会社製品シェア維持のためにも品質の向上を目指して活動をしております。
今後はテクニカルセンターを更に強化、活用し、5Gネットワーク構築、クラウドシステム基盤構築等の新たなITインフラの需要、また、ロボットがコンテナの入出庫を行う次世代ロボットストレージシステム(自動倉庫)等の新たな保守サービスの需要に対応し、事業展開を加速していきたいと考えております。
更に、新たな保守領域への参画を目指し、現在北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県において取得している医療機器修理業の許可を全国規模に拡大することを目指しております。医療機器修理業の許可には、各拠点に責任技術者を設置することが求められており、現在その育成活動に取り組んでおります。医療機関における保守実績から、同業他社からの協業依頼もあり、医療機器修理業が今後保守サービス事業における新たな基盤となれるよう取り組んでまいります。
ソリューション事業では、継続的に取引のある企業との関係性の維持・構築に尽力する一方、高いスキルが求められる高単価案件の獲得を目指し、SEの専門部隊を有しており、現場作業のみの受託から、全体のシステム構築、手順書作成、工事業者等の外注コントロール、全国展開作業のマネジメントまでをワンストップで受けることができる体制を整えております。
2021年3月期には文部科学省が推進する児童・生徒向けの1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する事業であるGIGAスクール構想関連案件の入札へ参加し、さいたま市にて1区画を落札しました。以降官公庁、自治体案件の入札に積極的に参加しております。GIGAスクール構想によりハード環境や通信環境が整った学校のシステム、設備の運用、保守の依頼が増加しており、当社の強みであるソリューション事業から保守サービス事業へのシナジー効果が現れてきているものと認識しております。また、今後IT市場で大きな成長が見込まれる情報サービスや小売といった市場にも徐々に参入しており、今後取引先を拡大すること、また、Wi-Fi、各種センサー、金融端末等新規プロダクトを増やすことで、成長を図ってまいりたいと考えております。
人材サービス事業では、社内教育により公的資格やベンダー資格(ネットワークスペシャリスト、CCNA、LPI、CompTIA等)の取得を促進しております。これらの資格を有することで、企業からの派遣要請にスムーズに対応できております。また、絶えず予備人材を確保することにより、機会損失の軽減を図っております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①優秀な人材の採用と育成
ITエンジニア不足の市場環境において、今後SE、CE派遣の需要が増加していくことが予想されます。取引先企業からの要請に対して速やかに適切な人員を派遣することが、人材サービス事業の安定的な成長に繋がることから、事業の要となる人材の採用と育成が重要な課題と認識し、採用活動を強化しております。その一つの取り組みとして大学就職活動支援を実施しております。具体的には、当社人財開発推進室が自己分析、業界職種研修、企業面接対策、ビジネスマナー講座や、就職に有利な技術スキル習得のためのITパスポート、Microsoft Office Word Specialist、Microsoft Office Excel Specialist等の資格の研修を、要請のあった大学の学生に対して提供しております。これにより研修を実施した大学からの新卒応募が増加しております。
当社新入社員には、ビジネスマナー等の基礎教育からスタートし、IT基礎教育、派遣予定先企業での業務を踏まえての取扱機器の実機研修やネットワーク構築基礎教育、公的資格取得研修等、入社後約3ヶ月でエンジニアとして活躍できるITエンジニア育成プログラムを用意しております。
②エンジニアのスキルアップと活用
ソリューション事業の成長には、より高度なスキルを必要とする案件へも対応できるよう、エンジニアのスキルアップが必要と考えております。当社のエンジニアは、これまで多くの現場作業案件に携わってきており、機器の保守から導入設計、設置展開等マルチなスキルや対応力を身に付けておりますが、今後はネットワークやサーバの設計、開発、提案等といった分野にも業務を拡大できるよう、本社にSEの専門部隊を設置し、経験豊富なSEを中心としてOJTを兼ねた高レベルな案件対応を行い、スキルアップを図っております。また、定期的にネットワークスキル資格取得のための教育研修を実施しており、これにより全世界共通のネットワークスキルを証明するシスコ技術者認定CCNA、CCNP Enterpriseや、IT運用スキルを証明するCompTIA A+等の資格を取得するエンジニアが増えております。
下記は当社従業員が保有する資格の一例とその保有人数です。(2022年12月31日時点)
IPA ネットワークスペシャリスト試験(NW)7名
IPA 応用情報技術者試験(AP)10名
CompTIA Project+3名
CCNP Enterprise7名
CompTIA Security+1名
CCNA68名
CompTIA A+54名
CompTIA Network+1名

人材サービス事業においても、派遣に際して上記資格を有することがエンジニアの条件として求められることが多々あるため、今後も求められる必要な技術の教育及び資格取得促進に向けた制度の確立を行ってまいります。
③医療機器修理業受託のための体制整備
医療機器修理という分野に進出することで、既存のレセプトコンピュータや電子カルテだけではなく、その他病院、診療所内のネットワークに繋がる全ての機器やシステムの保守を当社が一括して受託することが可能となり、結果として全導入機器のヘルスチェックや予防的対策も可能となります。この実現には社内体制の強化も必要であり、医療機器修理業の全国エリアでの許可取得と、エンジニアのスキルアップを図ってまいります。
④リソースコントロール
当社の経営資源は「人」であります。当社では利益拡大のために人的リソースの有効活用に取り組んでおります。当社が受託する全国規模の大型案件は本社及びテクニカルセンターを中心に全拠点のリソースを管理しながら対応しております。特にソリューション事業では、年度末に案件が集中する傾向があり、全国規模の案件と各拠点で受託した個別案件と通常業務が重複することにより人員不足となり、急遽外注によりリソースを確保せざるを得ない状況が発生する場合があります。この状況の改善を目指し、昨年より新たにテクニカルサポートディビジョンを設置し、案件及び工数を管理しております。案件の見える化及びリソースコントロールにより、支店間の支援体制を組むことが可能となり、結果外注費の削減にもつながることから、今後もテクニカルサポートディビジョンを中心に業務効率化を図ってまいります。
⑤パートナー企業とのグリップ強化
日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめとする、継続的に取引のある企業からの受注拡大のため、機会損失のない営業体制を構築します。
⑥品質の向上、効率化の実現
サービス品質の向上は、顧客の当社に対する信頼性を高めることに繋がることから、品質管理システムを活用し、全社的なサービスレベルの底上げと業務効率化を目指します。
⑦財務上の課題
現在、運転資金は自己資金で賄えておりますが、大規模なシステム・整備への投資などを行った場合、運転資金が不足する可能性があります。その手当として金融機関からの借入を想定しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益を設定し、企業規模の拡大、企業価値の向上を目指しております。
項目2021年3月期2022年3月期2023年3月期
第3四半期
売上高全社12,684,07613,886,28110,721,499
(千円)保守サービス事業4,017,1464,358,8343,394,204
ソリューション事業6,545,4947,331,9865,689,501
人材サービス事業2,121,4362,195,4591,637,793
セグメント利益営業利益474,749605,681513,329
(千円)保守サービス事業663,328568,242540,139
ソリューション事業479,823687,973471,130
人材サービス事業296,968361,757275,474
調整額※1△965,371△1,012,292△773,414

※1 セグメント利益の調整額は、報告セグメントに配賦していない本社費用であり、本社管理部門に係る人件費、
不動産賃借料等の販売費及び一般管理費です。