有価証券報告書-第104期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
紙パルプ業界を取り巻く環境は、電子媒体へのシフトや少子・高齢化による構造的問題のため今後も一層厳しい情勢が続くことが予想されます。
このような状況下、当社グループは、いかなる情勢の変化にも対応し、リスクを吸収できるしなやかな企業グループの基盤を構築するため、中期3ヶ年計画『フォワード304』を策定し、2020年度末に営業利益30億円、ROE4%の収益基盤の確立に向けて取り組んでおります。安定操業を第一にパルプ事業の強化や新たな紙の価値を創造し、基幹事業である紙パルプ事業の収益基盤強化の取組みを進めています。2017年10月に営業運転を開始したO&Cアイボリーボード株式会社の高板・加工原紙事業の収益基盤強化を図り、当社が得意とする食品容器分野において、脱プラスチックへの時代の流れとともに需要開拓を強力に進め、高効率操業を達成して、早期に収益貢献できる体制の構築に取り組んでおります。また、当社高岡工場内に高機能CNFパイロットプラントの建設を予定しております。さらに当社高岡工場内に重量ベース51%以上の紙パウダーと合成樹脂とを混合したプラスチックでも紙でもない新素材「マプカ」の製造工場を2020年秋竣工に向けて建設中であります。高付加価値な製品を安定的に生産する体制を整備するとともに、新規事業分野の開拓を積極的に展開してまいります。
当期の経営成績につきましては、前期と比較し、パルプ市況軟化や紙・パルプ販売数量減の影響により減収となりましたが、印刷用紙等の価格復元や安定操業の取組みにより増益となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は95,140百万円(前年同期比1.6%減収)となり、営業利益は2,057百万円(前年同期は397百万円の営業損失)、経常利益は1,985百万円(前年同期は121百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は919百万円(前年同期比27.4%増益)となりました。
事業の種類別セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
(紙・パルプ製造事業)
◎ 新聞用紙
新聞用紙の販売につきましては、新聞各社の発行部数の減少と広告減が影響した頁数の減少に歯止めがかからない状況が続いており、数量・金額ともに前年を下回りました。
◎ 印刷用紙
印刷用紙の販売につきましては、紙媒体から電子媒体へのシフト等による国内需要減少や、米中貿易摩擦の影響を受け輸出が減少したことにより数量は前年を下回りましたが、価格復元が通期で寄与したため金額は前年を上回りました。
◎ 包装用紙
包装用紙の販売につきましては、米麦袋のフレコン化、作付面積の減少の影響を受けて国内販売量は前年を下回りましたが、販売価格の復元が収益に寄与しました。
◎ 特殊紙・板紙及び加工品等
特殊紙・板紙及び加工品等の販売につきましては、需要が堅調な壁紙等で拡販に取組んだことやO&Cアイボリーボード株式会社への高板・加工原紙の生産移管が進展した結果、数量・金額ともに前年並みを確保しました。
◎ パルプ
パルプの販売につきましては、当社川内工場の停止が前年と比較し長期間であったことや、海外のパルプ市況の軟化もあり数量・金額とも前年を下回りました。
これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。
連結売上高 83,437百万円(前年同期比1.9%減収)
連結営業利益 518百万円(前年同期は1,982百万円の連結営業損失)
(発電事業)
発電事業につきましては、安定操業に努め前年並みの売上となりました。しかしながら、当社生産本部二塚製造部において隔年で行っているボイラーの定期検査があったことにより減益となりました。
これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。
連結売上高 6,983百万円(前年同期比0.8%増収)
連結営業利益 1,295百万円(前年同期比1.5%減益)
(その他)
建設部門で好調な受注が寄与したことなどで増収となりましたが、紙・パルプ製造事業の生産・販売数量が減少した影響を固定費削減等で補いきれず若干減益となりました。
これらにより、当事業の業績は以下のとおりとなりました。
連結売上高 19,648百万円(前年同期比0.9%増収)
連結営業利益 159百万円(前年同期比2.0%減益)
財政状態は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,813百万円減少し、120,833百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,816百万円減少し、72,368百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ3百万円増加し、48,464百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,303百万円増加し、7,222百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は8,344百万円(前連結会計年度比32.0%増加)となりました。
これは主として、税金等調整前当期純利益1,429百万円、減価償却費6,980百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は4,651百万円(前連結会計年度比52.0%増加)となりました。
これは主として、有形固定資産の取得による支出5,671百万円、長期貸付金の回収による収入675百万円、短期貸付金の純増減額による収入392百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,387百万円(前連結会計年度比13.7%増加)となりました。
これは主として長期借入金の返済による支出5,292百万円、長期借入による収入3,200百万円などによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称等 | 数量 | 前年同期比(%) | |
| 紙・パルプ製造事業 | 紙 | 691,792 t | 98.1 |
| パルプ | 741,893 t | 95.6 | |
(注) パルプは未晒総生産量であり自家消費量を含んでおります。
b. 受注実績
当社グループは、大部分が市況を勘案した見込み生産を行っており、グループ全体の受注状況を把握することは困難であるため、該当事項については記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称等 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) | |
| 紙・パルプ製造事業 | 紙 | 74,879 | 101.2 |
| パルプ | 5,117 | 66.5 | |
| 計 | 79,996 | 98.0 | |
| 発電事業 | 6,983 | 100.8 | |
| その他 | 8,160 | 100.3 | |
| 合計 | 95,140 | 98.4 | |
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等を含んでおりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| 新生紙パルプ商事㈱ | 18,502 | 19.1 | 18,836 | 19.8 |
| 日本紙パルプ商事㈱ | 13,783 | 14.3 | 13,299 | 14.0 |
| 国際紙パルプ商事㈱ | 11,548 | 11.9 | 11,604 | 12.2 |
(注) 上記金額には、消費税等を含んでおりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響等は正確に見積ることが困難でありますが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う事業活動への影響は概ね半年程度続くと仮定し、繰延税金資産の回収可能性などに係る会計上の見積りを行っております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産の計上額の見積りは、合理的な仮定に基づき、将来の課税所得を見積ることとしており、回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績等は、売上高は95,140百万円と前期に比べ1,576百万円(1.6%)の減収となりました。営業利益は、2,057百万円と前期に比べ2,454百万円の増益(前年同期は397百万円の営業損失)、経常利益は、1,985百万円と前期に比べ1,864百万円の増益(前年同期は121百万円の経常利益)となりました。
また、固定資産の除却損310百万円のほか、株式市況の低迷による保有株式の株価下落の影響で投資有価証券の評価損290百万円を特別損失に計上し、その他税金費用を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は919百万円と前期に比べ197百万円(27.4%)の増益となりました。
セグメント別の売上高については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
電子媒体へのシフト等による紙の需要構造の変化、少子・高齢化による内需の落ち込みなど、今後紙需要の拡大が見込めないなか、当社グループは、発電事業の安定操業や高級白板紙の事業基盤の強化、CNFの開発促進など、ネクストステージ50で培った経営資源を最大限活かして収益確保に邁進するとともに、将来の需給環境をはじめ、いかなる事業環境の変化の下にあっても、常に成長を志向できる企業体質の基盤を築くため、中期3ヶ年計画「フォワード304」効果の最大化を目指してまいります。
④ 経営戦略の現状と見通し
当社グループはいかなる情勢の変化にも対応し、リスクを吸収できるしなやかな企業グループの基盤を築くため、中期3ヶ年計画『フォワード304』を2018年5月に策定し、2020年度末に、営業利益30億円、ROE4%の収益基盤の確立に向け取り組みを開始しております。
中期3ヶ年計画の2年目となる当期は、印刷用紙等の価格復元や安定操業の取り組みにより2,057百万円の連結営業利益となり、ROEは1.9%となりました。
今後も安定操業を第一にパルプ事業の強化や新たな紙の価値を創造し、基幹事業である紙・パルプ製造事業の収益基盤強化に取り組むと共に、『フォワード304』で掲げた事業戦略を着実に実行し、中期3ヶ年計画の達成を目指してまいります。
紙・パルプ製造事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響は、当期にはほとんどありませんでしたが、来期につきましては、景気低迷もあり、日本製紙連合会統計の2020年4月度紙国内出荷が対前年約14%減となり、この減少傾向がいつまで継続するか不明のため、今後の年間見通しについては、困難な状況であります。発電事業においては、現時点では新型コロナウイルス感染症の影響はほとんどございません。
⑤ 財政状態及びキャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2.3%減少し、120,833百万円となりました。これは有形固定資産が減価償却などにより1,032百万円減少したことや、関係会社長期貸付金の回収などにより投資その他の資産が2,135百万円減少したことなどによります。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ3.7%減少し、72,368百万円となりました。これは主として、金融機関からの借入金が1,692百万円、支払手形および買掛金が1,513百万円減少したことなどによります。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べほぼ横這いの48,464百万円となりました。これは主として親会社株主に帰属する当期純利益919百万円、配当金の支払い667百万円により利益剰余金は251百万円増加しましたが、その他有価証券評価差額金が268百万円減少したことなどによります。また自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.9ポイント増加し40.1%となりました。
当社グループのキャッシュ・フローにつきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループの資金計画は、設備投資資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としておりますが、銀行借入やコミットメントラインの利用などによって流動性を保持しております。今後の主な設備投資資金需要として、高機能性のあるセルロースナノファイバーの量産化へ向けたパイロットプラントの建設(投資総額24億円)を予定しております。
また、当社グループはCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金融通を行うことで資金効率を高めております。
当社グループの当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度末に比べ1,303百万円増加し、7,222百万円となりました。
なお、当連結会計年度末の金融機関からの借入金の内訳は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
| 合計 | 返済 1年以内 | 返済 1年超 | |
| 短期借入金 | 20,850 | 20,850 | ― |
| 長期借入金 | 25,865 | 12,000 | 13,864 |
| 合計 | 46,715 | 32,850 | 13,864 |
資金につきましては、手元預金の増加(2019年3月:59億円⇒2020年3月末72億円)や緊急時の資金手配が可能なコミットメントライン枠の増加(49.5億円⇒75億円)などの対応を進めており、新型コロナウイルス感染症などの不測の事態に備えております。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループは、常に市場ニーズに密着し、創造的で信頼性の高い技術をもって、人と環境にやさしい「紙」の開発と安定した製品の供給により、経済・社会・文化の発展に寄与することを社会的使命と認識し「紙」の文化の創造に果敢に挑戦しております。
そして、「株主重視」「顧客重視」に心がけ、当社グループの総合力に対する信頼性と収益性の確保・向上を目指し、株主・顧客・地域社会・社員・企業の共存共栄を図るとともに、社会に対する貢献を重点に企業活動を行なってまいります。
また、グローバル化に対応し、迅速な情報開示に努め、透明な経営姿勢を保ち、加えて効率的な連結経営を行なうことで、国際競争力の強化を図り、当社グループの存在価値を高めてまいります。