有価証券報告書-第88期(2025/04/01-2026/03/31)
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の日本経済は、雇用・所得環境の改善等に支えられ、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、エネルギー価格の高止まりや円安の進行等を背景とした物価上昇が個人消費の重しとなりました。地方経済においては、人口減少に伴う人手不足や資材価格の高騰等が中小企業の収益を圧迫しており、期末にかけて中東情勢の緊迫化等も加わったことから、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社は2026年7月に迎える創刊150周年とその先を見据え、持続的な成長に向けた各種施策を推進しました。若手・中堅社員を中心にMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定し、ミッションとして「今日も、岩手を元気にする。」を掲げました。また、新規事業として、2025年9月に「岩手日報生成AI」の販売を開始しました。さらに、2026年度から3カ年の中期経営計画を策定し、同計画を推進する社長直轄の組織として、2026年2月に経営企画室を新設しました。
[経営企画]
経営企画部門は、総務局から企画部門を独立させ、全社戦略の立案・推進を担う社長直轄の新組織として発足しました。当社の持続的成長と企業価値向上を目的として、中期経営計画(2026年度~2028年度)を策定しました。同計画は、中長期的な重点施策及び数値目標を明確にするものであり、人口減少、物価上昇、技術革新等により厳しさを増す経営環境の中で、報道機関としての社会的使命を果たし続けるための重要な指針と位置付けております。実効性を高めるため、全社及び各部門において重要業績評価指標(KPI)を設定し、半期ごとに進捗状況のレビューを行い、社会情勢の変化に機動的に対応してまいります。
また、盛岡駅西口への新社屋建設・移転プロジェクトを進めております。地上7階建ての計画とし、2027年2月の着工、2028年秋の完成を目指して、現在、実施設計を進めております。財務の健全性を維持するため、建設コストの管理・圧縮に努めるとともに、貸しオフィスフロアへの入居企業獲得に取り組んでおります。社員が働きやすく、生産性向上に資する社屋の実現に向け、引き続き計画を推進してまいります。
新規事業である「岩手日報生成AI」は、生成AIプラットフォーム「exaBase」と本紙記事データを連携させたサービスであり、企業及び自治体との契約件数は順調に増加しております。当社の新たな収益源として育成すべく、総合ビジネス局と連携し、営業活動を強化しております。また、本サービスの開始と同時期に、岩手銀行、北日本銀行、東北銀行及び盛岡信用金庫と連携協定を締結しました。県内企業における生成AIの活用促進を後押しし、地域経済の活性化に貢献してまいります。
[編集・論説]
編集・論説部門では、激甚化・多様化する災害への対応及び東日本大震災の教訓の継承を報道の重要な柱として取り組みました。
クマによる人的被害が本県で相次いだことを受け、各事案を詳報するとともに、被害発生の背景や被害防止に向けた対処法等について幅広く報道しました。また、東日本大震災から15年を迎えるにあたり、遺族を対象としたアンケートの規模を拡大し、「未来への伝言」「心の支え」等の企画を連載しました。日常の紙面においても、震災の記憶の継承、災害への備え、被災地の現状と課題を継続的に報じました。
県内では首長選が多く行われたほか、2025年7月の参議院選挙、2026年2月の衆議院選挙において、情勢分析や候補者の政策検証など、本紙の強みを生かした選挙報道を展開しました。また、国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現に向けたキャンペーン報道も継続しました。
スポーツ分野では、大谷翔平選手をはじめとする本県関係選手の活躍を、現地取材を含めて報じました。ドジャースのワールドシリーズ連覇やミラノ・コルティナ冬季五輪についても記者を派遣し、本県選手の動向等を報道しました。芸術・文化面の充実にも努めるとともに、「岩手日報ONLINE」のコンテンツ拡充を進め、新たな読者層の開拓に取り組みました。論説では、岩手に関わるさまざまな課題を論じる新企画「地方論(ぢかたろん)」を開始しました。
[販売]
販売部門では、連載「脳活新聞」や、記事を書き写す「書きトレ!」を活用したキャンペーンを展開し、シニア層の購読継続及び読者と販売店との接点創出に努めました。また、前年に引き続き、系統会・岩手日報会による県内全域での友情拡張運動を実施し、新規読者の開拓に取り組みました。
2026年の本紙創刊150周年に向け、販売店による読者・地域の見守り活動を強化しました。2025年9月の岩手日報会と岩手県警察本部との協定締結を皮切りに、県内全93販売店で「見守り実施中」ののぼりの掲出や配達車両へのマグネットステッカー貼付を行い、地域における新聞販売店の役割を発信しております。見守り協定については、2026年度内に県内全33市町村との締結を目指しております。
クマによる人的被害が相次いだことから、販売店への注意喚起を行ったほか、紙面広告や折込チラシを通じて読者にも配達時のクマ対策への理解を呼びかけ、配達員の安全確保に努めました。
販売店7店で所長が交代しました。また、盛岡市の本宮専売所の販売会社解消に合わせ、永続的な配達網維持に向けて盛南地区4販売店のエリア再編を行いました。販売部員が開発した販売店業務支援アプリ「iKarte(アイカルテ)」は、県内23販売店で導入され、北海道新聞社、岩手日日新聞社、中国新聞社及び南日本新聞社とも契約を締結するなど、利用が拡大しております。
2025年度の平均部数は154,649部となりました。一方、デジタル版会員は2026年3月末現在で22,697件となり、2025年3月末比で1,355件増加しました。
[総合ビジネス]
広告部門では、ナショナルクライアント及び地元企業からの新聞広告を中心に、落成・周年等の各種企画、「米澤蓮いわてサポートパートナー」、福島民報・電通との共同事業「未来防災イニシアチブ」、M&A、採用求人サービス「HRハッカー」、高齢者向けサービス「まごころサポート」等、幅広い分野のプロジェクトに取り組みました。また、2度の国政選挙における候補者・政党広告、選挙公報印刷を確実に受注したほか、受託型の「新聞スタイル印刷」についても受注を広げました。
東日本大震災15年に向けた「最後だとわかっていたなら教育プログラム」は、全国400を超える教育現場等で教材として活用されました。同企画は第78回広告電通賞でプリント・フィルム両部門の銀賞、第63回JAA広告賞でグランプリを受賞しました。また、「ホームラン印 野球そばプロジェクト」は第45回新聞広告賞奨励賞を受賞しました。
事業部門では、前年に雨天中止となった「プロ野球公式戦 楽天対西武」を開催しました。第84回日報駅伝及び第78回盛岡市内一周継走では、安全対策強化による経費増に対し、コスト削減、協賛社の増加及び参加料の引き上げにより収益改善を図りました。12回目となる小学生3×3選手権は、過去最多の305チームが参加しました。ステージ分野では、バレエ「ジゼル」、竹生企画「マイクロバスと安定」がいずれも好調に推移しました。展覧会分野では、「Perfume COSTUME MUSEUM」「ゴジラ博」「キボリノコンノ展」等の大型催事を実施しました。また、創刊150周年事業として第56次「遊・YOU塾 in オキナワ・トカシキ」を実施しました。
[総合メディア]
総合メディア部門では、ニュースサイト「岩手日報ONLINE」が月間平均456万PV、前年比178%に成長し、デジタル収入の増加に寄与しました。統合編集の取り組みによる来訪者増等を背景に、ネットワーク広告収益は前年比で大幅に増加し、年間1,200万円を超えました。2026年3月に開始したサブスクリプション(月額有料制)についても、登録者数は着実に伸長しております。デジタル戦略部をデザイン室と統合して発足したメディア企画部では、新たな収入源の開拓を進めております。
コンテンツ事業部が発行した「特別報道記録集 大谷翔平2025 EVOLVING〈進化〉」は、取扱いが地方紙16社に拡大するなど、販売・認知の拡大につながりました。著作物の二次利用収入も引き続き堅調に推移しております。本紙とデジタル版、公開データベース、デジタル学習材を児童生徒に提供する「+(プラス)日報」は、本格スタート2年目となり、県内小中高校167校が導入しました。2026年度の契約も30市町村で190校を超え、着実に拡大しております。
システム部では、AI技術を記事校閲や人事名簿処理に導入し、紙面の精度向上及び業務効率化を図りました。また、全社的なガバナンス強化の一環として「情報セキュリティー規定」を策定し、リスク管理体制の構築にも取り組んでおります。制作センター印刷部では、用紙・インキ等の資材価格高騰が続く中、経費削減に努めました。本紙の年間損紙率は1.07%となり、前年比0.02ポイント改善しました。また、2026年1月から情報紙「ゆうゆう」(月2回発行)の受託印刷を開始し、輪転機の有効活用にも寄与しております。
[折込]
電子媒体などメディアの多様化に伴う新聞購読部数の減少を背景に、折込広告の取扱枚数は引き続き伸び悩みました。一方で、紙媒体ならではの訴求力を再評価する広告主の動きもあり、折込取扱収入は堅調に推移しました。印刷費や用紙費の高騰が出稿抑制の要因となるなかでも、取扱枚数はおおむね横ばいを維持し、金額ベースでは前期を上回りました。
業種別では、物品通販や各種買取などの小売分野が伸びた一方、スーパーマーケットや自動車販売は減少しました。新聞購読部数が減少するなか、折込事業は岩手日報系統をはじめとする県内新聞販売センターの経営を下支えする役割を果たしました。
今後も広告主に対し、新聞と折込広告の価値や広告効果を粘り強く訴えるとともに、代理店との情報共有を密にし、県内商圏を広く捉えた提案や、枚数・サイズの維持に向けた働きかけを継続してまいります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ760百万円増加し、11,092百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ470百万円増加し、4,793百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ289百万円増加し、6,299百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高9,040百万円(前年同期比1.12%減)、営業利益262百万円(前年同期比1.63%増)、経常利益303百万円(前年同期比0.25%減)、親会社株主に帰属する当期純利益282百万円(前年同期比10.65%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントを単一セグメントから「新聞関連事業」及び「不動産事業」に区分変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
(新聞関連事業)
新聞関連事業の売上高は8,980百万円となり、前連結会計年度に比べ155百万円減少しました。なお、セグメント利益は233百万円となりました。
(不動産事業)
不動産事業の売上高は60百万円となり、前連結会計年度に比べ53百万円増加しました。なお、セグメント利益は29百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、預り金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ579百万円増加し、当連結会計年度末には4,400百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,301百万円(前年同期比85.9%増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上及び預り金の増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は565百万円(前年同期比47.6%増加)となりました。これは主に、有形固定資産及び無形固定資産の取得並びに投資有価証券の取得による支出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は221百万円(前年同期は163百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入があった一方で、長期借入金の返済による支出があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
当社グループ(当社及び連結子会社)の製造業は、日刊紙発行業の当社のみであり、製品の特殊性から受注生産形態をとっていないため、生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の状況については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における報告セグメント別の経営成績及び主要な事業活動の状況に関連付けて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループを取り巻く経営環境は、県内人口の減少及び高齢化、情報取得手段の多様化、広告出稿のデジタル媒体への移行、用紙・物流費等の高騰などにより、引き続き厳しい状況にあります。
このような環境のもと、当社グループは、紙媒体を中心とする既存事業の収益維持に努めるとともに、デジタル関連収入、受託印刷、各種事業収入及び不動産事業の拡大に取り組みました。また、制作・印刷・配送体制の効率化及び全社的な経費削減を継続し、収益力の確保に努めました。
当連結会計年度の経営成績につきましては、紙媒体の購読部数減少及び広告出稿の減少等により、売上高は前連結会計年度を下回りました。一方で、折込広告、デジタル関連収入、受託印刷、選挙関連対応、各種事業収入及び不動産事業収入の確保に努めたことに加え、経費削減を継続したことにより、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度を上回りました。
財政状態につきましては、手元資金の増加や収益不動産の取得等により資産合計が増加しました。負債合計は増加したものの、純資産合計も親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により増加しており、財務基盤は一定の健全性を維持しているものと認識しております。今後も、新社屋建設・移転計画、収益不動産の取得及び維持管理、デジタル分野への投資等に伴う資金需要を踏まえ、手元流動性と財務の健全性に留意してまいります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、新聞購読部数の減少、広告出稿のデジタル媒体への移行、用紙・物流費等の高騰、県内人口の減少及び高齢化、デジタル化への対応、他メディアとの競争激化等が挙げられます。これらの動向を注視しながら、収益源の多角化及び費用管理の徹底に取り組んでまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
(新聞関連事業)
新聞関連事業は、日刊紙「岩手日報」の発行、販売、広告掲載、折込広告、出版、受託印刷、デジタルサービス、各種催事等を中心とする当社グループの主たる事業です。
同事業においては、紙媒体の購読部数減少及び広告出稿の減少が続いており、経営環境は厳しい状況にあります。一方で、折込広告、デジタル関連収入、受託印刷、選挙関連対応及び各種事業収入の確保に努めたほか、既存設備の有効活用や経費削減にも取り組みました。
今後も、地域に根差した報道機関としての役割を果たしながら、紙媒体の価値維持、デジタルサービスの拡充、受託印刷及び各種事業収入の確保、新たな収益源の育成に取り組んでまいります。
(不動産事業)
不動産事業は、当社が岩手県内に保有する賃貸マンション、店舗及び土地等の収益不動産について、賃貸及び管理を行う事業です。
同事業においては、収益物件の取得等により賃貸収入が増加しました。不動産事業は、新聞関連事業の収益が構造的な下押し圧力を受ける中で、安定的な収益を確保するための事業であると認識しております。
一方で、空室率、賃料水準、修繕費用、金利動向及び災害等の影響を受ける可能性があるため、物件ごとの収益性、稼働状況及び修繕計画を確認しながら、資産効率と財務健全性の両立を図ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(資金需要)
当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要があります。
運転資金需要の主なものは、当社における印刷資材の購入、当社及び連結子会社に共通する人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また、設備資金需要の主なものは、工場、事務所等の建物及び機械装置等の固定資産の取得・維持更新、収益不動産の取得、新社屋建設に係る投資等です。
(財務政策)
当社グループは、運転資金につきましては、原則として内部資金により充当しております。当社においては、賞与等の人件費の支出時期に対応し、キャッシュ・フローの平準化を目的として短期借入金による調達を行っております。また、設備資金につきましては、設備資金計画に基づき調達計画を作成し、内部資金で不足する場合には、長期借入金による調達を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
該当事項はありません。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の日本経済は、雇用・所得環境の改善等に支えられ、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、エネルギー価格の高止まりや円安の進行等を背景とした物価上昇が個人消費の重しとなりました。地方経済においては、人口減少に伴う人手不足や資材価格の高騰等が中小企業の収益を圧迫しており、期末にかけて中東情勢の緊迫化等も加わったことから、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社は2026年7月に迎える創刊150周年とその先を見据え、持続的な成長に向けた各種施策を推進しました。若手・中堅社員を中心にMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定し、ミッションとして「今日も、岩手を元気にする。」を掲げました。また、新規事業として、2025年9月に「岩手日報生成AI」の販売を開始しました。さらに、2026年度から3カ年の中期経営計画を策定し、同計画を推進する社長直轄の組織として、2026年2月に経営企画室を新設しました。
[経営企画]
経営企画部門は、総務局から企画部門を独立させ、全社戦略の立案・推進を担う社長直轄の新組織として発足しました。当社の持続的成長と企業価値向上を目的として、中期経営計画(2026年度~2028年度)を策定しました。同計画は、中長期的な重点施策及び数値目標を明確にするものであり、人口減少、物価上昇、技術革新等により厳しさを増す経営環境の中で、報道機関としての社会的使命を果たし続けるための重要な指針と位置付けております。実効性を高めるため、全社及び各部門において重要業績評価指標(KPI)を設定し、半期ごとに進捗状況のレビューを行い、社会情勢の変化に機動的に対応してまいります。
また、盛岡駅西口への新社屋建設・移転プロジェクトを進めております。地上7階建ての計画とし、2027年2月の着工、2028年秋の完成を目指して、現在、実施設計を進めております。財務の健全性を維持するため、建設コストの管理・圧縮に努めるとともに、貸しオフィスフロアへの入居企業獲得に取り組んでおります。社員が働きやすく、生産性向上に資する社屋の実現に向け、引き続き計画を推進してまいります。
新規事業である「岩手日報生成AI」は、生成AIプラットフォーム「exaBase」と本紙記事データを連携させたサービスであり、企業及び自治体との契約件数は順調に増加しております。当社の新たな収益源として育成すべく、総合ビジネス局と連携し、営業活動を強化しております。また、本サービスの開始と同時期に、岩手銀行、北日本銀行、東北銀行及び盛岡信用金庫と連携協定を締結しました。県内企業における生成AIの活用促進を後押しし、地域経済の活性化に貢献してまいります。
[編集・論説]
編集・論説部門では、激甚化・多様化する災害への対応及び東日本大震災の教訓の継承を報道の重要な柱として取り組みました。
クマによる人的被害が本県で相次いだことを受け、各事案を詳報するとともに、被害発生の背景や被害防止に向けた対処法等について幅広く報道しました。また、東日本大震災から15年を迎えるにあたり、遺族を対象としたアンケートの規模を拡大し、「未来への伝言」「心の支え」等の企画を連載しました。日常の紙面においても、震災の記憶の継承、災害への備え、被災地の現状と課題を継続的に報じました。
県内では首長選が多く行われたほか、2025年7月の参議院選挙、2026年2月の衆議院選挙において、情勢分析や候補者の政策検証など、本紙の強みを生かした選挙報道を展開しました。また、国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現に向けたキャンペーン報道も継続しました。
スポーツ分野では、大谷翔平選手をはじめとする本県関係選手の活躍を、現地取材を含めて報じました。ドジャースのワールドシリーズ連覇やミラノ・コルティナ冬季五輪についても記者を派遣し、本県選手の動向等を報道しました。芸術・文化面の充実にも努めるとともに、「岩手日報ONLINE」のコンテンツ拡充を進め、新たな読者層の開拓に取り組みました。論説では、岩手に関わるさまざまな課題を論じる新企画「地方論(ぢかたろん)」を開始しました。
[販売]
販売部門では、連載「脳活新聞」や、記事を書き写す「書きトレ!」を活用したキャンペーンを展開し、シニア層の購読継続及び読者と販売店との接点創出に努めました。また、前年に引き続き、系統会・岩手日報会による県内全域での友情拡張運動を実施し、新規読者の開拓に取り組みました。
2026年の本紙創刊150周年に向け、販売店による読者・地域の見守り活動を強化しました。2025年9月の岩手日報会と岩手県警察本部との協定締結を皮切りに、県内全93販売店で「見守り実施中」ののぼりの掲出や配達車両へのマグネットステッカー貼付を行い、地域における新聞販売店の役割を発信しております。見守り協定については、2026年度内に県内全33市町村との締結を目指しております。
クマによる人的被害が相次いだことから、販売店への注意喚起を行ったほか、紙面広告や折込チラシを通じて読者にも配達時のクマ対策への理解を呼びかけ、配達員の安全確保に努めました。
販売店7店で所長が交代しました。また、盛岡市の本宮専売所の販売会社解消に合わせ、永続的な配達網維持に向けて盛南地区4販売店のエリア再編を行いました。販売部員が開発した販売店業務支援アプリ「iKarte(アイカルテ)」は、県内23販売店で導入され、北海道新聞社、岩手日日新聞社、中国新聞社及び南日本新聞社とも契約を締結するなど、利用が拡大しております。
2025年度の平均部数は154,649部となりました。一方、デジタル版会員は2026年3月末現在で22,697件となり、2025年3月末比で1,355件増加しました。
[総合ビジネス]
広告部門では、ナショナルクライアント及び地元企業からの新聞広告を中心に、落成・周年等の各種企画、「米澤蓮いわてサポートパートナー」、福島民報・電通との共同事業「未来防災イニシアチブ」、M&A、採用求人サービス「HRハッカー」、高齢者向けサービス「まごころサポート」等、幅広い分野のプロジェクトに取り組みました。また、2度の国政選挙における候補者・政党広告、選挙公報印刷を確実に受注したほか、受託型の「新聞スタイル印刷」についても受注を広げました。
東日本大震災15年に向けた「最後だとわかっていたなら教育プログラム」は、全国400を超える教育現場等で教材として活用されました。同企画は第78回広告電通賞でプリント・フィルム両部門の銀賞、第63回JAA広告賞でグランプリを受賞しました。また、「ホームラン印 野球そばプロジェクト」は第45回新聞広告賞奨励賞を受賞しました。
事業部門では、前年に雨天中止となった「プロ野球公式戦 楽天対西武」を開催しました。第84回日報駅伝及び第78回盛岡市内一周継走では、安全対策強化による経費増に対し、コスト削減、協賛社の増加及び参加料の引き上げにより収益改善を図りました。12回目となる小学生3×3選手権は、過去最多の305チームが参加しました。ステージ分野では、バレエ「ジゼル」、竹生企画「マイクロバスと安定」がいずれも好調に推移しました。展覧会分野では、「Perfume COSTUME MUSEUM」「ゴジラ博」「キボリノコンノ展」等の大型催事を実施しました。また、創刊150周年事業として第56次「遊・YOU塾 in オキナワ・トカシキ」を実施しました。
[総合メディア]
総合メディア部門では、ニュースサイト「岩手日報ONLINE」が月間平均456万PV、前年比178%に成長し、デジタル収入の増加に寄与しました。統合編集の取り組みによる来訪者増等を背景に、ネットワーク広告収益は前年比で大幅に増加し、年間1,200万円を超えました。2026年3月に開始したサブスクリプション(月額有料制)についても、登録者数は着実に伸長しております。デジタル戦略部をデザイン室と統合して発足したメディア企画部では、新たな収入源の開拓を進めております。
コンテンツ事業部が発行した「特別報道記録集 大谷翔平2025 EVOLVING〈進化〉」は、取扱いが地方紙16社に拡大するなど、販売・認知の拡大につながりました。著作物の二次利用収入も引き続き堅調に推移しております。本紙とデジタル版、公開データベース、デジタル学習材を児童生徒に提供する「+(プラス)日報」は、本格スタート2年目となり、県内小中高校167校が導入しました。2026年度の契約も30市町村で190校を超え、着実に拡大しております。
システム部では、AI技術を記事校閲や人事名簿処理に導入し、紙面の精度向上及び業務効率化を図りました。また、全社的なガバナンス強化の一環として「情報セキュリティー規定」を策定し、リスク管理体制の構築にも取り組んでおります。制作センター印刷部では、用紙・インキ等の資材価格高騰が続く中、経費削減に努めました。本紙の年間損紙率は1.07%となり、前年比0.02ポイント改善しました。また、2026年1月から情報紙「ゆうゆう」(月2回発行)の受託印刷を開始し、輪転機の有効活用にも寄与しております。
[折込]
電子媒体などメディアの多様化に伴う新聞購読部数の減少を背景に、折込広告の取扱枚数は引き続き伸び悩みました。一方で、紙媒体ならではの訴求力を再評価する広告主の動きもあり、折込取扱収入は堅調に推移しました。印刷費や用紙費の高騰が出稿抑制の要因となるなかでも、取扱枚数はおおむね横ばいを維持し、金額ベースでは前期を上回りました。
業種別では、物品通販や各種買取などの小売分野が伸びた一方、スーパーマーケットや自動車販売は減少しました。新聞購読部数が減少するなか、折込事業は岩手日報系統をはじめとする県内新聞販売センターの経営を下支えする役割を果たしました。
今後も広告主に対し、新聞と折込広告の価値や広告効果を粘り強く訴えるとともに、代理店との情報共有を密にし、県内商圏を広く捉えた提案や、枚数・サイズの維持に向けた働きかけを継続してまいります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ760百万円増加し、11,092百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ470百万円増加し、4,793百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ289百万円増加し、6,299百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高9,040百万円(前年同期比1.12%減)、営業利益262百万円(前年同期比1.63%増)、経常利益303百万円(前年同期比0.25%減)、親会社株主に帰属する当期純利益282百万円(前年同期比10.65%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントを単一セグメントから「新聞関連事業」及び「不動産事業」に区分変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
(新聞関連事業)
新聞関連事業の売上高は8,980百万円となり、前連結会計年度に比べ155百万円減少しました。なお、セグメント利益は233百万円となりました。
(不動産事業)
不動産事業の売上高は60百万円となり、前連結会計年度に比べ53百万円増加しました。なお、セグメント利益は29百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、預り金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ579百万円増加し、当連結会計年度末には4,400百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,301百万円(前年同期比85.9%増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上及び預り金の増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は565百万円(前年同期比47.6%増加)となりました。これは主に、有形固定資産及び無形固定資産の取得並びに投資有価証券の取得による支出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は221百万円(前年同期は163百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入があった一方で、長期借入金の返済による支出があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
当社グループ(当社及び連結子会社)の製造業は、日刊紙発行業の当社のみであり、製品の特殊性から受注生産形態をとっていないため、生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の状況については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における報告セグメント別の経営成績及び主要な事業活動の状況に関連付けて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループを取り巻く経営環境は、県内人口の減少及び高齢化、情報取得手段の多様化、広告出稿のデジタル媒体への移行、用紙・物流費等の高騰などにより、引き続き厳しい状況にあります。
このような環境のもと、当社グループは、紙媒体を中心とする既存事業の収益維持に努めるとともに、デジタル関連収入、受託印刷、各種事業収入及び不動産事業の拡大に取り組みました。また、制作・印刷・配送体制の効率化及び全社的な経費削減を継続し、収益力の確保に努めました。
当連結会計年度の経営成績につきましては、紙媒体の購読部数減少及び広告出稿の減少等により、売上高は前連結会計年度を下回りました。一方で、折込広告、デジタル関連収入、受託印刷、選挙関連対応、各種事業収入及び不動産事業収入の確保に努めたことに加え、経費削減を継続したことにより、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度を上回りました。
財政状態につきましては、手元資金の増加や収益不動産の取得等により資産合計が増加しました。負債合計は増加したものの、純資産合計も親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により増加しており、財務基盤は一定の健全性を維持しているものと認識しております。今後も、新社屋建設・移転計画、収益不動産の取得及び維持管理、デジタル分野への投資等に伴う資金需要を踏まえ、手元流動性と財務の健全性に留意してまいります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、新聞購読部数の減少、広告出稿のデジタル媒体への移行、用紙・物流費等の高騰、県内人口の減少及び高齢化、デジタル化への対応、他メディアとの競争激化等が挙げられます。これらの動向を注視しながら、収益源の多角化及び費用管理の徹底に取り組んでまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
(新聞関連事業)
新聞関連事業は、日刊紙「岩手日報」の発行、販売、広告掲載、折込広告、出版、受託印刷、デジタルサービス、各種催事等を中心とする当社グループの主たる事業です。
同事業においては、紙媒体の購読部数減少及び広告出稿の減少が続いており、経営環境は厳しい状況にあります。一方で、折込広告、デジタル関連収入、受託印刷、選挙関連対応及び各種事業収入の確保に努めたほか、既存設備の有効活用や経費削減にも取り組みました。
今後も、地域に根差した報道機関としての役割を果たしながら、紙媒体の価値維持、デジタルサービスの拡充、受託印刷及び各種事業収入の確保、新たな収益源の育成に取り組んでまいります。
(不動産事業)
不動産事業は、当社が岩手県内に保有する賃貸マンション、店舗及び土地等の収益不動産について、賃貸及び管理を行う事業です。
同事業においては、収益物件の取得等により賃貸収入が増加しました。不動産事業は、新聞関連事業の収益が構造的な下押し圧力を受ける中で、安定的な収益を確保するための事業であると認識しております。
一方で、空室率、賃料水準、修繕費用、金利動向及び災害等の影響を受ける可能性があるため、物件ごとの収益性、稼働状況及び修繕計画を確認しながら、資産効率と財務健全性の両立を図ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(資金需要)
当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要があります。
運転資金需要の主なものは、当社における印刷資材の購入、当社及び連結子会社に共通する人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また、設備資金需要の主なものは、工場、事務所等の建物及び機械装置等の固定資産の取得・維持更新、収益不動産の取得、新社屋建設に係る投資等です。
(財務政策)
当社グループは、運転資金につきましては、原則として内部資金により充当しております。当社においては、賞与等の人件費の支出時期に対応し、キャッシュ・フローの平準化を目的として短期借入金による調達を行っております。また、設備資金につきましては、設備資金計画に基づき調達計画を作成し、内部資金で不足する場合には、長期借入金による調達を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
該当事項はありません。