有価証券報告書-第102期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/19 11:37
【資料】
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【項目】
149項目

事業等のリスク

経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
COVID-19の流行は当社グループの当期の事業活動に大きな影響を与えました。ディバイス事業の製品需要は堅調に推移したものの、産業資材事業やメディカルテクノロジー事業の製品需要は、その影響を受け減退しました。下半期において製品需要の持ち直しの動きは見られたものの、今後、事態が長期化またはCOVID-19の再拡大が進行した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは代表取締役社長を本部長とする「新型コロナウイルス対策本部」を設置し、感染拡大の防止、事業の継続、社員やお客さまなどの安全確保に向けた対策を実行しています。NISSHA行動ガイドラインや感染疑い発生時の初動マニュアルの発行、交替制テレワークの導入、国内外の出張規制などを実施した一方で、状況の変化に対応して行動ガイドラインを更新することで対策の実効性向上に努めています。
(2) 事業運営に関するリスク
① 成長戦略
当社グループは2021年1月から運用を開始した第7次中期経営計画において、これまでに獲得・構築したグローバルベースの事業基盤を最大限に活用し、シナジーの最大化による成長基盤の確立を目指しています。医療機器、モビリティ(自動車・輸送機器)、サステナブル資材などの市場において、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充による成長を目指しています。市場環境・社会の動向、技術トレンドの変化、法令・規制の改正などの影響により、成長戦略が想定通りに進捗しない可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、中期経営計画の進捗状況を取締役会で定期的にレビューし、1年ごとに事業環境の変化を反映させたローリングプランを策定しています。事業環境の変化に迅速に対応することで、中期経営計画の達成に向けた取り組みを強化しています。
② 特定のセグメントや特定のお客さまの需要変動
当社グループのディバイス事業は、主としてスマートフォンやタブレットなどのコンシューマー・エレクトロニクス(IT機器)市場向けに事業を展開していますが、この市場は市場トレンドやお客さまのニーズの変化が速く、技術や製品のライフサイクルが短くなる傾向にあります。これらの市場環境が急激に変化した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループでは売上高に占める特定のお客さまの割合が高い傾向にあります。こうした重要なお客さま向けの販売は、当該お客さまの製品需要の増減や仕様の変更、営業戦略の変更など当社グループによる管理が及ばない事項を理由として変動する可能性があり、そのような場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループはこうした状況に対して、第7次中期経営計画において医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場で成長戦略を遂行し、特定のセグメントや特定のお客さまの需要変動に関するリスクの最小化を図っています。
(3) 財務に関するリスク
① のれんの減損損失
当社では事業ポートフォリオの組み換え・最適化のための成長戦略としてM&Aを積極的に活用しています。そのため、当連結会計年度末において18,327百万円を計上しています。市場環境や競争環境がM&A実行時の想定から大きく変化した場合、買収先会社の業績が悪化し、のれんの減損損失が発生する可能性があります。
M&Aの実行にあたっては事前にデュー・ディリジェンス(対象企業の調査)を徹底するとともに、買収後の経営統合を促進する体制を構築することでリスクの最小化を図っています。
② 為替の変動
当連結会計年度における当社グループの海外売上高比率は85.8%です。これらは外貨建て取引が中心であり、急激に為替相場が変動した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループではこのような状況に対して、生産の現地化や為替予約取引などにより為替リスクを最小化するように努めています。
③ その他の財務に関するリスク
その他、保有有価証券の時価減少や売上債権の貸倒れ、棚卸資産の陳腐化などが発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性がありますが、適正な管理体制の強化に努めており、リスクの最小化を図っています。
(4) ESGに関するリスク
① 脱炭素社会への対応
世界各国では、パリ協定を受けて地球温暖化ガスの削減に向けた脱炭素社会の実現の動きが進展しています。当社グループは脱炭素社会への対応を重要な課題として捉え、それらに関するリスク低減とともに、社会課題の解決につながる事業機会の創出に取り組んでいます。今後、環境関連法規制等の強化、気候変動に関するリスクへの対策、環境負荷低減の追加的な義務等による環境保全に関連する費用が増加した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、サステナビリティビジョン(長期ビジョン)のなかで2050年カーボンニュートラルを見据えて、2030年にはCO2総排出量の20%削減(2020年比)の実現を掲げています。サステナビリティ委員会を構成する環境安全部会がCO2排出の要因の把握とその低減に向けた活動を推進し、サステナビリティ委員会がこれらの活動内容を年1回取締役会に報告しています。 また、当社グループは脱プラスチックを目的とするサステナブル資材(紙・パルプ由来)を重点市場の一つと定め、社会課題の解決につながる製品・サービスをお客さまに提供することによって、事業機会を創出しています。
② 人材能力の向上、多様な人材の活躍
当社グループでは人種・国籍・性別にかかわらず、様々な伝統や文化を持つ社員が働いています。その多様性を尊重し、社員の個性や強みを活かし、当社グループのビジョンを実現することを目指していますが、当社の事業ポートフォリオの組み換えに沿った人材を十分に確保・育成ができない場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、人事基本方針に基づき、会社とともに成長しビジョンの実現に資する人材を育成する人事制度の策定、女性活躍の推進や研修によるリーダー・幹部候補の育成に取り組み、リスクの最小化に努めています。
③ 人権の尊重
人権を尊重した事業活動は継続的な企業活動を行う上で必要不可欠であり、人権侵害関連の事象が発生することで、訴訟や賠償金の発生、企業価値の毀損などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、人権および労働における国際規範、法令を順守するとともに、取り組み内容の継続的な改善に努めています。サステナビリティ委員会を構成する労働・人権部会は、当社グループの主要な生産拠点を対象として、国際的な行動規範であるRBA(Responsible Business Alliance)を運用しています。
④ 品質問題の発生
当社グループでは国内外の生産拠点において多様な製品を生産・販売しており、その中にはモビリティ(自動車・輸送機器)市場向けや医療機器市場向けなど、高い安全性が要求される製品も含まれています。想定外の事象を原因とする大規模な品質問題が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループではお客さまからの要求やISOなどの認証機関が定める規格に準拠した最適な品質管理体制を構築し、継続的な改善を進めることで、品質問題が発生するリスクの最小化に努めています。
⑤ 取締役会の実効性向上
当社グループは創業以来、経営者の強いリーダーシップのもと、経営環境の変化に的確に対応した戦略を実践してきました。重要な経営判断および取締役の業務執行の監督を担う取締役会が実効的に機能しない事態となった場合、迅速かつ果断な意思決定および経営の透明性、公正性の確保が困難となり、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。
当社の取締役会は、知見・経験・能力のバランス、多様性を考慮したメンバーで構成されています。議案の重要度に応じた説明時間や審議時間を設定し、割り当てることで重要度に応じて効率的な運営を行っています。また、年1回、前年度の取締役会の構成や運営などについて分析・評価を行うことで、コーポレートガバナンスの実効性を高めるための継続的な改善に取り組み、リスクの最小化を図っています。
⑥ その他のESGに関するリスク
その他、生産性の向上、コンプライアンスの推進、事業活動の継続、情報資産の保護と活用、職場の安全衛生に関連するリスクが、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。当社はこのようなリスクに対して、IT技術を駆使した生産性改革の推進、企業倫理・コンプライアンス指針の策定や社内研修による社員への周知、経営層を含むBCP(事業継続計画)訓練の定期的な実施、情報セキュリティシステムの構築、労働安全衛生方針の制定・周知などにより、リスクの最小化に努めています。