有価証券報告書-第53期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/29 13:50
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【項目】
101項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、電話帳や地域情報誌の発行単位となっている、それぞれの地域への貢献を経営理念として謳っており、当社グループにとっての利益とは、地域社会のコミュニケーションを促進することによって築き上げられた、お客さまやコミュニティ全体との信頼関係がもたらす成果であって、まさに公共的な使命を果たした結果として実現するものであると考えております。
昨今、行政の財政悪化や少子高齢化など国内の先行きに不透明感が漂うなか、地方創生による地域社会の活性化こそが唯一の打開策と考えられます。そのための重要な手法が官民協働であり、行政と民間が連携する官民協働という考え方がそのエンジンとなります。すなわち、地方の公共サービスを官民協働でおこなっていくということがその解決の糸口になるのではないかと考えます。
当社グループの経営理念実現のため、官民協働という手法を取り入れ、官民協働型の行政連携事業を拡大し、お客さまやコミュニティの要望に対応すべく、常に進取的な姿勢で経営に取り組んでまいります。
官民協働で、地域密着型のメディアやソリューションを提供することにより、地方創生に貢献し、当社グループが存続・発展し続け、企業価値を向上させてゆくことこそ、株主のみなさまをはじめ、あらゆるステークホルダーのみなさまに対する最大の貢献であると信じております。
(2)経営環境及び中長期的な経営戦略
東京一極集中が、日本の再成長を阻む大きなリスクと思われます。東京一極集中が過度に進むと、東京ブラックホール化という形で地方が消滅し、いずれ東京も超高齢化して、国家の衰退へと向かいます。東京も繁栄し地方も豊かな健全な国家にしていくには、東京一極集中から地方分散多極化をはかるべきで、地方創生こそが打開策の根幹となります。
地方の課題は、経済の衰退と財政の逼迫です。これまで地方経済は、公共事業と企業誘致を柱に国や大企業に依存してきましたが、国は財政難から公共事業を削減し、大企業はグローバルな事業展開の中で、地方の工場を海外に移転するため閉鎖・縮小してきました。その結果、地方経済は停滞を余儀なくされ、財政にも大きな影響を及ぼしています。
日本は経済規模の8割を地方や中小企業が占めており、このような状況下で、どのように地方創生を進めるかですが、従来のように国や大企業に依存できないので、独立自尊、自助努力で取り組むしかありません。しかし、地方創生といった未知への挑戦は、自治体だけでは容易ではありません。発想を転換して民間活力を導入し、地域を挙げて地方創生に取り組む体制を構築しなければなりません。官と民の協働こそが、地方創生を実現できる唯一の解といえます。
当社は、官民協働という発想が浸透していなかった頃から、地方自治体に官民協働事業を提案し、平成18年にこの事業をスタートさせました。行政と民間企業は文化も風土も発想も異なりますが、この相容れぬ異分子同士が結合することで、うまく化学反応すれば、思わぬイノベーションが起こることがあります。その発想で取り組めば、産業振興と公共の革新が実現し、国や大企業に依存しなくても、地方経済が活性化し、地方財政も再建できると考えました。
当社は、地方創生を推進するため、自治体の公的サービスの外部化に取組んでまいりました。自治体の広報プロモーションの領域をビジネス化できると考え、官民協働型行政情報誌「わが街事典」の共同発行事業を考案しました。
地方自治体との信頼関係を基に、行政情報誌発行事業に続き、ふるさと納税支援事業やシティプロモーション支援事業、クラウド型行政情報発信事業も手掛けております。また、地域経済活性化支援として、eコマースによる特産品などの物品販売や旅行商品の販売にも取り組んでおります。
今後は、地域のあらゆる課題にソリューションを提供していく、地方創生プラットフォーム構想に基づき、地方自治体を中心とする公共の領域、地域の活性化に資する地域経済の領域において、地方創生支援に取り組んでまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業を継続・発展させてゆく上で、収益の源泉となる連結売上高、ならびに経営にともなう通常のコストを差し引いたあとの収益性を判断するため、連結経常利益を重要視しております。
(4)事業上の対処すべき課題
当社グループは、人口減少などによる地方経済の衰退、地方財政の逼迫に対応すべく、行政と民間企業による提携、すなわち、パブリック・プライベート・パートナーシップの理念に則り民間活力を導入し、公共の領域での新たな事業創造を推進し、官民協働で地方創生支援に取り組んでまいります。
官民協働による取り組みは、互いの持つ知恵や能力、経験により、新しい付加価値を創造する地域イノベーションが期待されます。官民協働事業を当社グループの中核事業と位置付け、地方自治体の情報発信や地域活性化の取り組みにおいて、当社が最適なパートナーとなるよう、広報やプロモーション、地域経済活動をサポートしてまいります。
行政情報誌『わが街事典』等の紙媒体や、『わが街ふるさと納税』、『わが街プロモーション』、子育てアプリ等のICTを活用したサービスなど、ワンストップ・マルチ提案によるトータルプロモーションにより、地方創生のプラットフォームの役割を担う「社会貢献型企業」を目指してまいります。さらに、地方創生プラットフォームを強化すべく、社内人材の育成をはかるとともに、高度な技術を持つ他社と連携して事業拡大に取り組んでまいります。
あわせて、一層の原価低減、経費削減などにも取り組み、継続的に利益を確保する体制の構築に努めるとともに、コンプライアンスの徹底を経営上の最重要課題と位置付け、さらなる充実をはかってまいります。
これらの施策により、連結売上高、連結経常利益の増加を目指してまいります。
セグメント別の対処すべき課題は次のとおりであります。
①出版事業
出版事業におきましては、行政情報誌『わが街事典』は、引き続き全都道府県の政令指定都市から町村まで『わが街事典』の発行を提案し、発行エリアの拡大、再版の発行を促進するとともに、顧客層も中小の事業者から大企業まで開拓してまいります。また、地域を活性化するわが街再発見といったコンテンツの充実や行政情報の読みやすさを追求するとともに、子育てや福祉、ゴミ分別などのジャンル別行政情報誌の発行も拡大してまいります。行政情報誌の電子書籍アプリ『わが街事典』も地方自治体からの情報発信機能など新機能を追加し、利便性向上をはかってまいります。
50音別電話帳『テレパル50』につきましては、引き続き行政情報の拡充などコンテンツを強化し、エリア情報誌としての位置付けを明確にしてまいります。
また、『Nasse』につきましては、スマートフォンコンテンツとの連携など情報誌としての企画力をさらに強化し、九州エリアでのプレゼンスを向上させてまいります。
②WEB・ソリューション事業
WEB・ソリューション事業におきましては、ふるさと納税総合情報サイト『わが街ふるさと納税』により、ふるさと納税の利用促進を支援するとともに、地方自治体に対し、ふるさと納税事務の一括業務代行や、返礼品の選定を含めたコンサルティングを提案し、地域経済の活性化につながる取り組みをおこなってまいります。
また、地方自治体の行政情報発信ニーズが拡大するなか、地域の魅力を発信するサイト『わが街プロモーション』の充実や、デジタルサイネージによる広報を推進するとともに、子育てや観光、防災情報などの発信に関し、クラウドによるホームページやアプリの提供に取り組み、地方自治体のシティプロモーションを支援してまいります。
地域経済の活性化を支援するため、eコマースによる旅行商品や物品販売サイトの取扱い品目の拡充などにより、顧客満足度の向上をはかるとともに、平成30年4月に連結子会社化した株式会社バズグラフによるウェブ上のクチコミ解析等、ビッグデータを活用したインターネットソリューションの提供、集客機能が充実した『わが街集客アプリ』の販売により、中小事業者向けのソリューションを強化し、地方創生支援を加速してまいります。
③ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、郵便発送代行事業は、既存の有力代理店への営業サポートにより、取扱い通数の拡大をはかるとともに、当社グループの営業ネットワークの活用により、地方自治体や地域団体など新規顧客を開拓してまいります。
ポスティング事業につきましては、大手クライアントの開拓など、ポスティング領域の拡大をはかってまいります。
④不動産事業
不動産事業につきましては、既存物件の収益力強化をはかるとともに、今後の安定的な収益確保に貢献する物件の検討を進めてまいります。また、今後不動産事業で培ったノウハウを活かして、空き家対策など、地方創生に貢献してまいります。
(5)財務上の対処すべき課題
当社グループの資金状況は、運転資金、設備投資資金、戦略投資資金等の必要資金を主に事業利益から得られる内部留保資金または借入金により調達することとしております。このうち、借入金による資金調達については、短期借入金であり、未行使の借入枠利用により調達することが一般的であります。平成30年3月31日現在、短期借入金の残高は、3億50百万円であります。
平成30年3月31日現在、長期借入金の残高は、1年以内の返済予定額20百万円を含めて46百万円でありますが、これは、株式会社サンマークが連結子会社化前において調達いたしました長期運転資金であります。なお、将来大規模な設備投資資金および戦略投資資金などの長期資金需要が発生した場合には、手許資金の流動性と安全性を確保するため、あらためて長期借入金による資金調達について検討する方針であります。
当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力および未行使の借入枠により将来必要な運転資金、設備投資資金、戦略投資資金を確保し、グループ全体の更なる成長に引き続き努めてまいります。