有価証券報告書-第103期(2025/01/01-2025/12/31)
<事業の概況>世界中で医療費抑制の圧力が強まり、また、各国の医療政策の内容がより強く相互に影響を及ぼす等、元来、新薬開発の難度が高い製薬業界にとって、事業環境がより厳しくなる環境変化が続いています。そのような状況の中、当社は「Story for Vision 2030」により事業戦略の解像度を高め、Vision 2030の実現に向けてより焦点を明確化した取組みを推進しました。アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供のため、生産・品質保証・物流の強化を継続するとともに、新たなLife-changingな価値を創出すべく研究開発活動を行ってきました。
Crysvita(日本製品名:クリースビータ)*1、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)*2では、上市国・地域の拡大や市場浸透に取組み、着実な成長を推進しました。Crysvitaにおいては、患者さん及び医療関係者から期待されていた在宅自己注射をより簡便で安全に行うことができる剤型として、皮下注シリンジを日本・欧州で販売開始しました。また、イタリアではCrysvitaが腫瘍性骨軟化症に対して保険償還の対象となりました。
OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)は、スペインで保険償還の対象となり、日本においては早期発症型の異染性白質ジストロフィー(MLD)に対して希少疾病用再生医療等製品指定を、サウジアラビアにおいては希少疾病用医薬品指定と優先審査指定を取得しました。
骨・ミネラル領域では、Crysvitaに加え、KK8123及びKK8398(一般名:infigratinib)の開発も進行中です。日本においては、軟骨無形成症を対象としたinfigratinibの国内第Ⅲ相試験を開始しました。
血液がん・難治性血液疾患領域のziftomenib(米国製品名:KOMZIFTI)は米国においてNPM1変異を有する再発・難治性の成人急性骨髄性白血病(AML)に対する、1日1回経口投与可能なメニン阻害薬として世界で初めて承認されました。さらに、未治療AML患者を対象とした第Ⅲ相試験を開始しています。
免疫・アレルギー疾患領域のKHK4083(一般名:ロカチンリマブ)の開発ではAmgen社と連携しながら複数の臨床試験を推進しました。ロカチンリマブのアトピー性皮膚炎を対象とした長期的な安全性と有効性を評価する第Ⅲ相臨床試験ROCKET-Ascendの中間結果を公表し、米国での承認申請・販売開始に向けた取組みを推進しました。また、結節性痒疹を適応とした第Ⅲ相試験の患者さん登録を完了しました。
自己免疫疾患に関して、ファースト・イン・クラス低分子治療薬候補の開発を目的とした、前臨床開発プログラムに関するライセンスをBoehringer Ingelheim社に提供しました。
「Story for Vision 2030」に基づき、日本事業では、長期収載品の製品ライフサイクルマネジメントを進めています。協和キリンが長年にわたって価値を創り届け、患者さんへの継続的な供給が求められる製品を、他社に引き継ぎ、継続して患者さんに届けるための重要な取組みであり、「デパケン錠、R錠、細粒、シロップ」及び「アレロック顆粒」の製造販売承認を承継しました。
上記に加えて、バイオ医薬品開発のさらなる加速化に向け建設中であったHB7棟の竣工を迎えました。また、上記冒頭で記載した環境変化の中、Vision 2030に向けて日本における事業基盤をより持続可能な 姿へと大胆に転換し、組織能力の一層の強化を図るとともに、社員のキャリア開発の選択肢を広げることを目的に特別希望退職制度を実施しました。
*1:主に遺伝的な原因で骨の成長・代謝に障害をきたす希少な疾患の治療薬。
*2:特定の血液がんの治療薬。
(1)当期の財政状態の概況
(単位:億円)
◎ 資産は、前連結会計年度末に比べ405億円増加し、11,079億円となりました。
・非流動資産は、繰延税金資産や関係会社社債等は減少しましたが、有形固定資産及び無形資産の増加により、前連結会計年度末に比べ512億円増加し、6,145億円となりました。
・流動資産は、営業債権及びその他の債権は増加しましたが、現金及び現金同等物や棚卸資産等の減少により、前連結会計年度末に比べ107億円減少し、4,933億円となりました。
◎ 負債は、未払法人所得税は増加しましたが、持分法適用に伴う負債の減少等により、前連結会計年度末に比べ20億円減少し、2,145億円となりました。
◎ 資本は、配当金の支払いによる減少がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に加え、為替影響による在外営業活動体の換算差額の増加等により、前連結会計年度末に比べ425億円増加し、8,933億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ0.9ポイント増加し、80.6%となりました。

(2)当期の経営成績の概況
① 業績の概況
当社グループは、グローバルに事業を展開していることから、国際会計基準(以下「IFRS」という。)を適用していますが、事業活動による経常的な収益性を示す段階利益として「コア営業利益」を採用しています。当該「コア営業利益」は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」及び「研究開発費」を控除し、「持分法による投資損益」を加えて算出しています。
(単位:億円)
<期中平均為替レート>
当連結会計年度の売上収益は4,968億円(前連結会計年度比0.3%増)、コア営業利益は1,031億円(同8.0%増)となり、いずれも過去最高を更新しました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は670億円(同12.0%増)となりました。
◎ 売上収益は、APACリージョンの事業再編による影響や日本における薬価基準引下げの影響があったものの、北米及びEMEAを中心としたグローバル戦略品の伸長に加え、技術収入の増加により、増収となりました。なお、売上収益に係る為替の減収影響は4億円となりました。
◎ コア営業利益は、海外売上収益や技術収入の増加に伴う売上総利益の増加に加え、販売費及び一般管理費、研究開発費が減少したことにより、増益となりました。なお、コア営業利益に係る為替の減益影響は7億円となりました。
◎ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に中国子会社株式売却益を計上していたことから、その他の収益が減少したものの、コア営業利益の増加などにより、増益となりました。
② 地域統括会社別の売上収益
(単位:億円)
(注)1.One Kyowa Kirin 体制(地域(リージョン)軸、機能(ファンクション)軸と製品(フランチャイズ)軸を組み合わせたグローバルマネジメント体制)における地域統括会社(連結)の製商品の売上収益を基礎として区分しています。
2.EMEAは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ等です。
3.その他は、技術収入、造血幹細胞遺伝子治療(Orchard Therapeutics社の売上収益)及び受託製造等です。
4.前連結会計年度において区分掲記していた「アジア/オセアニア」の売上収益(416億円)は、2024年のAPACリージョンの事業再編に伴い、当連結会計年度より「その他」に含めて表示しています。

<日本リージョンの売上収益>(単位:億円)
◎ 日本の売上収益は、高リン血症治療剤フォゼベル等が伸長したものの、尋常性乾癬治療剤ドボベットの販売提携契約終了や、2024年4月及び2025年4月に実施された薬価基準引下げの影響等を受け、前連結会計年度を下回りました。
・FGF23関連疾患治療剤クリースビータは、2019年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。また、2025年11月には、在宅自己注射をより簡便に行えるシリンジ型製剤「クリースビータ皮下注シリンジ」を発売しました。
・腎性貧血治療剤ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」は、薬価基準引下げ及び競合品浸透の影響を受け、売上収益が減少しました。
・腎性貧血治療剤ダーブロックは、2020年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・高リン血症治療剤フォゼベルは、2024年2月の販売開始以降、順調に売上収益を伸ばしています。
・発熱性好中球減少症発症抑制剤ジーラスタは、バイオ後続品の影響や薬価基準引下げの影響を受け、売上収益が減少しました。
・尋常性乾癬治療剤ドボベットは、レオ ファーマ株式会社との販売提携契約が2024年12月31日で終了したため、売上収益が減少しました。
<海外リージョン及びその他の売上収益>(単位:億円)
◎ 北米の売上収益は、グローバル戦略品の伸長により、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2018年の発売以来、売上収益を伸ばしています。
・再発又は難治性急性骨髄性白血病(AML)のうち、感受性のあるNPM1変異を有し、かつ満足すべき代替治療手段がない成人患者を対象として、KOMZIFTI(一般名:ziftomenib)について、2025年11月に米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得し、米国での販売を開始しました。KOMZIFTIについては、Kura Oncology社との戦略的提携契約に基づき、米国においては50:50でプロフィットシェアを行います。当社はプロフィットシェア後のネット損益がプラスの場合は売上収益として計上し、マイナスの場合は販売費及び一般管理費として処理しますが、当連結会計年度はネット損益がマイナスとなったため、販売費及び一般管理費に計上しています。
◎ EMEAの売上収益は、グローバル戦略品の伸長や1ブランドの権利譲渡による収入などがあったものの、2024年に3ブランドの権利譲渡による131億円(66.4百万ポンド)の収入があった反動もあり、前連結会計年度を下回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、適応及び上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2020年の発売以来、上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。
・エスタブリッシュト医薬品1ブランドに関する権利(知的財産)の合弁会社への譲渡(2025年7月)により、77億円(38.5百万ポンド)の売上収益を計上しました。なお、当該金額には2024年7月に譲渡した3ブランドに関する価格調整差額が含まれています。
◎ その他の売上収益は、APACリージョンの事業再編の影響により、前連結会計年度を下回りました。
・異染性白質ジストロフィー(MLD)治療Libmeldy/Lenmeldyは、欧州が堅調なことに加えて、米国での売上計上が始まり、順調に売上収益を伸ばしました。また、2025年12月には、米国推奨統一スクリーニングパネル(RUSP:Recommended Uniform Screening Panel)に異染性白質ジストロフィー(MLD)が追加されました。
・AstraZeneca社からのベンラリズマブに関する売上ロイヤルティの増加に加え、Boehringer Ingelheim社からの契約一時金収入及びマイルストン収入等により、技術収入は増加しました。
・2024年9月末のAPACリージョンの事業再編に伴い、エスタブリッシュト医薬品等の売上収益が大きく(145億円)減少しました。
③ コア営業利益
◎ コア営業利益は、売上総利益の増加に加え、販売費及び一般管理費、研究開発費の減少等により、前連結会計年度を上回りました。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
「(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析 ③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載のとおりです。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
(注)1.金額は販売価格によっています。
2.当社グループ内において原材料等として使用する中間製品については、その取引額が僅少であるため相殺消去等の調整は行っていません。
3.当連結会計年度より算出方法を変更したことに伴い、前期比は前連結会計年度の実績を再算出して計算しています。
② 受注実績
当社グループは、主として販売計画に基づいた生産を行っています。一部の製品で受注生産を行っていますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しています。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
文中の将来に関する記述は、当連結会計年度末(2025年12月31日現在)において当社グループが入手している情報及び判断に基づいたものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。
② 当期の財政状態及び経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析については、「(1) 当期の財政状態の概況、(2) 当期の経営成績の概況」に記載のとおりです。
◎ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2021-2025年中期経営計画の最終年度である当連結会計年度(2025年度)における、主要財務指標の目標及び実績は、以下のとおりです。
(注)コアEPS(経常的な収益性を示す指標として、「当期利益」から「その他の収益」及び「その他の費用」並びにこれらに係る「法人所得税費用」を控除した「コア当期利益」を期中平均株式数で除して算定)に対する配当性向を記載しています。
当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、成長性、イノベーション創出能力、収益性を持続的に高めていくことにより、中長期的なROEの向上と継続増配を実現し、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての安定した収益構造の確立と持続的な成長を目指してきました。その目標達成状況を判断する客観的な指標として、「ROE」「売上収益成長率」「研究開発費率」「コア営業利益率」「配当性向」の5つの財務指標(KPI)を掲げていました。
期間中、主力製品では、Crysvitaについて2023年に北米での自社販売を開始したほか、Poteligeoでも上市国・地域の拡大及び市場浸透を進め、着実に売上を伸ばしました。研究開発では、KHK4083(一般名:ロカチンリマブ)についてROCKETプログラムが進展したほか、KHK4951の第Ⅱ相試験や、KK8123等の6開発品の第Ⅰ相試験を開始しました。一方で、ME-401やRTA 402等の開発中止があったものの、日本ではフォゼベル錠、米国ではLenmeldy及びKOMZIFTIを上市しました。また、グローバルでの品質保証及び安定供給体制の強化に向け、eQMSの導入や、高崎での品質関連複合施設「Q-TOWER」及びバイオ医薬品原薬製造棟「HB7」の稼働、米国バイオ医薬品原薬製造工場「サンフォード工場」の建設等の設備投資も実施しました。
これらの結果、売上収益成長率は、欧州におけるエスタブリッシュト医薬品事業の合弁提携化やAPACリージョンの事業再編に伴う売上収益の減少影響もあり、目標の10%を下回りました。研究開発費率は、積極的な投資により目標水準で推移しました。コア営業利益率は、目標の25%に届かなかったものの、2021年、2022年、2023年及び2025年の4年度において過去最高のコア営業利益を達成しました。ROEは、2023年単年度のみ10%以上を達成したものの、掲げた目標の継続的な達成には至りませんでした。
また、ROE及びコア営業利益率は引き続き当社にとって最重要の経営指標であり、2026年2月に公表した「Vision 2030 and Beyond:中長期構想」において、2030年代前半までにROE10%台前半、コア営業利益率30%を実現することを中長期財務目標として再設定しています。
なお、当期末の剰余金の配当については、1株につき32円を予定しており、2026年3月19日開催予定の第103回定時株主総会で承認されますと、中間配当金30円を加えた年間配当金は、前連結会計年度に比べ4円増配の年間62円(配当性向40.5%)となります。これにより、5年平均の配当性向は40.8%となり、9期連続の増配となる予定です。
③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析
◎当期のキャッシュ・フローの概況
(単位:億円)
◎ 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の2,447億円に比べ259億円減少し、2,188億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
◎ 営業活動によるキャッシュ・フローは、966億円の収入(前連結会計年度は679億円の収入)となりました。主な収入要因は、税引前利益872億円に加えて、減価償却費及び償却費261億円です。一方、主な支出要因は、営業債権の増加額224億円、契約負債の減少額61億円です。
◎ 投資活動によるキャッシュ・フローは、892億円の支出(前連結会計年度は1,424億円の支出)となりました。主な支出要因は、無形資産の取得による支出458億円、有形固定資産の取得による支出377億円、米国バイオ医薬品原薬製造工場建設資金の一部のエスクロー口座への振替による支出77億円です。
◎ 財務活動によるキャッシュ・フローは、369億円の支出(前連結会計年度は847億円の支出)となりました。主な支出要因は、配当金の支払額309億円、リース負債の返済による支出60億円です。

◎ 資本政策の基本的な方針
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、自己資本利益率(ROE)及びコア営業利益*1率を重要な経営指標として位置付け、2030年代前半までにROE10%台前半、コア営業利益率30%の実現を目指す中長期財務目標を設定し、経営を行っています。
このための経営資源の配分、株主還元、資金調達についての方針は、以下のとおりです。なお、当社は、支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策等については、取締役会において、全てのステークホルダーにおける企業価値の観点から十分に検討したうえで合理的な判断を行います。
*1 2026年12月期以降、連結財務諸表におけるコアベースの業績の定義を以下のとおり変更。新コアベースにおけるコア営業利益率を1つの重要な経営指標と位置付け、中長期的な目標値を設定する。
(従来のコア営業利益)
コア営業利益:売上総利益-販売費及び一般管理費-研究開発費+持分法による投資損益
(新コア営業利益)
コア営業利益:売上総利益-販売費及び一般管理費(無形資産償却費を除く)-研究開発費-会社が除外すべきと判断する項目

・経営資源の配分についての方針
当社グループは、事業活動により創出されるキャッシュ・フロー及び手元資金並びに借入余力を活用し、成長投資を最優先とした資本配分を行いながら、安定的な株主還元を実現する方針です。
成長投資については、R&D投資と戦略投資を両輪として推進し、短期的な業績変動に過度に左右されることなく、長期的に安定した収益基盤を構築していきます。
R&D投資については、「2030年代前半までに20以上の新規パイプライン、10以上の適応症でFDA承認」という中長期パイプライン目標の実現に向け、積極的な投資を継続します。当社が強みを有する先進的抗体技術や造血幹細胞遺伝子治療といったモダリティに加え、骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患及び希少疾患のフォーカス疾患領域にリソースを集中します。さらに、グローバル横断の研究連携を通じて研究基盤の強化を進めます。また、患者さんのニーズと革新的サイエンスの掛け合わせによるLife-changingな価値の創出に取組み、ziftomenib(米国製品名:KOMZIFTI)、KK8123、KK2845、OTL-203などの重点開発テーマを着実に推進します。なお、当連結会計年度のR&D活動については、「6 研究開発活動」に記載のとおりです。
戦略投資については、フォーカス領域における製品導入やM&Aなどを通じた外部アセットの獲得を視野に入れ、新たなパイプラインや収益機会につながるインオーガニックな成長機会を積極的に追求し、さらなる成長を目指します。
設備投資については、米国バイオ医薬品原薬製造工場(サンフォード工場)の建設を軸に、グローバル生産ネットワークの整備・強化を進め、高品質な医薬品を安定的かつレジリエントに供給できる体制の構築を図ります。また、IT・DX・AI投資によりデータ基盤やガバナンスを高度化し、AI活用によるオペレーションモデルの転換や業務プロセスの効率化を推進することで、オペレーショナルエクセレンスの追求につなげます。なお、当連結会計年度の設備投資については、「第3 設備の状況」に記載のとおりです。
これらの投資案件や開発プロジェクトの事業性評価においては、投資家の皆様が当社に期待する資本コスト(WACC)を反映したハードルレート(地域別)を用いた正味現在価値(NPV)と期待現在価値(EPV)を主たる定量的な基準としています。投資の判断においても、資本コストを上回るリターンの創出を重視しています。

・株主還元についての方針
2025年度までコアEPS*2に対する配当性向40%を目処に、中長期的な利益成長に応じた安定的かつ持続的な配当水準の向上(継続的な増配)を目指してきましたが、より安定的な株主還元を実現するため、2026年度より、DOE4%*3以上かつ累進配当を基本とする配当方針へ変更します。この方針に基づき、2025年度の配当については、2024年度より4円増配の62円(配当性向40.5%)を予定しています。また、2026年度の配当については、8円増配の70円(DOE4.1%)と、10期連続の増配を予定しています。なお、自己株式の取得については、戦略投資の状況や業績・株価動向等を勘案し、ROEを意識しながら機動的に検討します。
ROE向上に向けた経営の規律を一層強化し、資本コストを十分に意識した経営を推進することで企業価値の向上を図るとともに、株主の皆さまへの利益還元を一層充実させ、資本効率の向上に取組みます。
*2 従来のコアベースによるコアEPS
(従来のコアEPS)
コア EPS:コア当期利益(当期利益-その他の収益・費用 (税金影響控除後))÷期中平均株式数
(新コアEPS)
コアEPS:コア当期利益(コア営業利益-コア営業利益に係る税金費用)÷期中平均株式数
*3 DOE:配当額÷期首資本

・資金調達についての方針
引き続きネットキャッシュポジションの維持を原則としますが、手元資金に加えて、戦略的な投資案件に備えた借入余力(原則としてネットD/Eレシオ0.5倍以下の範囲内で維持)と機動的な資金調達手段(CP(コマーシャル・ペーパー)、コミットメントライン)も確保し、十分な財務柔軟性を維持します。
Crysvita(日本製品名:クリースビータ)*1、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)*2では、上市国・地域の拡大や市場浸透に取組み、着実な成長を推進しました。Crysvitaにおいては、患者さん及び医療関係者から期待されていた在宅自己注射をより簡便で安全に行うことができる剤型として、皮下注シリンジを日本・欧州で販売開始しました。また、イタリアではCrysvitaが腫瘍性骨軟化症に対して保険償還の対象となりました。
OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)は、スペインで保険償還の対象となり、日本においては早期発症型の異染性白質ジストロフィー(MLD)に対して希少疾病用再生医療等製品指定を、サウジアラビアにおいては希少疾病用医薬品指定と優先審査指定を取得しました。
骨・ミネラル領域では、Crysvitaに加え、KK8123及びKK8398(一般名:infigratinib)の開発も進行中です。日本においては、軟骨無形成症を対象としたinfigratinibの国内第Ⅲ相試験を開始しました。
血液がん・難治性血液疾患領域のziftomenib(米国製品名:KOMZIFTI)は米国においてNPM1変異を有する再発・難治性の成人急性骨髄性白血病(AML)に対する、1日1回経口投与可能なメニン阻害薬として世界で初めて承認されました。さらに、未治療AML患者を対象とした第Ⅲ相試験を開始しています。
免疫・アレルギー疾患領域のKHK4083(一般名:ロカチンリマブ)の開発ではAmgen社と連携しながら複数の臨床試験を推進しました。ロカチンリマブのアトピー性皮膚炎を対象とした長期的な安全性と有効性を評価する第Ⅲ相臨床試験ROCKET-Ascendの中間結果を公表し、米国での承認申請・販売開始に向けた取組みを推進しました。また、結節性痒疹を適応とした第Ⅲ相試験の患者さん登録を完了しました。
自己免疫疾患に関して、ファースト・イン・クラス低分子治療薬候補の開発を目的とした、前臨床開発プログラムに関するライセンスをBoehringer Ingelheim社に提供しました。
「Story for Vision 2030」に基づき、日本事業では、長期収載品の製品ライフサイクルマネジメントを進めています。協和キリンが長年にわたって価値を創り届け、患者さんへの継続的な供給が求められる製品を、他社に引き継ぎ、継続して患者さんに届けるための重要な取組みであり、「デパケン錠、R錠、細粒、シロップ」及び「アレロック顆粒」の製造販売承認を承継しました。
上記に加えて、バイオ医薬品開発のさらなる加速化に向け建設中であったHB7棟の竣工を迎えました。また、上記冒頭で記載した環境変化の中、Vision 2030に向けて日本における事業基盤をより持続可能な 姿へと大胆に転換し、組織能力の一層の強化を図るとともに、社員のキャリア開発の選択肢を広げることを目的に特別希望退職制度を実施しました。
*1:主に遺伝的な原因で骨の成長・代謝に障害をきたす希少な疾患の治療薬。
*2:特定の血液がんの治療薬。
(1)当期の財政状態の概況
(単位:億円)
| 前連結会計年度末 | 当連結会計年度末 | 増減 | |
| 資産 | 10,674 | 11,079 | 405 |
| 非流動資産 流動資産 | 5,633 5,040 | 6,145 4,933 | 512 △107 |
| 負債 | 2,166 | 2,145 | △20 |
| 資本 | 8,508 | 8,933 | 425 |
| 親会社所有者帰属持分比率(%) | 79.7% | 80.6% | 0.9% |
◎ 資産は、前連結会計年度末に比べ405億円増加し、11,079億円となりました。
・非流動資産は、繰延税金資産や関係会社社債等は減少しましたが、有形固定資産及び無形資産の増加により、前連結会計年度末に比べ512億円増加し、6,145億円となりました。
・流動資産は、営業債権及びその他の債権は増加しましたが、現金及び現金同等物や棚卸資産等の減少により、前連結会計年度末に比べ107億円減少し、4,933億円となりました。
◎ 負債は、未払法人所得税は増加しましたが、持分法適用に伴う負債の減少等により、前連結会計年度末に比べ20億円減少し、2,145億円となりました。
◎ 資本は、配当金の支払いによる減少がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に加え、為替影響による在外営業活動体の換算差額の増加等により、前連結会計年度末に比べ425億円増加し、8,933億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ0.9ポイント増加し、80.6%となりました。

(2)当期の経営成績の概況
① 業績の概況
当社グループは、グローバルに事業を展開していることから、国際会計基準(以下「IFRS」という。)を適用していますが、事業活動による経常的な収益性を示す段階利益として「コア営業利益」を採用しています。当該「コア営業利益」は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」及び「研究開発費」を控除し、「持分法による投資損益」を加えて算出しています。
(単位:億円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 % | |
| 売上収益 | 4,956 | 4,968 | 13 | 0.3% |
| コア営業利益 | 954 | 1,031 | 77 | 8.0% |
| 税引前利益 | 835 | 872 | 38 | 4.5% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 599 | 670 | 72 | 12.0% |
<期中平均為替レート>
| 通貨 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 |
| 米ドル(USD/円) | 151円 | 150円 | △1円 |
| 英ポンド(GBP/円) | 193円 | 197円 | 4円 |
| ユーロ(EUR/円) | 164円 | 168円 | 4円 |
当連結会計年度の売上収益は4,968億円(前連結会計年度比0.3%増)、コア営業利益は1,031億円(同8.0%増)となり、いずれも過去最高を更新しました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は670億円(同12.0%増)となりました。
◎ 売上収益は、APACリージョンの事業再編による影響や日本における薬価基準引下げの影響があったものの、北米及びEMEAを中心としたグローバル戦略品の伸長に加え、技術収入の増加により、増収となりました。なお、売上収益に係る為替の減収影響は4億円となりました。
◎ コア営業利益は、海外売上収益や技術収入の増加に伴う売上総利益の増加に加え、販売費及び一般管理費、研究開発費が減少したことにより、増益となりました。なお、コア営業利益に係る為替の減益影響は7億円となりました。
◎ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に中国子会社株式売却益を計上していたことから、その他の収益が減少したものの、コア営業利益の増加などにより、増益となりました。
② 地域統括会社別の売上収益
(単位:億円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 % | |
| 日本 | 1,347 | 1,225 | △121 | △9.0% |
| 北米 | 1,744 | 1,925 | 181 | 10.4% |
| EMEA | 849 | 837 | △13 | △1.5% |
| その他 | 1,015 | 981 | △34 | △3.4% |
| 売上収益合計 | 4,956 | 4,968 | 13 | 0.3% |
(注)1.One Kyowa Kirin 体制(地域(リージョン)軸、機能(ファンクション)軸と製品(フランチャイズ)軸を組み合わせたグローバルマネジメント体制)における地域統括会社(連結)の製商品の売上収益を基礎として区分しています。
2.EMEAは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ等です。
3.その他は、技術収入、造血幹細胞遺伝子治療(Orchard Therapeutics社の売上収益)及び受託製造等です。
4.前連結会計年度において区分掲記していた「アジア/オセアニア」の売上収益(416億円)は、2024年のAPACリージョンの事業再編に伴い、当連結会計年度より「その他」に含めて表示しています。

<日本リージョンの売上収益>(単位:億円)| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 % | |
| クリースビータ | 117 | 136 | 19 | 16.0% |
| ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」 | 116 | 104 | △11 | △9.8% |
| ダーブロック | 127 | 155 | 28 | 21.6% |
| フォゼベル | 47 | 82 | 36 | 76.7% |
| ジーラスタ | 205 | 182 | △24 | △11.5% |
| ドボベット | 79 | - | △79 | - |
◎ 日本の売上収益は、高リン血症治療剤フォゼベル等が伸長したものの、尋常性乾癬治療剤ドボベットの販売提携契約終了や、2024年4月及び2025年4月に実施された薬価基準引下げの影響等を受け、前連結会計年度を下回りました。
・FGF23関連疾患治療剤クリースビータは、2019年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。また、2025年11月には、在宅自己注射をより簡便に行えるシリンジ型製剤「クリースビータ皮下注シリンジ」を発売しました。
・腎性貧血治療剤ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」は、薬価基準引下げ及び競合品浸透の影響を受け、売上収益が減少しました。
・腎性貧血治療剤ダーブロックは、2020年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・高リン血症治療剤フォゼベルは、2024年2月の販売開始以降、順調に売上収益を伸ばしています。
・発熱性好中球減少症発症抑制剤ジーラスタは、バイオ後続品の影響や薬価基準引下げの影響を受け、売上収益が減少しました。
・尋常性乾癬治療剤ドボベットは、レオ ファーマ株式会社との販売提携契約が2024年12月31日で終了したため、売上収益が減少しました。
<海外リージョン及びその他の売上収益>(単位:億円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 % | |
| Crysvita | 1,848 | 2,028 | 180 | 9.7% |
| Poteligeo | 381 | 441 | 60 | 15.6% |
| Libmeldy/Lenmeldy | 33 | 64 | 32 | 96.1% |
◎ 北米の売上収益は、グローバル戦略品の伸長により、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2018年の発売以来、売上収益を伸ばしています。
・再発又は難治性急性骨髄性白血病(AML)のうち、感受性のあるNPM1変異を有し、かつ満足すべき代替治療手段がない成人患者を対象として、KOMZIFTI(一般名:ziftomenib)について、2025年11月に米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得し、米国での販売を開始しました。KOMZIFTIについては、Kura Oncology社との戦略的提携契約に基づき、米国においては50:50でプロフィットシェアを行います。当社はプロフィットシェア後のネット損益がプラスの場合は売上収益として計上し、マイナスの場合は販売費及び一般管理費として処理しますが、当連結会計年度はネット損益がマイナスとなったため、販売費及び一般管理費に計上しています。
◎ EMEAの売上収益は、グローバル戦略品の伸長や1ブランドの権利譲渡による収入などがあったものの、2024年に3ブランドの権利譲渡による131億円(66.4百万ポンド)の収入があった反動もあり、前連結会計年度を下回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、適応及び上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2020年の発売以来、上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。
・エスタブリッシュト医薬品1ブランドに関する権利(知的財産)の合弁会社への譲渡(2025年7月)により、77億円(38.5百万ポンド)の売上収益を計上しました。なお、当該金額には2024年7月に譲渡した3ブランドに関する価格調整差額が含まれています。
◎ その他の売上収益は、APACリージョンの事業再編の影響により、前連結会計年度を下回りました。
・異染性白質ジストロフィー(MLD)治療Libmeldy/Lenmeldyは、欧州が堅調なことに加えて、米国での売上計上が始まり、順調に売上収益を伸ばしました。また、2025年12月には、米国推奨統一スクリーニングパネル(RUSP:Recommended Uniform Screening Panel)に異染性白質ジストロフィー(MLD)が追加されました。
・AstraZeneca社からのベンラリズマブに関する売上ロイヤルティの増加に加え、Boehringer Ingelheim社からの契約一時金収入及びマイルストン収入等により、技術収入は増加しました。
・2024年9月末のAPACリージョンの事業再編に伴い、エスタブリッシュト医薬品等の売上収益が大きく(145億円)減少しました。
③ コア営業利益
◎ コア営業利益は、売上総利益の増加に加え、販売費及び一般管理費、研究開発費の減少等により、前連結会計年度を上回りました。(3)当期のキャッシュ・フローの概況
「(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析 ③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載のとおりです。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 医薬 | 373,176 | 89.1 |
| 合計 | 373,176 | 89.1 |
(注)1.金額は販売価格によっています。
2.当社グループ内において原材料等として使用する中間製品については、その取引額が僅少であるため相殺消去等の調整は行っていません。
3.当連結会計年度より算出方法を変更したことに伴い、前期比は前連結会計年度の実績を再算出して計算しています。
② 受注実績
当社グループは、主として販売計画に基づいた生産を行っています。一部の製品で受注生産を行っていますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しています。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 医薬 | 496,826 | 100.3 |
| 合計 | 496,826 | 100.3 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
| 相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| CVS Caremark社 | 58,476 | 11.8 | 71,036 | 14.3 |
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
文中の将来に関する記述は、当連結会計年度末(2025年12月31日現在)において当社グループが入手している情報及び判断に基づいたものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。
② 当期の財政状態及び経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析については、「(1) 当期の財政状態の概況、(2) 当期の経営成績の概況」に記載のとおりです。
◎ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2021-2025年中期経営計画の最終年度である当連結会計年度(2025年度)における、主要財務指標の目標及び実績は、以下のとおりです。
| 2025年度 経営目標 | 当連結会計年度 実績 | ||
| ROE | 10%以上 | 7.7% | 当期利益÷期首期末平均資本 |
| 売上収益成長率(CAGR) | 10%以上 | 9.3% | 2020年度を基準年度とした 年平均成長率 |
| 研究開発費率 | 18~20%を 目処に積極投資 | 20.4% | 研究開発費÷売上収益 |
| コア営業利益率 | 25%以上 | 20.7% | コア営業利益÷売上収益 |
| 配当性向(注) | 40%を目処に 継続増配 | 40.8%(5年平均) 9期連続の増配 |
(注)コアEPS(経常的な収益性を示す指標として、「当期利益」から「その他の収益」及び「その他の費用」並びにこれらに係る「法人所得税費用」を控除した「コア当期利益」を期中平均株式数で除して算定)に対する配当性向を記載しています。
当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、成長性、イノベーション創出能力、収益性を持続的に高めていくことにより、中長期的なROEの向上と継続増配を実現し、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての安定した収益構造の確立と持続的な成長を目指してきました。その目標達成状況を判断する客観的な指標として、「ROE」「売上収益成長率」「研究開発費率」「コア営業利益率」「配当性向」の5つの財務指標(KPI)を掲げていました。
期間中、主力製品では、Crysvitaについて2023年に北米での自社販売を開始したほか、Poteligeoでも上市国・地域の拡大及び市場浸透を進め、着実に売上を伸ばしました。研究開発では、KHK4083(一般名:ロカチンリマブ)についてROCKETプログラムが進展したほか、KHK4951の第Ⅱ相試験や、KK8123等の6開発品の第Ⅰ相試験を開始しました。一方で、ME-401やRTA 402等の開発中止があったものの、日本ではフォゼベル錠、米国ではLenmeldy及びKOMZIFTIを上市しました。また、グローバルでの品質保証及び安定供給体制の強化に向け、eQMSの導入や、高崎での品質関連複合施設「Q-TOWER」及びバイオ医薬品原薬製造棟「HB7」の稼働、米国バイオ医薬品原薬製造工場「サンフォード工場」の建設等の設備投資も実施しました。
これらの結果、売上収益成長率は、欧州におけるエスタブリッシュト医薬品事業の合弁提携化やAPACリージョンの事業再編に伴う売上収益の減少影響もあり、目標の10%を下回りました。研究開発費率は、積極的な投資により目標水準で推移しました。コア営業利益率は、目標の25%に届かなかったものの、2021年、2022年、2023年及び2025年の4年度において過去最高のコア営業利益を達成しました。ROEは、2023年単年度のみ10%以上を達成したものの、掲げた目標の継続的な達成には至りませんでした。
また、ROE及びコア営業利益率は引き続き当社にとって最重要の経営指標であり、2026年2月に公表した「Vision 2030 and Beyond:中長期構想」において、2030年代前半までにROE10%台前半、コア営業利益率30%を実現することを中長期財務目標として再設定しています。
なお、当期末の剰余金の配当については、1株につき32円を予定しており、2026年3月19日開催予定の第103回定時株主総会で承認されますと、中間配当金30円を加えた年間配当金は、前連結会計年度に比べ4円増配の年間62円(配当性向40.5%)となります。これにより、5年平均の配当性向は40.8%となり、9期連続の増配となる予定です。③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析
◎当期のキャッシュ・フローの概況
(単位:億円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 % | |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 679 | 966 | 287 | 42.3% |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,424 | △892 | 532 | △37.4% |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △847 | △369 | 478 | △56.5% |
| 現金及び現金同等物の期首残高 | 4,031 | 2,447 | △1,584 | △39.3% |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 2,447 | 2,188 | △259 | △10.6% |
◎ 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の2,447億円に比べ259億円減少し、2,188億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
◎ 営業活動によるキャッシュ・フローは、966億円の収入(前連結会計年度は679億円の収入)となりました。主な収入要因は、税引前利益872億円に加えて、減価償却費及び償却費261億円です。一方、主な支出要因は、営業債権の増加額224億円、契約負債の減少額61億円です。
◎ 投資活動によるキャッシュ・フローは、892億円の支出(前連結会計年度は1,424億円の支出)となりました。主な支出要因は、無形資産の取得による支出458億円、有形固定資産の取得による支出377億円、米国バイオ医薬品原薬製造工場建設資金の一部のエスクロー口座への振替による支出77億円です。
◎ 財務活動によるキャッシュ・フローは、369億円の支出(前連結会計年度は847億円の支出)となりました。主な支出要因は、配当金の支払額309億円、リース負債の返済による支出60億円です。

◎ 資本政策の基本的な方針
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、自己資本利益率(ROE)及びコア営業利益*1率を重要な経営指標として位置付け、2030年代前半までにROE10%台前半、コア営業利益率30%の実現を目指す中長期財務目標を設定し、経営を行っています。
このための経営資源の配分、株主還元、資金調達についての方針は、以下のとおりです。なお、当社は、支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策等については、取締役会において、全てのステークホルダーにおける企業価値の観点から十分に検討したうえで合理的な判断を行います。
*1 2026年12月期以降、連結財務諸表におけるコアベースの業績の定義を以下のとおり変更。新コアベースにおけるコア営業利益率を1つの重要な経営指標と位置付け、中長期的な目標値を設定する。
(従来のコア営業利益)
コア営業利益:売上総利益-販売費及び一般管理費-研究開発費+持分法による投資損益
(新コア営業利益)
コア営業利益:売上総利益-販売費及び一般管理費(無形資産償却費を除く)-研究開発費-会社が除外すべきと判断する項目

・経営資源の配分についての方針
当社グループは、事業活動により創出されるキャッシュ・フロー及び手元資金並びに借入余力を活用し、成長投資を最優先とした資本配分を行いながら、安定的な株主還元を実現する方針です。
成長投資については、R&D投資と戦略投資を両輪として推進し、短期的な業績変動に過度に左右されることなく、長期的に安定した収益基盤を構築していきます。
R&D投資については、「2030年代前半までに20以上の新規パイプライン、10以上の適応症でFDA承認」という中長期パイプライン目標の実現に向け、積極的な投資を継続します。当社が強みを有する先進的抗体技術や造血幹細胞遺伝子治療といったモダリティに加え、骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患及び希少疾患のフォーカス疾患領域にリソースを集中します。さらに、グローバル横断の研究連携を通じて研究基盤の強化を進めます。また、患者さんのニーズと革新的サイエンスの掛け合わせによるLife-changingな価値の創出に取組み、ziftomenib(米国製品名:KOMZIFTI)、KK8123、KK2845、OTL-203などの重点開発テーマを着実に推進します。なお、当連結会計年度のR&D活動については、「6 研究開発活動」に記載のとおりです。
戦略投資については、フォーカス領域における製品導入やM&Aなどを通じた外部アセットの獲得を視野に入れ、新たなパイプラインや収益機会につながるインオーガニックな成長機会を積極的に追求し、さらなる成長を目指します。
設備投資については、米国バイオ医薬品原薬製造工場(サンフォード工場)の建設を軸に、グローバル生産ネットワークの整備・強化を進め、高品質な医薬品を安定的かつレジリエントに供給できる体制の構築を図ります。また、IT・DX・AI投資によりデータ基盤やガバナンスを高度化し、AI活用によるオペレーションモデルの転換や業務プロセスの効率化を推進することで、オペレーショナルエクセレンスの追求につなげます。なお、当連結会計年度の設備投資については、「第3 設備の状況」に記載のとおりです。
これらの投資案件や開発プロジェクトの事業性評価においては、投資家の皆様が当社に期待する資本コスト(WACC)を反映したハードルレート(地域別)を用いた正味現在価値(NPV)と期待現在価値(EPV)を主たる定量的な基準としています。投資の判断においても、資本コストを上回るリターンの創出を重視しています。

・株主還元についての方針
2025年度までコアEPS*2に対する配当性向40%を目処に、中長期的な利益成長に応じた安定的かつ持続的な配当水準の向上(継続的な増配)を目指してきましたが、より安定的な株主還元を実現するため、2026年度より、DOE4%*3以上かつ累進配当を基本とする配当方針へ変更します。この方針に基づき、2025年度の配当については、2024年度より4円増配の62円(配当性向40.5%)を予定しています。また、2026年度の配当については、8円増配の70円(DOE4.1%)と、10期連続の増配を予定しています。なお、自己株式の取得については、戦略投資の状況や業績・株価動向等を勘案し、ROEを意識しながら機動的に検討します。
ROE向上に向けた経営の規律を一層強化し、資本コストを十分に意識した経営を推進することで企業価値の向上を図るとともに、株主の皆さまへの利益還元を一層充実させ、資本効率の向上に取組みます。
*2 従来のコアベースによるコアEPS
(従来のコアEPS)
コア EPS:コア当期利益(当期利益-その他の収益・費用 (税金影響控除後))÷期中平均株式数
(新コアEPS)
コアEPS:コア当期利益(コア営業利益-コア営業利益に係る税金費用)÷期中平均株式数
*3 DOE:配当額÷期首資本

・資金調達についての方針
引き続きネットキャッシュポジションの維持を原則としますが、手元資金に加えて、戦略的な投資案件に備えた借入余力(原則としてネットD/Eレシオ0.5倍以下の範囲内で維持)と機動的な資金調達手段(CP(コマーシャル・ペーパー)、コミットメントライン)も確保し、十分な財務柔軟性を維持します。