有価証券報告書-第102期(平成27年1月1日-平成27年12月31日)

【提出】
2016/03/28 15:09
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【項目】
123項目

研究開発活動

当社グループは、持続的な成長と技術革新の実現をめざし、研究開発活動に注力しております。この一環として、2017年に完成予定の日華イノベーションセンター(仮称)の準備プロジェクトをスタートいたしました。当連結会計年度において研究インフラの再構築となるこの計画推進のため、本社敷地内にあった1967年建設の旧研究所棟と大型の機器・設備を設置していた試験工場を撤去するとともに、1987年建設の総合研究所棟の大改修を行い、繊維事業の研究室、研究オフィスを移転しました。一時的ではありますが、情報記録紙、製紙用薬剤、高分子合成の研究室もすべて総合研究所棟に統合しました。
化粧品事業の毛髪科学研究所はもとより、日華化学研発(上海)有限公司(2012年に拡大移転)、台湾先端研発センター(2014年に新設)、ニッカKOREA CO.,LTD.の研究開発部門とも連携しながら、既存事業の強化と新展開、新規事業の創生を担って活動を進めております。
当連結会計年度における特許登録件数は、日本国内で14件、海外で9件でした。期間満了の他不要特許の整理を実施したため、当連結会計年度末において当社の保有する特許登録件数は、国内206件と変わらず、海外は9件増加して57件になりました。
当連結会計年度の各セグメント別研究開発活動の状況は、次のとおりです。
研究開発費については、当社グループの研究開発費を各セグメントに配分したもので、当連結会計年度の総額は20億9千6百万円であります。
(1)化学品事業
当連結会計年度における研究開発費は18億8千5百万円となっております。
研究開発活動は、化学品部門の繊維事業部、精密化学品事業部、ファインケミカル事業部、クリーニング&メディカル事業部内の各研究開発部やグループ、新規育成事業部門の特殊化学品本部内の研究開発部及びコーポレート研究を担当するグループ研究センターで実施しております。
急速な市場の変化とグローバル化の進展に合わせた顧客志向の製品開発と、中長期研究テーマの実施では、産学官連携でのオープンイノベーションを積極的に展開しております。
繊維用化学品事業の研究開発については、これまで旧研究所棟の1~3階、および試験工場にスペースが分かれていましたが、すべての研究設備を総合研究所棟1階に、ラボオフィスを同2階に集約しました。コンパクトに一堂に会することで、より密度の高い交流が生まれる場となりました。繊維用撥水剤の分野において、従来から環境上の懸念物質であったPFOAを使わない製品の開発に加え、さらに進めた非フッ素系の撥剤の開発に総力を結集するため、新たに撥剤開発グループを立ち上げました。従来の編織製品の後加工による仕上剤だけではなく、紡糸工程の添加剤や不織布の改質、合成皮革用のウレタン樹脂など幅広く技術展開をしています。ニッカKOREA CO.,LTD.では、フッ素化学品の新製品開発に邁進しています。日華化学研発(上海)有限公司をとの連携を軸に、グループ全体の研究部門が一体となって、繊維化学品において世界でトップになることを目指して活動しております。
ファインケミカル事業部は、主要技術であるビスフェノール誘導体の製法検討のほか、新たな感熱紙用機能加工剤の開発にも力を注いでおります。
クリーニング&メディカル事業部は、業務用機器に対する錆対策の技術を開発しており、医療機器の洗浄評価システムの開発にも成功しております。
新規育成事業部門では、新たに精密重合制御や人口核酸の合成の技術導入を行いました。環境対応ポリウレタンやナノ粒子の製法検討、プリンタブルエレクトロニクス分野の導電性ペーストの開発も進めております。バイオサーファントの利用やプラズマ処理の分野においても、台湾先端研発センターと共同で開発を進めております。
また、複合材料用の添加剤、樹脂開発を推進するプロジェクトを新しくスタートいたしました。国際的な活動であり、ドイツの研究グラスターCFK Valley Stadeのメンバーシップに加盟するとともに、アーヘン工科大学、オークリッジ国立研究所及び東華大学との共同研究を進めております。NEDOの先導研究プログラムと農研機構の異分野融合共同の委託研究にも採択されました。高分子合成・界面コロイド科学のコア技術をさらに強固で独自性のあるものとするため、外部の研究機関、産業技術総合研究所、大阪大学、北陸先端科学技術大学、京都工芸繊維大学、福井大学及び福井県工業技術センター等とのオープンイノベーションを進めております。
当社グループは、新たなグループ研究体制で、引き続き持続可能な社会の達成に貢献できる環境配慮製品の開発に力を注いでまいります。
(2)化粧品事業
当連結会計年度における研究開発費は2億1千万円となっております。
美容業界は、依然として美容室への来店サイクルの長期化、客単価の低下、来客数の減少が続いており厳しい市場環境です。また市場が低迷する中、メーカー、代理店、サロンの二極化が益々進み、デフレ現象、供給過多、価格競争、代理店競争、サロン競争も益々激化してきております。このような市場環境のもと、サロンにおいては、高付加価値メニューの提案と店頭販売商品の強化により一層注力しております。
日本人の平均年齢が47歳となり大人社会は本格的に到来し、高齢化が進行するなかで、ヘアカラー、パーマの繰り返しによる髪のダメージ、頭皮のトラブル、髪が細くなる、薄くなる、白髪が増える等の悩みも増加しております。このような悩みが、ヘアケアやスキャルプケアに対する意識をより高め、サロンにおけるヘッドスパメニューの認知度を高めつつあるなどエイジングケア市場分野はさらに成長しております。また、安全や安心に対する意識もより高まり、本物志向の自然派商品、高付加価値商品の店頭販売商品についても伸び続けております。
そこで、当社の毛髪科学研究所は、お客様のケア意識の高まりに対応すべく、スキャルプケア、ヘアケアの店頭販売商品の開発とヘアカラーの高付加価値商品の開発にさらに注力しております。
スキャルプケアの分野においては、植物の持つ自然の生命で頭皮をケアするという発想のスキャルプ&ヘアケアシリーズ「ビオーブ」シリーズをさらに強化するため、ワンランク上のスキャルプエイジングケア「ビオーブ ピュリム」(全9アイテム)の開発を行いました。機能性植物成分を中心に、年齢を重ねた頭皮と髪に必要な「巡り」「弾み」「潤い」の3つのアプローチにこだわったプレミアムエイジングケアラインで、いつまでも美しさが巡る艶やかな大人の女性へと導きます。さらにエイジングケアを考えた「ビオーブ」の新シリーズの開発を行っております。
ヘアケアの分野においては、毛髪の微細構造解析、ダメージ解析および肌に対する安全性に関する研究の成果により、高い保湿力を持ち、たっぷりのミネラルを含んだテオシロップを配合したヘアケア「ヘアシーズンズ アロマシロップス」シリーズに夏限定商品のサマーバージョン(全3アイテム)の開発を行いました。紫外線やエアコンによる乾燥でダメージした髪にうるおいを与えしなやかな髪に仕上げ、さらに髪だけでなく肌に対しても乾燥や紫外線など夏特有のダメージから護ることを可能にいたしました。また、髪の水分コントロールとキューティクルの角度(ブリリアントアングル)を解析し、美しい大人の艶髪へと導く「フローディア」にエイジングによる大人のうねり髪のケアと髪と肌をさらに艶めかせる新シリーズ(全9アイテム)の開発を行いました。大人女性に対応したヘアケア店頭販売品の強化をさらに行っております。
スタイリング剤の分野においては、これまで問題であった経時による油性成分の変性がもたらす独特の不快臭が出てくるという問題とべたつきが起きてくるという問題を解決するとともに、お客様の要望である香りの持続性を保つ、独自の多孔質シリカによるマイクロカプセル香料の開発によって実現させた新スタイリング剤シリーズ「ウェーボ ジュカーラ」(全11アイテム)の開発を行いました。なりたいスタイルイメージとセット力で選べることができ、思い通りのスタイルづくりを可能にいたしました。
ヘアカラーの分野においては、主力ブランド「アソート アリア C」において、季節ごとにふさわしい髪色を提案するコレクションシリーズ(全32アイテム)の開発を行い、春夏、秋冬に提案いたしました。色彩学の基本に基づき、彩度をコントロールして単品でも美しい発色を実現いたしました。さらに明るいグレーカラーの需要に対応すべく付加価値の高いヘアカラー開発にも引き続き取り組んでおります。
新規分野においては、大人の女性が抱える肌の悩みに応えるためのスキンケアに特化した研究開発を行っており、基礎研究グループにおいては、エイジングケアのための研究開発に取り組んでおります。
また、大学との共同研究による毛髪の微細構造の解析、ダメージ解析ならびに植物抽出成分、天然成分による新たな機能性探究を進めるとともに、新規市場創造のための素材開発、用途開発に力を注いでまいります。