有価証券報告書-第157期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 13:03
【資料】
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【項目】
151項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「塗料事業で培った技術と人財を最大限に活かした製品・サービスを通じて、人と社会の発展を支える」ことを企業理念における使命目的としております。当社グループのコアビジネスである塗料事業を通じて、顧客からの信頼と満足を得ることが当社グループの存立基盤であり、その実現によって利益がもたらされることによる企業価値の向上が、株主をはじめとする取引先、従業員、地域社会等、当社グループのステークホルダーに貢献し得るものと考えております。
これからもグローバル・カンパニーとして社会から必要とされる存在であり続けるために、当社グループは徹底した顧客志向に立脚し、顧客との信頼関係に基づく持続的な利益成長を通じて企業価値を向上させてまいります。
(2)中長期的な経営戦略
2020年11月、当社はグループ全体の成長戦略“Good to Great”を公表いたしました。この成長戦略では、創業の精神に立ち戻り「利益追求と社会発展への貢献」を理念とすることを掲げております。事業とは社会的責任を果たすことであり、さらなる社会課題の発見が新しい事業機会に繋がり、持続可能な社会貢献が創出される、という考え方が、企業としての中長期的成長への道筋であると考えております。成長戦略の数値目標としては2025年度時点の業績を、EBITDAマージン18%超、調整後ROE13%超と設定し、これを持続的に達成し得る企業を目指します。
この成長戦略は第16次中期経営計画の下で実行してきた取組みを基軸として、経営環境の変化を予測しつつ、向かうべき方向性を確かなものにすることで、グローバル企業として飛躍するためのロードマップを精緻化させていくためのものです。そのために必要な要素として、「持続的利益成長」「戦略的集中投資」「パートナーシップの拡大」「徹底的な収益性強化」「事業特性に即した組織改編」「人財育成」「基盤強化」、この7つを「KSF」(Key Success Factor)として掲げました。
これらを元に、2022年度よりスタートする第17次中期経営計画を実行性の高いものとし、持続的に成長するGreatカンパニーへの変革を進めます。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
塗料産業は一大成長産業であり、今後も世界的、中長期的に着実に需要が伸長していくものと見込んでおります
が、一方、昨年来の新型コロナウイルス感染症蔓延による市場への影響や、世界的な通商問題、中国経済の先行き、新興国経済の動向や政策に関する不確実性、金融資本市場の変動、主要市場である自動車産業の変化や半導体需給の影響等のリスク要因があり、これらは当社グループの全事業分野に対し、著しく不透明性を増すものとして引き続き慎重な注視を要する状況です。
これらの状況下、当社グループは、市場回復へ対応する態勢を整えながら、社員とその家族の安全を確保すること及びステークホルダーに対する責務を果たすことを大前提とし、事業継続に努めているところであります。当社は、これらの経営環境を踏まえながら、持続性の高い企業として変革するため、第16次中期経営計画にて策定した「資本生産性・収益性の向上を伴う利益成長」、「事業競争力の向上」及び「グループ総合力の向上」という3つの取組みを、次のように進めてまいります。
・資本生産性及び収益性の向上を伴う利益成長
当社グループは塗料事業で利益を稼ぐ力を強化し、継続的に成長していくためにROEを重要指標として掲げており
ます。ROEの目標を達成するためには、利益率のみならず、バランスシートの改善が不可欠であり、バランスシートの要素と日常業務の連動性を高める必要がある為、コントロールドライバーとしてROICツリーの導入を進めています。ROICツリーとは、予算と実績を比較する形で、事業活動テーマを漏れや重複なく分解し、分解した個別テーマを分析し改善を図ることが目的です。グループ各社や事業毎に業績の進捗をROICツリーに分解し、日常業務の見える化を進めるとともに、ROEを向上させることに活用していきます。ROIC導入の背反となる縮小均衡に陥ることを防ぐために、全社効率性向上を目的とした分科会を立ち上げ、部門をまたがる課題や部門共通の課題を解決し、収益性の向上を並行して進めています。
これらの活動に加え、成長戦略を通じ、当社の強みである自動車事業(後述の「グローバル自動車事業」)及び日
本セグメントの事業全般(後述の「日本事業」)の収益性を最大限に高め、そこで生まれた経営資源を、今後とも高い成長が見込めるインドセグメントの各種事業に積極投入していくことで、これを当社グループの最大の強みに育てていきます。
・事業競争力の向上
当社グループ全ての事業について、定量、定性両面から過去、現在、未来を査定し、低収益資産と判断した事業に
ついては整理を行い、継続的な業績改善を実現します。また経営資源を再編する目的で個々の事業、部門の現状を分析し、有望で強化すべき事業、分野へ資源を再投入するサイクルを回してまいります。同時に、当社グループには優れたノウハウ、ビジネスモデルがあり、それらをグローバルで活用することで事業競争力を強化してまいります。加えて、分散技術を応用したリチウムイオン電池事業等、当社のコア技術を応用した形での新規ビジネスへの参入についても積極的に推進してまいります。
・グループ総合力の向上
当社は2021年度より社内カンパニー制を導入し、「グローバル自動車事業部門」「日本事業部門」「国際事業部
門」という3つの事業部門と「経営推進部門」「生産・SCM・調達部門」「研究開発部門」という3つのコーポレート部門による6部門制へ組織を再編することといたしました。この組織再編により各部門が明確な責任と権限を持ち、それぞれの事業特性に対し最適な形で迅速かつ的確な経営判断を行う体制へ移行いたします。また、これらの組織機能を支え、経営リスクをコントロールするため、引き続き当社グループ統制の基盤強化を実施してまいります。業績管理の新システムを2020年度から導入し、これまで個別管理となっていた海外グループ各社の経営数値の一元化と共有のスピードアップを図ってまいりました。デジタル化は不可欠な要素であり、全ての事業領域に対し推進してまいります。第16次中期経営計画下において実施しております監督と執行の分離を主とする経営機能の強化、責任権限の明確化、また、当社グループ監査体制強化、経営リスク管理の実効性向上を継続していきます。中長期的に多様な企業価値を創出できる人財を育成するための、制度・運用検討も継続的に進めております。