訂正有価証券報告書-第138期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/07/08 14:16
【資料】
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【項目】
66項目
(3) 【その他】
① 米国AWP訴訟の件
米国における一部の医薬品の販売に関し、AWP(Average Wholesale Price:平均卸売価格)として公表されている価格と実際の販売価格とが乖離していること等により損害を受けたとして、患者本人、保険会社および州政府等から損害賠償を請求する民事訴訟(いわゆる「AWP訴訟」)が、大手を含む多数の製薬会社に対し提起されております。「TAPファーマシューティカル・プロダクツ Inc.(注)」(以下、「TAP社」)は、「ランソプラゾール(米国製品名:プレバシド)」につき、三つの州裁判所において、AWP訴訟を提起されております。うち、1件については当社も被告とされております。
当社グループは、本訴訟につきまして遺漏なく対応してまいります。
(注)「TAP社」は2008年6月に武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカ Inc.(以下、「TPNA社」)と合併し、「TPNA社」は2012年1月に武田ファーマシューティカルズUSA Inc.(「TPUSA社」)に社名変更しています。「TAP社」は「TPNA社」との合併前にプレバシドを販売していました。
② ピオグリタゾン製剤に起因する膀胱がんを主張する製造物責任訴訟の件
当社および武田ファーマシューティカルズUSA Inc.(以下「TPUSA社」)等複数の在米子会社ならび
に米国Eli Lilly and Company(本社:米国インディアナ州インディアナポリス、以下「イーライリリー社」)
は、2型糖尿病治療剤である「ピオグリタゾン(米国製品名:「アクトス」)を含有する製剤」(以下「アクトス」)の服用による膀胱がんの増悪等を主張する方々から、複数の米国連邦および州裁判所において訴訟を提起されております。また、カナダで同様の健康被害を主張するクラスアクションが提起されており、フランスとドイツで膀胱がんにつき補償の請求を各1件受けておりましたが、フランスの1件については解決しました。
米国の連邦裁判所または州裁判所において、本報告書発行までに陪審審理に付された9件の事件のうち、5件については、これまでに当社側の主張を認める判決がありました。これら事件の原告は、判決に対して、審理後申し立てまたは上訴を以って争っています。
昨年には、併合審理されている連邦広域係属訴訟(multi district litigation)(注)のうち、Allen氏を原告とする事件が最初に陪審審理に付されました。本事件については、昨年4月7日(米国時間)、原告の主張を認める陪審評決がありました。同評決においては、補償的損害賠償として総額1,475千米ドル(当社側の負担割合75%、イーライリリー社側の負担割合25%)を認定するとともに、懲罰的損害賠償として当社側に対して60億米ドル、イーライリリー社側に30億米ドルの損害額をそれぞれ認定しました。
昨年6月、当社らおよびイーライリリー社は、同評決について、審理後申し立てを行いましたが、同年8月、裁判所は、当社らおよびイーライリリー社に勝訴の判決を求める審理後申し立てを棄却し、同年9月、4月7日に下された原告の主張を認める陪審評決に則った判決を下しました。なお、同判決において補償的損害賠償は、本事件に適用されるニューヨーク州法に基づき、1,475千米ドルから1,270千米ドルに減額されました。そして、同年10月27日、当社らおよびイーライリリー社が申し立てていた懲罰的損害賠償の減額を認める決定およびかかる減額を反映する判決が下されました。この判決による減額の結果、懲罰的損害賠償は、当社側負担分が27.65百万米ドルに、イーライリリー社側負担分が9.22百万米ドルになっております。当社らおよびイーライリリー社は、この判決につき、第五巡回区連邦控訴裁判所に控訴しました。
米国ペンシルベニア州フィラデルフィア所在の同州裁判所においては、昨年10月、当社およびTPUSA社らは原告に対し2,050千米ドルの補償的損害につき責任があるとの陪審評決が下され、その後、陪審評決を支持する判決がありました。当社らは、この判決につき控訴しました。また、同裁判所で審理された別の事件では、本年2月、2,318千米ドルの補償的損害賠償と1,334千米ドルの懲罰的損害賠償を認定する陪審評決があり、当社らは審理後申し立てを行っています。さらに、米国ウェストバージニア州バークレー郡巡回裁判所において陪審は、昨年11月、当社らが膀胱がん発症リスクの指示警告を欠き、アクトスが原告の膀胱がんを引き起こしたとする旨の原告の請求を退ける一方、当社らが適切な証拠の保全を怠ったとする旨の原告の請求を認め、155千米ドルの補償的損害賠償を認定しました。その後、同裁判所は陪審評決を支持する判決を下し、当社らは、この判決につき控訴しました。
本年4月、当社とTPUSA社は、米国で提起されている製造物責任訴訟に関し、大多数を解決する和解に向けた合意に至りましたので、同月29日(米国時間28日)、公表いたしました。この和解の対象は、米国において健康被害として膀胱がんを内容とする訴えを上記和解合意の日現在に提訴している方々ならびに同日現在あるいは同日から3日以内に同旨の請求につき訴訟代理人を委嘱した方々であります。この和解はこれらの提訴者等の95%がその受け入れを選択した場合に有効となり、その割合に達した際に、当社は23.7億米ドルを別途設立される和解基金に支払うことに合意しています。また同様に97%以上がその受け入れを選択した場合、和解基金への支払い金額は24億米ドルになります。
この和解により、和解合意所定の判定条件を満たす提訴者等は上記の基金から支払いを受けることになります。なお、今回の和解に照らし、第五巡回区連邦控訴裁判所は、Allen氏を原告とする事件についての当社らの控訴を棄却し、再び控訴する場合には180日以内に申し立てを行うよう指示しました。
当社は、本訴訟における原告側の主張には根拠がないものと考えており、当社の法的責任を認めるものではありません。当社はアクトスに関し、責任ある対応をしてきたと確信しております。和解後に提訴あるいは継続する事件については、可能なあらゆる法的手段を以って争ってまいります。
当社は、上記和解に向けた合意の成立をうけて、和解金、本和解に参加しない訴訟の費用、他の関連訴訟の費用として、2014年度第4四半期に27億米ドル(3,241億円)を引当計上しました。
また、当社は、14年間以上にわたるアクトスの臨床成績および使用実績から得られた豊富なデータに基づき、アクトスが良好なリスク/ベネフィットプロファイルを有する2型糖尿病治療剤であると確信しています。今回、当社は和解を選択することを決定しましたが、アクトスに対する当社の考えに変わりはありません。アクトスは現在、米国、日本、欧州数カ国、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ロシアなど95ヶ国で承認されており、当社は、米国をはじめとするその他の国々で糖尿病治療の選択肢として引き続きアクトスを提供いたします。
(注)連邦広域係属訴訟(multi district litigation)とは、複数の連邦地方裁判所に提訴された同種の事件について、審理前手続きおよび証拠開示手続きを単一の連邦地方裁判所に集約して行う訴訟です。