有価証券報告書-第72期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度における経済情勢は、米中貿易摩擦の影響による中国の景気減速や、中東情勢の緊迫化に伴う地政学リスクの高まりなどから、世界経済の減速傾向が顕著となり、国内においても輸出や生産活動が低迷し、個人消費が伸び悩むなど先行き不透明かつ厳しい状況にありました。また、年明け以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な経済活動の停滞が深刻化しており、先行き予断を許さない状況にあります。
このような状況のもと、当社グループは、アジア地域での事業規模拡大と収益性向上、革新的な材料・技術開発による事業領域の拡大を果たすために、中国市場での大型液晶ディスプレイ関連分野の需要拡大に応じた生産能力増強や市場・顧客ニーズを先取りした製品開発・提案力の強化による既存事業の収益基盤の強化、高付加価値製品領域へのリソースシフトやグループ全体での販売・開発・生産体制の最適化等による事業構造改革の推進、技術革新が進む自動車・ヘルスケア分野等での他社協業など自前主義からの脱却による新たな事業領域の創出に取り組んでまいりました。
当連結会計年度の業績につきましては、中国の景気減速や液晶ディスプレイ関連の需要低迷の影響を受けてケミカルズの販売が減少したことや、装置システムの工事完成高が減少したことにより、売上高は286億99百万円(前連結会計年度比8.3%減)となりました。利益面では、原料価格の低減に努めたものの、販売数量の減少による減益影響や、人民元安に伴う為替差損の計上などにより、経常利益は18億55百万円(前連結会計年度比8.9%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、中国持分法適用関連会社である盤錦遼河綜研化学有限公司の出資持分を譲渡したことに伴う法人税等の減少や黒字基調に転じた中国子会社での繰越欠損金に係る繰延税金資産の計上などにより、16億35百万円(前連結会計年度比11.8%増)となりました。
セグメントの状況は、以下のとおりです。
<ケミカルズ>ケミカルズについては、売上高258億80百万円(前連結会計年度比5.8%減)となりました。製品別の状況は、以下のとおりです。
粘着剤関連製品は、中国市場での大型液晶ディスプレイ関連用途向けの販売は堅調に推移したものの、スマートフォン関連用途向けの需要低迷などの影響を受けて販売数量が減少したことなどにより、売上高は160億3百万円(前連結会計年度比3.7%減)となりました。
微粉体製品は、中国市場での光拡散フィルム用途向けは堅調に推移したものの、電子部品関連用途向けの販売数量が減少したことなどにより、売上高は26億39百万円(前連結会計年度比11.5%減)となりました。
特殊機能材製品は、中国市場における電子材料用途向けの販売数量が減少し、売上高は26億76万円(前連結会計年度比13.4%減)となりました。
加工製品は、中国市場における機能性粘着テープの販売が電子情報機器用途の一部で回復したものの、総じて販売数量が減少したことにくわえ、人民元安の影響を受けて売上高は45億60百万円(前連結会計年度比4.6%減)となりました。
<装置システム>装置システムについては、国内設備投資に慎重姿勢が強まるなか、設備関連の工事完成高が前年同期を下回り、 売上高は28億19百万円(前連結会計年度比26.2%減)となりました。
製品の種類別売上高は、下表のとおりであります。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) (百万円) |
ケミカルズ | ||
粘着剤 | 16,620 | 16,003 |
微粉体 | 2,982 | 2,639 |
特殊機能材 | 3,089 | 2,676 |
加工製品 | 4,782 | 4,560 |
小計 | 27,474 | 25,880 |
装置システム | ||
装置システム | 3,821 | 2,819 |
小計 | 3,821 | 2,819 |
合計 | 31,295 | 28,699 |
② 財政状態
当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べて12億77百万円減少し、353億31百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金が増加したものの、受取手形及び売掛金、有価証券、たな卸資産が減少したことなどにより、前期末に比べ21億74百万円減少し、193億68百万円となりました。
固定資産は、投資その他の資産が減少したものの、有形固定資産が増加したことなどにより、前期末に比べ8億97百万円増加し、159億62百万円となりました。
一方、負債については支払手形及び買掛金、借入金が減少したことなどにより、前期末に比べ19億72百万円減少し、120億86百万円となりました。
当期末における純資産は、自己株式の取得、為替換算調整勘定の変動などにより減少したものの、利益剰余金が増加したことなどにより、前期末に比べ6億94百万円増加し、232億44百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前期末61.6%から4.2ポイント増加し65.8%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2億34百万円増加し、67億45百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、38億19百万円(前年同期は18億94百万円の増加)となりました。
これは、主に税金等調整前当期純利益18億64百万円、減価償却費13億87百万円、売上債権の減少13億41百万円、たな卸資産の減少9億20百万円などによる増加と、仕入債務の減少13億96百万円などに伴う減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は、25億98百万円(前年同期は9億74百万円の減少)となりました。
これは、主に有形固定資産の取得25億22百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は、9億79百万円(前年同期は9億32百万円の減少)となりました。
これは、主に長期借入金の返済2億40百万円、配当金の支払額4億55百万円などに伴う減少によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
金額(千円) | 前年同期比(%) | |
ケミカルズ | 24,414,791 | 89.9 |
装置システム | 2,783,395 | 70.6 |
合計 | 27,198,186 | 87.4 |
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |||
受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) | |
ケミカルズ | 25,926,975 | 94.1 | 614,854 | 108.3 |
装置システム | 4,228,476 | 109.2 | 3,222,364 | 177.7 |
合計 | 30,155,452 | 96.0 | 3,837,219 | 161.1 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
販売高(千円) | 前年同期比(%) | |
ケミカルズ | 25,880,077 | 94.2 |
装置システム | 2,819,623 | 73.8 |
合計 | 28,699,700 | 91.7 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(以下「当期」という。)の売上高は、前連結会計年度(以下「前期」という。)に比べて8.3%減の286億99百万円となりました。セグメント別の概況につきましては「第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。
売上原価は、前期に比べ11.8%減の196億4百万円となりました。売上総利益は、原料価格の下落や原価低減努力により、前期と同レベルの90億95百万円となり、売上高総利益率は2.7ポイント増の31.7%となりました。
販売費及び一般管理費は、環境安全対策費用の増加などにより、前期に比べ1.3%増の70億60百万円となり、売上高比率は前期に比べ2.3ポイント増の24.6%となりました。
これらにより、営業利益は前期に比べ3.8%減の20億34百万円となり、売上高営業利益率は0.3ポイント増の7.1%となりました。
営業外損益が人民元安に伴う為替差損などにより、前期から1億2百万円減少し、経常利益は、前期に比べ8.9%減の18億55百万円となり、売上高経常利益率は同水準の6.5%となりました。
特別損益では、政策保有株式の売却損益66百万円や浜岡事業所における設備投資に伴う旧設備の固定資産除却損47百万円を計上し、税金等調整前当期純利益は、前期に比べ3.0%減の18億64百万円となりました。
法人税等は、業績が低迷していた中国の持分法適用関連会社の出資持分譲渡や黒字基調に転じた中国子会社の繰越欠損金に係る繰延税金資産の計上により前期から2億30百万円減少しました。この結果、親会社に帰属する当期純利益は、前期に比べ11.8%増の16億35百万円となりました。
当社グループは当期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画「New Value 2019」において、「アジア地域での事業規模拡大と収益性向上」と「新たな製品・サービスの創出による事業領域拡大」を基本方針とし、中国での大型ディスプレイ関連分野のシェア拡大と今後の需要拡大が期待される分野での新規案件の獲得を目指し、当期の数値目標として売上高325億円、営業利益27億円、経営指標として総資産経常利益率(ROA)8%以上、自己資本当期純利益率(ROE)9%以上を掲げておりました。2017年度、2018年度と、過去最高の売上高を更新しましたが、当期は想定していた経営環境が大きく変化し、中国の景気減速や液晶ディスプレイ関連の生産調整の影響を受けてケミカルズの販売が減少し、国内の設備投資に慎重姿勢が強まるなかで装置システムの工事完成高が減少したことにより、売上高は286億99百万円、営業利益20億34百万円、総資産経常利益率(ROA)5.2%、自己資本当期純利益率(ROE)7.1%となりました。引き続き企業価値の向上に取り組んでまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主な資金需要は、事業活動に要する運転資金、生産及び研究開発に要する設備投資や配当金支払等であります。これらの資金の源泉は、手元資金と営業キャッシュ・フローであり、必要に応じて金融機関からの短期・長期借入金等により必要資金を調達しております。なお、「第2 [事業の状況] 1 [経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の中国事業拠点における生産能力増強や研究開発機能の拡充、新規事業開発などの成長投資資金については、手元資金に加えて金融機関からの借入により調達する予定であります。
また、海外子会社を含めたグループ内資金を有効活用するために、グループ資金管理体制の整備・強化、資金効率の向上に努めております。
なお、不測の事態に備えて取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しており、安定的な資金調達手段を確保することにより資金の流動性を補完しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果については、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響については、「第5 [経理の状況] 1 [連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。しかし、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合は繰延税金資産を取り崩して法人税調整額を計上する可能性があります。
b. 固定資産の減損
固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングを行い、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき、固定資産の回収可能価額を算出しております。なお、当初見込んでいた収益や将来キャッシュ・フロー等の前提条件に見積りの不確実性があり、その変動により固定資産の減損損失が計上される可能性があります。