有価証券報告書-第73期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度における経済情勢は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的な景気後退局面から持ち直しの動きが見られ、特に中国での景気回復が顕著であったものの、足元では、感染症の再拡大や米中対立の激化、原油価格の上昇が懸念されるなど先行き不透明な状況にありました。
このような状況のもと、当社グループは新型コロナウイルス感染防止策を徹底するとともに、市場・顧客ニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応し、既存事業の収益基盤の強化と新たな事業領域の創出を果たすため、中国事業拠点での研究開発機能の拡充や生産能力の増強、自動車・エネルギー・ヘルスケア等の成長分野での事業間シナジーを追求した組織横断的戦略の推進、将来の社会環境の変化や技術革新を見据えた継続的な新規事業開発体制の構築に取り組んでまいりました。
当連結会計年度の業績につきましては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う自動車・家電・建材分野などでの需要減少の影響を受けましたが、前年度調整局面にあった液晶ディスプレイ関連分野の需要が回復するなか、中国市場での大型TV用途の販売が伸びたことなどにより、売上高は314億93百万円(前連結会計年度比9.7%増)となりました。
利益面では、ケミカルズの増収効果に加えて、新型コロナウイルス感染防止策による活動経費の減少や原油価格下落に伴う原材料費の減少など一過性の増益要因などにより、経常利益は35億76百万円(前連結会計年度比92.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は27億24百万円(前連結会計年度比66.6%増)となりました。
セグメントの状況は、以下のとおりです。
<ケミカルズ>ケミカルズについては、売上高282億95百万円(前連結会計年度比9.3%増)となりました。製品別の状況は、以下のとおりです。
粘着剤関連製品は、自動車・建材分野など一般用途向けの販売数量が減少したものの、中国市場を中心に需要が拡大した液晶ディスプレイ関連用途向けの販売が伸びたことなどにより、売上高は174億77百万円(前連結会計年度比9.2%増)となりました。
微粉体製品は、中国市場での光拡散用途向けの販売数量が前期並みに留まったものの、電子部品関連用途向けの販売数量が増加したことなどにより、売上高は28億25百万円(前連結会計年度比7.0%増)となりました。
特殊機能材製品は、中国市場を中心に電子材料用途向けの販売数量が増加したことなどにより、売上高は30億36百万円(前連結会計年度比13.5%増)となりました。
加工製品は、東南アジア市場での需要低迷の影響を受けたものの、中国市場での機能性粘着テープの販売が電子情報機器用途向けで増加したことなどにより、売上高は49億55万円(前連結会計年度比8.7%増)となりました。
<装置システム>装置システムについては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う工事案件の工期延長や発注延期などの影響を受けたものの設備関連の完成工事高が増加したことなどにより、売上高は31億98百万円(前連結会計年度比13.4%増)となりました。
製品の種類別売上高は、下表のとおりであります。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) (百万円) |
ケミカルズ | ||
粘着剤 | 16,003 | 17,477 |
微粉体 | 2,639 | 2,825 |
特殊機能材 | 2,676 | 3,036 |
加工製品 | 4,560 | 4,955 |
小計 | 25,880 | 28,295 |
装置システム | ||
装置システム | 2,819 | 3,198 |
小計 | 2,819 | 3,198 |
合計 | 28,699 | 31,493 |
② 財政状態
当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べて50億72百万円増加し、404億3百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金、受取手形及び売掛金、有価証券が増加したことなどにより、前期末に比べ52億32百万円増加し、246億円となりました。
固定資産は、有形固定資産が増加したものの、投資有価証券、繰延税金資産が減少したことなどにより、前期末に比べ1億59百万円減少し、158億2百万円となりました。
一方、負債については支払手形及び買掛金、電子記録債務、未払法人税等、未成工事前受金等その他流動負債が増加したことなどにより、前期末に比べ27億26百万円増加し、148億12百万円となりました。
当期末における純資産は、利益剰余金が増加したことなどにより、前期末に比べ23億46百万円増加し、255億91百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前期末65.8%から2.5ポイント減少し63.3%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ28億55百万円増加し、96億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、53億26百万円(前年同期は38億19百万円の増加)となりました。
これは、主に税金等調整前当期純利益37億15百万円、減価償却費18億47百万円、未成工事前受金等その他の増加13億91百万円などによる増加と、売上債権の増加21億98百万円などに伴う減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は、17億68百万円(前年同期は25億98百万円の減少)となりました。
これは、主に有形固定資産の取得20億90百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は、6億93百万円(前年同期は9億79百万円の減少)となりました。
これは、主に長期借入金の借入れ10億円による増加と、長期借入金の返済12億40百万円、配当金の支払額4億53百万円などに伴う減少によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
金額(千円) | 前年同期比(%) | |
ケミカルズ | 28,293,050 | 115.9 |
装置システム | 3,266,009 | 117.3 |
合計 | 31,559,059 | 116.0 |
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |||
受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) | |
ケミカルズ | 28,473,430 | 109.8 | 793,106 | 129.0 |
装置システム | 2,752,522 | 65.1 | 2,776,090 | 86.2 |
合計 | 31,225,952 | 103.5 | 3,569,196 | 93.0 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
販売高(千円) | 前年同期比(%) | |
ケミカルズ | 28,295,179 | 109.3 |
装置システム | 3,198,797 | 113.4 |
合計 | 31,493,976 | 109.7 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(以下「当期」という。)の売上高は、前連結会計年度(以下「前期」という。)に比べて9.7%増の314億93百万円となりました。セグメント別の概況につきましては「第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。
売上原価は、前期に比べ6.6%増の209億5百万円となりました。売上総利益は、減価償却費が増加したものの原料価格の下落や販売数量の増加に伴う増産効果などにより、前期に比べ16.4%増の105億87百万円となり、売上高総利益率は1.9ポイント増の33.6%となりました。
販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルス感染防止のため出張費等の活動経費が減少したものの販売増に伴う物流費用の増加などにより、前期に比べ1.8%増の71億90百万円となり、売上高販管費比率は前期に比べ1.8ポイント減の22.8%となりました。
これらにより、営業利益は前期に比べ67.0%増の33億97百万円となり、売上高営業利益率は3.7ポイント増の10.8%となりました。
営業外損益は、人民元高に伴って為替差損益が前期の1億96百万円の差損から2億7百万円の差益に4億4百万円改善されたこと、前期に売却をした持分法適用関連会社の譲渡代金が1年以上にわたり未入金である現状を踏まえて貸倒引当金繰入額1億円を計上したことなどにより、前期から3億56百万円増加し、経常利益は前期に比べ92.7%増の35億76百万円となり、売上高経常利益率は前期に比べ4.9%増加の11.4%となりました。
特別損益では、政策保有株式の売却損益2億27百万円や狭山事業所における旧設備の固定資産除却損73百万円を計上し、税金等調整前当期純利益は、前期に比べ99.3%増の37億15百万円となりました。
法人税等を9億90百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ66.6%増の27億24百万円となりました。売上高当期純利益率は前期に比べ3.0%増加の8.7%となりました。
当社グループは、2022年度を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画「New Value 2022」において、「既存事業の収益基盤の強化」と「次世代の柱となる新たな事業領域の創出」を基本方針として掲げております。
同中計初年度の当期は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて先行きの見通せないスタートとなりましたが、中国における感染の収束と市場の回復が早期に進み、リモートワークの浸透からパソコンやタブレットの販売が世界的に伸びたことにより液晶ディスプレイ関連製品の需要が高まった影響を受けて過去最高の売上高を計上することができました。利益面においても原油需要の停滞から原料価格が下落したことや活動経費の抑制などにより中計最終年度の目標値に近い営業利益を計上することができ、経営指標面においても目標数値を達成することができました。しかしながら、当期の業績に関しては売上高・利益とも一過性のプラス要因の影響が大きく、継続的に数値目標を達成していくためには今後も経営基盤の更なる強化が必要なものと認識しており、引き続き企業価値の向上に取り組んでまいります。
中期経営計画 2023年3月期 数値目標 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
連結売上高 | 370億円 | 314億円 |
連結営業利益 | 35億円 | 33億円 |
(売上高営業利益率) | (9.5%) | (10.8%) |
総資産経常利益率(ROA) | 8%以上 | 9.4% |
自己資本当期純利益率(ROE) | 9%以上 | 11.2% |
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主な資金需要は、事業活動に要する運転資金、生産及び研究開発に要する設備投資や配当金支払等であります。これらの資金の源泉は、手元資金と営業キャッシュ・フローであり、必要に応じて金融機関からの短期・長期借入金等により必要資金を調達しております。なお、「第2 [事業の状況] 1 [経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の中国事業拠点における生産能力増強や研究開発機能の拡充、新規事業開発などの成長投資資金については、手元資金に加えて金融機関からの借入により調達する予定であります。
また、海外子会社を含めたグループ内資金を有効活用するために、グループ資金管理体制の整備・強化、資金効率の向上に努めております。
なお、不測の事態に備えて取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しており、安定的な資金調達手段を確保することにより資金の流動性を補完しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果については、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響については、「第5 [経理の状況] 1 [連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 固定資産の減損
固定資産の減損会計の適用に際して用いた会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
b. 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。しかし、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合は繰延税金資産を取り崩して法人税調整額を計上する可能性があります。