有価証券報告書-第63期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/25 9:24
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対処すべき課題

めざましい技術革新に伴い競争も激化し、当社グループを取り巻く事業環境は厳しさを増しているなか、お客様の技術的なニーズに対応するため、高い品質の新製品を開発し、速やかにお客様に提供することが重要な課題であると認識しており、事業本部として営業と開発が一体となってマーケティング力と開発力の強化に注力しております。
また、安定的に収益を確保するためには現場の徹底した製造原価低減や販管費削減等が必要であり、採算性向上と競争力強化も当社グループの課題であると認識しております。具体的には、抜本的な業務プロセスの見直しと社内ITインフラの整備を進めており、また他方では収益改善委員会のもと、現場に密着したコスト改善活動の推進等、収益改善の取り組みを強化しております。
更には半導体業界の景気動向に影響されにくい強固な収益基盤を確立するため、平成27年4月に先端技術研究所を設置し、中長期的視点での研究開発と新規事業の探索・育成により事業領域の拡大に努めてまいります。
会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針については以下のとおりであります。
1.基本方針の内容の概要
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の財務及び事業の内容や当社の企業価値の源泉を十分に理解し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者である必要があると考えております。
当社の株式は金融商品取引所に上場されていることから、資本市場において自由に取引されるべきものであると考えております。したがって、当社の株券等の大規模買付行為(下記3.②に定義します。以下同じとします。)については、原則としてこれを否定するものではなく、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、最終的には株主の皆様の自由な意思に基づいて決定されるべきものと考えております。また、当社は、当社の株券等の大規模買付行為であっても、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。
しかしながら、株券等の大規模買付行為の中には、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、十分な時間や情報が提供されないまま、株主に株式の売却を事実上強要する恐れのあるものや、対象会社の取締役会や株主が当該大規模買付行為の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案の提案等を行うための十分な時間や情報を与えないもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
また、平成27年3月31日現在における当社の大株主の状況は、第4「提出会社の状況」1.「株式等の状況」のとおりであり、当社役員及びその親族、関係者(以下「当社役員等」といいます。)が発行済株式の一部を保有しております。当社は上場会社であり、当社役員等が各々の事情により株式の譲渡その他の処分をすることや役員の異動等によって持株比率が低下する可能性も否定できないことに加え、これまで注力してきた当社事業の基盤を成す人材の育成や設備投資、中長期的な事業領域の拡大に結びつく新規成長事業への投資等、自己資本の充実、又は他社との業務資本提携等のために、必要となる資金を資本市場から調達することもひとつの選択肢として考えられ、これを実施する場合には、現在の役員等の持株比率が低下する可能性もあり得るものと考えております。
当社の企業価値の源泉を十分理解し、これらを中長期的に確保し、長年築きあげてきた技術、ノウハウなどの無形の経営資源と市場とを有機的に結合させ企業価値の増大を図る経営をすることができなければ、ステークホルダーの信頼を得ることができず、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に反することとなると考えます。
当社は、上記のような当社の企業価値の源泉を理解せず、これらを中長期的に確保し、企業価値の増大を図る経営を企図しない大規模買付行為やこれに類似する行為により、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に反する恐れがある当社の株券等の大規模買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、このような者による大規模買付行為に対しては、必要かつ相当な対抗措置を採ることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えます。
2.基本方針の実現に資する取組みの概要
① 当社の企業価値の源泉について
当社の創業以来蓄積されたノウハウと研究開発力から生まれた当社製品の数々は、シリコンウェハーに代表される半導体基板の鏡面研磨、半導体チップの多層配線に必要なCMP(化学的機械的平坦化)、ハードディスクの研磨など高精度な表面加工が求められる先端産業に欠かせぬものとなっております。なかでも、主力事業分野である半導体基板向け超精密研磨材では世界ナンバーワンのマーケットシェアを維持しており、超精密研磨のリーディングカンパニーとして、大手企業の新規参入に対して市場優位性を維持しております。
最近では、LED、ディスプレイ、パワーエレクトロニクス用部品等の硬脆材の表面加工分野やその他様々な表面加工のニーズに独自のソリューションで応える取組みを積極的に進めております。また、溶射技術や装置に最適な溶射材の開発・商品化で新分野を開拓しております。
このように当社は、「パウダー&サーフェイス分野」を事業領域として、コア技術を高め先端技術をリードすることにより、お客様の満足度を高め信頼を勝ち得てまいりました。また、当社が特定の企業グループに属することなく独立性の高い経営を堅持していることも、多くのお客様から受け入れていただいている一因と考えております。
当社のコーポレートスローガン「技術を磨き、心をつなぐ」には、先端技術を通してより良い製品づくりに貢献し、人々の心をつなぎ、生活を豊かにするという意味が込められており、人を尊重し地球環境に配慮した製品づくりが当社の「ものづくり」の根底に流れております。
当社はこうした「ものづくりの精神」と従業員一人ひとりが変化に果敢に挑戦するという企業風土とITを駆使した情報の共有化をテコに、企業競争力の向上と持続的成長によって企業価値を増大してまいりました。
当社の企業価値の源泉は、こうした製造現場と一体となった高い技術力・開発力、長い歴史のなかで培われたお客様との信頼関係、労使間の健全かつ一体感のある企業風土にあると考えております。
今後の技術革新をリードし業績の拡大を目指していくためにも、お客様の信頼度のさらなる向上、従業員の士気向上を図っていくことが重要と考えており、当社はこうした方針のもと、引き続き企業価値の向上にグループを挙げ取り組んでまいります。
② 企業価値向上のための取組み(中期経営計画)
当社は、バランス・スコアカード(BSC)の考え方を基に、平成21年6月に平成30年3月(2018年)期を最終年度とする9年間の中長期経営計画を策定いたしました。
この中長期経営計画は3年を区切りとする3次の中期計画を基にしています。
第一段階は自己診断と成長のための基礎体力づくり、成長のための種まきにあて、第二段階はまいた種をきちんと育てる時期、そして第三段階は事業が花開き、実を収穫する時期、と位置づけ、単に計画期間における売上や利益率の向上を目指すだけでなく、当社のあるべき姿、進むべき道をより明確にするため、企業理念・ビジョンの見直しを図り、実践してまいりました。
第二段階では、お客様のニーズを把握し、それを具現化し、より高い満足を提供する為、「お客様目線の実践」を経営方針に掲げ、展開してまいりました。その結果、お客様満足度と製品品質面において評価をいただいております。
当社はこれまで半導体市場を主たる事業領域としてまいりましたが、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しております。当社が主に事業展開している半導体市場は、2008年のリーマンショックを発端とする世界同時不況により、携帯電話やデジタル家電など様々な商品の販売が失速し影響を受けました。その後、パソコンの出荷台数は減少したものの、スマートフォンや車載関連需要の拡大等により半導体市場規模は回復し、再び成長の兆しを見せております。その結果、当社が主力事業として研磨材を提供している半導体基板であるシリコンウェハーについても需給の引き締まりから、単価も下げ止まり傾向にあります。しかしながら、当社が提供する研磨材については引き続き使用量の削減、値下げへの要求がございます。
こうした事業環境下で安定的かつ持続的な成長を遂げるためには、当社は特定の市場や用途に偏ることがない事業構造が必要であると考えております。
そこで、当社は、企業ビジョンとして、「既存事業の強化を図りつつ新規分野に積極果敢にチャレンジし、半導体関連分野(シリコン・CMP)と非半導体関連分野の安定した事業バランスの構築を目指します」を掲げ、従来から推進しているシリコン・CMP・ディスク・機能材・溶射材に平成26年4月より「新規事業本部」を加えた6事業部体制とし、非半導体分野の新規事業の探索と育成のための推進体制を強化いたしました。
これらを通じて安定した事業構造を維持するため、将来的には事業構造比率として半導体関連比率50%、非半導体関連比率50%を目指しております。
また、全社レベルの目標を事業ごとに戦略目標、施策として具現化し、その成果については評価指標(KPI)によって定期的に進捗管理するなど、明確な責任体制のもと事業戦略を組織横断的に展開しております。
[シリコン事業]
半導体基板となるシリコンウェハーを高精度に平坦化・鏡面研磨する研磨材事業です。お客様と価値観を共有し、当社だからこそ提供できる切断からファイナル研磨までのウェハー加工プロセス全体にわたる総合サービスの提供を通し、お客様の「最も信頼できるパートナー」を目指してまいります。また、従来のシリコンウェハーに加え、パワーデバイス基板向け製品開発の推進と、半導体周辺用途へのトータルソリューション提案を強化してまいります。
[CMP事業]
半導体デバイスの製造工程で用いられる研磨材事業です。半導体デバイスの高密度化・高集積化に伴い、CMPが適用される工程は増加傾向にあります。お客様が拠点を置く日本・アメリカ・台湾に開発・製造拠点を設けており、お客様とより密接な関係を構築し、お客様のロードマップに沿った新製品を迅速に開発することのみならず、安定で高品質な製品・サービスを提供できるよう努めてまいります。
[ディスク事業]
パソコンやHDD搭載型TV、DVD・BDレコーダーなどの記憶媒体であるハードディスク用の研磨材事業です。お客様の生産拠点が集中するマレーシアに製造拠点を置くとともに技術スタッフを配置し、お客様への技術サポートを強化することで信頼関係を構築し、次世代ディスク基板への要求を共有することにより、お客様の要求に合った新製品をタイムリーに提供してまいります。
[機能材事業]
電子部品、自動車、レンズ等の業界における精密砥石、研磨布紙及び一般ラッピング・ポリシング関係を中心とした研磨材、機能性材の事業です。各種用途における開発力を強化し、お客様の潜在的なニーズまでも引き出し、的確な提案をすることにより、お客様の信頼を高めていくよう努めてまいります。また、研磨材の新たな用途もお客様との関係を強化していく中で探索してまいります。
[溶射材事業]
鉄鋼、航空機及び半導体等様々な業界における長寿命化、高機能化を実現するために、環境に優しい表面処理として使用される溶射用途向けに、主にサーメット、セラミックスなどの粉末溶射材を提供している事業です。開発力を強化し、新規高機能製品の早期市場投入やお客様へのタイムリーなソリューションの提案により、売上の拡大とともに、収率改善や生産技術力の向上により収益改善とさらなる品質の安定化を図ってまいります。
[新規事業]
シリコン、CMP、ディスクなど既存事業以外の新規用途で用いられる研磨材等を提供している事業です。基幹事業である半導体の後に続く、LED、ディスプレイ、携帯端末等の様々な事業機会に対応しております。世界の様々な業界のお客様から寄せられる、新たな表面加工ニーズに、トータルソリューションでお応えしてまいります。
3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要
① 当社株券等の大規模買付行為に関する対応策の目的
上記1.記載の基本方針に基づいて、当社取締役会は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するような一方的かつ大規模な買付行為及びその類似行為を行う者に対しては、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保するために、もっとも適切と思われる措置を迅速かつ的確に講じる必要性があると認識しております。このような認識のもと、当社取締役会は、こうした不適切な者によって、当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に反する大規模買付行為を抑止するとともに、大規模買付行為が行われる際に、当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案したり、あるいは株主の皆様がかかる大規模買付に応じるべきか否かを判断するために必要な情報や時間を確保すること、株主共同の利益のために交渉を行うこと等を可能とすることを目的として、「当社株券等の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)」を更新することを決定いたしました。また、当該更新については、平成26年6月24日開催の定時株主総会で承認を得ております。(以下、「本対応方針」といいます。)
② 当社株券等の大規模買付行為に関する対応策の概要
本対応方針は、(ア)当社が発行する株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付けその他の取得、もしくは、(イ)当社が発行する株券等について、公開買付けを行う者の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付けのいずれかに該当する買付けその他の取得もしくはこれに類似する行為又はこれらの提案(3(対処すべき課題)において、あわせて「大規模買付行為」といいます。)を適用対象としています。
本対応方針では、当社取締役会が、大規模買付行為を行い又は行おうとする者(以下「大規模買付者」といいます。)に対して本対応方針に定める大規模買付情報の提供を要請するための手続を定めています。
取締役会は、(ア)大規模買付者等が本対応方針に定められた手続を遵守せず、又は(イ)大規模買付行為が、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく損なうような、本対応方針に定める一定の類型に該当すると判断される場合又は該当すると客観的かつ合理的に疑われる事情が存する場合には、独立委員会に対して対抗措置の発動の是非について諮問し、独立委員会は、この諮問に基づき、所定の期間内に、必要に応じて適宜外部専門家等の助言を得た上で、当社取締役会に対して対抗措置の発動の是非について勧告を行います。
当社取締役会は、上記独立委員会による勧告を最大限尊重した上で、本対応方針における対抗措置の発動を決定します。当社取締役会が対抗措置として一定の行使条件及び取得条項等が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)の無償割当ての実施を決議した場合、当社は、本新株予約権を当該決議によって定める全ての株主に対して無償割当ての方法により割り当てます。
4.上記取組みが基本方針に沿い、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものでないこと及びその理由
上記2.記載の取組みは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、まさに基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでもないと判断しております。
また上記3.記載の取組みである本対応方針は、大規模買付行為が行われる際に、当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案したり、あるいは株主の皆様がかかる大規模買付に応じるべきか否かを判断するために必要な情報や時間を確保すること、株主共同の利益のために交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保、向上させるための枠組みであり、基本方針に沿うものであると考えております。
さらに、本対応方針は、(ア)株主総会の承認により継続され、また必要があれば株主意思確認総会を経る場合があるなど、株主意思を重視するものであること、(イ)経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足し、企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」に関する議論等をも踏まえていること、(ウ)合理的かつ客観的な対抗措置発動要件が設定されていること、(エ)当社取締役会から独立した組織として独立委員会が設置され、取締役会は独立委員会の勧告を最大限尊重して意思決定することとされていること、(オ)本対応方針は、本対応方針の有効期間の満了前であっても、当社株主総会で選任された取締役で構成された取締役会により、いつでも廃止することができるものとされていること、(カ)当社の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までとされていること等から、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでもないと考えております。