有価証券報告書-第99期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/27 12:14
【資料】
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【項目】
155項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進み、緩やかに持ち直してまいりました。その一方で、ウクライナ情勢の長期化に起因する原燃料供給の制約や世界的な物価上昇、欧米各国の金融引き締めなどによる景気後退懸念、急激な為替の変動による混乱など景気の下振れリスクを内包した不透明な経営環境が継続しております。
このような状況の中、特殊鋼の主要需要先である自動車関連の受注は、半導体を中心とした部品の供給不足の影響などにより前期比で減少しました。同様に産業機械の受注も減少基調となりました。また、半導体関連の受注は、5Gの普及やデータセンターの建設・更新需要により堅調に推移しておりましたが、年度末にかけてはシリコンサイクルの弱含みによる在庫調整の影響が見受けられました。この結果、鋼材売上数量は前期比で減少しました。一方で、エネルギー関連、環境対応で需要が増加している自由鍛造品については、2016年以降、将来の需要増加を見越した戦略設備の投資効果により、その需要を捕捉することができており、高付加価値製品の受注が増加しました。
主要原材料である鉄屑価格は、国際価格の影響により高値で推移し、ニッケルなどの各種合金類については供給制約などにより前年を上回る価格で推移しました。また原油・LNG価格高騰により電力などエネルギーコストも増大しました。これらのコスト増大に対し、適正マージン確保のため、徹底したコスト削減および販売価格への反映に継続して取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の連結経営成績は、売上高は前期比488億97百万円増収の5,785億64百万円、営業利益は前期比100億4百万円増益の469億86百万円、経常利益は前期比89億21百万円増益の481億22百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比95億43百万円増益の364億38百万円となり、各利益において過去最高を更新しました。
なお、2023中期経営計画で掲げた「営業利益400億円以上」の指標に対しては、自由鍛造品、半導体製造装置向けなどの高収益製品の拡大などポートフォリオ改革を進め、エネルギーコスト増大に対し適正マージン確保に努めてきたことなどにより目標値を上回りました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
特殊鋼鋼材
構造用鋼は、主要需要先である自動車関連や産業機械向けの受注減少を受け、前期比で数量が減少しました。工具鋼も、自動車減産の影響により前期比で数量が減少しました。主要原材料である鉄屑やモリブデンなど各種合金類は、国際価格の影響により高い水準で推移し、また、エネルギーコストは原油価格の高騰により増大しました。
この結果、当連結会計年度における特殊鋼鋼材の売上高は、売上数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことにより前期比8.6%増加の2,147億70百万円、営業利益は前期比59億43百万円増益の97億71百万円となりました。
機能材料・磁性材料
ステンレス鋼および高合金は、自動車関連向け需要の減少に加え、半導体関連や電気電子関係では年度末にかけて在庫調整の動きがあり、前期比で数量は減少しました。一方で、ポートフォリオ改革の推進により戦略製品である半導体関連の高機能ステンレス鋼の数量は増加しており、内容構成は良化しています。磁石製品は、自動車減産の影響を受け、売上高は前期比で減少しました。粉末製品は、自動車減産により数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことで、売上高は前期比で増加しました。
この結果、当連結会計年度における機能材料・磁性材料の売上高は、ステンレス鋼などにおいて売上数量が減少したものの、ニッケルなどの各種合金の価格上昇を販売価格に反映させたことにより前期比11.2%増加の2,197億24百万円、営業利益は前期比23億63百万円減益の242億86百万円となりました。
自動車部品・産業機械部品
エンジンバルブ部品および精密鋳造品は、自動車減産の影響を受け、それぞれ売上高は前期比で減少しました。また、型鍛造品は、自動車減産の影響により数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことで、売上高は前期比で増加しました。一方、自由鍛造品は、重電需要、船舶用バルブが堅調に推移し、航空機需要も回復基調となったことから売上高は前期比で増加しました。
この結果、当連結会計年度における自動車部品・産業機械部品の売上高は、自由鍛造品の売上高増加により前期比9.4%増加の1,012億32百万円、営業利益は前期比32億38百万円増益の82億17百万円となりました。
エンジニアリング
CО2削減につながるカーボンニュートラル製品の受注拡大に加え、資材高騰に対応した見積り精度向上を図ることで、当連結会計年度におけるエンジニアリング部門の売上高は、前期比4.1%増加の189億56百万円、営業利益は前期比27億2百万円増益の14億25百万円となりました。
流通・サービス
当連結会計年度における流通・サービスの売上高は、前期比1.4%増加の238億81百万円、営業利益は前期比4億59百万円増益の32億93百万円となりました。
当社グループが目標とする経営指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。2023年度の当該指標の達成を目指し、行動方針として掲げております①成長分野のビジネス拡大、②事業体質の強靭化、③海外展開拡大、④ESG経営の推進を実施してまいります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
特殊鋼鋼材214,566+7.0
機能材料・磁性材料220,990+9.8
自動車部品・産業機械部品101,609+7.7
エンジニアリング18,956+4.1
合計556,123+8.1

(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注状況
当社グループ(当社および当社の連結子会社)の受注・販売形態は、素材供給等のグループ間取引が多岐にわたり、また受注生産形態をとらない製品もあるため、セグメントごとに受注規模を金額あるいは重量で示すことは行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
特殊鋼鋼材214,770+8.6
機能材料・磁性材料219,724+11.2
自動車部品・産業機械部品101,232+9.4
エンジニアリング18,956+4.1
流通・サービス23,881+1.4
合計578,564+9.2

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手別の販売実績は、総販売実績に対する販売割合が100分の10以上の相手先が
ないため、記載を省略しております。
(2) 財政状態
当社グループの当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ456億64百万円増加し7,738億51百万円となりました。総資産の増加の主な内訳は、「棚卸資産」の増加268億99百万円、「受取手形、売掛金及び契約資産」の増加24億79百万円、「電子記録債権」の増加63億25百万円、減少の主な内訳は、「有形固定資産」の減少34億52百万円であります。
総資産の増減の主な内訳と要因は、下記のとおりであります。
・「棚卸資産」は、主として原燃料市況の高騰により増加しております。
・「受取手形、売掛金及び契約資産」および「電子記録債権」は、原燃料市況の高騰に対して、販売価格への反映に取り組んだことにより増加しております。
・「有形固定資産」は、設備投資を事業基盤再構築投資等に厳選したこと、特殊鋼鋼材事業および自動車部品・産業機械部品事業において収益性が低下した事業用資産を当期に減損したことにより減少しております。
また、当社グループの当連結会計年度末の非支配株主持分を含めた純資産は、前期末に比べ404億74百万円増加し4,054億79百万円となりました。純資産の増加の主な内訳と要因は、親会社株主に帰属する当期純利益364億38百万円の計上等による「利益剰余金」の増加279億10百万円であります。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は47.6%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前期末に比べ8億44百万円増加し、564億88百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、226億34百万円(前期は166億84百万円の資金の減少)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益493億63百万円、非資金損益項目である減価償却費260億54百万円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加257億32百万円、売上債権及び契約資産の増加79億97百万円、仕入債務の減少59億38百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、200億84百万円(前期は145億68百万円の資金の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出214億50百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、26億68百万円(前期は194億2百万円の資金の増加)となりました。収入の主な内訳は、長期借入れによる収入362億67百万円、社債の発行による収入100億円、短期借入金の増加20億75百万円であり、支出の主な内訳は、コマーシャル・ペーパーの減少210億円、長期借入金の返済による支出200億2百万円であります。
当社グループでは、原材料およびエネルギー価格の高騰や高付加価値品の拡大により運転資金が増加していることから、原燃料コストの上昇に応じた販売価格の改訂を進めるとともに、生産リードタイム短縮による棚卸資産の削減や原価低減活動、固定費等の圧縮を推し進め、安定的なキャッシュ・フローを創出するよう事業活動を続けてまいります。設備投資資金は長期借入金や社債により、運転資金は短期借入金により安定的に調達することを基本方針としております。また、手元流動性の適正レベルは時々の環境を考慮し、弾力的に運営してまいります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。