有価証券報告書-第203期(2024/04/01-2025/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
[古河電工グループの理念体系]
当社グループは、経営の判断の軸となり、従業員一人ひとりが理解・共感し、当社グループで誇りを持って働くことにつながるパーパス(存在意義)を2024年3月に制定し、これまでのグループ理念体系を見直しました。
「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。また、持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観を、「Core Values」としております。
「古河電工グループ ビジョン2030」は、将来社会像やパーパスを踏まえ、時間軸を2030年と定めて描いた当社グループの将来の在りたい姿を定めたものです。ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義したものが25中期経営計画です。「古河電工グループCSR行動規範」は、パーパス及びCore Valuesに基づき企業活動を展開するにあたり、企業の社会的責任の観点から、当社グループの役員・従業員のとるべき基本的行動の規範を定めたものです。

■古河電工グループ パーパス*
「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)(主文:「つづく」をつくり、世界を明るくする。)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、経営の判断軸となり、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。
創業以来磨き続けてきた技術力と提案力を強みとし、さまざまな社会課題に向き合い挑戦することで、よりよい未来へとつながる「つづく」をつくることが当社グループの存在意義である、との思いを込めています。また、創業者である古河市兵衛の「日本を明るくしたい」という思いを継承しつつ、グローバルに事業を展開していることを鑑みた表現にしています。

*「古河電工グループ パーパス」は、2024年3月に制定され、2024年4月19日から施行されています。
■Core Values(コア・バリュー)
当社グループが持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観として⦅正々堂々⦆⦅革新⦆⦅本質追究⦆⦅主体・迅速⦆⦅共創⦆の5つを定め、「Core Values」としております。

■古河電工グループ ビジョン2030
当社グループは、古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」に基づき、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs*)」が示す社会課題の解決を念頭に置いて2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けて目指す時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)を策定しております。
ビジョン2030のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域において、当社グループは社会課題の解決を目指してまいります。さらに、新領域においても、これまでにない新たな事業の創出を通じた社会課題の解決を目指してまいります。

さらに、当社グループでは、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義し、収益機会とリスクの両面で次のとおりマテリアリティを特定しております。これらのマテリアリティに取り組むことにより、ビジョン2030を達成するとともに、SDGsの達成にも寄与してまいります。また、当社グループの中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

*SDGs…国連で採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、17のゴール・169のターゲットで構成される国際目標
(2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社は、ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義し、その達成に向け2025年度を最終年度とする4か年の中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)を2022年度に策定し、各施策に取り組んでまいりました。

<経営環境>25中計の前提となる当社を取り巻く経営環境は、今後も急速に、時には非連続的に変化していくものと考えております。例えば、ESG/SDGsが企業の存続に欠かせない経営課題となる、人生100年時代等を踏まえた新たなライフスタイルが広がる、人口減少・高齢化の進展により国内市場が縮小する、DX(Digital Transformation)が急速に進展する、等があげられます。
このような環境においては、Beyond5G*の実現やカーボンニュートラルの実現、安全・安心・快適に人とモノが移動の自由を享受するための次世代インフラの実現、健康寿命延伸の実現、サーキュラー・エコノミーの実現等の社会課題解決の期待がより高まるものと想定されます。
*Beyond5G…5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。

<各事業領域における市場環境の見通し>世界経済は、インフレ率が低下する中で、底堅く推移しました。もっとも、インフレ率の展望や地政学的リスクには不透明な状況が続きました。また、年度末にかけて貿易環境の不確実性が急速に高まる等、経済の先行きは一段と不透明なものとなっています。こうした中でも、当社グループが注力分野と位置づけているデータセンタやAI関連市場については増勢が顕著な状況が続き、中長期にも継続的な市場成長が見込まれます。
情報通信分野は、クラウドをベースとしたサービスが様々な分野で成長しており、中でも生成AIの分野は急成長を果たしています。それらを支えるデータセンタ関連の光ネットワークの建設は今後も続くと考えられます。足元では世界的な光ファイバ等の需給バランスが復調傾向であり、データセンタ関連分野がけん引する形で中長期での継続的な市場成長が見込まれます。
エネルギー分野は、国内では国のエネルギー政策に伴う洋上風力を中心とする再生可能エネルギーや電力会社のリプレース需要が見込まれ、海外では欧米、新興国での旺盛な需要が継続する見通しであります。
自動車分野は、経済が拡大基調をたどる中、自動車需要は堅調に推移すると見られ、今後も当該分野は継続的に成長する見通しであります。
機能製品分野は、生成AI関連市場は好調、スマートフォン・パソコン・HDDの需要は緩やかに復調すると見込んでおり、中長期的には継続的に市場拡大・成長する見通しであります。
<25中計達成に向けた取組み(対処すべき課題)>25中計のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出を掲げ、収益の拡大に向けた取組みとして、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進しております。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでおります。
①資本効率重視による既存事業の収益最大化
25中計目標達成のため、各事業の収益の拡大に向け、引き続き収益性・成長性等の観点から投資配分の最適化を進め、事業ポートフォリオの見直しを含む、資本コストをより意識した経営管理と意思決定を一層加速してまいります。
事業ポートフォリオの見直しについては、2022年に「事業ポートフォリオ検討委員会」を設置し、25中計における各事業の位置づけ等、事業ポートフォリオの変革に関する重要事項を審議し、経営会議に提案・報告を行っています。そして、主にこの事業ポートフォリオ委員会の場で、データセンタを中心とした注力分野を選定し、設備投資等の経営資源を集中的に配分しております。具体的には、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編を実施しました。また、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や、高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を実施しました。一方で、資本効率改善や成長事業に必要なリソース確保のため、関連会社株式の一部売却や持分譲渡を行っております。
25中計達成に向けて、情報通信ソリューション事業は光ファイバ・ケーブル事業において、一体となったグローバル経営により効率的かつ迅速な意思決定を行い、データセンタ関連分野に注力し、収益拡大を図ってまいります。エネルギーインフラ事業では、メタル電線の事業運営効率化による相乗効果を発揮することで、多様化・高度化するニーズに迅速に対応してまいります。加えて、マーケティング活動の推進による拡販やケーブル製造能力・工事施工能力の増強、及び利益確保重視の受注に取り組んでまいります。自動車部品事業では、電動自動車市場向けの高電圧に対応したワイヤハーネス等の関連製品の開発や、製造の自動化に取り組んでまいります。また、電装エレクトロニクス材料事業では、高付加価値製品の品揃えの充実と拡販に努めてまいります。機能製品事業では、引き続き高い成長が見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、放熱・冷却製品における次世代製品の開発や、半導体製造用テープ及び高周波基板用電解銅箔の供給体制の整備に取り組んでまいります。
各事業の収益拡大に向け、製品群単位で当社の強みを生かすという観点で事業ポートフォリオの見直しを継続的に行うことにより、付加価値を訴求し、利益を創出する製品群・ビジネスモデルへの変革をさらに進めてまいります。
なお、資本効率重視の経営を推進するために、各事業を評価する管理指標として、投下資本利益率(ROIC)や投下資本利益額(FVA)(※1)を導入しています。事業ポートフォリオ最適化に向け、将来の成長性、当社の競争力及び炭素効率性(GHG(※2)排出量売上高原単位)を加味した上で、M&Aを含む成長を模索、撤退有無の判断等、必要なアクションを迅速に進めています。また、事業別FVAのコストの算出には、財務要素に加えて「気候変動」(※3)や「人権・労働慣行」等のESGの要素も組み込まれています。事業別FVAは毎年振り返りや見直しを行い経営会議にて報告され、事業ポートフォリオの最適化や経営資源配分等に活用しています。
※1 FVA(Furukawa Value Added):EVAを当社向けにアレンジし、社内管理指標として2022年度より導入。
※2 GHG(greenhouse gas):温室効果ガス
※3 具体的には、事業別の「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位」を考慮
②開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備
当社グループは、素材力を核として長年培ってきた「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術を活用するとともに、外部パートナーとの共創を進めるほか、デジタル技術やデータの利活用を推進し、課題解決を起点とした製品・サービスの開発・提供を通じて、新たな社会課題解決型事業創出に向けた基盤整備を進めております。
環境負荷の低減及び労働衛生の改善に向けて、メタルやポリマー等の素材をフォトニクス技術で加工するレーザー施工システム(産業用レーザ、インフラレーザ)の開発を加速してまいります。また、フォトニクス技術・メタル技術を生かした低侵襲医療向けのライフサイエンス関連製品については、開発の促進と製造能力確保のため特殊ファイバ製品の製造会社を子会社化し、顧客への提案活動を進めるとともに、更なる高度化を目指してまいります。加えて脱炭素社会・循環型社会の実現を目指し、引き続き化石資源によらないグリーンLPガス(※1)の開発・製造を進めてまいります。さらに安全でサステナブルなエネルギーの供給に貢献する核融合(※2)発電関連製品である超電導線材の開発を進めるとともに、超電導マグネット設計会社へ出資し市場開拓を加速してまいります。また、B5G社会に対応するため、データトラフィックの増加への対応やデータセンタの高速大容量化・省エネ化の推進が求められる中、当社のコア技術であるフォトニクス技術及び高周波技術を生かし、光電融合を実現するフォトニクス製品を開発することによって、オール光ネットワークと高効率エネルギー社会の実現に貢献してまいります。また、さらに、スタートアップ企業との共創基盤を活用し、人工衛星搭載用途や環境観測機器用途の各種製品の開発をすすめてまいります。
※1 グリーンLPガス…バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミ等を発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素)を原料に生成したLPガスのこと。
※2 核融合…強力な超電導マグネットで高温プラズマ(数億度)を閉じ込め、核融合反応でエネルギーを発生させる。核融合の燃料の元は海水(重水素(2H))であり、二酸化炭素(CO2)を排出せずに発電可能で環境負荷も低いことから、核融合による発電は次世代のエネルギー源として期待されている。
③ESG経営の基盤強化
25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定するサステナビリティ指標・目標値を設定しており、それらの達成を図ることで、ESG経営の基盤を強化しております。持続可能な企業へ変革する上で必須となっている「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」に対しては、低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画を策定し、それに基づいたカーボンニュートラル実現への取組みを加速しております。また、人的資本の強化を図るため、パーパス浸透活動のほか、人材に対するグループ・グローバル共通の考え方である「古河電工グループPeople Vision」に基づき、「人材・組織実行力」の強化に取り組んでおります。具体的には、従業員エンゲージメントの要素を含む人材・組織実行力調査を実施し、これをモニタリングツールとして、人材マネジメントに関わる取組みを強化しております。「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」は、当社グループ全体のリスクマネジメントのみならず、サプライチェーンを含む人権マネジメントに関わる取組みを強化しています。具体的には、従業員と取引先を優先して対応すべきステークホルダーとし、人権デューディリジェンスを実施しています。取引先については、古河電工グループCSR調達ガイドラインに基づく自己評価調査(SAQ)について、当社から国内外グループ会社の主要な取引先へ段階的に拡大しサプライチェーン上の人権リスクの実態把握を行っています。
<ビジョン2030達成に向けた具体的な取組み>前述のように、25中計では、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出に取り組んでおります。ビジョン2030の達成や更なる成長に向けては、新領域における目指す時間軸とありたい姿をより明確にし、さまざまな社会課題解決に取り組んでまいります。

(3) 目標とする経営指標
25中計において、資本効率を意識した事業の強化と創出を行うため、ROICやROE等を経営指標として重視し、最終年度である2026年3月期の到達目標水準は、ROIC(税引後)6%以上、ROE11%以上、連結売上高1.1兆円以上、連結営業利益580億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上としております。また、25中計では、これらの財務目標に加え、各マテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(温室効果ガス排出量削減率、従業員エンゲージメントスコア、管理職に対する人権リスクに関する教育実施率等)及びそれらの目標を設定しております。
ビジョン2030の実現に向けて、本中期経営計画を着実に推進してまいります。
2025年度の財務目標値
2025年度のサステナビリティ目標値
(*1) 2022年度に設定したテーマに関して全件実施を意味する100%を目標としたが、2024年度において既に達成済み。
(*2) 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社に拡大し、単体目標からグループ目標に変更。
(1) 会社の経営の基本方針
[古河電工グループの理念体系]
当社グループは、経営の判断の軸となり、従業員一人ひとりが理解・共感し、当社グループで誇りを持って働くことにつながるパーパス(存在意義)を2024年3月に制定し、これまでのグループ理念体系を見直しました。
「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。また、持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観を、「Core Values」としております。
「古河電工グループ ビジョン2030」は、将来社会像やパーパスを踏まえ、時間軸を2030年と定めて描いた当社グループの将来の在りたい姿を定めたものです。ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義したものが25中期経営計画です。「古河電工グループCSR行動規範」は、パーパス及びCore Valuesに基づき企業活動を展開するにあたり、企業の社会的責任の観点から、当社グループの役員・従業員のとるべき基本的行動の規範を定めたものです。

■古河電工グループ パーパス*
「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)(主文:「つづく」をつくり、世界を明るくする。)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、経営の判断軸となり、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。
創業以来磨き続けてきた技術力と提案力を強みとし、さまざまな社会課題に向き合い挑戦することで、よりよい未来へとつながる「つづく」をつくることが当社グループの存在意義である、との思いを込めています。また、創業者である古河市兵衛の「日本を明るくしたい」という思いを継承しつつ、グローバルに事業を展開していることを鑑みた表現にしています。

*「古河電工グループ パーパス」は、2024年3月に制定され、2024年4月19日から施行されています。
■Core Values(コア・バリュー)
当社グループが持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観として⦅正々堂々⦆⦅革新⦆⦅本質追究⦆⦅主体・迅速⦆⦅共創⦆の5つを定め、「Core Values」としております。

■古河電工グループ ビジョン2030
当社グループは、古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」に基づき、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs*)」が示す社会課題の解決を念頭に置いて2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けて目指す時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)を策定しております。
ビジョン2030のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域において、当社グループは社会課題の解決を目指してまいります。さらに、新領域においても、これまでにない新たな事業の創出を通じた社会課題の解決を目指してまいります。

古河電工グループは 「地球環境を守り」「安全・安心・快適な生活を実現する」ため、情報 / エネルギー / モビリティが融合した社会基盤を創る。 |
さらに、当社グループでは、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義し、収益機会とリスクの両面で次のとおりマテリアリティを特定しております。これらのマテリアリティに取り組むことにより、ビジョン2030を達成するとともに、SDGsの達成にも寄与してまいります。また、当社グループの中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

*SDGs…国連で採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、17のゴール・169のターゲットで構成される国際目標
(2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社は、ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義し、その達成に向け2025年度を最終年度とする4か年の中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)を2022年度に策定し、各施策に取り組んでまいりました。

<経営環境>25中計の前提となる当社を取り巻く経営環境は、今後も急速に、時には非連続的に変化していくものと考えております。例えば、ESG/SDGsが企業の存続に欠かせない経営課題となる、人生100年時代等を踏まえた新たなライフスタイルが広がる、人口減少・高齢化の進展により国内市場が縮小する、DX(Digital Transformation)が急速に進展する、等があげられます。
このような環境においては、Beyond5G*の実現やカーボンニュートラルの実現、安全・安心・快適に人とモノが移動の自由を享受するための次世代インフラの実現、健康寿命延伸の実現、サーキュラー・エコノミーの実現等の社会課題解決の期待がより高まるものと想定されます。
*Beyond5G…5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。

<各事業領域における市場環境の見通し>世界経済は、インフレ率が低下する中で、底堅く推移しました。もっとも、インフレ率の展望や地政学的リスクには不透明な状況が続きました。また、年度末にかけて貿易環境の不確実性が急速に高まる等、経済の先行きは一段と不透明なものとなっています。こうした中でも、当社グループが注力分野と位置づけているデータセンタやAI関連市場については増勢が顕著な状況が続き、中長期にも継続的な市場成長が見込まれます。
情報通信分野は、クラウドをベースとしたサービスが様々な分野で成長しており、中でも生成AIの分野は急成長を果たしています。それらを支えるデータセンタ関連の光ネットワークの建設は今後も続くと考えられます。足元では世界的な光ファイバ等の需給バランスが復調傾向であり、データセンタ関連分野がけん引する形で中長期での継続的な市場成長が見込まれます。
エネルギー分野は、国内では国のエネルギー政策に伴う洋上風力を中心とする再生可能エネルギーや電力会社のリプレース需要が見込まれ、海外では欧米、新興国での旺盛な需要が継続する見通しであります。
自動車分野は、経済が拡大基調をたどる中、自動車需要は堅調に推移すると見られ、今後も当該分野は継続的に成長する見通しであります。
機能製品分野は、生成AI関連市場は好調、スマートフォン・パソコン・HDDの需要は緩やかに復調すると見込んでおり、中長期的には継続的に市場拡大・成長する見通しであります。
<25中計達成に向けた取組み(対処すべき課題)>25中計のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出を掲げ、収益の拡大に向けた取組みとして、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進しております。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでおります。
①資本効率重視による既存事業の収益最大化
25中計目標達成のため、各事業の収益の拡大に向け、引き続き収益性・成長性等の観点から投資配分の最適化を進め、事業ポートフォリオの見直しを含む、資本コストをより意識した経営管理と意思決定を一層加速してまいります。
事業ポートフォリオの見直しについては、2022年に「事業ポートフォリオ検討委員会」を設置し、25中計における各事業の位置づけ等、事業ポートフォリオの変革に関する重要事項を審議し、経営会議に提案・報告を行っています。そして、主にこの事業ポートフォリオ委員会の場で、データセンタを中心とした注力分野を選定し、設備投資等の経営資源を集中的に配分しております。具体的には、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編を実施しました。また、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や、高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を実施しました。一方で、資本効率改善や成長事業に必要なリソース確保のため、関連会社株式の一部売却や持分譲渡を行っております。
25中計達成に向けて、情報通信ソリューション事業は光ファイバ・ケーブル事業において、一体となったグローバル経営により効率的かつ迅速な意思決定を行い、データセンタ関連分野に注力し、収益拡大を図ってまいります。エネルギーインフラ事業では、メタル電線の事業運営効率化による相乗効果を発揮することで、多様化・高度化するニーズに迅速に対応してまいります。加えて、マーケティング活動の推進による拡販やケーブル製造能力・工事施工能力の増強、及び利益確保重視の受注に取り組んでまいります。自動車部品事業では、電動自動車市場向けの高電圧に対応したワイヤハーネス等の関連製品の開発や、製造の自動化に取り組んでまいります。また、電装エレクトロニクス材料事業では、高付加価値製品の品揃えの充実と拡販に努めてまいります。機能製品事業では、引き続き高い成長が見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、放熱・冷却製品における次世代製品の開発や、半導体製造用テープ及び高周波基板用電解銅箔の供給体制の整備に取り組んでまいります。
各事業の収益拡大に向け、製品群単位で当社の強みを生かすという観点で事業ポートフォリオの見直しを継続的に行うことにより、付加価値を訴求し、利益を創出する製品群・ビジネスモデルへの変革をさらに進めてまいります。
なお、資本効率重視の経営を推進するために、各事業を評価する管理指標として、投下資本利益率(ROIC)や投下資本利益額(FVA)(※1)を導入しています。事業ポートフォリオ最適化に向け、将来の成長性、当社の競争力及び炭素効率性(GHG(※2)排出量売上高原単位)を加味した上で、M&Aを含む成長を模索、撤退有無の判断等、必要なアクションを迅速に進めています。また、事業別FVAのコストの算出には、財務要素に加えて「気候変動」(※3)や「人権・労働慣行」等のESGの要素も組み込まれています。事業別FVAは毎年振り返りや見直しを行い経営会議にて報告され、事業ポートフォリオの最適化や経営資源配分等に活用しています。
※1 FVA(Furukawa Value Added):EVAを当社向けにアレンジし、社内管理指標として2022年度より導入。
※2 GHG(greenhouse gas):温室効果ガス
※3 具体的には、事業別の「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位」を考慮
②開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備
当社グループは、素材力を核として長年培ってきた「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術を活用するとともに、外部パートナーとの共創を進めるほか、デジタル技術やデータの利活用を推進し、課題解決を起点とした製品・サービスの開発・提供を通じて、新たな社会課題解決型事業創出に向けた基盤整備を進めております。
環境負荷の低減及び労働衛生の改善に向けて、メタルやポリマー等の素材をフォトニクス技術で加工するレーザー施工システム(産業用レーザ、インフラレーザ)の開発を加速してまいります。また、フォトニクス技術・メタル技術を生かした低侵襲医療向けのライフサイエンス関連製品については、開発の促進と製造能力確保のため特殊ファイバ製品の製造会社を子会社化し、顧客への提案活動を進めるとともに、更なる高度化を目指してまいります。加えて脱炭素社会・循環型社会の実現を目指し、引き続き化石資源によらないグリーンLPガス(※1)の開発・製造を進めてまいります。さらに安全でサステナブルなエネルギーの供給に貢献する核融合(※2)発電関連製品である超電導線材の開発を進めるとともに、超電導マグネット設計会社へ出資し市場開拓を加速してまいります。また、B5G社会に対応するため、データトラフィックの増加への対応やデータセンタの高速大容量化・省エネ化の推進が求められる中、当社のコア技術であるフォトニクス技術及び高周波技術を生かし、光電融合を実現するフォトニクス製品を開発することによって、オール光ネットワークと高効率エネルギー社会の実現に貢献してまいります。また、さらに、スタートアップ企業との共創基盤を活用し、人工衛星搭載用途や環境観測機器用途の各種製品の開発をすすめてまいります。
※1 グリーンLPガス…バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミ等を発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素)を原料に生成したLPガスのこと。
※2 核融合…強力な超電導マグネットで高温プラズマ(数億度)を閉じ込め、核融合反応でエネルギーを発生させる。核融合の燃料の元は海水(重水素(2H))であり、二酸化炭素(CO2)を排出せずに発電可能で環境負荷も低いことから、核融合による発電は次世代のエネルギー源として期待されている。
③ESG経営の基盤強化
25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定するサステナビリティ指標・目標値を設定しており、それらの達成を図ることで、ESG経営の基盤を強化しております。持続可能な企業へ変革する上で必須となっている「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」に対しては、低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画を策定し、それに基づいたカーボンニュートラル実現への取組みを加速しております。また、人的資本の強化を図るため、パーパス浸透活動のほか、人材に対するグループ・グローバル共通の考え方である「古河電工グループPeople Vision」に基づき、「人材・組織実行力」の強化に取り組んでおります。具体的には、従業員エンゲージメントの要素を含む人材・組織実行力調査を実施し、これをモニタリングツールとして、人材マネジメントに関わる取組みを強化しております。「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」は、当社グループ全体のリスクマネジメントのみならず、サプライチェーンを含む人権マネジメントに関わる取組みを強化しています。具体的には、従業員と取引先を優先して対応すべきステークホルダーとし、人権デューディリジェンスを実施しています。取引先については、古河電工グループCSR調達ガイドラインに基づく自己評価調査(SAQ)について、当社から国内外グループ会社の主要な取引先へ段階的に拡大しサプライチェーン上の人権リスクの実態把握を行っています。
<ビジョン2030達成に向けた具体的な取組み>前述のように、25中計では、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出に取り組んでおります。ビジョン2030の達成や更なる成長に向けては、新領域における目指す時間軸とありたい姿をより明確にし、さまざまな社会課題解決に取り組んでまいります。

(3) 目標とする経営指標
25中計において、資本効率を意識した事業の強化と創出を行うため、ROICやROE等を経営指標として重視し、最終年度である2026年3月期の到達目標水準は、ROIC(税引後)6%以上、ROE11%以上、連結売上高1.1兆円以上、連結営業利益580億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上としております。また、25中計では、これらの財務目標に加え、各マテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(温室効果ガス排出量削減率、従業員エンゲージメントスコア、管理職に対する人権リスクに関する教育実施率等)及びそれらの目標を設定しております。
ビジョン2030の実現に向けて、本中期経営計画を着実に推進してまいります。
2025年度の財務目標値
ROIC(税引後) | 6%以上 |
ROE | 11%以上 |
Net D/Eレシオ | 0.8以下 |
自己資本比率 | 35%以上 |
連結売上高 | 1.1兆円以上 |
連結営業利益 | 580億円以上 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 370億円以上 |
2025年度のサステナビリティ目標値
環境調和製品売上高比率 | 70% |
新事業研究開発費増加率(2021年度基準) | 125% |
事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率 | (*1) |
温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)(2021年度基準) | △18.7% |
電力消費量に占める再生可能エネルギー比率 | 30% |
従業員エンゲージメントスコア | 80(*2) |
(単体)管理職層に占める女性比率 | 7% |
(単体)スタッフ新規採用者に占めるキャリア採用比率 | 30% |
全リスク領域に対するリスク管理活動フォロー率 | 100% |
主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQ実施率 | 100% |
管理職に対する人権リスクに関する教育実施率 | 100% |
(*1) 2022年度に設定したテーマに関して全件実施を意味する100%を目標としたが、2024年度において既に達成済み。
(*2) 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社に拡大し、単体目標からグループ目標に変更。