有価証券報告書-第198期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 16:52
【資料】
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【項目】
173項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、2007年に「古河電工グループ理念」を制定しましたが、当社グループの事業を取り巻く環境の急速な変化を捉え、2019年5月に行動指針をCore Valueに整理し直し、同時にグループビジョンを刷新いたしました。引き続き、グローバルに成長して企業価値を高めるよう努力してまいります。
基本理念
世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。
経営理念
私たち古河電工グループは、人と地球の未来を見据えながら、
・ 公正と誠実を基本に、常に社会の期待と信頼に応え続けます。
・ お客様の満足のためにグループの知恵を結集し、お客様とともに成長します。
・ 世界をリードする技術革新と、あらゆる企業活動における変革に絶えず挑戦します。
・ 多様な人材を活かし、創造的で活力あふれる企業グループを目指します。
Core Value
古河電工グループ理念を達成し持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観を
⦅正々堂々⦆⦅革新⦆⦅本質追究⦆⦅主体・迅速⦆⦅共創⦆の5つに定め、「Core Value」としております。
グループビジョン⦅ビジョン2030⦆
当社グループの事業を取り巻く環境の急速な変化を捉え、目指す時間軸と事業領域を明確にした “ビジョン2030”を2019年5月に策定いたしました。今後、次期中期経営計画に落とし込み、存在感のある企業を目指してまいります。
古河電工グループは
「地球環境を守り」「安全・安心・快適な生活を実現する」ため、情報 / エネルギー / モビリティが融合した社会基盤を創る。

(2) 目標とする経営指標
2016年5月に中期経営計画「Furukawa G Plan 2020 - Group Global Growth - 」を策定し、公表しております。当社グループ経営理念及びビジョンの実現に向けて、本中期経営計画を着実に推進してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
前述しました中期経営計画「Furukawa G Plan 2020 - Group Global Growth - 」では、"ゆるぎない成長の実現"というスローガンを掲げ、以下の3つのテーマに取り組んでまいります。
Furukawa G Plan 2020 - Group Global Growth -
Ⅰ. 事業の強化と変革
Ⅱ. グローバル市場での拡販推進
Ⅲ. 新事業での開拓加速

中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」の推進
当社グループでは、2016年策定の中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」の施策の柱として、事業の強化と変革、特に重点領域と位置づけているインフラ(情報通信、エネルギー)/自動車分野の強化に引き続き取り組んでまいります。
本中期経営計画は2020年度を最終年度としておりますが、情報通信分野での世界的な光ファイバ及び光ファイバ・ケーブル(以下「光ファイバ等」)の需給環境の悪化や新型コロナウイルスの感染拡大等により、当面厳しい経営環境が続くと予想され、計画どおりの収益達成は非常に厳しい状況にありますが、少しでも目標に近づくことができるよう、引き続きグループを挙げて「ゆるぎない成長の実現」に向けた取組みを加速してまいります。
インフラ関連では、情報通信分野においては、世界的な光ファイバ増産により一時的に需給バランスが崩れているものの、通信トラフィック増大は継続しており、引き続き米国子会社における光ファイバ・ケーブルの生産性改善や当社グループ一体での最適地生産の実現による抜本的なコスト競争力の強化を促進することに加え、高密度多心光ケーブル等の高付加価値製品の販売を拡大してまいります。このほか、デジタルコヒーレント関連製品の次世代製品への転換促進等にも取り組み、中長期的に市場拡大が見込まれる5G(第5世代移動通信システム)の進展を背景とした事業拡大を目指してまいります。
エネルギー分野では、注力分野(国内の超高圧地中線、再生可能エネルギー分野での海底線及び地中線、アジアを中心とした海外の海底線)における需要を着実に取り込むべく、生産能力増強のための設備投資や人材の確保・育成を含む工事施工能力の増強に努めております。また、当社の強みであるメタル/ポリマーの素材技術を活かした海底線の要素技術開発に加え、国際規格に対応した海底線の開発にも取り組んでおり、長期的な観点から電力事業が成長していくための施策を推進してまいります。
自動車分野においては、グローバルでの自動車生産台数の停滞により厳しい市場環境は継続する見通しですが、自動車の軽量化を実現するアルミワイヤハーネスを中心とした生産能力増強のための設備投資を行うとともに、CASE(*1)と称される領域において、当社グループが幅広い事業分野で培ってきた多様な技術を融合させることで独自の価値提供を進め、大きな市場拡大が予想される同領域での成長を目指してまいります。このほか、先進運転支援システムで必須となる周辺監視レーダについては、従来の自動車向けに加えて建機向け製品の量産を開始しており、同製品のさらなる拡販を目指してまいります。
(*1)CASE…Connected(つながる化)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、
Electric(電動化)
また、事業資産営業利益率(*2)を指標とした低採算事業・製品群の改善及び事業ポートフォリオの見直しも促進してまいります。中期経営計画の重点領域であるインフラ/自動車分野との事業シナジー等を総合的に勘案して、当期においては銅管事業の譲渡と巻線事業の再編を決定いたしましたが、今後も経営資源の再配分による最適な事業ポートフォリオ構築に向けた施策に取り組んでまいります。さらに、昨年4月に設置したグループ変革本部が牽引する、経営基盤の強化を図るための全社的な変革活動を継続してまいります。このほか、タイ子会社に東南アジア地域を統括する機能を持たせるなど、グローバルな事業活動を効率的に強化・拡大していくための体制整備も推進してまいります。
(*2)事業資産営業利益率…営業利益/事業資産(事業資産=棚卸資産+有形・無形固定資産)
さらに、インフラ/自動車分野への成長投資として、5G社会に向けた超低損失光ファイバや小型のデジタルコヒーレント関連製品、モビリティ用途への活用に向けた次世代レーダ、施工コスト削減や省力化・省人化に貢献する樹脂製の地中埋設用ケーブル保護管など、次世代製品・技術の開発に引き続き注力してまいります。加えて当社は、「古河電工グループ ビジョン2030」を実現する新事業開拓に向けた取組みとして、オープンイノベーションや産学連携等を推進しており、他社との共創の場である横浜事業所内オープンラボ「Fun Lab」を昨年度に拡充し活動を活発化しております。本年4月からスタートする北海道大学との産業創出講座やスタートアップ企業との連携強化を目指すアクセラレータ活動にも取り組んでおります。2018年8月には、米国カリフォルニア州のシリコンバレーに、当社にとって4番目となる海外研究拠点であるSilicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric (SVIL)を開設、2019年2月には次世代インフラを考案し社会実装を目指す組織として次世代インフラ創生センターを設立するなど、情報/エネルギー/モビリティが融合した領域での横断的な取組みを強化してまいります。このほか、顧客視点に立ち、価値のある「コト」の創出に向け、マーケティング部門と研究開発部門が連携し、マーケティング活動を起点とした研究開発に取り組むことで、新事業の開拓を進めてまいります。
中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」では、連結営業利益550億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益300億円以上、ROE10%以上を財務目標値として掲げております。事業資産営業利益率を意識した連結事業経営を推進し、注力事業・製品の強化及び低採算事業・製品の変革に取り組むことで、事業ポートフォリオの見直しを進め、収益力の強化を図ってまいりましたが、新型コロナウイルスによる自動車販売台数の大幅減少の影響等、当社グループを取り巻く経営環境が非常に不透明となっており、その影響額を合理的に見積ることが困難であるため、2020年度業績予想はまだ策定できておりませんが、昨年度に引き続き光ファイバ等の市場環境が厳しいこと等を併せて考えますと、本中期経営計画の財務目標値の達成は予断を許さない状況となっております。
(4) 経営環境
世界経済は、長期化し激化する米中間の貿易摩擦並びに欧州や中東における政治的・地政学的な緊張等、さらに本年1月以降の新型コロナウイルスの感染拡大による世界規模での経済活動の停滞により、先行き不透明な状況が続くと予想されますが、当社グループが重点領域と位置づけているインフラ(情報通信、エネルギー)/自動車分野は中長期では継続的な市場成長が見込まれます。
情報通信分野は、5GやIoTなど、クラウドをベースとしたサービスが様々な分野で成長しておりましたが、それに加えて新型コロナウイルスの感染拡大を受けたテレワークの急速な浸透なども踏まえ、データセンタ及びデータセンタ間を結ぶ光ネットワークの建設が今後も続くと考えられます。足元では、世界的な光ファイバ等の需給バランスが悪化しておりますが、中長期では継続的な市場成長が見込まれます。
エネルギー分野は、国内に関してはオリンピック需要ピーク後の需要減や人手不足による工期遅れが懸念される一方、新エネルギーや電力会社のリプレース需要が見込まれ、海外に関しては欧米、新興国での旺盛な需要が継続する見通しであります。
自動車分野は、CASEというキーワードに代表されるように大変革期を迎えており、今後も当該分野は継続的に成長する見通しであります。
(5) 会社の対処すべき課題
① 新型コロナウイルス問題への対処
喫緊の課題は、新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に非常に深刻な影響を及ぼしていることへの対処であります。現時点では、この感染拡大に収束の見込みは立っておらず、国内外で多岐に亘る事業活動を展開している当社グループに与える影響を正確に見通すことは極めて困難な状況ではありますが、当社グループでは緊急対応体制を立ち上げ、当社グループへの影響を最小限に抑えるべく対応に努めております。さらに産業別の動向予測に基づき複数のシナリオを立て、全社戦略及び各事業における適切な意思決定・施策を迅速かつ柔軟に講じてまいります。
② ESG経営の強化
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」が示す社会課題の解決を念頭に置き、2030年の当社グループのありたい姿として「古河電工グループ ビジョン2030」を定めております。当社グループに関わるすべてのステークホルダーとの適切な共創により、当社グループの中長期的な企業価値向上に加え、社会的価値向上を目指し、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮したESG経営の強化に取り組んでおります。また、本年2月にSDGsの取組みの前提となる国連グローバル・コンパクト(*1)に署名し、国連が提唱する「人権・労働・環境・腐敗防止」に関する10原則を支持しております。
加えて、ESG経営の強化に際して、新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後の新たな価値観や生活様式への転換等を見極めながら、これらの変化にも柔軟に対応してまいります。
(*1)国連グローバル・コンパクト…各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取組み。
環境(Environment)への取組みとして、当社グループでは、気候変動が事業にもたらすリスク及び機会を経営上の重要課題と認識し、当期は、環境省が実施する「TCFD(*2)に沿った気候関連リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参加し、そのシナリオ分析に着手いたしました。さらに、本年1月にはTCFDの提言への賛同を表明いたしました。また、地球環境を守り、持続可能な社会の実現に貢献するため、当社グループは2030年度に事業活動により排出される温室効果ガスを2017年度比で26%削減するという目標を掲げており、本目標値はSBTi(*3)に認定されております。目標達成に向けた取組みとして、再生可能エネルギーの導入に取り組んでおり、栃木県日光市に拠点を有する銅箔事業部門において太陽光発電を設置しているほか、当社子会社の古河日光発電㈱は、水力発電により日光事業所で利用されるほぼ全ての電力を供給しております。また、三重事業所では、LPG(液化石油ガス)からエネルギー効率が高く温室効果ガス排出量の少ないLNG(液化天然ガス)へ使用燃料の切替えを実施いたしました。
(*2)TCFD…Task Force on Climate-related Financial Disclosersの略で、企業等に対し気候関連リスク及び機会に関する開示等を推奨している民間主導の気候関連財務情報開示タスクフォースのことで、2017年6月に最終報告書(TCFD提言という)が公表されております。
(*3)SBTi…Science Based Targets initiativeの略で、企業に対し、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑えるために、科学的知見と整合した削減目標の設定を求めるイニシアチブ。
社会(Social)への取組みとして、本年1月に「古河電工グループ理念」に基づき、事業活動に関わるすべての人びとの人権を尊重することを定めた「古河電工グループ人権方針」を策定いたしました。このほか「多様な人材を活かし、創造的で活力あふれる企業グループを目指します」という経営理念のもと、「古河電工グループ ビジョン2030」達成に向けた当社グループの成長を牽引する従業員の多様な働き方を尊重した環境整備を進めております。本年2月には、経済産業省及び東京証券取引所から、女性の活躍推進に優れた上場企業として2018年以来2度目のなでしこ銘柄に選定されたほか、女性活躍推進の積極的な取組みが評価され、「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」の構成銘柄への採用や、4年連続で厚生労働大臣より「えるぼし」の最高ランク認定を受けました。また、健康管理に関する取組みが評価され、経済産業省から「健康経営優良法人ホワイト500」に4年連続で認定されました。さらに、テレワーク勤務制度の利用促進等の取組みを講じており、今後も個人が持てる能力を最大限発揮できるよう努めてまいります。このほか、当社グループは各拠点が所在する地域の特色を生かし、「次世代育成」、「スポーツ・文化振興」、「自然環境・地域社会との共生」の3つを柱に社会貢献活動にも積極的に取り組んでおります。
ガバナンス(Governance)への取組みとして、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、特にコーポレートガバナンスの強化に注力しております。当期においては、昨年6月の定時株主総会において、社外取締役の独立性強化及びダイバーシティの観点を踏まえ、取締役会の構成見直しを行いました。取締役会の監督機能の強化に加え、多様性のある取締役会の構成とすることで、議論が一層活発となるよう努めております。2015年以降、毎年実施しております取締役会実効性評価を当期も実施し、その中で重要課題とされていた取締役会と業務執行側との権限配分の適切性という課題への改善策として、取締役会付議基準の見直しを行ったほか、取締役会において、市場環境の変化が激しい事業についての戦略的な討議やステークホルダーの声に関する報告を実施するなど、中長期的な視点に立った議論を行いました。当期の評価結果を踏まえた今後の取組みとして、次期中期経営計画策定の議論においては、「古河電工グループ ビジョン2030」を実現するために目指すべき事業ポートフォリオ等の議論を充実させるとともに、グループ・グローバル経営に関して、グループ全体を俯瞰した観点での審議の充実を推進してまいります。このほか、委員の過半数及び委員長を社外取締役とする任意の機関である指名・報酬委員会を当期は10回開催し、次期経営体制及び役員報酬に関する議論に加え、CEOサクセッションプランを含む次世代経営人材の育成に関して、進捗状況を確認するとともに、経営人材候補の抽出・選定や育成プロセスの有効性等について議論を行いました。