有価証券報告書-第71期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/22 17:00
【資料】
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【項目】
63項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械を最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、サービスサポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。
(2) 経営戦略及び経営環境
2019年の全世界における工作機械の需要は前年比約10%減を見込んでおりますが、当社は、自動化、5軸化・複合化、ソフトウエア、先端技術を今後の事業テーマとするとともに、2019年よりカンパニー制を導入する事により利益と業務の厳格な管理と経営者育成を進めてまいります。
自動化につきましては、自動化システムの受注に占める比率が年々増加しており、2019年は約30%になるものと見込んでおります。自動化システムを構成する各機器をモジュール化、規格等を統一し導入時のリードタイム短縮や短期間でのレイアウト変更を可能とするプログラミング不要のロボットシステム「MATRIS」を開発する等の対応を行っております。
5軸化・複合化につきましては、複雑形状の加工を可能とする5軸加工機・複合加工機の受注が50%超を占めるまでとなりましたが、国内における更なる普及を目的としてDMG MORI 5軸加工研究会を発足させ、お客様への機械貸出やプライベートレッスン実施によるオペレーター養成を行っております。
ソフトウエアにつきましては、当社開発のオペレーションシステムCELOSを通じて、アプリケーションによるお客様の利便性向上を図り、スマートファクトリーを進めてまいります。
先端技術につきましては、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)や超音波等の技術の用途拡大を進めてまいります。
当社は、業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、SDGs(Sustainable Development Goals)への取り組みを強化しております。環境面においては、省エネ技術(GREENmode)によるエネルギー消費量抑制や製造現場の排出量モニタリングによるCO2排出の抑制、リスク管理体制面で厳格な輸出管理手続に基づいた製品の平和利用を担保することによる大量破壊兵器製造防止、人材の活用と育成面で、事業所内での保育園開園等、働きやすい環境の整備や従業員国籍の多様性、12時間イン ターバル制の導入や有給休暇の完全取得を目指すことでメリハリをつけた働き方で生産性の向上を目指しております。この他、DMG森精機奨学基金への拠出、大学、高等専門学校への助成、学術関連団体との提携による研究開発等の社会貢献を行っております。
以上のように、顧客価値創造を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に務めてまいります。
(3) 目標とする経営指標
需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。
2019年度受注はほぼ前年並みと計画しており、台数ベースでは10%減を見込んでおりますが、自動化等の需要が増加し付加価値向上により単価で10%増を見込んでおり、金額ベースでは前年並みを確保できるものと考えております。地域的には、米中貿易摩擦の影響から中国での受注をやや慎重に見ておりますが、その他の地域はほぼ前年並みを計画しております。
2019年度は、売上収益5,000億円、営業利益360億円、純有利子負債650億円以下、フリーキャッシュフロー300億円以上を目指しております。
2020年度の主な事業目標として掲げたうち未達項目の営業利益率10%以上、純有利子負債500億円以下を達成する為に、収益力及び財務体質の強化を図ることが重要であると考えております。
当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。
(4) 対処すべき課題
①製品開発
生産技術者、加工エンジニアの不足、電動化、高齢化、IoTのトレンドにより自動化要求は中品種中量、多品種少量生産に及んでおります。複雑形状部品の生産、複数部品の集約化が進み5軸加工機や複合加工機、アディティブ・マニュファクチャリング機を含めた自動化システムの要求が増しております。これらをサポートするためには、ワーク取り付け、取り外しを自動化するとともに加工監視、切り屑の効率的な処理、毎朝の点検等の業務を機械がオペレータに代わって対応することが求められております。
当社ではこのような要求に素早く対応するために、これまでは新機種開発、新機能開発、顧客対応、品質改善のすべてを機種別組織で進めてまいりましたが、2019年より大きな組織変更を行い要素技術別の組織を発足させました。具体的には板金設計、切り屑クーラント関連開発、レーザ光学系開発、主軸・ATC・刃物台等のコアユニット、解析技術、モーター技術、センシング技術、計測技術、コネクティビティー、ポストプロセッサー、自動化システム等の開発組織を編成し、機種グループを横断する革新的な要素技術開発に取り組む所存です。
これまで進めてきた機種統合と日独共同の新機種開発により、機種数は2009年に300機種以上あったものを2018年末時点で152機種まで集約することができました。今後も集約を進め、日独で蓄積した技術を最大に活用する開発環境を整備してまいります。また、シェービング、メジャーリング、ハンドリング、モニタリングに分類されるテクノロジーサイクルの開発を進め、ソフトウエアの売上に貢献してまいります。
②品質
「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械を最善のサービスとコストでお客様に供給することを通して、ターニングセンタ、マシニングセンタ、複合加工機、研削盤で、グローバルワンを目指す」を基本方針として、品質=お客様満足を合言葉に、全社一丸となって製品やサービスの品質向上に努めております。最近では、5軸化、複合化、自動化、IoT、レーザ加工やアディティブ・マニュファクチャリング等の最先端加工法の活用等をお客様ニーズといち早くとらえ、これらのお客様の期待に応える工作機械や周辺装置、アプリケーションソフトウエアの提供に注力しております。また、お客様満足活動をはじめとするCS活動を通じて得たお客様の声を真摯に受け止め、製品やサービスの徹底的な改善改良を計画するとともに、ご意見への対応を確実に行うことにより、お客様の信頼を獲得することを行動の基本としております。
③安全保障貿易管理
近年、世界の安全保障環境の不安定化が益々顕著になってきたことに伴い、大量破壊兵器の不拡散や通常兵器の過度の蓄積防止に対する国際的な関心が一段と高まっております。このような環境の中、当社グループにおいては、輸出関連法規の遵守に関する内部規程(コンプライアンス・プログラム)を定め、厳正に適用しております。さらに、当社製品には、不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できなくする装置を搭載し、厳格な輸出管理を実践しております。安全保障貿易管理につきましては、重点課題として今後とも継続して取り組んでまいります。
④法令遵守
経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、また、役員・従業員向けの各種教育研修を企画し、継続的に実施することで役員・従業員の意識の向上と浸透を図っております。グローバルな事業展開に対応し、日本国内のみならず各国においても、法令遵守のための体制の構築を図っております。また、従前より内部監査部が主管部署として、定期的に法令遵守活動のモニタリングを実施する体制を整備しており、引き続き、内部管理の強化に努めてまいります。