有価証券報告書-第72期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/24 17:04
【資料】
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【項目】
92項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械を最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、修理復旧サポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。
(2) 経営戦略及び経営環境
2020年(以下、「来期」)の全社受注を4,200億円と2019年(以下、「当期」)の4,094億円の実績に対し2.6%増を見込んでおります。新型コロナウイルスの影響が拡大している状況ではありますが、地域別には米国が回復の足取りを示している他、東南アジアも大底から脱しつつあります。一方、日本、欧州は2018年まで大きく伸張した反動もあり、来期は横ばい圏で推移するものと計画しております。中国は短期的には不透明でありますが、工程集約機、自動化等の潜在需要が旺盛なことから年度後半には回復していくものと期待しております。業種別には引き続き航空・宇宙関連、医療関連、金型関連が堅調に推移する他、半導体製造装置関連の寄与度も高まっていくものと考えております。一方で、自動車関連は引き続き低調に推移するものと見込んでおります。
当社は、自動化、5軸化・複合化、ソフトウエア、先端技術を今後の事業テーマとするとともに、当期より導入したカンパニー制により利益と業務の厳格な管理と経営者育成を進めてまいります。
自動化につきましては、自動化システムの受注に占める比率が年々増加しており、自動化システムを構成する各機器をモジュール化、規格等を統一し導入時のリードタイム短縮や短期間でのレイアウト変更を可能とするプログラミング不要のロボットシステム「MATRIS」を開発する等の対応を行っております。
5軸化・複合化につきましては、複雑形状の加工を可能とする5軸加工機・複合加工機の受注が60%超を占めるまでとなりましたが、国内におけるさらなる普及を目的としてDMG MORI 5軸加工研究会を発足させ、お客様への機械貸出やプライベートレッスン実施によるオペレーター養成を行っております。
ソフトウエアにつきましては、当社開発のオペレーションシステムCELOSを通じて、アプリケーションによるお客様の利便性向上を図り、スマートファクトリーを進めてまいります。
先端技術につきましては、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形、以下、「AM」)や超音波等の技術の用途拡大を進めてまいります。
当社は、業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、SDGs(Sustainable Development Goals)への取り組みを強化しております。環境面においては、省エネ技術(GREENmode)によるエネルギー消費量抑制や製造現場の排出量モニタリングによるCO2排出の抑制、リスク管理体制面で厳格な輸出管理手続に基づいた製品の平和利用を担保することによる大量破壊兵器製造防止、人材の活用と育成面で、事業所内での保育園開園等、働きやすい環境の整備や従業員国籍の多様性、在社上限10時間、12時間インターバル制の導入や有給休暇の完全取得を目指すことでメリハリをつけた働き方で生産性の向上を目指しております。この他、DMG森精機奨学基金への拠出、大学、高等専門学校への助成、学術関連団体との提携による研究開発等の社会貢献を行っております。
以上のように、顧客価値創造を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に努めてまいります。
(3) 目標とする経営指標
需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。
来期は、全社受注4,200億円、売上収益4,000億円、営業利益200億円、純有利子負債700億円以下、フリーキャッシュフロー130億円以上、Net Dept/Equityレシオ(純有利子負債株主資本比率)0.5を目指しております。
当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。
(4) 対処すべき課題
①製品開発
当期にR&Dカンパニーを発足し、要素技術、新機種開発、既存機種の改善改良、マニュアル、知財からなる組織構成で運営しております。
要素技術に関しては自動化・省人化を実現するために自動化システムの開発を強化するとともに、自動化システムで重要になる切り屑処理、プロセスモニタリング、機上計測、機械の稼働状況モニタリング、長時間にわたる運転での精度維持等の技術開発を、新機種開発においては複合加工機、5軸加工機とAM機の強化を進めております。全体では約30件の開発プロジェクトを当期から進行させており、来期にその大部分を製品化するとともに、来期も同程度の新規開発プロジェクトを追加いたします。
複合加工機、5軸加工機、自動化システム機を効率的に運用するための重要な要素であるマニュアルの電子化を進めております。電子化したマニュアルは、お客様専用サイトの「my DMG MORI」から閲覧していただくことができ、冊子での保管が不要で、必要な項目の検索性も大幅に改善しております。来期は動画も導入し、さらに検索性にすぐれ一目で理解いただけるマニュアルを提供いたします。知財戦略にも積極的に取り組み、特許出願件数は当期に前期比64%増、さらに来期には当期比40%増とすることで独自技術の権利化を進めてまいります。
②品質
経営理念の「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械を最善のサービスとコストでお客様に供給することを通して、ターニングセンタ、マシニングセンタ、複合加工機、研削盤で、グローバルワンを目指す」を基本方針として、品質=お客様満足を合言葉に、全社一丸となって製品や修理復旧の品質向上に努めております。最近では、5軸化、複合化、自動化、IoT、レーザ加工やAM等の最先端加工法の活用等をお客様ニーズといち早くとらえ、これらのお客様の期待に応える工作機械や周辺装置、アプリケーションソフトウエアの提供に注力しております。また、お客様満足活動をはじめとするCS活動を通じて得たお客様の声を真摯に受け止め、製品や修理復旧の徹底的な改善改良を計画するとともに、再発防止を確実に行うことにより、お客様の信頼を獲得することを行動の基本としております。
③安全保障貿易管理
近年、世界の安全保障環境の不安定化が益々顕著になってきたことに伴い、大量破壊兵器の不拡散や通常兵器の過度の蓄積防止に対する国際的な関心が一段と高まっております。このような環境の中、当社グループにおいては、輸出関連法規の遵守に関する内部規程(コンプライアンス・プログラム)を定め、厳正に適用しております。さらに、当社製品には、不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できなくする装置を搭載し、厳格な輸出管理を実践しております。なお、2012年より中国・天津、そして当期よりインド・コインバトールにて工作機械の製造を開始しております。輸出関連法規上、より厳格な管理が必要となる国での海外生産を行うにあたり、定期的に訪問を実施したうえでの監査並びに輸出管理研修を行っております。安全保障貿易管理につきましては、重点課題として今後とも継続して取り組んでまいります。
④法令遵守
経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、役員・従業員のコンプライアンス意識の向上と浸透を図っております。当社グループでは、グローバルな事業展開に対応したコンプライアンス体制を構築するために、日本を含む各国においてコンプライアンス担当者を選任し、これらを連携させることにより、各国の制度に適応しながら統制の取れた体制の確立に取り組んでおります。また、役員・従業員向けの各種教育研修を日本だけでなく各国においても企画し、継続的に実施しております。これらの他、従前より内部監査部が主管部署として、定期的に法令遵守活動のモニタリングを実施する体制を整備しており、引き続き、内部管理の強化に努めてまいります。
4月より導入されました勤務間インターバル制度については、当社では勤務間インターバルを12時間にすると同時に在社時間を最大12時間として対応いたしました。来期はこれをさらに進め、在社時間の制限を原則10時間として従業員の健康維持、ワークライフバランスの適正化に取り組んでおります。