有価証券報告書-第120期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 14:05
【資料】
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【項目】
125項目

業績等の概要

(1) 業績
当期のわが国経済は、実質賃金の伸び悩みや下期以降の株安による消費者マインドの悪化などにより個人消費は力強さを欠く状況を見せ、また企業業績の改善により設備投資に持ち直しの動きが見られたものの、輸出の停滞などにより、企業が慎重な姿勢を強めつつあるなど、回復基調に陰りが見られました。海外では、米国経済は景気の回復が続き、金融政策の正常化へ移行し、欧州経済も緩やかな回復が続きました。その一方で中国経済は景気減速が鮮明化し、その他新興国でも中国経済減速の影響や原油等資源価格の低迷を受け成長ペースが鈍化するなど、世界経済全体としては総じて緩やかな減速基調にありました。
このような経営環境のもと、当社グループは、前期にスタートした「中期経営計画2016」を推進し、当期は以下の項目を重点施策として事業運営を行ってまいりました。
① 持続的成長の基盤を構築するための「着実な成長」
(a) 「グローバル化(拡がる)」
プラスチック加工機械事業では、ドイツの子会社のSUMITOMO(SHI)DEMAG PLASTICS MACHINERY GmbHとの間で欧州での電動式射出成形機の販売、開発の連携強化を継続するとともに、中国において同社の新工場を開設するなど、中国及びアジア市場の需要対応力を強化してまいりました。減・変速機事業では、ベルギーの子会社のHANSEN INDUSTRIAL TRANSMISSIONS NVの海外拠点再編を進めるとともに、日本及びアジアの生産拠点間において大型の減・変速機のサプライチェーンの再編を行い、コスト競争力の強化を図ってまいりました。また、極低温冷凍機事業では、今後さらに成長が期待される中国市場において販売とサービス体制の強化を目的に新たな拠点を開設し、営業力強化を図ってまいりました。
(b) 「イノベーション(変わる)」
プラスチック加工機械事業では、全電動中型射出成形機の開発に注力し、従来機より大きな金型の搭載を可能とすることで成形品の生産性向上に大きく寄与することのできる新シリーズSEEV-A-HDの販売を開始しました。また、産業機器事業では、サイクロトロン中性子照射システムとホウ素化合物を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の医療機器化を図るため、がんに対する治療効果を検証する臨床試験を開始し、最先端のがん医療技術の実現化に向けて前進することができました。
(c) 「グループ内の連携シナジー(つながる)」
グループ内で培ったシステム制御技術で差別化を実現した、ハイブリッド油圧ショベルやショベルの後方視界を確保するFVM(フィールドビューモニター)の普及が進みました。また、注力するエネルギー分野では、ボイラ事業とタービン事業の協業を進めるなど、グループ内で連携し競争力強化を図ってまいりました。
② 「高収益への反転」
プラスチック加工機械事業、半導体関連事業など精密機械部門において、差別化された商品力を活かし顧客ニーズに応えることで売上、利益の改善が進みました。また、運搬機械事業において「繰返し型生産モデル」への変革を推進し、生産効率を高めることで売上、利益の改善が進みました。さらに、各事業部門において中期経営計画の重点課題であるアフターマーケット・ビジネスの強化に努め、経営環境が変動する中で利益確保へ大きく貢献いたしました。
③ 「たゆみなき業務品質改善」
本社経営品質本部がリーダーシップをとり、当社グループの製品品質管理機能を強化するための取組みを継続的に進めました。安全への取組みにつきましても、安全衛生改革基本計画の第二次実行計画に基づき、安全衛生管理力の強化と労働災害撲滅に努めてまいりました。
④ コンプライアンスの徹底
「コンプライアンスは全てに優先する」という基本原則のもと、当期は独占禁止法遵守の教育やディスカッション方式及びeラーニングによるコンプライアンス教育等を行いました。また、中国の事業拠点においても、ディスカッション方式のコンプライアンス教育を行い、コンプライアンス体制の強化を図りました。
これらの経営施策に取り組みました結果、当社グループの当期の受注高は、前期比7%減の6,859億円、売上高につきましては、前期比5%増で過去最高の7,008億円となりました。
損益面につきましては、営業利益は前期比10%増の506億円、経常利益は前期比9%増の491億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比36%増の331億円となりました。また、税引後のROICは7.6%となりました。
各部門状況は概ね次のとおりであります。
① 機械コンポーネント部門
中国市況が低迷したものの、国内や北米市況が堅調に推移したことから、受注、売上ともに増加いたしました。
この結果、受注高は前期とほぼ同じ1,050億円、売上高は前期比5%増の1,076億円、営業利益は前期比35%増の89億円となりました。
② 精密機械部門
プラスチック加工機械事業は、アジアでのIT関連需要が一巡する一方、国内、欧州及び北米の市況が堅調に推移したことから、受注、売上ともに増加いたしました。
その他事業は、半導体関連機種の受注が減少したものの、売上は増加いたしました。
この結果、受注高は前期とほぼ同じ1,546億円、売上高は前期比6%増の1,546億円、営業利益は前期比38%増の187億円となりました。
③ 建設機械部門
油圧ショベル事業は、中国市場の需要が大幅に減少し回復を見せないことや、国内における前期の排ガス規制対応の駆け込み需要の反動減などにより、受注、売上ともに減少いたしました。
建設用クレーン事業は、北米市場の需要が低調な推移であったことから、受注が減少したものの、売上は増加いたしました。
この結果、受注高は前期比5%減の1,971億円、売上高は前期とほぼ同じ2,019億円、営業利益は前期比63%減の44億円となりました。
④ 産業機械部門
運搬機械事業は、国内造船業界向けを中心に好調に推移し、また産業機器事業においては、陽子線治療システムを受注するなど、部門全体では、受注、売上ともに増加いたしました。
この結果、受注高は前期比3%増の926億円、売上高は前期比16%増の879億円、営業利益は前期比73%増の100億円となりました。
⑤ 船舶部門
当社が特化している中型タンカー市場は比較的安定していたものの、新造船市況全般は厳しさが増しており、当期は、前期より7隻少ない2隻の新造船を受注いたしました。また、売上は前期と同じ3隻の引渡しとなりました。
この結果、受注高は前期比64%減の225億円、売上高は前期比11%増の290億円、営業利益は10億円となりました。
⑥ 環境・プラント部門
エネルギープラント事業は、海外のIPP(独立発電事業者)向け循環流動層ボイラの受注や国内のバイオマス発電設備の受注がありましたが、受注件数が少なかったことから、受注は減少したものの、売上は増加いたしました。
水処理プラント事業は、大規模改修工事を受注したことから受注、売上ともに増加いたしました。
この結果、受注高は前期比7%減の1,061億円、売上高は前期比4%増の1,097億円、営業利益は前期比23%減の58億円となりました。
⑦ その他部門
受注高は前期比20%減の81億円、売上高は前期比18%増の101億円、営業利益は前期比2%減の18億円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
営業活動による資金の増加は183億円(前年同期は622億円の資金の増加)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益472億円、減価償却費197億円、仕入債務の増加額28億円です。支出の主な内訳は売掛債権の増加額310億円、法人税等の支払額164億円です。
投資活動による資金の減少は154億円(前年同期は141億円の資金の減少)となりました。これは、主として固定資産の取得による支出192億円によるものです。
財務活動による資金の減少は238億円(前年同期は369億円の資金の減少)となりました。これは、主として借入金の返済による支出(借入金による収入との純額)131億円、配当金の支払による支出86億円によるものです。
これらの要因により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ217億円減少し、686億円となりました。