有価証券報告書-第150期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 15:19
【資料】
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【項目】
145項目

対処すべき課題

(1) 経営方針
三菱電機は創立100周年を契機に、社会における三菱電機グループの存在意義、そして従業員一人ひとりが大切にすべき価値観・姿勢をあらためて定義し、「企業理念*1」、「私たちの価値観*2」及び「コミットメント*3」により構成される企業理念体系を改定しました。次の100年もステークホルダーの皆さまから信頼され、時代の要求に応えられる企業集団を目指してまいります。
また、従来実践してきた「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点による「バランス経営」を進化させ、強固な経営基盤の確立と持続的成長を目指すとともに、全ての企業活動を通じたサステナビリティの実現に貢献し、経済的価値と社会的価値を両輪とした企業価値の更なる向上に努めてまいります。
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(2) 経営環境及び対処すべき課題
世界経済の先行きは、新型コロナウイルス感染症が景気に与える影響に依然として不確実性は残るものの、米国や中国を中心とする各国・地域での経済対策等の効果もあり、総じてみれば景気回復が進展することが見込まれます。
かかる中、三菱電機グループは、多様化する社会課題に対し、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、当社の強いコアコンポーネントに、豊富なフィールドナレッジ、先進的デジタル技術を掛け合わせ、当社ならではの統合ソリューションを提供していくことで、「持続可能な地球環境と安心・安全・快適な社会の実現」をはじめとする価値創出をより一層推進してまいります。
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持続的成長に向けては、当社の事業を特性別に分類し、強弱をつけて経営資源を投入していく事業ポートフォリオ戦略の強化による収益力向上を図るべく、重点成長事業と位置付ける「FA制御システム」「空調冷熱システム」「ビルシステム」「電動化/ADAS*4」「パワーデバイス」の5つの事業に対し経営資源を戦略的に投入し、収益力や成長性の高い事業へのリソースシフトを進めてまいります。あわせて、社会構造の変革や顧客価値の変化に対応したオープンイノベーションの推進、新分野・新技術の取り込み、シナジーの追求等による新事業の創出や「データ連携・活用型」を主体としたソリューション事業の拡大を推進してまいります。加えて、業務改革や生産性向上を始めとした経営体質強化の活動をより一層強化してまいります。
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また、事業シナジーの最大化を図るべく、事業再編・機能分担の見直しを含むグループトータルでの最適な事業推進体制を構築・強化し、日本・欧米・中国における事業競争力を強化するとともに、成長市場における需要獲得に注力してまいります。そのために、製品・技術等の補完や新地域・新市場での販売網・サービス網の確保、人的資源の獲得を目的とした協業・M&Aなどにも取り組んでまいります。あわせて、資本コストを意識した経営を進めていく中で、事業の継続的な新陳代謝を通じた開発投資や設備投資などを含む経営資源の最適な配分、「ものづくり力」の強化に資する開発・生産力の強化、開発設計段階からの品質作り込み、間接部門における業務効率化も含むJust In Time改善活動を通じた生産性向上、人材構造適正化及び最適配置、更なる財務体質の改善等に引き続き取り組むとともに、事業別資産効率指標として導入した三菱電機版ROIC*5の更なる浸透を図り、中長期視点で、総合的な事業効率性と資本効率の向上を目指してまいります。
これら施策を通じ、新たな中期経営計画における2025年度財務目標の「連結売上高5兆円」「営業利益率10%」「ROE10%」「キャッシュ・ジェネレーション3.4兆円/5年」を達成すべく、更なる価値の創出に取り組んでまいります。創出したキャッシュ(3.4兆円/5年)については、成長投資を最優先として重点成長事業を中心に2.8兆円を振り向けつつ、利益成長を通じた株主還元についても更に強化して0.6兆円を目標とするキャピタル・アロケーション方針としています。
なお、営業利益率のセグメント別内訳については、下表を参照ください。
<営業利益率のセグメント別内訳>
2020年度
実績
中期経営計画
2025年度目標
重電システム8.6%9%
産業メカトロニクス3.3%10%
情報通信システム4.3%6%
電子デバイス3.1%10%
家庭電器7.3%11%

かかる三菱電機グループの取組みの中で、活力とゆとりある社会の実現に向け、サステナビリティについて特に優先的に取り組む事項をマテリアリティとして設定し、その状況について情報開示を行い、ステークホルダーとの対話を推進してまいります。
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「環境」については、創立100周年の2021年を目標年とした「環境ビジョン2021」の下、製品使用時におけるCO2排出量の30%削減(2000年度比)と、グループ全体での製品生産時のCO2排出総量の30%削減(1990年度比*6)を目指して取り組んだ結果、目標を達成しました。さらに長期的視点で、グループ内外の力を結集し、事業を通じて脱炭素社会の実現を図るべく、2021年以降の新たな長期環境経営ビジョンとして策定した「環境ビジョン2050」の目標を見直し、2050年までにバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の実質ゼロ*7を目指してまいります。具体的には、「電力CO2排出係数低減への貢献拡大」「製品からの排出抑制」「生産時の排出抑制」「パワーデバイスの高効率化と市場普及拡大」などの温室効果ガス排出削減への取組みを一層強化してまいります。
「倫理・遵法」については、近年発生した労務、情報セキュリティー、製品・サービス品質の問題の発生を厳粛に受け止め、再発防止を経営の最優先課題として各種取組みを進めています。労務問題に対しては、外部専門家による第三者検証を踏まえた「三菱電機 職場風土改革プログラム」を推進し、全従業員が心身の健康を維持し、安心していきいきと働ける職場環境の実現にグループを挙げて取り組んでまいります。セキュリティー対策については、過去に発生した不正アクセス事案を踏まえ、情報セキュリティー基盤強化に向けた活動を推進し、高度化・巧妙化する最新の攻撃パターンへの対策を強化してまいります。複数の品質管理上の不適切行為に対しては、三菱電機グループの品質基本理念*8を再徹底すると共に、関連法規・規格や顧客との契約仕様を確実に満たす品質管理体制の強化を図ってまいります。具体的には、品質第一の意識の更なる刷り込み及び教育の強化、開発・製造情報管理システムの強化、開発・設計段階からアフターサービスに至る全プロセスでの技術力強化及び品質改善の推進等、重要不具合に対する再発防止策の徹底に取り組んでまいります。加えて、国際的な規範に則った人権の尊重への取組みや個人の能力を最大限に発揮できる職場を目指したダイバーシティの推進、コンプライアンス方針の再徹底、内部統制の強化、教育を核としたコンプライアンス活動による一層の意識浸透にグループ全体で真摯に取り組んでまいります。あわせて、コーポレートガバナンス・コードへの適切な対応を図るなど、「コーポレート・ガバナンス」の継続的な向上策に取り組むとともに、適時適切な情報開示に努め、社会・顧客・株主・取引先、及び共に働く従業員とのより高い信頼関係の確立に一層努めてまいります。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
*1 「企業理念」:私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。
*2 「私たちの価値観」:
・「信頼」:社会・顧客・株主・取引先、及び共に働く従業員との信頼関係を大切にする。
・「品質」:社会と顧客の満足が得られる製品・サービスを最高の品質で提供する。
・「技術」:技術力・現場力の向上を図り、新たな価値を提供する。
・「倫理・遵法」:社会規範及び法令を遵守し、高い倫理観を持ち行動する。
・「人」:すべての人の安全・健康に配慮するとともに、人の多様性を理解し、人格・人権を尊重する。
・「環境」:自然との調和を図り、地球環境の保護と向上に努める。
・「社会」:企業市民として、より良い社会づくりに貢献する。
*3 「コミットメント」:Changes for the Better
"Changes for the Better"は「常により良いものをめざし、変革していきます」という三菱電機グループの姿勢を意味するものです。私たちは、ひとりひとりが変革へ挑戦し続けていく強い意志と情熱を共有し、『もっと素晴らしい明日』を切り拓いていくことをお約束します。
*4 ADAS:Advanced Driver Assistance System/先進運転支援システム
*5 三菱電機版ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・運転資本等)に基づいて算出。
*6 削減目標の基準年度:当社単独1990年、国内関係会社2000年、海外関係会社2005年
*7 従来目標は2050年で80%削減(2013年度比)。CO2排出量以上に、パワーデバイスの高効率化と普及等による温室効果ガス削減貢献量を拡大し、実質ゼロの実現を目指します。
*8 「品質は第一であり、納期・価格などに優先する」、「いかなる犠牲を払っても良い品質をつくるという目標は変えることはない」、「安全にして使用に便なるもの、妥当な寿命をもち、性能が均一であること」、「品質に対する責任は、個々の製品の品質に関してそれぞれの製造に関与する全ての経営者・社員が等しく負わなければならない」