有価証券報告書-第149期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 14:46
【資料】
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【項目】
105項目

対処すべき課題

(1) 経営方針
三菱電機グループは、「企業理念*1」及び「7つの行動指針*2」に基づき、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を企業経営の基本と位置付け、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点による「バランス経営」を継続し、強固な経営基盤の確立と持続的成長を追求してまいります。
また、コーポレートステートメント「Changes for the Better」に基づき、変革に挑戦し、常により良い明日への探求を続け、「社会」「顧客」「株主」「従業員」をはじめとするステークホルダーから信頼と満足を得られるよう取り組んでまいります。
0102010_001.png(2) 経営環境及び対処すべき課題
世界経済の先行きは、新型コロナウイルス感染症の影響深刻化が景気に著しい悪影響を及ぼすと考えられます。各国・地域において経済対策は実施されるものの、本格的な景気回復には至らず、年度を通じた経済成長率は前連結会計年度と比べて大幅に減速することが見込まれます。また、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化すれば、経営環境が一層厳しくなると予想されます。
かかる中、三菱電機グループの「連結売上高5兆円以上」「営業利益率8%以上」としている2020年度成長目標については、需要伸長の停滞、為替変動など外部要因や競争環境の激化、価格下落等の市場環境変化への対応不足などに加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2020年5月11日発表の決算短信では2020年度の業績見通しを売上高4兆1,000億円、営業利益率2.9%とし、目標を下回る見込みを示しました。新型コロナウイルス感染症に対しては、雇用維持を基本としつつ、収束までの期間が長期化する場合にも、業績への影響が極小化できるよう対応してまいります。
継続的に達成すべき経営指標については、「借入金比率15%以下」は維持していますが、「ROE10%以上」については現段階で未達となる見込みであり、早期に回復できるよう努めてまいります。
なお、2019年度の業績は、売上高は4兆4,625億円、営業利益率は5.8%、ROEは9.2%、借入金比率*3は6.1%となりました。セグメント別の営業利益率については、下表を参照ください。
2020年度成長目標
セグメント別営業利益率(目標)
2019年度
実績
2020年度
見通し
重電システム8%以上6.3%5.8%
産業メカトロニクス13%以上5.1%1.1%
情報通信システム5%以上5.8%4.5%
電子デバイス7%以上4.2%△2.3%
家庭電器6%以上7.2%3.3%

2020年度は、業績を改善して収益性を伴う「質のよい」成長を実現すべく、グローバル及びグループトータルでの最適な事業推進体制を構築・強化し、日本・欧米・中国における事業競争力を強化するとともに、インド・東南アジア等の成長市場における需要獲得に注力してまいります。そのために、製品・技術等の補完や新地域・新市場での販売網・サービス網の確保、人的資源の獲得を目的とした協業・M&Aなどにも取り組んでまいります。あわせて、資本コストを意識した経営を進めていく中で、開発投資や設備投資などを含む経営資源の最適な配分、「ものづくり力」の強化に資する開発・生産力の強化、開発設計段階からの品質作り込み、間接部門における業務効率化も含むJust In Time改善活動を通じた生産性向上、人材構造適正化及び最適配置、更なる財務体質の改善等に引き続き取り組むとともに、事業別資産効率指標として導入した三菱電機版ROIC*4を継続的に運用し、中長期視点で、総合的な事業効率性の向上を目指してまいります。
新たな中期経営計画の策定にあたっては、オープンイノベーション等の積極活用により事業モデルの変革を加速し、多様化する社会課題の解決に向けたソリューション事業を重点的に強化するとともに、収益力向上と経営資源の有効活用のための事業ポートフォリオの見直しを図り、経営基盤をより一層強化することを基本に考えています。
三菱電機グループは、環境問題や資源・エネルギー問題等の社会課題に対し、製品・システム・サービスを組み合わせたソリューションの提供に取り組み、「持続可能な社会と安心・安全・快適性の両立」をはじめとする価値創出を、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、より一層推進してまいります。加えて、全ての企業活動を通じて、世界共通の目標であるSDGsの17の目標達成に貢献してまいります。
価値創出の推進にあたっては、経営基盤(顧客との繋がり、技術、人材、製品、企業文化等)の強化とあらゆる連携の強化による「技術シナジー・事業シナジー」の進化に加え、事業モデルの変革を進めています。
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かかる三菱電機グループの取り組みの中で、「環境」については、低炭素社会や循環型社会の形成等に貢献すべく、創立100周年の2021年を目標年とする「環境ビジョン2021」の下、製品使用時におけるCO2排出量の30%削減(2000年度比)と、グループ全体での製品生産時のCO2排出総量の30%削減(1990年度比*5)を目指してまいります。また、2030年に向けてSBTイニシアチブに認定された温室効果ガス削減目標であるスコープ1+2で18%削減(2016年度比)、スコープ3で15%削減(2018年度比)*6の達成を目指すとともに、TCFD*7の提言に基づいた気候変動に係るリスクと機会の開示に向けて取り組んでいます。2021年以降の新たな長期環境経営ビジョンとして策定した「環境ビジョン2050」を踏まえて取り組んでまいります。「倫理・遵法」については、近年三菱電機グループにおいて、様々な課題があることが明らかになっております。社員の心身の健康にかかわる労務問題やお客様との契約を守らずに製品を納入していた品質不適切行為、不正アクセスによる個人情報と企業機密の流出可能性などに対して、再発防止に真摯に取り組んでまいります。労務問題に対しては「三菱電機 職場風土改革プログラム」を中心とした施策により、「風通しよくコミュニケーションができる職場づくり」「メンタルヘルス不調者への適切なケアの徹底」などを進めてまいります。品質不適切行為に対しては、品質意識の一層の醸成に加え、迅速な初動対応を強化してまいります。不正アクセスに対しては、社長直轄の「情報セキュリティ統括室」を中心に、侵入防止、拡散防止、流出防止、グローバル対応、文書管理を強化・徹底してまいります。加えて、コンプライアンス方針の再徹底、内部統制の強化、教育を核としたコンプライアンス活動による一層の意識浸透にグループ全体で真摯に取り組んでまいります。あわせて、コーポレートガバナンス・コードへの適切な対応を図るなど、「コーポレート・ガバナンス」の継続的な向上策に取り組むとともに、適時適切な情報開示に努め、社会・顧客・株主・従業員等とのより高い信頼関係の確立に一層努めてまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、顧客・取引先をはじめとする関係者の皆さまと従業員・家族の安全・健康を最優先とし、在宅勤務の徹底や生産・工事・サービス関連部門でのソーシャルディスタンス確保等、感染防止対策を十分に講じた上で、市民生活の維持に向けた企業としての社会的責任を果たすために必要な事業を継続し、製品の安定供給やサービスの提供、顧客へのご支援等を行ってまいります。
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
*1 「企業理念」:三菱電機グループは、技術、サービス、創造力の向上を図り、活力とゆとりある社会の実現に貢献する。
*2 「7つの行動指針」:
・「信頼」:社会・顧客・株主・社員・取引先等との高い信頼関係を確立する。
・「品質」:最良の製品・サービス、最高の品質の提供を目指す。
・「技術」:研究開発・技術革新を推進し、新しいマーケットを開拓する。
・「貢献」:グローバル企業として、地域、社会の発展に貢献する。
・「遵法」:全ての企業行動において規範を遵守する。
・「環境」:自然を尊び、環境の保全と向上に努める。
・「発展」:適正な利益を確保し、企業発展の基盤を構築する。
*3 借入金比率:リース負債を除く借入金・社債残高より算出。
*4 三菱電機版ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・現預金等)に基づいて算出。
*5 削減目標の基準年度:当社単独1990年、国内関係会社2000年、海外関係会社2005年
*6 SBT(Science Based Targets)イニシアチブ:科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを求める、国連グローバル・コンパクト (UNGC)、世界自然保護基金(WWF)、CDP、世界資源研究所(WRI)による国際的イニシアチブ。スコープ1:自社における燃料使用に伴う直接排出、スコープ2:外部から購入した電力や熱の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、2を除くバリューチェーン全体からの間接排出
*7 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請により設置された、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース。