有価証券報告書-第88期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 16:14
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【項目】
59項目

業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度における世界経済は、米国では景気回復基調が続きましたが、欧州・アジアにおいては不透明な状況が継続しました。国内においては、デフレ脱却と経済成長を目指す金融・財政政策や円高修正効果による景気回復への期待が高まっています。
情報通信ネットワークの分野においては、ブロードバンド化の進展とともに映像配信サービスやクラウド・コンピューティングなど、さまざまなサービスが利活用されています。なかでもスマートフォンやタブレット端末などを用いたモバイル・ブロードバンド・サービスが急速に拡大しており、その結果としてネットワークのデータ通信量は急速に増加しております。これに対応するため、通信速度の飛躍的な向上が可能な通信規格であるLTE(Long Term Evolution)の商用サービスが世界各地で本格化するとともに、公衆無線LANなどによるオフロード化が進展しており、世界の主要な通信事業者や通信端末・機器ベンダーによる開発投資が継続しています。
また、中国やインドをはじめとする新興国でも第3世代(3G)商用サービスが普及するとともにTD-LTEの商用サービスも開始されており、基地局など無線通信インフラの整備が積極的に進められると同時に端末製造拠点としての市場が拡大しています。高速化・大容量化に向けた研究開発需要は引き続き増加しており、次世代通信規格であるLTE-Advancedに関連した投資も拡大しています。一方で、国内スマートフォン・ベンダーの事業撤退や、欧米を中心とした通信端末・機器ベンダーの事業再編など、市場環境の大きな変化もありました。
このような環境のもと、当社グループは、ソリューションの強化やラインアップの充実、顧客サポート力の強化など、事業拡大の基盤整備に引き続き取り組みました。
当連結会計年度は、海外において北米を中心に、モバイル市場向け及びネットワーク・インフラ市場向け計測器需要が好調に推移した一方、日本でのモバイル分野を中心とした計測器の需要低迷は継続しました。この結果、受注高は1,038億64百万円(前連結会計年度比8.2%増)、売上収益は1,018億53百万円(前連結会計年度比7.6%増)となり、営業利益は141億23百万円(前連結会計年度比10.1%減)、税引前利益は142億39百万円(前連結会計年度比11.8%減)、当期利益は93億18百万円(前連結会計年度比32.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は93億5百万円(前連結会計年度比33.0%減)となりました。
なお、当連結会計年度より、IAS第19号の改訂に伴い変更後の会計方針を遡及的に適用し、前連結会計年度の連結財務諸表を修正しております。
各セグメント別の業績は以下のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。
1) 計測事業
当事業は、通信事業者、関連機器メーカー、保守工事業者へ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。
当連結会計年度は、北米ではモバイル開発向け及びネットワーク・インフラ向けの計測器需要が好調に推移しました。また、アジアを中心にスマートフォン向け製造用計測器の需要が堅調に推移しました。一方、日本では携帯端末の開発用及び製造用計測器の需要が低調でした。この結果、売上収益は759億62百万円(前連結会計年度比6.6%増)、営業利益は130億11百万円(前連結会計年度比13.2%減)となりました。
2) 産業機械事業
当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム、及び電子部品の高密度実装ラインにおける品質保証ソリューションなどの開発、製造、販売を行っています。
当連結会計年度は、食品産業向けで国内の更新需要の獲得及び北米市場での新規顧客開拓などにより、異物検出機や重量選別機を中心に需要が好調に推移しました。この結果、売上収益は169億19百万円(前連結会計年度比17.2%増)、営業利益は12億8百万円(前連結会計年度比48.3%増)となりました。
3) その他の事業
その他の事業は、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。
当連結会計年度はデバイス事業で事業構造改革費用を計上しましたが、前連結会計年度に含まれていた建物の減損損失費用が当連結会計年度は発生していないこともあり前連結会計年度比増益となりました。この結果、売上収益は89億70百万円(前連結会計年度比0.5%減)、営業利益は9億41百万円(前連結会計年度比46.7%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ55億25百万円増加して432億15百万円となりました。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、84億80百万円のプラス(前連結会計年度は67億40百万円のプラス)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
1) 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は、純額で137億92百万円(前連結会計年度は117億71百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益の計上が主な要因です。
なお、減価償却費及び償却費は30億52百万円(前連結会計年度比2億16百万円増)となりました。
2) 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、純額で53億12百万円(前連結会計年度は50億30百万円の使用)となりました。これは、生産能力増強のための新工場建設や本社地区のBCP(事業継続計画)整備に伴うスクラップ・アンド・ビルド計画推進による、有形固定資産の取得による支出47億70百万円が主な要因です。
3) 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、純額で43億59百万円(前連結会計年度は100億35百万円の使用)となりました。これは、配当金の支払32億24百万円が主な要因です。
(3)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
前連結会計年度
(自 2012年4月1日
至 2013年3月31日)
当連結会計年度
(自 2013年4月1日
至 2014年3月31日)
(開発費の資産計上)
日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上の要件を満たすことから「のれん及び無形資産」に計上しております。
この結果、連結財政状態計算書の「のれん及び無形資産」が572百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が273百万円増加し、「研究開発費」が166百万円減少し、「その他の費用」が179百万円増加しております。
(非上場株式の公正価値評価)
日本基準においては時価のない有価証券(非上場株式)は移動平均法による原価法により計上し減損を行っておりますが、IFRSにおいては公正価値を見積り、取得価額との差額をその他の資本の構成要素として遡及的に認識しております。
この結果、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」(非流動資産)が1,063百万円増加しております。
なお、IFRS移行にあたり、日本基準において過去に認識した投資有価証券の減損損失を戻し入れたことなどから、連結財政状態計算書の「利益剰余金」が1,393百万円増加しております。
(退職後給付債務に関する会計処理の差異)
日本基準においては確定給付制度により発生した数理計算上の差異を発生の翌年度から一定期間にわたって償却しておりますが、IFRSにおいては確定給付制度の再測定に伴う調整額を発生時にその他の包括利益で認識する方法を選択しております。また、日本基準においては一部の子会社において小規模企業の簡便的な退職給付債務の計算を採用しておりますが、IFRSにおいては原則に従って計算しております。
(開発費の資産計上)
日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上の要件を満たすことから「のれん及び無形資産」に計上しております。
この結果、連結財政状態計算書の「のれん及び無形資産」が755百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が188百万円増加し、「研究開発費」が260百万円減少しております。
(非上場株式の公正価値評価)
日本基準においては時価のない有価証券(非上場株式)は移動平均法による原価法により計上し減損を行っておりますが、IFRSにおいては公正価値を見積り、取得価額との差額をその他の資本の構成要素として遡及的に認識しております。
この結果、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」(非流動資産)が1,119百万円増加しております。

(退職後給付債務に関する会計処理の差異)
日本基準においては、当連結会計年度末より退職給付債務から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上する方法に変更し、未認識数理計算上の差異を退職給付にかかる負債に計上しておりますが、IFRSにおいては確定給付制度の再測定に伴う調整額を発生時にその他の包括利益で認識する方法を選択しております。また、日本基準においては一部の子会社において小規模企業の簡便的な退職給付債務の計算を採用しておりますが、IFRSにおいては原則に従って計算しております。

前連結会計年度
(自 2012年4月1日
至 2013年3月31日)
当連結会計年度
(自 2013年4月1日
至 2014年3月31日)
これらの結果、連結財政状態計算書の「従業員給付」(非流動負債)が2,107百万円増加するとともに、日本基準において長期前払費用に含めて表示している退職後給付にかかる前払年金費用が9,355百万円減少しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が754百万円、「販売費及び一般管理費」が1,176百万円、「研究開発費」が169百万円減少し、その他の包括利益の「確定給付制度の再測定」が△469百万円計上されております。
なお、本項目における差異の金額は、IAS第19号「従業員給付」の改訂に伴い、変更後の会計方針を遡及的に適用し修正した後のものです。
(有給休暇及び特別休暇等の債務計上)
IFRSにおいて、当社及び一部の子会社の有給休暇及び一定の勤務年数を条件として付与される特別休暇や報奨金の見積額を債務として計上していることから、連結財政状態計算書の「従業員給付」(流動負債)が148百万円、「従業員給付」(非流動負債)が770百万円増加しております。
(繰延税金資産及び繰延税金負債における一時差異及び回収可能性検討の差異)
IFRSにおいて、従業員給付等の連結財政状態計算書上の他の項目の調整に伴う一時差異が発生したこと及び繰延税金資産の回収可能性に関して将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性をIFRSに基づき検討した結果、連結財政状態計算書の「繰延税金資産」が4,402百万円増加し、「繰延税金負債」が163百万円減少しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「法人所得税費用」が726百万円減少しております。
なお、本項目における差異の金額は、IAS第19号「従業員給付」の改訂に伴い、変更後の会計方針を遡及的に適用し修正した後のものです。
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これらの結果、日本基準の連結財政状態計算書において計上されている「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)△4,342百万円が取り消されております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が697百万円、「販売費及び一般管理費」が1,200百万円、「研究開発費」が188百万円減少し、その他の包括利益の「確定給付制度の再測定」が1,488百万円計上されております。

(有給休暇及び特別休暇等の債務計上)
IFRSにおいて、当社及び一部の子会社の有給休暇及び一定の勤務年数を条件として付与される特別休暇や報奨金の見積額を債務として計上していることから、連結財政状態計算書の「従業員給付」(流動負債)が162百万円、「従業員給付」(非流動負債)が857百万円増加しております。
(繰延税金資産及び繰延税金負債における一時差異及び回収可能性検討の差異)
IFRSにおいて、従業員給付等の連結財政状態計算書上の他の項目の調整に伴う一時差異が発生したこと及び繰延税金資産の回収可能性に関して将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性をIFRSに基づき検討した結果、連結財政状態計算書の「繰延税金資産」が268百万円増加し、「繰延税金負債」が119百万円減少しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「法人所得税費用」が853百万円増加しております。

(政府補助金に関する会計処理の差異)
資産に対する政府補助金について、日本基準では対象資産の取得価額から減額する圧縮記帳を行っておりますが、IFRSでは当該政府補助金を繰延収益として計上し、資産の耐用年数にわたって規則的に純損益に認識する方法によっております。
この結果、連結財政状態計算書の「有形固定資産」が1,335百万円、「その他の流動負債」が80百万円、「その他の非流動負債」が1,303百万円、それぞれ増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が49百万円、「販売費及び一般管理費」が40百万円、「研究開発費」が9百万円、「その他の収益」が60百万円それぞれ増加しております。

前連結会計年度
(自 2012年4月1日
至 2013年3月31日)
当連結会計年度
(自 2013年4月1日
至 2014年3月31日)
(IFRS移行時の累積換算差額)
IFRSでは、IFRS初度適用における免除規定を適用し、日本基準においてその他の包括利益累計額に含めて表示しているIFRS移行時の在外営業活動体の累積換算差額△7,207百万円をゼロとみなし、連結財政状態計算書の「利益剰余金(IFRS移行時の累積換算差額)」に計上しております。
(資産計上された開発費に関連する支出)
日本基準において開発費に関連する支出は営業活動によるキャッシュ・フローに区分しておりますが、IFRSにおいては、資産計上された開発費に関連する支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分されることから、投資活動によるキャッシュ・フローが166百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローが同額増加しております。
(IFRS移行時の累積換算差額)
同左


(資産計上された開発費に関連する支出)
日本基準において開発費に関連する支出は営業活動によるキャッシュ・フローに区分しておりますが、IFRSにおいては、資産計上された開発費に関連する支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分されることから、投資活動によるキャッシュ・フローが260百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローが同額増加しております。