有価証券報告書-第88期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 16:14
【資料】
PDFをみる
【項目】
59項目

対処すべき課題

今後の見通しにつきましては、世界経済は米州を中心に回復基調で推移するものと思われますが、欧州・中国経済の動向や地政学的リスクの増大などに不安定な要素を残しています。また、価格競争の激化や為替相場の動向などについても引き続き注視していく必要があります。
当社グループはこのような市場環境を踏まえ、次の施策を展開してまいります。
主力の計測事業は、引き続き次の3つの市場に注力してまいります。世界各国で需要の拡大が見込まれるモバイル市場では、顧客との開発ロードマップの共有や技術サポートの強化により顧客密着度を高め、競争優位のポジションを確立します。ネットワーク・インフラ市場では、基地局網の拡大と高密度化、ネットワーク機器のブロードバンド化が進展しており、これらネットワーク・インフラの増強に対応した製品を、グローバルに展開してまいります。エレクトロニクス市場では輸送機器、家電製品、社会インフラにまで多様な無線技術が応用されており、成長する分野でユーザーの利便性を高めた計測ソリューションを提供することにより事業拡大を目指します。また、グローバル調達体制の構築や、研究開発、顧客サポートの効率化を積極的に進め、更なる収益力の向上に努めます。
産業機械事業は、製品の高付加価値化、差別化戦略により市場を深耕するとともに、成長する海外市場では、事業基盤の更なる強化やグローバル調達・海外生産の拡大により価格競争力を高めた製品を投入し事業の拡大を目指します。
これらの経営戦略を着実に遂行するためには、阻害要因となるリスクを適切に管理・対処し、競争優位の源泉に変えていくことが重要です。このため、内部統制システムの整備により確立した国内外のグループ会社との連携を更に強化しリスク・マネジメント・システムを高度化してまいります。さらに、経営の透明性の向上や経営に対する監督機能の強化のため、コーポレート・ガバナンスの充実を重要な経営課題と位置づけ、必要な施策を実施してまいります。
また、当社グループは、誠実な企業活動を通じてこそ企業価値の向上が実現されると考えており、CSR活動にも積極的に取り組んでおります。当社にとってのCSR活動は、製品・サービスを通じた安全・安心な社会づくりへの貢献が第一義であると考えておりますが、それだけにとどまらず、コンプライアンス、顧客満足(CS)、サプライ・チェーン・マネジメント、地球環境保護、ダイバーシティの尊重(女性や外国籍の従業員等の人財活用等)、人権・労働安全衛生など、CSR活動を推進することにより経営インフラをグローバルで更に強化してまいります。
仕事と育児等の両立支援については、出産・育児の前後における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、全社員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めてまいります。なお、2013年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。
日本米州EMEAアジア他全社計
全社員に占める女性社員の比率
<女性社員数/全社員数>
13%30%22%26%19%
男性の幹部職登用率を100とした女性の幹部職登用率
<(女性幹部職数/女性社員数)/(男性幹部職数/男性社員数)>
9%59%74%78%47%

(注)EMEA(Europe,Middle East and Africa):欧州・中近東・アフリカ地域
このたび、当社グループは、ブランディング再構築プロジェクトの一環として、新ブランド・ステートメント「envision:ensure」を掲げました。これに込めた思いは、「お客様と夢を共有しビジョンを創りあげるとともに、それをイノベーションによりお客様の期待を超える確かなかたちあるものへと創りあげる」というものです。今後も経営資源を最大限に活かして企業価値の向上に努めるとともに、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献していく所存です。
当社は、2013年6月26日の第87期定時株主総会終結の時をもって、「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を継続しないことといたしました。これは、「ANRITSU 2020 VISION」及び中期経営計画の実現、並びにコーポレート・ガバナンスの整備・強化によって企業価値の向上に継続して取り組むこと、加えて、株主の皆様への利益還元を充実させ、株主・投資家の皆様との対話の一層の充実を図ることが、当社が最優先で取り組むべき課題であると判断したためです。これに伴う、株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりです。当社は、2020年までに到達したい姿を描いた「ANRITSU 2020 VISION」の中で掲げた「グローバル・マーケット・リーダーになる」・「事業創発で新事業を生み出す」という目標達成を目指すとともに、今後とも企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に取り組んでまいります。
①基本方針の内容
当社は、公開企業として当社株式の自由な売買を認める以上、特定の者の大規模な買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否か、ひいては会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆様の意思に基づき決定すべきものと考えます。一方で、当社は、企業価値の源泉となり株主共同の利益を構築している経営資源の蓄積を最大限に活かし、当社グループのブランド価値を高めていくためには、中長期的観点からの安定的な経営及び蓄積された経営資源に関する十分な理解が不可欠であると考えています。したがって、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者に、これらに関する十分な理解なくしては、当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損されるおそれがあると考えています。
そのため、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切な者による大規模買付行為に対しては、株主の皆様のご判断に資するよう、大規模買付者への情報提供要求など積極的な情報収集と適切な情報開示に努めるとともに、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上をはかるため、必要に応じ、法令及び定款によって許容される限度において、適切な措置を講ずるものとします。
②基本方針の実現のための取組みの概要
当社は、より長期的な視点で企業価値の向上に取り組むために、10年スパンの時間軸で取り組む「ANRITSU 2020 VISION」及びそのマイルストーンとなる中期経営計画を策定し、その実現に向けて取り組んでおります。また、当社は、コーポレート・ガバナンスの強化のため、執行役員制度の導入や独立性のある社外取締役の選任による経営監督機能の強化、報酬委員会・指名委員会の設置による経営の透明性の確保に努めております。さらに、大規模買付行為に備え、社外取締役及び社外監査役によって構成される独立委員会の設置を含めた社内体制の整備を進め、役割分担や行うべき対応を明確にしています。
このような企業価値向上を核とした経営を進めることは、当社の企業価値及び株主共同の利益を著しく損なう大規模買付者が現れる危険性を低減する方向に導くものとして、前記①の基本方針に沿うものと考えます。また、当社役員の地位の維持を目的とするものではないものと考えております。