有価証券報告書-第98期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 15:23
【資料】
PDFをみる
【項目】
145項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、コーポレートスローガンを「オンリーワン・カンパニーの実現を目指す」と掲げ、経営の基本方針を「タムラグループミッション」に定めております。
MISSION
私たちは、タムラグループの成長を支えるすべての人々の幸せを育むため、世界のエレクトロニクス市場に高く評価される独自の製品・サービスをスピーディに提供してまいります。
VISION
① タムラグループは、世界的視野にたち、エレクトロニクス産業が求める事業を経営基盤とします。
② タムラグループは、市場本位をつらぬき、世界のお客様が求める技術を事業基盤とします。
③ タムラグループは、公正な視点で社員を評価し、努力によって成果をもたらす人を最も賞賛します。
④ タムラグループは、国際社会の一員として行動し、各国の法規制を順守し文化・慣習を尊重します。
⑤ タムラグループは、地球環境の保全に努め、資源の有効化と再資源化を推進します。
(2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び課題
当社グループは、タムラ製作所創業100周年となる2024年における当社の「ありたい姿」の実現を目指す、第12次中期経営計画「Biltrite Tamura GROWING ANEW」を2019年4月に始動し、2021年度を最終年度として取り組んでおります。その初年度後半に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大があり、2年目である当連結会計年度はじめにおいて世界経済は急激に停滞いたしました。その後、中国市場がいち早く回復し、当社グループに関わるエレクトロニクス市場では、自動車や情報通信市場が早期に回復に転じ、巣ごもり需要を起点とした家電関連製品の高水準の需要が継続しました。また秋口以降は、産業機械市場が急速に回復に向かうなど、当連結会計年度は全般的には緩やかな回復基調で推移いたしました。その一方で、新型コロナウイルス感染症は収束に至らず、半導体供給不足や、銅をはじめとする原材料価格の高騰、ミャンマーの政情不安など、新たな不安要素が顕在化しております。
今後も厳しい経営環境の継続が予想されますが、「新しい生活様式」や世界的にカーボンニュートラルを目指す潮流が加速する中、通信基地局用の基板に欠かせないソルダーペーストやソルダーレジスト、エネルギー変換の基幹部品であるトランスやリアクタを扱う当社グループの高信頼・高効率のテクノロジーは、必ずや国際社会が目指す姿の実現に貢献するものと考えております。当社グループの中期経営計画は、国際社会の共通目標である「SDGs(持続可能な発展目標)」達成に向けた活動を基軸とし、当社の成長戦略である「Oneタムラ戦略」が社会の期待と軌を一にすることを目指しております。具体的には、Oneタムラで「将来へ挑戦する事業戦略」「働きがいを目指す働き方改革」「効率を高める業務改革」による、「三位一体」の取組みを推進してまいります。
① 将来へ挑戦する事業戦略
当社グループは、既存市場・既存製品の先にある新市場・新製品にいかに挑戦していくのかを社内で議論し、その実現に向けた戦略を定め、実行を進めております。各セグメントが製品・技術及び市場の観点から目指すべき市場や開発すべき技術を明確にすることはもちろん、新市場・新製品の創出を目指し、経営層が旗振り役となってセグメント間のコラボレーション、産学協業、他社企業との連携を推進しております。第12次中期経営計画では、グループ全体で注力する市場として「車載」「パワーエレクトロニクス」「IoT・次世代通信」を掲げましたが、足元では脱炭素政策の加速で、電気自動車や再生可能エネルギーへの転換が前倒しで進んでおります。今後も、こうした成長市場に向けたグループ一丸となった取組みを一層強化し、当社が掲げる「エコテクノロジーによる社会的問題の解決」という課題に取り組んでまいります。
車載パワーエレクトロニクスIoT・次世代通信
安心安全な交通や物流の実現クリーンエネルギーの安定供給人と人をつなぐ技術
リモートワークの実現
(電子部品関連事業)
昇圧リアクタ・コイル
充電器用リアクタ
電流センサ
(電子化学実装関連事業)
車載用ソルダーペースト
車載用ソルダーレジスト
車載用リフローはんだ付装置
(電子部品関連事業)
大型トランス・リアクタ
ゲートドライバ
酸化ガリウムパワーデバイス
(電子化学実装関連事業)
パワーデバイス用無残さペースト
(電子部品関連事業)
自販機用金額表示器
人感センサ(見守り)
(電子化学実装関連事業)
フレキシブル基板用ソルダーレジスト
レーザーはんだ付ペースト
可逆伸縮性接合材
半導体用ソルダーペースト
導電性接合材
スマートファクトリー対応実装装置
(情報機器関連事業)
4K・8K音声卓
音声装置のネットワーク対応

② 働きがいを目指す働き方改革
中期経営計画では人材の視点・業務プロセスの視点において、「働き方改革」・「ダイバーシティ」をテーマに掲げております。社員の多様な働き方を可能にすべく、コロナ下で浸透したリモートワークやフレキシブルな勤務体系を今後の新しい日常として定着させ、育児や介護における在宅勤務、海外スタッフのWeb会議への参加などを進めております。同時に、人事制度を刷新し、職務グレード制を厳格に適用することにより人事の透明性と効率化を図るとともに、社員のもつ高度専門性を遺憾なく発揮させる環境を整えます。また、ダイバーシティを意識した次世代育成を計画的に進めてまいります。
③ 効率を高める業務改革
当社はこれまで世界的に共通のERPを導入したことに始まり、コロナ対策におけるリモートワーク体制の構築やRPA導入など、積極的にITによる業務改革を進めてまいりました。今後ワクチンの開発や治療法の改善が進み、コロナを克服できるとなれば、経済活動は一気に活性化するものと考えます。その際に、売上の拡大に対して業務の効率性を維持できれば、収益性の大幅な改善が期待されます。IT化に加えて、改めて事業活動のそのものの効率性に目を向け、一段踏み込んだ業務改革を推進してまいります。
当社グループは、「世界の持続可能な発展」とともに、「当社グループの100周年とその先の持続的な成長」を目指しております。2021年度の業績予想は、中期経営計画で掲げた売上高・営業利益に遠く及ばない数字となっておりますが、魅力ある製品の提供で付加価値を高め、社員が能力を発揮できる環境を整備し、ITで業務効率化を図ることで、2024年に迎える創業100年が輝かしいものになるように、Oneタムラで取り組んでまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
第12次中期経営計画「Biltrite Tamura GROWING ANEW」で目標とする経営指標は以下のとおりであります。
① 収益性の向上を第一の目標として、100周年での連結営業利益率10%以上を目指します。
② 資本効率に関する目標として、100周年でのROE10%以上を目指します。株主資本を充実し経営基盤の安定化を推進しながらも、資本効率を高めてまいります。
また、配当については、中長期的な経営計画を通じた企業価値の増大を図りつつ、株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題ととらえ、安定的な配当を基調とし半期ごとの連結業績を加味して総合的に勘案し決定してまいります。この方針の下、連結業績、単独業績を見据えながら、現金配当を中心に株主様の利益還元を考慮していきますが、自己株式取得を含めた「総配分性向」についても検討を進めてまいります。