有価証券報告書-第101期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/22 16:56
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112項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社では、歩むべき方向性を明確にするため、経営理念を2003年4月に制定しております。この理念に則り、半導体をコアビジネスに技術力と創造力の革新に努め、独自技術によるグローバルな事業展開を進めるとともに、企業に対する社会的要請や環境との調和に対する着実な対応を通じて企業価値を最大限に高めるべく、確固たる経営基盤の確保に邁進してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社では、2018年4月から向こう3ヵ年にわたる中期経営計画(以下、「18中計」といいます。)を策定しております。本計画では、10年後に連結売上高3,300億円、連結営業利益率15%以上を目指す長期見通しを設定しており、この長期見通しと一体を成す18中計においては、最終年度である2021年3月期に連結売上高2,000億円、連結営業利益率10%を目指してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
18中計では、パワー半導体、パワーマネージメント、パワーエレクトロニクスを事業領域とし、パワーデバイス、パワーモジュール、パワーソリューション技術での差別化を追求してまいります。「お客様のイノベーションのために、社員一人ひとりのイノベーションのために、そして、社会のイノベーションのために、サンケン電気はパワーエレクトロニクスを通じて貢献していく企業になる。」という意志を込め、スローガンを「Power Electronics for Your Innovation」と定めております。本計画では、10年後における業界上位の地位構築と高収益企業へと成長するための中期目標を18中計で設定しております。18中計達成に向けた計画の基本方針につきましては以下に記載の通りです。
18中計の基本方針
1)独自性のある技術、人と組織のパフォーマンスで成長する高収益企業の実現
①構造改革の遂行と成長戦略の実行による高収益企業への変革
②スピード経営と変化対応力の発揮によるグローバル競争力の獲得
③重点戦略市場への注力による売上成長
④外部能力の最大活用、自前主義からの脱却による迅速で効率的な経営の実践
⑤投資回収の早期実現と棚卸資産の圧縮による有利子負債の削減
⑥顧客視点での行動、顧客満足度の向上を活動目標とする戦略思想の浸透
⑦働き方改革、健康経営の推進による人材オリエンテッドカンパニーの実現
2)電動化・デジタル化が加速する未来市場に適合した製品での売上・利益拡大
①INV化、DC化が加速する白物市場での次世代モジュール製品の投入とビジネスの拡大
②車載市場に向けたADAS、電動化対応製品の早期開発と市場投入
③デジタル製品強化と早期市場開拓、ニューTV市場の創出
④大電流デバイスの産機・車載市場に向けた製品早期開発と市場戦略の構築
⑤次世代通信市場に向けたデジタル化製品による電源ソリューションの提案と売上拡大
⑥化合物半導体(SiC、GaN)の早期開発と市場展開の加速
⑦他社とのアライアンスにより海外市場へエコ・省エネ製品で参入
3)スピード、実行力で差別化を図り技術的に認められる企業への変革
①SPP(Sanken Power-electoronics Platform)の推進
②パワーIoT戦略の推進
③生産技術センター立ち上げと運用開始
④SG開発コラボレーションと海外開発拠点の拡充による開発スピード向上
⑤マーケティング機能を強化し、顧客メリットのある戦略製品を商品化
⑥デバイスとパワーシステムのコラボレーションで新事業領域を創出
⑦次世代デバイス製品のラインアップ拡充と市場投入
4)革新的ものづくりの追求、強固なバリューチェーンの確立によるグローバル競争力の確保
①革新的ものづくりの原動力となる要素技術力、製造技術力、生産技術力の高度化
②スマートファクトリーの追求と生産性の向上、そのためのIT化拡大とAI、IoTへの取り組み
③購買力向上による部材安定供給、海外材活用やウェーハ大口径化などによるコストダウンの加速
④リードタイム短縮、受注生産の拡大などにより一層の在庫削減
⑤IT化、生産管理システムの活用などによる需要変動への対応力確保
⑥品質保証体制の強化による顧客からの信頼獲得
⑦信頼を基礎としたビジネスパートナーとのWin-Win関係の構築
5)成長市場におけるマーケティング強化とグローバルな販売戦略構築による売上拡大
①戦略市場に対する横断的なマーケティング機能の組織化
②EV化が進む車載市場に対するグローバル販売体制の構築
③白物市場における"QCDD"の向上による、さらなるシェアアップの実現
④急成長する産機市場に向けたチャネル戦略による間接販売強化
⑤データベース化された「物件管理」の"生・販・技"共有による開発・生産・販売のバリューチェーン構築
⑥戦略的な売価管理による"稼ぐ力"の強化
⑦顧客に信頼されるパートナーシップの確立によるWin-Win関係の構築
6)社員一人ひとりのアイデンティティの尊重、そしてグループの総合力によるステークホルダーからの信頼の獲得
①社員一人ひとりのステークホルダーを意識した行動による信頼の獲得
②社員のニーズに合った働き方の提供と多様な人材の活用
③「いつでも どこでも だれでも」働けるIT環境の構築、社員一人ひとりの生産性の向上
④E環境、C遵法、S安全、そしてQ品質、Cコスト、D納期の追求
⑤競合先との差別化だけでなく顧客の心を捉える思考と行動を重んじる社風
⑥悪いニュースは早く報告する、問題は先送りしない風土の醸成
⑦思考を変え、行動を変え、結果を変える、挑戦する社員の登用育成
(4)会社の対処すべき課題
前中期経営計画である2015年中期経営計画(計画期間:2015年4月~2018年3月。以下、「15中計」といいます。)では、米国子会社における車載製品の持続的成長や海外白物家電向け製品の大幅拡大といった成果がありました。しかしながら、戦略市場に対する高付加価値製品の市場投入遅れ、多数の半導体チップを搭載する白物家電向け製品の需要急増における半導体チップ生産能力とのアンマッチに起因するチャンスロスの発生、新エネルギー市場の普及低迷に伴うパワーシステム製品の伸び悩み、既存品の原価改善遅れなどの要因により、結果として、15中計最終年度に掲げた目標値は未達となりました。
当社は、こうした15中計の進捗状況並びに財務体質の面での課題を踏まえ、15中計の最終年度となる当連結会計年度において、大幅な事業構造改革の実施に踏み切りました。この事業構造改革は、企業体質の改善促進と成長戦略の推進加速により、中長期的な企業価値向上の実現を目指したものであり、具体的には、PM事業からの撤退や半導体デバイス事業での非戦略市場からの撤退並びにこれに伴う関連棚卸資産の廃却、本社人員規模の適正化による固定費削減及び連結業績において重要な地位を占める北米子会社での成長戦略の促進策などを実施したものであります。この事業構造改革に伴い特別損失が発生し、結果として当期純損失を計上することとなりましたが、売上の拡大と構造改革の効果により営業利益及び経常利益は前期比較において大幅に増加しました。なお、構造改革に起因する特別損益を消去した場合の自己資本利益率(ROE)は10%超の水準にあり、また財務体質の面でも改善を図ることが出来ました。こうしたことから、構造改革の成果は実施初年度から確実に表れており、将来の成長戦略実現へと繋げ、収益構造改革に向け必要不可欠な経営的措置であったと認識しております。
かかる状況下、当社グループは更なる成長実現に向けた「2018年中期経営計画」(以下、「18中計」といいます。)を策定し、本年4月1日よりスタートさせています。18中計では、長期的な「あるべき姿」を「独自性のある技術、人と組織のパフォーマンスで成長する高収益企業」とし、事業領域を「パワー半導体」、「パワーマネジメント」、「パワーエレクトロニクス」と設定いたしました。長期的な経営目標としては、10年後の売上高3,300億円、営業利益率15%以上を目指すこととし、そのための第一歩となる18中計最終年度の数値目標を、売上高2,000億円、営業利益率10%と設定いたしました。
この目標を達成するため、以下施策に取り組んでまいります。
① 18中計の成長戦略実行に当たっては、デジタル電源IC、EV・モジュール、次世代センサーを新たな成長エンジン
とし、この領域に注力してまいります。また、製品開発力の強化、開発スピードの短縮化を狙って製品別の事業
部体制に移行するとともに、この組織体系に横串を通すべく、市場別の管理責任者を設定することで、製品別・
市場別のマトリックスによる責任体制明確化を実施いたします。
② 欧米ビジネスを牽引する米国子会社のアレグロ社では、スピードセンサー、電流センサー、リニアセンサー、
モーター制御ICといった製品で、従前からの車載市場のみならず産機・民生市場においても売上拡大を図って行
くとともに、次世代センサーの開発を進め早期の業績寄与を狙ってまいります。
③ 当社個別での半導体デバイス事業では、白物家電、車載及び産機・民生の各市場に注力してまいります。
・白物家電市場では省エネ・静音化・省スペース化に向けたインバータ化とDC化の加速が見込まれ、車載市場で
は電動化・安全性向上・高効率化の進展が見込まれます。また、産機・民生市場では、通信機能搭載あるいは
極めて高効率のデジタル電源ICの市場急拡大が見込まれます。これら市場に向けた製品開発に注力し、新用途
参入や既存品拡販により売上を伸ばしてまいります。
・開発力の強化施策として、優秀な設計技術者を広く世界に求め、その活動拠点としてのデザインセンターをグ
ローバルに設立・展開し、新技術の開発スピードを加速させることにより、競争力のある新製品をタイムリー
に市場投入し、上記の市場戦略の遂行をサポートしてまいります。
④ パワーシステム事業では、産機・民生、海外などの成長市場に注力するとともに、車載市場での拡大を図ってま
いります。
・産機・民生市場では、電源の小型・分散化が進むIoT領域で、屋外設置型の無停電電源装置(UPS)の拡販を進
めるとともに、自由化が進む電力市場でのバーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)への蓄電システム
(ESS)提供等を進め、売上増を目指します。
・海外展開としては、アセアン地域での電化率アップに伴う電力安定供給ニーズへの対応や通信インフラの拡充
対応において売上増を図り、また、省エネ規制厳格化が進む中国でのモーター制御用VVVFインバータの販売拡
大やインドネシア企業との提携によるUPS販売を進めるほか、車載ボードの海外での製造・販売など、パワーシ
ステム事業全体のグローバル展開を加速して行きます。
⑤ 半導体デバイス事業とパワーシステム事業、両事業に共通する開発コンセプトとして「Sanken Power-
electronics Platform」(SPP)を構築し、この考え方に沿って、モジュール化・標準化による開発工数の削減、コ
ストパフォーマンスの高い材料の事前選定と共通部材化、そして生産ラインの共通化・自動化・混流生産化を推
進し、以て開発期間の短縮と原価引き下げを実現してまいります。
こうした施策により、売上拡大と収益力改善による業績向上と財務体質の強化を図ってまいります。このほか、社内情報システムを最大活用した管理強化に取り組み、適正な在庫残高の維持に注力してまいります。また、働き方改革を18中計の重要テーマの1つに掲げ、その全社横断的な活動の推進母体として「働き方改革推進本部」を新設いたしました。今後は、日常業務の生産性向上を目指す「業務改革」、働く場所や時間の柔軟性を指向する「制度改革」、そして、社員一人ひとりがこうした環境変化の中で成果を上げていくための「意識改革」、これらの3改革を推進してまいります。当社グループは、これらの取り組みを通じて、18中計の基本方針として掲げる「独自性のある技術、人と組織のパフォーマンスで成長する高収益企業の実現」に向けてグループ一丸となって邁進してまいる所存でございます。

当社では、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を次の通り定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次の通りです。
(1) 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
上場会社である当社の株式については、株主及び投資家の皆様による自由な取引が認められているため、当社取締役会としては、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆様の意思により決定されるべきであり、当社株式に対する大規模な買付行為に応じて当社株式を売却するかどうかの判断も、最終的には当該株式を保有する株主の皆様の意思によるべきものと考えます。
しかしながら、当社及び当社グループの経営にあたっては、独自のウエーハプロセスや半導体デバイスの製造技術、また回路技術を駆使した電源システムとオプティカルデバイスの組み合わせなど、幅広いノウハウと豊富な経験が必要になります。更に、お客様・取引先及び従業員等のステークホルダーとの間に築かれた関係等への十分な理解が不可欠であり、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者に、これらへの理解が無い場合、将来実現することのできる株主価値を適正に判断することはできず、当社の企業価値及び株主共同の利益が著しく損なわれる可能性があります。
また、大規模な買付行為の中には、高値で株式を会社関係者に引き取らせる行為など、株主共同の利益を著しく損なうと判断される場合もあります。この様な場合、当社は当該大規模買付行為の是非に関し、株主の皆様に適切にご判断いただくため、大規模買付行為を行おうとする者に対し、必要な情報の提供を求めるとともに、適切な情報開示や株主の皆様が検討に必要とする時間確保にも努め、また、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講ずるべきと考えております(以下「基本方針」といいます。)。
(2) 基本方針実現のための企業価値向上に向けた取組み
当社では、経営理念に則り、半導体をコアビジネスに技術力と創造力の革新に努め、独自技術によるグローバルな事業展開を進めるとともに、企業に対する社会的要請や環境調和への着実な対応を通じて、企業価値を最大限に高めるべく、確固たる経営基盤の確保に邁進しております。更に、中長期的な会社の経営戦略として、3ヶ年にわたる中期経営計画を策定しており、その実現に向け、グループを挙げて取組んでおります。
また、当社では、独立系パワー半導体メーカーというポジションと、それを最大限活用する経営方針・経営計画へのご理解を深めて頂くため、各ステークホルダーとの対話を緊密化させ、企業価値への適正な評価が得られるように努めております。
コーポレート・ガバナンス体制の強化としては、独立社外取締役の選任により取締役会の監督機能を強化するとともに、執行役員制度を通じ機動的な業務執行体制の構築、マネジメント機能の強化を推進しております。加えて、経営環境の変化に迅速に対応できる経営体制の実現と、事業年度における取締役の経営責任の明確化を図るため、取締役の任期を1年としております。
当社取締役会は、これら取組みが、当社の企業価値を向上させるとともに、当社株主共同の利益を著しく損なう様な大規模買付行為の可能性を低減させると考えております。従って、これら取組みは基本方針に沿ったものであり、当社株主共同の利益に資するものであると考えております。