有価証券報告書-第85期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/22 15:10
【資料】
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【項目】
124項目

研究開発活動

当社グループ(当社及び連結子会社)は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します。」を全ての礎に、事業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
Right(最適な)Unique(独自性)、Green(環境にやさしい)を兼ね備えた、「美しい電子部品を究める」ことを事業の根幹とし、70年の歴史の中で育んだアルプス独自の強みを最大限に活かし、新しい価値を創造しています。
当社グループの研究開発費の総額は29,799百万円です。
(1)電子部品事業
当社の価値創造の源泉は、市場のニーズを捉えた「美しい電子部品」です。そして、それをタイムリーに世の中に送り出すことが、私たちの価値創造です。創業以来70年の中で、深化・融合した技術と脈々と受け継がれている企業風土が相まって、価値創造を支えています。
人とメディアのより快適なコミュニケーションを目指し、「HMIの深化」「センサバラエティの拡大」「コネクティビティをキーとしたビジネスの拡大」を独自の柱とし、固有技術の深化・融合により、新たな価値ある製品を開発しています。
また、更なる未来を見据えた技術開発は、現在所有する技術に留まらず、新たな技術領域への挑戦に向けて、大学や研究機関・他企業とのオープンイノベーションやアライアンスにもこれまで以上に取り組み、当社独自の生産技術力と組み合わせて、今までにない新しい製品を新しい市場に送り出すために、ダイナミックな技術開発を行っています。
電子部品事業に係わる研究開発費は19,539百万円です。
①車載市場
車の安全・安心・快適・環境に対する要求の高まりや、将来の完全自動運転、地球環境を意識した電気・燃料電池自動車に対応すべく、各種センサやADAS(先進運転支援システム)に用いるデバイス製品の拡充、電子シフターなど車室内で人が操作するモジュール製品まで幅広く開発を行っています。
<車載モジュール製品>車の更なる安全・安心、かつ快適な車室内空間を実現するために、創業時からの実績を強みにしたHMI(Human Machine Interface)技術及びセンシング技術を応用した開発を行っています。自然素材を使った車室内のデザイン調和と、手袋をした状態でも可能な操作性を両立させたハプティック®タッチパッドや静電ステアリングホイールスイッチ等の開発を進めています。更に、衝突防止・自動運転の目となるべく、前方の車両や人・障害物などを検知するための超短距離ミリ波レーダーの開発を進めています。
心地良く快適な操作フィーリングを追求し、顧客のニーズを具現化するために、複合化・多機能化によって付加価値の向上を図りながら、材料・部品の共通化及び設計・開発工程の標準化を推進しています。更に、生産性改善にも一層の拍車をかけて安定品質を維持・徹底し、収益力の強化を図っています。
<車載デバイス製品>ADASでの自動運転の実現に向け、コア技術である高周波回路技術によりモジュール化を行い、V2X(Vehicle to X)モジュールの量産を開始し、今後更なる拡大を見込んでいます。ITS(高度道路交通システム)が進展していくことによって、これまで以上に必要性が高まる車載デバイスの製品ラインナップの更なる拡充のため、研究開発を強化していきます。
車の神経というべき、状態検知のニーズが今後ますます増えており、エンジン、車体、ドアに留まらず、シートにも各種センサが組み込まれ、車と人をセンシングすることにより、より安全で、快適な制御が可能になります。ドア、シートベルト等の開閉検知に使われている検出スイッチには、故障診断機能を付加、例えスイッチが故障したとしてもアラームを発信することが可能となり、車両の安全性、信頼性向上に寄与しています。また、EV(電気自動車)/HV(ハイブリッド車)のモーター駆動制御とモーターの回生電流の直流返還制御や、バッテリーの充放電電流検知に使用されており、制御のための心臓部品として重要な役割を担っている電流センサを量産開始しました。EV/HVの拡大に伴い、今後ますます需要が見込まれます。
②民生その他市場
スマートフォンをはじめとするモバイル市場やEHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)市場において、機器の操作性・快適性・環境性・高速大容量化等に貢献すべく、新素材からセンサデバイス、モジュール製品等の幅広い分野で研究開発を行っています。
<モバイル市場>巨大な需要が続くスマートフォン市場、新たなVR(Virtual Reality)市場などで、スイッチなど各種操作入力用製品をはじめ、カメラの高性能化及び低消費電力、薄型化などのニーズに応え、カメラ用アクチュエータの新製品開発に更に注力します。また、VR市場ではゲームの世界を中心に、工場や医療現場での遠隔操作用コントローラ等幅広い用途を想定し、ハプティック®の製品開発を進めています。固有の精密加工技術や磁気・電気設計技術を応用した振動フィードバックデバイス「ハプティック®リアクタ」はゲーム機に採用され、今後更なる拡大を見込んでいます。
ICT(Information and Communication Technology)による「超スマート社会」の実現が政府より打ち出されるなど、日本をはじめ先進各国でビッグデータを活用した革新的な取り組みが始まっています。工業、農業、医療など、様々な産業で情報技術、エレクトロニクスの重要性が高まっています。当社はIoT(Internet of Things)スマートモジュールを用いて通信等各社との協業によるソリューション提案をHealthcare、Industry等の様々な分野で進めました。
Energy分野では、大手海外企業とスマート分電盤用電流センサを量産開始しました。また家庭向け蓄電池システムの出荷も開始しており、当社独自の軟磁性アモルファス材料 リカロイ™を用いた製品開発を基に、省エネルギー分野でのビジネス開発を進めます。
IoT分野では、世界最小のセンサネットワークモジュールを開発し、ユーザー側で容易にIoTが構築できる開発キットも提供しています。現在、オフィスビルの環境管理や、工場における生産ラインの稼働状況モニタリング、物流倉庫内の状態管理、更に農業ICTなど、幅広い用途で採用が進んでいます。また、製造現場における実証実験に基づいた「作業者見守りシステム」を開発中です。各種センサをヘルメットに装着、環境情報や作業者の生体情報・活動情報を取得することで、体調不良の検知や万が一の労働災害発生の早期発見・早期処置が可能となります。これら様々なビジネス形態の中で、スピーディーな事業基盤の確立に向け、他社との協業や提携なども積極的に進めます。
IoTの普及によって、ネット上のデータ通信量はますます増加することが予想され、それに伴って光通信システム機器を小型化し、複数設置することで対応する必要が有ります。当社はチャッキングエリア付き狭幅非球面ガラスレンズを商品化しました。機器の小型化を可能にする横幅0.6mmの狭幅化と、自動機で部品を掴む(チャッキング)エリアを設けたことで、機器への実装、調整が容易になったことが高く評価されています。
(2)車載情報機器事業
カーエレクトロニクス技術で磨かれた高品質なエンターテインメントを提供するアルパイン独自の「五感に響くHMI(Human Machine Interface)」技術に加え、自動運転、コネクテッド、EV(電気自動車)、シェアリングの4大潮流を加えた独創的な付加価値を生み出す技術開発をアルプス・アルパイングループの連携により統合コックピットとして実現を目指して技術・開発領域を拡大しています。クルマの中から外へ領域を拡げ魅力的なコンテンツやサービスを提供するクラウド領域、そしてコミュニティ領域ではビッグデータ、AI(人工知能)を活用し顧客のニーズやパターンを分析し最適な情報やサービスを提供していくことで事業の拡大を目指します。
現在アルパイン(株)では、自動車メーカーと音響機器/情報・通信機器ともに複数の共同開発プロジェクトを推進しており、今後適宜市場への展開を行なっていきます。
音響機器事業ではスピーカー振動版にCFRTP(熱可塑炭素繊維樹脂)を採用し、従来の振動板にない高音質化と耐熱性の両立に成功しました。CFRTPは航空機、自動車等の軽量化等の金属の代替え技術として期待されています。アルパイン(株)は金属代替え技術の範囲だけではなく、その特性を生かした内部損失や異方性の特徴を生かしたスピーカー振動板への採用を目指し開発を進めてきました。アルパインブランド商品より順次製品化を進めていきます。
情報・通信機器事業では自動運転時代を見据え、コニカミノルタ株式会社の保有する世界初の技術(フロントガラス越しにピント位置が近距離から遠距離まで奥行きを持った任意の位置に同時に重畳させて表示する技術)を応用し、車載用に適用していくことを目的としてコニカミノルタ株式会社との共同開発を開始しました。ドライバーの視線の変化や運転速度に応じ、適切な場所に表示することにより安全性を高め、ドライバーに安心を与え、より優しい運転環境の提供を実現していきます。
東芝デジタルソリューション株式会社との共同開発、関西電力株式会社の協力を得てドローンによる架空送電線の自動追尾飛行撮影の実証実験に成功しました。アルパイン(株)が培った高精度位置精度技術(地図情報)とセンサ技術により、強風の影響による揺れなどの過酷な条件の中での自動追尾飛行を実現しました。今後IoT、AI技術への応用を目指します。
車載情報機器事業に係わる研究開発費は10,227百万円です。