有価証券報告書-第80期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 16:57
【資料】
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【項目】
125項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業理念「お客様への奉仕を通じて、社会の繁栄、世界の平和に貢献する」ことをミッションとし、豊かで平和な社会を実現するために不可欠な周波数の制御と選択、検出に関連する製品の専業メーカーとして、業界をリードする高信頼性商品を開発、製造、販売することにより、お客様に喜んでいただくことを経営の基本としております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
中期的には自動車に搭載されるADAS(先進運転支援システム)機器の増大、並びに次世代通信規格「5G」基地局のインフラ整備が進むとともに5G対応のスマートフォンが普及することが見込まれます。これにより、水晶デバイス市場では車載、5G対応の基地局やスマートフォン向けで需要が拡大することが期待されます。5Gでは、高周波・小型化ニーズに対応した高精度・高信頼の水晶デバイスが求められることから、当社ではこうしたビジネスチャンスの果実を刈り取り、確実に利益を確保できる強固な経営体質を構築することを目的とした中期経営計画を2021年3月期より実施しております。
中期経営計画では、①固定費の抜本的な圧縮を柱とした構造改革の実施、②既存製品の売上構成及び事業ポートフォリオの見直し、③自社の強みである前工程への重点リソース投下、④後工程(組立)の生産性向上、⑤財務体質の改善を最重要施策としております。
① 固定費の抜本的な圧縮を柱とした構造改革の実施
不透明な経済情勢・競争環境に鑑み、現状の売上水準下においても確実に利益が確保できる体質を構築すべく、当社は固定費の抜本的な圧縮を柱とした構造改革を実施してまいりました。2020年3月期には当社単体の人員を対象に希望退職者の募集を実施、2020年10月にはSAWフィルタ事業の一部を譲渡いたしました。連結子会社に関しては、中国及びマレーシアの子会社において人員の合理化を含めた構造改革を進めました。国内の子会社に関しましても、生産体制の再構築を中心とした体制の見直しを進めておりますが、新潟エヌ・デー・ケー㈱に関しては2021年9月30日に事業を終了し、その後、所定の手続きを経て解散いたします。これらの施策により、固定費を2019年度から約23億円削減する見通しであり、中期経営計画で目標としていた固定費180億円までの削減の目途は立ちました。但し、依然として、新型コロナウィルス感染症や米中対立など、世界経済の先行きは不透明な状況にあり、構造改革の手綱を緩めない方針であります。
② 既存製品の売上構成及び事業ポートフォリオの見直し
・フォトリソブランクを用いた小型・高精度振動子の販売を拡大
当社は、フォトリソグラフィー技術を利用して、高品質の原石を用いた小型で高精度なフォトリソブランク内蔵の高付加価値品を増やす一方、採算が厳しくなっております既存品を徐々に減らすことで「売上の質」の改善を図っております。
特に移動体通信向けでは、米国Qualcomm Technologies社の5Gスマホ向けIC用途としての認定第一号を受けた76.8MHzサーミスタ内蔵水晶振動子(1.6×1.2mmサイズ)の受注が順調に拡大しており、2022年3月期は更なる生産能力の増強を図ります。また、5Gスマホやワイヤレスイヤフォン等を含むウェアラブル機器の需要拡大に伴い、フォトリソブランクを用いた小型の1.2×1.0mmサイズ及び1.0×0.8mmサイズ水晶振動子の需要も増える見込みであることから、同製品の生産能力も増強いたします。この結果、これまで利益創出が困難となっていた移動体通信向けにおいて、安定的な利益計上が可能な状況となってまいりました。
・SAWフィルター事業の譲渡
当社は、SAWフィルター事業を単独で立て直すのは困難と判断して、当社100%子会社としてNDK SAW devices㈱を設立した後、2020年10月30日に同社株式の51%を中国の先端テクノロジー投資会社に譲渡いたしました。
③ 自社の強みである前工程への重点リソース投下
水晶デバイスの小型化・高精度化ニーズに対応すべく、高品質の原石を用いたフォトリソブランクへ重点的にリソースを投下し、安定した周波数特性のフォトリソブランクを大量生産しております。当社では、フォトリソブランクのさらなる品質向上並びに生産性アップを図るべく、技術開発や設備の改善などにリソースを投下してまいります。
④ 後工程(組立)の生産性向上
後工程(組立)においては、生産性向上・コスト競争力強化を図るべく、高速・高精度の設備導入を進めております。2022年3月期は移動体通信や車載向けで高速・高精度の新規ラインの導入を計画しております。
⑤ 財務体質の改善
財務基盤を安定させ、事業面の立直しに最優先で取組むことが中期経営計画の方針です。全取引金融機関とは既存借入金に対し、2023年9月末日までの残高維持に合意頂き、2020年8月には第三者割当による種類株式50億円を発行し、資本注入を受けました。また、売上増等により、利益が想定を上回ったことにより、2021年3月末時点での自己資本比率は21.5%となりました。今後はより一層の財務健全化に取り組んでまいります。
(3) 中期経営計画における数値目標
中期経営計画で掲げております数値目標は、計画最終年度となる2023年3月期に売上高420億円、営業利益率7%、自己資本比率20%超であります(前提となる為替レートは対米ドル107円)。