有価証券報告書-第75期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/06/28 15:25
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。当社の経営陣は、この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行わなければなりません。経営陣は、債権、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、製品保証引当金、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数値についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
① 収益の認識
当社グループの売上高は、通常発注書に基づき顧客に対して製品が出荷された時点、またはサービスが提供された時点で計上されます。
② 貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払い能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
③ 製品保証引当金
当社グループは、収益を認識する時点でアフターサービスに関する費用を見積り計上しています。製品保証引当金は過去の実績に基づいておりますが、実際の製品不良率あるいは修理費用が見積りと異なる場合は、製品保証引当金の見積額の修正が必要となる可能性があります。
④ 棚卸資産
当社グループは、通常の販売目的で保有する棚卸資産について、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合は、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。
⑤ 投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係維持のため、特定顧客及び金融機関に対する少数持分を所有しております。これら株式には価格変動性が高い時価のある株式と、株価の決定が困難である時価のない株式が含まれております。当社グループは、投資価値の下落が一時的でないと判断した場合、投資の減損を行います。時価のある株式への投資の場合、通常2年にわたり株価が取得価格の30%から50%下落した状態が続いた場合、下落が一時的でないと判断します。時価のない株式への投資の場合は、会社の純資産額が通常2年にわたり30%から50%下落した状態が続いた場合、下落が一時的でないと判断します。将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在の簿価に反映されていない損失の可能性が生じた場合、評価損の計上が必要となる場合があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性がないと考えられる金額を減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するに当たっては、将来の課税所得および慎重かつ実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、純繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合は、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額として費用計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合は、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益計上することになります。
⑦ 退職給付費用
従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率および年金資産の長期収益率等が含まれます。割引率は日本の国債の市場利回りを従業員の残存勤務年数で調整して算出しております。期待収益率は、年金資産が投資されている資産の種類ごとの期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたり規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。割引率の低下及び年金資産運用での損失が生じた場合には、当社グループの退職給付費用に対して悪影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものであります。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 概況
当社グループが係る情報通信技術は、経済成長の牽引力として市場拡大が期待されていますが、従来の主力であった音声通信から、データ、映像へという通信の主軸の転換などが見られ、ICTを利用したビッグデータやウェアラブル端末の市場拡大が進み、IoT(Internet of Things)への期待が高まっています。更に、高いレイヤでのサービスが拡大するとともに、コンテンツ流通、ネット通販、電子決済、O2O(Online to Offline)など異業種とのコラボレーションも進み、従来に無かった新たな事業の創出も進んでいます。さらに、FinTechに代表されるように、様々な産業分野においてICTとの融合によるさらなるイノベーションの可能性が高まっています。また、第3のプラットフォームを基盤としたデジタルトランスフォーメーションの具体例も生まれ、ICTを基軸とした経営改革、ビジネス変革を通じた価値の創出も期待されています。
このような状況下で、当社グループは平成27年4月からスタートした「第三次中期経営計画」において「事業規模の拡大」と「経営体質の強化」に取り組んでまいりました。
「事業規模の拡大」につきましては、更なる成長発展を目指し、通信機器関連以外にも事業領域を拡大するため、システムインテグレーション・環境関連機器製品・医療機器・EMS事業の拡大等、新規事業に積極的に取り組んでおります。主力製品であるIPテレフォニーシステム「NYC-iFシリーズ」の機能拡充を行い、その商品力強化を図ってきました。また、各種オフィス機器の停電対策用として、UPS(無停電装置)が発売以来ご好評をいただいております。また、新たなサービスとして、MVNO(仮想移動体通信事業者)事業に参入し「ナカヨモバイル」のサービス開始いたしました。今後もお客様のニーズに合わせた新商品の開発やサービスを提供してまいります。
「経営体質の強化」につきましては、継続的な原価低減と間接コストの削減を進めるとともに、生産能力の強化と効率向上のため、製造革新活動を継続的に推進しております。今後の取り組みとしては、既存製品の販売力を強化するとともに、サービス事業の展開などの新規事業開拓を進めます。また、製造革新活動を始めとしたトータルコストダウンを図り、経営体質の強化に努めてまいります。
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べて0.4%減の18,790百万円となりました。営業利益は前連結会計年度に比べ8.2%増の647百万円を計上、経常利益は前連結会計年度に比べて14.6%増の745百万円を計上、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ25.4%増の864百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ38.1%増の597百万円となりました。
② 売上高
売上高は前連結会計年度に比べ81百万円減少し、18,790百万円となりました。
主な要因として、販売の伸び悩みがあったことによるものであります。
③ 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度に比べ178百万円減少し、15,255百万円となりました。売上高に対する割合は0.6ポイント減少して81.2%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ47百万円増加し、2,887百万円となりました。売上高に対する割合は、0.3ポイント増加して15.4%となりました。販売費では売上高減少に伴い、包装費、販売雑費等は減少したものの、一般管理費では退職給付費用、給与諸手当等の増加があったため、売上高に対する割合は上昇しました。
④ 営業利益
営業損益は、販売費及び一般管理費の増加があったものの売上原価の低減等により前連結会計年度に比べ49百万円増加して、647百万円の営業利益となりました。
⑤ 営業外収益、営業外費用
営業外収益は、主に受取配当金が減少したもののその他収益等が増加したことにより、前連結会計年度に比べ7百万円増加して、101百万円となりました。また、営業外費用は、主に前連結会計年度に過年度人件費の発生及び支払利息の減少等により、前連結会計年度に比べ38百万円減少して、3百万円となりました。
⑥ 経常利益
経常損益は、主に営業利益が前連結会計年度に比べ増加したこと等により、前連結会計年度に比べ95百万円増加して、745百万円の経常利益となりました。
⑦ 特別損益
特別利益は、投資有価証券償還益及び固定資産売却益が発生したことにより、前連結会計年度に比べ75百万円増加して118百万円となりました。また、特別損失は発生がなく、前連結会計年度から4百万円減少となりました。
⑧ 税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純損益は、前連結会計年度に比べ経常利益が95百万円増加したこと等により、前連結会計年度に比べ174百万円増加し、864百万円の税金等調整前当期純利益となりました。
⑨ 法人税等
法人税、住民税及び事業税は、前連結会計年度に比べ63百万円増加し187百万円となりました。また、法人税等調整額は前連結会計年度に比べ、51百万円減少し76百万円となりました。
⑩ 非支配株主に帰属する当期純損益
非支配株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ1百万円減少し、2百万円の非支配株主に帰属する当期純利益となりました。
⑪ 親会社株主に帰属する当期純損益
上記の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は前連結会計年度に比べ164百万円増加して597百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。また、1株当たり当期純利益は27円13銭となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループを取り巻く事業環境は、IP(インターネット・プロトコル)化の急速な進展による技術革新がめざましく、日々新技術が開発されております。また、回線を提供する通信キャリアも大容量の光ファイバー網を使ったサービスが定着し、無線においては高速通信サービスが進んでおります。
当社グループとしては、IPに対応するためここ数年来新技術の開発・習得に努めてきておりますが、通信機器関連分野は、ネットワークインフラの技術革新が著しく、IP関連技術が急速に進展しており技術革新のスピードに乗り遅れた場合は、魅力ある新製品をタイムリーに供給できず、市場におけるシュアを低下させる懸念があります。さらに、通信キャリアの勢力図が大きく塗り変わった場合、あるいは現在主力となっている固定電話、携帯電話、PHSのサービスの停止、新規サービスの開始等インフラに大きな変化があった場合は経営成績に影響を受ける可能性があります。
(4) 戦略的現状と見通し
当社グループの属する業界は、景気の動向、特に設備投資の動向により売上高が左右される傾向にあります。当業界において、通信手段の多様化・高速化が進んでおり、当社グループとしては新技術を用いた製品を他社に先駆けて投入することが重要な経営課題であると認識し、研究開発に対して継続的かつ積極的に投資を行っております。
今後の事業において、販売形態を単品販売からシステムソリューションとして顧客に提案する方向へ変換を図り、顧客満足度を高めるとともに、ビジネスホン・通信モジュール・サーバ等のシステム関連製品の供給をベースに、トータルソリューションサービスに着手しており、SOHO向け総合ソリューションパートナーとして、ITC化の推進や課題解決型の提案に取り組みます。また、企業価値の向上と財務体質の強化を図るための経営指標として当社グループでは、売上高250億円以上、売上高営業利益率8%以上、株主資本利益率(ROE)8%以上、使用総資本回転率1.00回以上を目標として、早期実現・継続達成に向け努力しております。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは、1,083百万円(前期の営業活動によって使用されたキャッシュ・フローは23百万円)となりました。これは主に、売上債権の増加額293百万円、退職給付に係る資産の増加額231百万円等による減少要因があった一方、税金等調整前当期純利益864百万円、ソフトウエア償却費567百万円等の増加要因があったことによるものであります。
投資活動によって使用されたキャッシュ・フローは、前期に比べ1,775百万円減少し、79百万円(前期比95.7%減)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入400百万円等の増加要因があった一方、有形固定資産の取得による支出319百万円、ソフトウエアの取得による支出264百万円等による減少要因があったことによるものであります。
財務活動によって使用されたキャッシュ・フローは前期に比べ10百万円減少し、361百万円(前期比2.8%減)となりました。これは主に、配当金の支払額285百万円、リース債務の返済による支出64百万円等の減少要因があったことによるものであります。
これらの活動の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末より642百万円増加し、4,164百万円(前期比18.2%増)となりました。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの製品製造のための原材料、部品等の購入費、製造にかかる費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
これら必要資金は通常グループ内の運転資金の範囲内で行っており、必要に応じて金融機関より短期的に借入を行う場合があります。借入の手段の一つとして平成28年3月にコミットメントライン契約(1年契約)を主要取引金融機関3行との間で締結しております。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループとしては、既存の商品群を始め、各種アプリケーションソフト等の新商品開発を推進します。また、他社との連携やコラボレーションなども図りながら新販路を開拓し、サービス事業の展開など新規事業の開拓をすすめ、事業規模を拡大してまいります。主力であるビジネスホンについては、ユニファイド・コミュニケーション機能の拡充、モバイル端末との連携強化、高齢者住宅/介護施設向け機能の強化をしてまいります。また、IoTの普及に伴う通信モジュール等の開発と、通信以外のシステム案件や顧客のニーズに合わせた新商材の開発、提案により、新しいビジネスの開拓と、営業展開を図っていく予定であります。更には、一貫した生産・製造技術を有効活用し、生産機能を有しない企業へのサポートと加工受託領域の拡大を図ってまいります。また、経営体質を強化するため、製造革新活動を始めとしたトータルコストダウンを図り、さらなる原価低減と間接コスト削減を徹底し、業務プロセスの改善による業務の合理化・スリム化を実現するとともに、ナカヨグループ全体の組織力の強化を図るため、事業内容・規模に見合った組織の整備と人員配置をしていく予定であります。
上記の内容を踏まえ、平成28年3月期を初年度とした3カ年間の第三次中期経営計画を策定し、達成に向け努力しております。また、企業理念を「良き企業市民として、時代のニーズを先取りした価値を創造し、社会の発展に貢献します」といたしました。また、重点課題と施策として、
① 事業規模の拡大
・ 新商品の開発
・ 新顧客の開拓
・ 新事業の開拓
② 経営体質の強化
・ 収益力の強化
・ 利益管理の強化
・ 業務プロセスの改善
・ グループ組織力の強化
策定した第三次中期経営計画をベースとして、顧客に対する提案力の向上、品質保証体制の充実を図り、事業の効率化、利益の確保、経営の強化、安定に努めてまいります。