有価証券報告書-第64期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:01
【資料】
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【項目】
146項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループ(当社及び当社の関係会社…以下同じ)が判断したものであります。
当連結会計年度における内外経済は、日本では消費税増税影響による個人消費の低迷により先行き不透明感が高まりました。海外でも、米中貿易摩擦の影響、中東情勢の地政学リスクへの懸念等により、依然として先行き不透明な状況が続きました。また、第4四半期においては、国内外において新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、急激に経済状況が悪化しました。
当グループにおいても、生産拠点が一時稼働停止したほか、世界の主要都市でロックダウン(都市封鎖)が行われたことにより、多くの事業において大幅に需要が減退しました。教育関連商品については売上計上の翌期ずれ込みが発生するなどの影響を受けました。
景気の先行きが不透明であり、かつ、事業環境も大きく変化するグローバル環境の下で、あらゆる変化に迅速に対応できるよう、これまで当グループは全社を挙げて構造改革に取り組んでまいりましたが、今後は、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業環境はもとより人々のライフスタイルやワークスタイルなど、当グループを取り巻く市場環境が一変します。当グループは、この環境の変化にスピーディかつ柔軟に対応すべく経営基盤をさらに強化し、中長期での企業価値向上を目指してまいります。
①アフターコロナの新しい社会環境・事業環境に対応
新型コロナウイルス感染症に対しては、引き続き社員の健康と安全を確保しながら、外部要因に左右されない企業体質を目指し、高収益事業である時計事業・教育関数事業を中核に、アフターコロナの新たな社会環境・事業環境に対応するべく、商品・事業構造・ビジネスモデルなど全てを組み直し、新たなカシオとして持続的価値創造に繋げてまいります。
(1)時計や教育関数などの成長拡大事業はコロナ以前の水準へ回帰のうえ、さらにその強みを活かしてまい
ります。時計事業では、「G-SHOCK」を中心に地域にあったカスタマイズやコラボ商品により商
品力の強化を図るとともに、国別市場環境に合わせたマーケティングを積極的に展開します。また教育
関数事業では、コロナ影響を受けにくい学生向け関数『GAKUHAN』活動の拡大や、教育環境など
の新たな社会的課題解決に向けた当グループ独自技術の展開を図ってまいります。
(2)電子辞書・楽器・プロジェクター・その他システムなどの収益改善事業については、構造改革を強力に
推進する全社組織として「変革オフィス」を立ち上げたうえ、抜本的な構造改革を断行して事業の正常
化を図ってまいります。なお、楽器に関しましてはコロナ状況下での巣ごもり需要などにより好調に推
移しております。
(3)新規事業については、カシオの強み(シーズ)とドメイン(ニーズ)を明確にし、最適なパートナーと
共創のうえ、PoCを積極的に活用することにより、Only1の新規事業として成功事例を生み出し
てまいります。カシオの強みを活かし、最小の投資で効果を最大にするビジネスモデルを確立します。
(4)生産・物流の見直しやECサイトの販売強化などのサプライチェーン、バリューチェーンを始めとした
抜本的変革による経営基盤の改革と、デジタル化社会のさらなる進化に伴う仕事そのものの変革、及び
新しいワークスタイルを確立する働き方改革を実行してまいります。
②資本効率の向上
当グループは、財務安全性を確保しながら成長分野への投資を促進することで、中長期的な成長とROEの持続的な向上を図ってまいります。また、資本コストを意識した事業活動を推進し、資本効率の最適化やフリー・キャッシュ・フローの創造に努めることで、引き続き企業価値の向上を目指してまいります。
③事業を通じたサステナブルな社会への貢献
当グループは、社会から期待される課題の解決に事業を通じて取り組むことにより、自らの成長と社会の持続的な発展に貢献してまいります。特に、「事業を通じた社会的課題の解決に向けたSDGsへの取り組み」、「脱炭素社会の実現に向けた中長期環境目標達成への取り組み」を最重点の課題として掲げ、アフターコロナの新しい社会環境・事業環境を見据えつつ、これらを確実に推進することで、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
④コーポレートガバナンス機能の強化
当社は2019年6月より監査等委員会設置会社へ移行し、監督と執行を分離することでコーポレートガバナンス機能を強化しております。また、事業環境の変化に対して迅速かつ柔軟に対応できる執行体制を構築し、企業価値の向上に努めております。さらに「カシオ倫理行動規範」の理解と浸透を図るために、定期的に教育を実施する等、コンプライアンスを推進しておりましたが、Casio Electronics Co.Ltd.(イギリス子会社)は英国競争・市場庁の立入調査を受け、その結果、当連結会計年度において競争法違反に係る制裁金を支払いました。また、Casio Europe GmbH(ドイツ子会社)の元従業員が、不正送金した事実が当連結会計年度に判明いたしました。当グループではこのような事態が発生したことを厳粛に受け止め、改めてコンプライアンスの徹底を行うとともに、内部管理体制のさらなる強化を図り、再発防止に向けて全力で取り組んでまいります。
当グループは、以上の課題に応えるべくお客様一人ひとりのライフスタイルの中で、最も身近で大切な存在を生み出し続けることを使命と考え、「創造 貢献」の原点に立ち返り、今後も独創性のある技術で新規市場を創造するとともに、アフターコロナの一変した新しい社会環境・事業環境に対応し、中長期での企業価値向上を目指してまいります。