有価証券報告書-第66期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 12:46
【資料】
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【項目】
140項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループ(当社及び当社の関係会社…以下同じ)が判断したものであります。
当連結会計年度における内外経済は、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復傾向が見られた一方、半導体を中心とした部品不足や、原材料・エネルギー価格の高騰が長期化することによるサプライチェーンの混乱が続きました。加えて、年度後半におけるウクライナ情勢の悪化や中国のゼロコロナ政策による世界経済への影響などにより、先行きの不透明感が一層強まる状況となりました。
2020年からの世界的な新型コロナウイルス感染症拡大は、私たちのライフスタイルやワークスタイルなどの行動様式や価値観、そして当グループを取り巻く事業環境に大きな影響を与えましたが、さらに直近では、ウクライナ情勢の悪化や中国のゼロコロナ政策による世界経済への影響が大きなリスクとして加わるなど、事業環境は日々刻々と変化し続けております。当グループは、この劇的な環境変化に適応し、社会にとって必要な企業であり続けてまいります。
このような中、当グループは、2030年度に企業価値最大化を目指す「New CASIO C30プロジェクト」をスタートいたしました。当グループの社会における存在価値「使う人にとって最も大切な存在を創り続ける」を起点に成長戦略を策定し、それを全社一丸となった強いチーム力で実行して、「ユーザーファーストで持続可能な社会に欠かせない存在」になることを目指してまいります。
また、この成長戦略を支える全社基盤の強化として、挑戦を行う人材・組織の醸成と、変化に柔軟に適応できる現場主導型の事業運営を実現するとともに、DXの活用を加速させることにより、劇的な事業環境変化やリスクに即応できる経営基盤を構築してまいります。
①中長期成長戦略の構築
当社の経営理念である「創造 貢献」(貢献のための創造)のもとで目指す姿に立脚したバックキャストで抜本的な成長戦略を策定し、中長期の成長戦略に基づくダイナミックな投資やリソース配分を実現してまいります。これにより強い事業(コア事業)については積極投資による事業領域・規模拡大と収益性アップ、課題事業については注力領域の選択集中と強い成長戦略により成長事業へと変革してまいります。
1)時計事業・・・・・「G-SHOCK」のロイヤルカスタマー拡大と自社e-コマース販売比率の拡大
で、持続的成長と高収益体質を維持するとともに新領域創出を推進します。
2)教育事業・・・・・ハードビジネスの安定的な成長と、当社の強みを活かしたソフトビジネスで電子教育
市場での独自のポジションを確立します。
3)楽器事業・・・・・競争力の高い戦略商品である「Slim&Smart」のラインアップ強化とユーザ
ーコミュニケーションの強化により音を基点としたエンジョイメント市場への領域拡
大を図ります。
4)システム事業・・・お客様の課題を解決するトータルソリューションビジネスへの転換により、収益の安
定化を図ります。
5)新規事業・・・・・当グループの強みや技術を活かし勝てる領域へ特化するとともに、注力領域の選択と
集中を行い、新市場を創造できる分野に投資を集中してまいります。
②資本効率の向上
当グループは、財務安全性を確保しながら成長分野への投資を促進することで、中長期的な成長とROEの持続的な向上を図ってまいります。また、資本コストを意識した事業活動を推進し、資本効率の最適化やフリー・キャッシュ・フローの創造に努めることで、引き続き企業価値の向上を目指してまいります。
③事業を通じたサステナブルな社会への貢献
当グループにとってのサステナビリティとは、「創造 貢献」という経営理念のもと、企業活動を通じて当グループと社会の持続的成長を目指すことと考えております。当グループは、社会から期待される課題の解決に事業を通じて取り組むことにより、中長期的な企業価値向上と社会の持続的な発展に資するべく、重点的に取り組むべき6つのマテリアリティ(①脱炭素社会の実現、②資源循環型社会の実現、③自然との共生、④人権の尊重、⑤CSR調達の推進、⑥働きやすい職場環境の提供とダイバーシティの推進)を経営戦略との整合性を取りながら策定し、全社をあげて取り組みを推進しております。また、気候変動の事業に与える影響が重要視される中、環境に関する取り組みとして「カシオグループ環境ビジョン」を掲げ、具体的なテーマを設定し推進しております。当グループではサプライチェーン全体でこれらの課題に取り組むことで、引き続きサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
④コーポレート・ガバナンス機能の強化
当社はコーポレート・ガバナンス機能を強化するため2019年6月より監査等委員会設置会社へ移行し、監督機能と執行機能を分離、監督機能を強化するとともに業務執行上の意思決定の迅速化、効率化に取り組んでまいりました。
さらに当社は、全社視点での最適な意思決定を実践すべく、「事業軸」と「機能軸」のマトリクスによる事業運営マネジメントを行う体制としており、責任体制とそれに基づく権限委譲を明確化するとともに、環境変化に即した多角的視点、全社的視点でのタイムリーな意思決定が、活発な議論を通して実現する体制としております。また、経営資源の最重要要素である人的資産とキャッシュ・フローの全体最適を充実させるため、2021年4月よりCEO(最高経営責任者)、CHRO(最高人事責任者)、CFO(最高財務責任者)の3チーフオフィサー制による全社最適視点経営を導入し、ガバナンス機能の強化を図っております。
当社の取締役会は9名の取締役で構成するとともに、経営基盤強化のため、代表取締役を2名体制としております。また、社外取締役は、企業経営をはじめ各分野で豊富な経験・知識を有しており、取締役会においては、その豊富な経験と高い見識に基づいた客観的かつ多角的な視点から、当社の経営全般について非常に有用な発言・提言を随時行っており、取締役会の議論の活性化や実効性の向上に貢献しております。今後も、取締役会の実効性を向上させるとともに、コーポレート・ガバナンス機能を強化してまいります。
当グループは、お客様一人ひとりのライフスタイルの中で、最も身近で大切な存在を生み出し続けることを使命と考え、「創造 貢献」の原点に立ち返り、独創的な想像力と強い実行力で、世の中にまだ存在しない新しい市場を生み出し社会に貢献し続ける企業として、中長期での企業価値向上を目指してまいります。