有価証券報告書-第65期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 16:06
【資料】
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【項目】
133項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループ(当社及び当社の関係会社…以下同じ)が判断したものであります。
当連結会計年度における内外経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、個人消費や企業の生産活動を中心に景気が低迷し、極めて厳しい状況が継続しました。地域別には、中国経済が順調な回復を見せるとともに、米国が緩やかな回復傾向となった一方で、日本・欧州・アジア新興国では感染の再拡大の影響により、経済活動の制限が長期化し、依然として先行き不透明な状況が続いています。
当グループは、これまで事業環境が大きく変化するグローバル環境のもとで、あらゆる変化に迅速に対応できるよう、全社を挙げて構造改革に取り組んでまいりましたが、昨年からの世界的な新型コロナウイルス感染症拡大は、私たちのライフスタイルやワークスタイルなどの行動様式や価値観、そして当グループを取り巻く市場環境に大きな影響を与えました。当グループは、一変した環境に適応し持続可能なグループに変革すべく、商品、事業構造、仕事、働く環境の全てを組み直し、時代に合わせた「新しいカシオ」としてスタートを切りました。当グループは、今後さらに1~2年は新型コロナウイルス感染症の影響が続くと想定し、この環境の変化にスピーディかつ柔軟に対応しつつ、2024年3月期(第68期)をアフターコロナと見据えて、収益体質の改善と構造改革による全体最適化を推し進めてまいります。当グループは経営基盤をさらに強化し、中長期での企業価値向上を目指すべく、以下の施策を推進してまいります。
①事業基盤の強化
新時代の市場環境に適応した事業基盤を構築するため、時計や教育関数などの成長拡大事業における更なる高収益化、楽器やシステムなどの収益改善事業における収益体質改善と構造改革、新規事業は新時代に適応したビジネスを立ち上げるとともに事業損益の黒字化を推し進めてまいります。また、バリューチェーン全体をユーザー中心のビジネスに変革し、ユーザー一人ひとりと深く長くつながり続けていくために、全社横断でDXを推進し、新しい仕組みの構築や業務プロセスの変革を図ってまいります。
<既存事業>1)時計事業・・・・・世界中のお客様と直接つながり、適切な製品やサービスをお届けできるようデジタ
ルマーケティングを本格的に導入、自社e-コマース販売比率を向上させるととも
に、「G-SHOCK」ロイヤルカスタマーの拡大を図ってまいります。また成長
ポテンシャルの大きい中国及びアジア・新興国市場に注力し、重点的な戦略投資の
実施や「G-SHOCK」の認知度向上により更なる売上高拡大を図ります。
2)教育事業・・・・・学校向けに電子辞書、関数電卓、学習Webアプリサービスをご紹介する「GAK
UHAN」ビジネスモデルを継続展開するとともに、Webアプリケーションによ
る電子試験/電子教科書市場への対応や、オンライン学習の学習効果を広げる総合
学習プラットフォームの展開など、世界の教育に貢献してまいります。
3)楽器事業・・・・・構造改革の完遂により事業収益構造が大幅に改善している中、競争力の高い戦略商
品である「Slim&Smart」の販売拡大とEnjoyment(自分で楽し
む)市場の創造を推進し、第3の成長事業化を図ります。
4)システム事業・・・デジタル化やコロナ禍による非対面業務の拡大等、一変する社会環境におけるお客
様の課題を解決していくべく、従来の「売り切り型」から、「業務支援トータルソ
リューションビジネス」への転換を図ります。
<新規事業>パートナーとの共創による「スポーツ・健康事業」をはじめとして、「イメージング事業」、「プロジェクション事業」、「メディカル事業」、「ビューティテック事業」など、新時代のニーズに適応したOnly1のリカーリングビジネスの確立を図ります。また、新規事業については、2024年3月期の黒字化と以後3年間の創出キャッシュによる投下資金回収を目指します。
②資本効率の向上
当グループは、財務安全性を確保しながら成長分野への投資を促進することで、中長期的な成長とROEの持続的な向上を図ってまいります。また、資本コストを意識した事業活動を推進し、サプライチェーン改革に取り組むなど資本効率の最適化やフリー・キャッシュ・フローの創造に努めることで、引き続き企業価値の向上を目指してまいります。
③事業を通じたサステナブルな社会への貢献
当グループは、社会から期待される課題の解決に事業を通じて取り組むことにより、自らの成長と社会の持続的な発展に貢献してまいります。特に、「事業を通じた社会的課題の解決に向けたSDGsへの取り組み」、「脱炭素社会の実現に向けた中長期環境目標達成への取り組み」を最重点の課題として掲げ、アフターコロナの新しい社会環境・事業環境を見据えつつ、これらを確実に推進することで、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
④コーポレート・ガバナンス機能の強化
当社はコーポレート・ガバナンス機能を強化するため2019年6月より監査等委員会設置会社へ移行し、監督機能と執行機能を分離、監督機能を強化するとともに業務執行上の意思決定の迅速化、効率化に取り組んでまいりました。
さらに当社は、全社視点での最適な意思決定を実践すべく、「事業軸」と「機能軸」のマトリクスによる事業運営マネジメントを行う体制としており、責任体制とそれに基づく権限委譲を明確化するとともに、環境変化に即した多角的視点、全社的視点でのタイムリーな意思決定が、活発な議論を通して実現する体制としております。また、経営資源の最重要要素である人的資産とキャッシュ・フローの全体最適を充実させるため、2021年4月よりCEO(最高経営責任者)、CHRO(最高人事責任者)、CFO(最高財務責任者)の3チーフオフィサー制による全社最適視点経営を導入し、ガバナンス機能の強化を図っております。
当グループは、お客様一人ひとりのライフスタイルの中で、最も身近で大切な存在を生み出し続けることを使命と考え、「創造 貢献」の原点に立ち返り、独創的な想像力と強い実行力で、世の中にまだ存在しない新しい市場を生み出し社会に貢献し続ける企業として、中長期での企業価値向上を目指してまいります。