有価証券報告書-第41期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 15:37
【資料】
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【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、エレクトロニクス産業に限らず、ものづくりにおける要素技術を拡充し、高品質の製品を国際競争力のある価格で世界に送り出すグローバル企業を目指しております。
企業活動のあらゆる面で企業理念である「顧客に満足を」「地球にやさしさを」「社会に夢と活力を」に基づき、環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進するとともに、ステークホルダーの皆様にとって「成長する楽しみが持てる企業」であり続けることに努めております。
半導体用マテリアル製品をはじめとする新素材及び生産技術の開発に注力し、品質を第一に考えて顧客満足の向上を追求する旨の「品質理念」を掲げ、生産の自動化、デジタル化、標準化を進めております。世界での市場シェアを高め、安定的な収益体質の企業集団を形成することを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社グループの属する主な市場は、エレクトロニクス産業でありますが、高度情報化の進展や新興国の経済発展に伴い、今後も市場規模の拡大が期待されます。同時に技術革新のスピードが早く、国際競争の激しい市場です。このような環境の中で当社グループが安定的に成長するためには、「顧客に満足を」の念頭に既存製品の拡充とともに新たな製品事業の育成を遂行する必要があります。
中期的な会社の経営戦略の具体的な項目は、以下の通りです。
① 半導体分野では、製造装置メーカーからの需要が強いマテリアル製品(石英・セラミックス・シリコンパーツ等)に関し、製造ラインの増設を進めてまいります。デバイスメーカーやFPDメーカーが保有する製造装置の部品洗浄サービスをさらに拡充してまいります。また、シリコンウエーハの再生サービスも開始いたします。
② パワー半導体分野では、ロボット、工作機械、家電製品などに使用されるIGBTパワー半導体用DCB基板の製造ラインの増設を進めてまいります。
③ バイオ・メディカル分野では、当社の熱電素子サーモモジュールを利用したDNA増幅装置(PCR検査装置)や血液分析装置、再生医療装置などへ拡販してまいります。遠隔医療機器に使用されているセラミックス製品は継続して提供してまいります。
④ 通信分野では、5G移動通信システムの通信機器、中継器、アンテナ内部の熱対策として熱電素子が採用されており、超高速・大容量化・多数端末接続などの運用による需要拡大を見込んでおります。
⑤ 自動車分野では、プラグインハイブリッド車や電動車向けのパワー半導体用AMB基板の販売や熱電素子を採用した温調シート、カップホルダーなど応用製品の用途開発に取り組んでまいります。磁性流体は、サスペンションやカー・オーディオスピーカー向けの採用を広げてまいります。
⑥ 受託製造分野は、半導体市場の需要に対応し、当社グループの真空技術と精密メタル加工を組合せ、各種半導体製造装置メーカーからの受託製造を拡充してまいります。
⑦ 業務提携やM&Aを視野に入れ、既存製品のシェア拡大のほか、新規事業への参入も重要と考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、新型コロナウイルスの収束時期および当社グループに与える影響を見通すことは極めて困難な状況であったことから、2020年6月26日に「中期経営目標」を見直すことで取り下げておりました。
新たな「中期経営目標」につきましては、2021年5月28日に当社のホームページ上に公表いたしました。中期経営目標において、収益性を重視するとともに次のステージに向けての成長路線の計画を掲げております。
当社グループは、企業価値を図る客観的な経営指標として、株主資本利益率(ROE)及び1株当たり当期純利益(EPS)を採用しております。ROEは15%とし、EPSは360円を目指しております。新たに「中期経営計画」には、投下資本利益率(ROIC)の目標8%を付記しております。
(4)経営環境
世界の経済状況は、米中貿易摩擦の長期化に加え、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、各国の都市封鎖による経済活動の停滞と人の移動が未だ制限されており、今後の経済見通しは極めて不透明な状況が続いております。
当社グループの属するエレクトロニクス産業の半導体業界では、2021年2月に米国テキサス州で起きた寒波による大規模停電の影響で、半導体デバイスメーカーの工場停止や国内メーカーの工場火災、台湾のファウンドリでの水不足など半導体の生産や調達を妨げる事象が発生しました。半導体需給のひっ迫のなかでの出来事であり、足もとでは半導体不足となり、自動車産業を始めパソコンやテレビなどの生産にも影響が出ております。一方、移動通信システム業界では、2020年3月より5Gが開始されており、段階的な自動運転や遠隔医療のほか、高精細の動画配信やリモートワークに利用される各種データ配信サービスの拡充が予想されます。5G通信やリモートワークに利用されるクラウド側のデータセンター用サーバーの増設のほか、自動車搭載用のセンサー類やパワー半導体などの需要増加も考えられ、半導体不足は2022年明けまで続くとの見通しです。そのため、デバイスメーカー各社は設備投資を前倒しする旨を相次ぎ公表しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
対処すべき課題は、安定的な収益力の確保と成長のための設備投資計画の柔軟な対応です。
当社グループの課題は、「顧客に満足を」の企業理念のもと、顧客要求仕様の高品質な製品を指定期間で納められる生産体制の確立を実現することです。そのために人材育成とコストの抑制ならびに生産設備の自動化、デジタル化、標準化を進めることが課題です。
今後の設備投資および運転資金等に必要な資金は、営業キャッシュフローから得られる資金のほか、金融機関からの借入れ、社債の発行、投資先である中国市政府からの補助金や民間ファンドからの出資金などで賄う予定であり、資金調達の多様化を進めてまいります。
事業運営面では、半導体業界向けのマテリアル製品の増産や装置部品洗浄サービスの拡充に努めてまいります。
電子デバイス事業のサーモモジュールは、景気に左右されにくい通信、家電、医療分野向けに製品を供給してまいります。新素材の開発、新製品の開発も重要と考えており、そのために業務提携やM&Aも検討してまいります。
環境保全面では、各国の高まる環境規制を遵守し、低炭素社会に貢献すべく国内及び中国工場に再生エネルギーとなる太陽光発電パネルを3.8メガワット程度設置しております。
また、当社グループでは、業務の適正を確保する体制整備に努め、J-SOXに対応した内部統制システムの運営をグループ各社で実施しており、適正な計算書類の作成を保証する体制の強化を目指し、適切な運営の実施と監査を継続的に行ってまいります。