有価証券報告書-第123期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/24 15:07
【資料】
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【項目】
164項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略・経営指標等
当社グループは、経営資源の「選択と集中」によりグループの事業構造の改革を強力に推し進め、長期的視野に立ったグループ経営により、成長と収益力の安定・強化に努めてまいります。
中核である新造船事業は、需要・船価・為替・資機材価格など変動要素が多く、製造業の原点である総合的な国際競争力の強化を基本にしつつ、内航船市場の開拓や船主業への進出などによる収益の安定化も重要な経営課題であります。
グループにとって安定収益の確保・拡大のためには修繕船事業や鉄構・機械事業の基盤強化が不可欠であり、人材の育成や設備の拡充など必要な経営資源を投入してまいります。
財務面では、当連結会計年度においても営業損失を計上しておりますが、十分な現預金を確保しているとともにシンジケート方式によるコミットメントライン設定を更新するなど取引金融機関とも良好な信頼関係が維持されており、翌連結会計年度を含めて当面の資金繰りに懸念はないものと判断しております。なお、事業構造の更なる改革や将来の成長に必要な投資のために、長期資金の調達手段の検討も財務政策の重要な課題であります。
佐世保重工業株式会社における新造船事業の休止と人員の削減など会社規模の縮小に伴い、親会社との一体運営の拡大などによる管理間接部門の合理化も喫緊の課題であります。
今後、収益力を強化して経営基盤と企業価値の向上により、株主はもとより顧客・取引先・金融機関・従業員・地域など様々なステークホルダーとの信頼関係の強化・拡大を図り、信頼され成長を期待される「存在感」ある企業グループの形成を目指しております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
① 新造船事業
世界の新造船需要は好調な海運市況を背景に回復基調にあり、新造船の受注価格も上昇が続き為替も円安に進行しておりますが、資機材価格の高騰懸念やウクライナ紛争の世界経済に与える悪影響など不安要素も多く、引き続き緊張感を持った事業経営が求められます。
当社グループにおきましては、主力工場である当社伊万里事業所と函館どつく株式会社との連携により商品の共通化や生産の革新化に努め、事業基盤の再整備と事業資源の再配置によりコスト、性能、品質、アフターサービスから成る商品力の差別化と営業体制の強化により国際競争力を高めるとともに、安定的な事業運営の手段の一つとして船主業の強化も今後の重要な検討課題と位置付けております。
函館どつく株式会社においては、従来の外航ハンディ型撒積運搬船に加え同社の修繕船事業部が得意としている内航フェリー市場にも進出することで、事業の安定化を目指しております。
政府においては、船舶の供給側の造船業と需要側の海運業の両面からの総合的な施策により好循環を創出するため、2021年8月に施行されました「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律」(海事産業強化法)において造船分野・海運分野における計画認定制度が創設され、当社は子会社の佐世保重工業株式会社および函館どつく株式会社とともに2021年11月に事業基盤強化計画の認定を受け、生産性の向上とカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを加速させており、その一環として岩谷産業株式会社、関西電力株式会社、国立大学法人東京海洋大学と水素燃料電池船とエネルギー供給システムの開発・実証に取り組んでおります。
昨年度には環境負荷の低いLNGと重油との二元燃料撒積船を受注しておりますが、本年度にもLPGも燃料として使用でき、アンモニアの搭載も可能な大型LPG運搬船を昨年8月に受注、本年1月には環境負荷の低いLNGを主燃料とする大型撒積運搬船の受注を内定しております。
また昨年11月には商船三井株式会社、三菱造船株式会社とアンモニアを燃料として航行する大型アンモニア輸送船を共同開発することで合意し、本年4月には川崎汽船株式会社、大洋電機株式会社と共同で、LNG燃料焚きバッテリー搭載省エネ型20万トン大型撒積運搬船の概念設計を確立し、日本海事協会から、設計基本承認(AIP:Approval in Principle)を取得いたしました。
当社および函館どつく株式会社においては、ゼロエミッションを目指す社会に積極的に応えるため、環境性能に優れた船舶の開発・建造に取り組み、さらに、デジタル技術を駆使した生産現場の最適化を推進し、設計・調達・製造のコストダウンおよび品質の向上を実現するとともに、新造船の艤装量の増加に対応して佐世保重工業株式会社の艤装能力も最大限に活用し当社伊万里事業所を補完してまいります。
② 修繕船事業
佐世保重工業株式会社、函館どつく株式会社の函館造船所および室蘭製作所と安全保障上で重要な3カ所を拠点とする修繕船事業においては、これまで以上に各拠点の人材、設備、技術などの向上を図り、立地の優位性と3拠点合計11基のドック・上架船台を活かして、従来の艦艇修繕に加え今後ニーズが高まる巡視船、米艦艇、LNG船、大型客船、フェリー、サプライボート、さらには北海道の水産業に必要不可欠な漁船についても主要対象船種とするなど、ラインナップの強化に努めてまいります。
佐世保重工業株式会社においては、新造船部門の人材受け入れにより要員の増強と技術力の強化を図るとともに、新造船建造用ドックを修繕船兼用ドックに改修する設備更新工事にも着手するなど、事業基盤の強化と事業の拡大を目指します。
グループ両社の連携体制をより一層強化し、安定収益の拡大を加速させてまいります。
③ 鉄構・機械事業
当社および函館どつく株式会社が担う橋梁分野においては、新設橋梁の発注量が低水準で推移し受注競争が激化しております。熾烈な受注競争に打ち勝つため、優秀な人材の導入・育成と技術力の底上げと両者の連携により総合評価落札方式への対応力の強化を図っており、実績も増加してまいりました。今後は、災害復旧工事や老朽化に伴う保全・補修工事に九州や北海道を中心に取り組み、社会インフラの維持・発展に貢献するとともに、コスト競争力を強化する体制整備を行い、安定した事業継続のための基盤を築いてまいります。
佐世保重工業株式会社が担う舶用機器分野においては原材料費の高騰に直面している一方で、新造船市場の回復に伴って需要は増加傾向にあり、増産に向けて営業活動を強化しております。原材料費の高騰に対しては、調達先の見直しなどに取り組んでおり、今後の新造船需要回復を見越して、生産設備の有効活用と近代化による増産体制の整備と技術力、コスト競争力の強化など事業基盤の強化に取り組んでまいります。
④ その他事業
その他事業を担う各社が市場環境の急速な変化に対応し、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでまいります。
当社グループにおける各事業の役割と責任を明確化し、収益力とグループ各社への貢献度を高め、経営者の外部招聘を含めた経営力の強化によりグループ収益基盤の強化・発展を図ってまいります。