有価証券報告書-第78期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:00
【資料】
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【項目】
87項目
業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度における当社グループを取り巻く経済は、日本では、企業収益の改善や設備投資の増加などにより緩やかに回復しました。米国では、堅調な雇用環境などにより着実な回復が続きました。アジアでは、堅調な内需を中心に緩やかに回復し、中国では、消費や輸出に弱さがみられ緩やかに減速しました。
こうした状況のなか、当社グループは、第13次中期経営計画のグローバル方針である「成長する強い会社・誇れる良い会社の実現」を目指し、事業展開を図ってまいりました。
二輪車・汎用製品では、インドネシアで発売されたホンダ「CB150R」に、世界トップクラスの小型・軽量化を実現したトランスファーモールド電子制御ユニットを含むFIシステムが搭載されました。さらに、中国最大の二輪車メーカーである江門市大長江集団有限公司の新モデル 豪爵「新悦星HJ125T-23」に、当社のFIシステムが搭載されました。くわえて、大型車用製品においても、タイと日本で発売されたホンダ「CBR400R」に、新開発の大型二輪車用プラットフォームを採用した電子制御ユニットを含むFIシステムが搭載されました。
四輪車製品では、電動車用パワーコントロールユニットが日本で発売されたホンダ「CR-V」のハイブリッドモデルと、プラグインハイブリッド車 ホンダ「CLARITY PHEV」に搭載されるなど、当社の電動車用製品の搭載が拡大いたしました。また、北米で発売された新モデル ホンダ「Passport」にV型6気筒エンジン対応電子制御ユニットや燃料供給製品など数多くの製品が搭載されました。さらに、新たなお客様に対しては、北米で発売されたフォード「RANGER」に自動車用熱交換器のコンデンサーが搭載されたほか、日本で発売されたSUBARU「FORESTER」のハイブリッドモデルに変速機用コントロールバルブが搭載されました。
「成長する強い会社」の実現に向けては、世界最大の二輪車市場であるインドにおいて、深刻な大気汚染の改善に貢献するため、排気ガスに含まれる有害物質の排出を大幅に削減するFIシステムの生産開始に向け、インド国内5つ目となる新工場を完成させました。既存の4つの工場においても建屋の拡張や新規生産設備の設置を行うなど、インド国内の5つの工場で、約1,000万台規模となるFIシステムの4製品の最終的な量産開始に向け準備を推進いたしました。
四輪車製品においては、CO2排出量の削減と燃費の大幅な改善に貢献する電気自動車やハイブリッド車などの電動車の需要拡大に向け、次世代型パワーコントロールユニットの生産ラインを日本に設置し、生産開始に向け準備を進めました。さらに、中国での電動車市場の急速な拡大を見据え上海市に新たな営業拠点を開設し、中国のお客様への営業・提案活動を強化いたしました。また、地球環境に優しい電動車の普及拡大に貢献するため、お客様のニーズに合わせたガソリンエンジン用製品を開発し、積極的な提案活動を進めてまいりました。その結果、日本、欧州、中国などグローバルのお客様から、数多くの引き合いをいただくことができました。
また、新たなお客様の拡大によるさらなる事業基盤の強化を図るため、製品別の事業責任者体制を新設し、製品開発フローのスリム化と意思決定の迅速化を実現し、開発効率の向上とお客様のニーズに対応できる開発体制を構築いたしました。
「誇れる良い会社」の実現に向けては、社会、お客様、取引先様、株主様と私たちが喜びを分かち合えるようグローバルで社会貢献や環境保全活動を推進いたしました。タイにおいては、北部の小学校へ学習用品の寄付と学習支援活動を実施いたしました。メキシコにおいては、2017年に発生した地震の被災地への復興支援や、地域の公園の清掃と植林活動を行うなど、地域社会の皆様から喜ばれる企業へと進化できるよう取り組みを進めてまいりました。また、グローバルで生産ラインの不稼働時の待機電力削減や工場照明のLED化を進めるなど、事業活動における環境負荷の低減や、CO2排出量の削減に向けた取り組みを推進いたしました。そのなかで、インドで新設した工場において、生産活動による排水を社内で全量リサイクルできるようにすることで環境に配慮したモノづくりができる工場にいたしました。
また、従業員がモチベーションを高め、活き活きと働きやすい会社を実現できるよう、食堂の大規模なリニューアルをはじめとした職場環境づくりを進めてまいりました。さらに、従業員が「心身ともに健康」であることが企業の発展につながるとの考えのもと、ウォーキング施策の拡大や、生活習慣病予防の健康セミナーを実施することで、健康経営に向けた取り組みを強化いたしました。
その結果、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人~ホワイト500~」に2年連続で認定され、当社の取り組みを評価いただきました。
こうした事業展開のもと、セグメント別売上収益(セグメント間の内部売上収益を含む)の状況は次のとおりとなりました。
[日 本]
二輪車・汎用製品は、主にインド、タイ向けの販売が増加しました。四輪車製品は、国内向け
の販売増加はあるものの、主に米州、中国向けの販売減少に加え、欧州での空調製品の販売が減
少しました。全体では販売は増加となりました。
これらにより、為替換算上の減収影響はあるものの、売上収益は1,591億7千9百万円と前連結会計年度に比べ20億1千8百万円の増収となりました。
[米 州]
二輪車・汎用製品は、主に南米での販売が増加しました。四輪車製品は、北米での販売が減少
しました。全体では販売は減少となりました。
これらに加え、為替換算上の減収影響により、売上収益は925億7千万円と前連結会計年度に比べ65億7千3百万円の減収となりました。
[アジア]
二輪車・汎用製品の販売増加に加え、四輪車製品はインドやタイで販売が増加しました。
これらにより、為替換算上の減収影響はあるものの、売上収益は1,132億3百万円と前連結会計年度に比べ37億9千3百万円の増収となりました。
[中 国]
二輪車・汎用製品や四輪車製品の販売が増加しました。
これらにより、為替換算上の減収影響はあるものの、売上収益は856億2千2百万円と前連結会計年度に比べ29億5百万円の増収となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、3,492億2千万円と前連結会計年度に比べ22億7千5百万円の減収となりました。二輪車・汎用製品では1,003億3千4百万円と前連結会計年度に比べ42億3千万円の増収、四輪車製品では2,488億8千5百万円と前連結会計年度に比べ65億5百万円の減収となりました。利益においては、合理化効果はあるものの、研究開発費の増加などにより営業利益は262億5千9百万円と前連結会計年度に比べ20億5千4百万円の減益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、21億1千7百万円減益の157億6百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、610億4千7百
万円と前期末に比べ、101億3千3百万円の増加となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と前連結会計年度に対する各キャッシュ・フローの増減状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果増加した資金は、法人所得税の支払額や棚卸資産の増
加などはあるものの、税引前利益や減価償却費及び償却費などにより314億8千万円(前連結会計年度に比べ55億7千2百万円の収入減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果減少した資金は、有形固定資産及び無形資産の取得な
どにより323億7千5百万円(前連結会計年度に比べ134億1千6百万円の支出増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果増加した資金は、配当金の支払いなどあるものの、借
入れによる収入などにより、95億2千1百万円(前連結会計年度に比べ165億7千7百万円の収入増加)となりました。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、研究開発費があります。
一方、設備投資資金需要の主なものとしては、インドでの二輪車製品のFI化に向けた投資に加え、日本、中国における四輪車の電動化対応の増強に向けた投資があります。翌連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)においても同様の投資を行っていく予定であり、全体で398億1千万円の設備投資を予定しております。
当社グループの事業活動にかかる運転資金については、営業キャッシュフローで獲得した資金を主な財源としておりますが、債権回収までに必要な資金については銀行借入、あるいはコミットメントラインの利用等によって流動性を保持しております。
設備投資資金については、設備投資計画に基づき、国内外での資金調達について、市場金利動向や為替動向、あるいは既存借入金の返済時期等を総合的に勘案し、長期及び短期借入金によって流動性を維持しております。また、当社グループでは、グループ間融資によって資金融通を行うことで資金効率を高めております。
生産、受注及び販売の実績
欧州地域における事業は、地域統括部門を設置せずに日本で管理しているため、「日本」セグメントに含めております。
(1) 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前期増減率(%)
日 本173,5401.2
米 州118,828△6.7
ア ジ ア126,0683.4
中 国85,9162.8
合 計504,3520.0

(注)1 金額は販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高
(百万円)
前期増減率
(%)
受注残高
(百万円)
前期増減率
(%)
日 本158,681△0.411,487△4.2
米 州92,328△7.47,833△3.0
ア ジ ア112,9062.08,711△3.3
中 国85,7593.36,8302.1
合 計449,674△0.734,861△2.5

(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間取引を含んでおります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前期増減率(%)
日 本159,1791.3
米 州92,570△6.6
ア ジ ア113,2033.5
中 国85,6223.5
合 計450,5730.5

(注)1 セグメント間取引を含んでおります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
本田技研工業株式会社51,12814.653,74315.4
ホンダオブアメリカマニュファクチュアリング・インコーポレーテッド36,13710.332,2619.2
東風本田発動機有限公司35,41510.135,89510.3

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当該内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」に記載しております。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの属する輸送機器業界は非常にグローバル競争が激しく、高い品質はもちろんのこと、絶えず技術革新等を問われる状況にあります。このようなお客様のニーズに応えてゆくことが経営成績に重要な影響を与える要因であると考えております。
(4) 経営戦略の現状と見通し
当該内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当該内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
当該内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務
諸表におけるこれらに相当する項目との差異の概要は次のとおりであります。なお、当社グループ
は日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握
できる範囲で算出したものであります。
(開発費の資産計上)
日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSではIAS第38号「無形資産」
に規定される要件を満たすことから開発費として資産計上しております。
その結果、「無形資産」の金額が5,948百万円増加しております。
(有給休暇に係る債務)
日本基準において認識していない有給休暇に係る債務について、IFRSではIAS第19号「従業員給
付」に従い未消化の有給休暇について負債認識しております。
その結果、「営業債務及びその他の債務」の金額が3,196百万円増加しております。
(退職後給付債務に関する会計処理の差異)
日本基準においては数理計算上の差異は発生時にその他の包括利益として認識し、一定年数にわ
たって償却することによって純損益への振替が行われております。IFRSでは数理計算上の差異は発
生時にその他の包括利益として認識し、即時に「利益剰余金」に振り替えております。
その結果、IFRSでは109百万円を「その他の資本の構成要素」から「利益剰余金」へ振り替え
ております。
(売上収益、売上原価)
当社グループは得意先から部品を仕入、加工を行った上で手数料等相当を仕入価格に上乗せして
加工品を当該得意先に対して販売する取引(以下、「有償受給品取引」)を行っております。日本
基準では有償受給品取引に係る「売上高」と「売上原価」について連結損益計算書上、総額で表示
しております。IFRSでは当該取引を「売上収益」と「売上原価」の純額で表示し、手数料等相当の
「売上収益」のみ表示しております。
その結果、「売上収益」及び「売上原価」の金額がそれぞれ9,339百万円減少しております。
(資本性金融商品の売却)
日本基準において資本性金融商品の売却にかかる損益は純損益として認識しております。IFRSで
は公正価値の変動をその他の包括利益として認識し、売却(認識の中止)した時点で、その他包括
利益として認識される累計損益を「利益剰余金」に振り替えております。
その結果、IFRSでは2百万円を「その他の資本の構成要素」から「利益剰余金」へ振り替えてお
ります。