訂正有価証券報告書-第117期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2018/01/10 15:00
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63項目

対処すべき課題


2017年3月に終了した第18次中期経営計画においては、前述の事業戦略展開に加えて、継続的な事業構造改革の取り組みを進めてまいりましたが、想定を上回る事業環境の急激な変化や、欧州経済の不透明感の拡大、新興国経済の減速、為替レートの変動等の経済環境の変化等の影響を受け、残念ながら掲げた財務目標を達成することができませんでした。この結果を真摯に捉え、2017年度からスタートする第19次中期経営計画を策定しました。
第19次中期経営計画では「リコー再起動」を掲げ、これまでの社内の常識をゼロベースで見直します。マーケットシェア追求や市場稼動台数拡大等、規模重視の戦略を見直し、コスト構造改革を最優先事項として、オフィス領域の製品・サービスの収益力強化を推進します。同時に、リコーグループの強みを活用して市場を拡大していく成長事業に焦点を絞り、将来に向けた投資を実施します。また経営システムの改善を行い、実行力の強化と、権限委譲を進めます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) コスト構造改革
リコーグループは、オフィスイメージング事業における過去の成長・拡大時期において、販売会社垂直統合などにより収益獲得の機会を取りこぼさないことを優先してまいりました。その結果、高コストの体制やプロセスが作り上げられてきました。しかしながら、売価下落や競争激化が進む現在の経営環境を鑑み、それに適した体制に変えていくことが喫緊の課題であると考えます。モノづくりの自前主義や自社販売・サービス網の強化等、これまでの戦略を見直し、マーケットシェア追求や市場稼動台数拡大を狙った規模重視から、利益重視の戦略にかじを切ります。
(2) 成長事業の重点化
リコーグループの強みを「顧客基盤」及び「プリンティング技術」と捉え、それぞれを活用した成長の方向性を定めます。
全世界に130万社ある法人のお客様、またそのお客様先で稼働している400万台の機器などの「顧客基盤」を活かし、従来のプリンティングに加え、さらにその付加価値を高める製品・サービスを提供し、お客様のNo.1パートナーとなることを目指します。例えば、主に中小企業様向けのワークフローを支援するソリューションをクラウドベースで提供するサービスや、それらのソリューションの導入、活用を可能にする大型操作パネル(Multilink-Panel)を登載したデジタル複合機を新たに提供していきます。また、インタラクティブ ホワイトボード(電子黒板)をベースに、自動通翻訳議事録作成等、人工知能を活用して遠隔地間での会議を支援するサービスの提供を開始します。
一方で、光学、メカ、エレキ、ケミカル、制御等の技術を高度に組み合わせたプリンティング技術を核に、商用印刷及び産業印刷の領域への価値提供を進めます。例えば産業印刷では、リコーがオフィス事業や商用印刷事業で培ってきた画像処理技術や、様々な産業印刷向けにおいて実績を上げてきたインクジェットヘッドの技術を活かし、建材や衣料向けの産業用インクジェットプリンタを提供していきます。デジタル印刷により少量多品種への対応や、特徴的なデザインによる商品価値向上に貢献してまいります。
さらに、これらに加え、バイオプリンターによる細胞積層等、プリンティングの可能性を拡大していくことで、様々な分野のお客様のニーズにお応えしてまいります。
(3) 経営システムの強化
実行力強化と権限委譲を進めるために、経営システムを見直します。迅速な意思決定と施策遂行を確実にして事業展開の質とスピードを高めるために、オフィスサービス領域、商用印刷、産業印刷領域の事業推進リーダーを、各事業の先進市場である米州、欧州から任命し、事業運営を任せます。加えて構造改革は、中期経営計画期間の前半で完遂させることを狙い、2017年度の最大の経営課題として位置づけ注力します。
リコーグループがこれまで培ってきた三愛精神に基づく文化・風土はしっかりと受け継ぐ一方で、今後の成長を阻害するような慣習や前例等は、聖域を設けずに見直します。そして大きな経営環境変化の中でも、着実に業績に結びつけられるような磐石な経営基盤を築いてまいります。
第19次中期経営計画は収益が出る構造へ会社を変え、次の成長に向けての基礎体力を十分に付ける時期と位置づけています。
リコーを再起動して進める第19次中期経営計画の財務目標については、構造改革の効果、2019年度の営業利益、3年間のファイナンス事業を除いたフリー・キャッシュフロー、それぞれについて1,000億円以上を目指します。