有価証券報告書
2. 作成の基礎
(1) IFRSに準拠している旨
当連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を全て満たすことから、同規則第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。
(2) 測定の基礎
連結財務諸表は、注記3に記載されている、公正価値で測定されている特定の資産及び負債を除き、取得原価を基礎として作成しています。
(3) 機能通貨及び表示通貨
連結財務諸表は、当社の機能通貨である日本円で表示しています。日本円で表示している全ての財務情報は、百万円未満を四捨五入しています。
(4) 新たに適用している主な基準書及び解釈指針
当連結会計年度より新たに適用する主な基準書及び解釈指針は以下のとおりです。
IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(改訂)
連結会社は、当連結会計年度よりIAS第37号(改訂)を適用しています。経過措置に基づき、適用による累積的影響を当連結会計年度期首の利益剰余金の残高の修正として認識しており、当該修正により、17,003百万円の「利益剰余金」の減少(20,486百万円の「引当金」増加、3,483百万円の「繰延税金資産」増加)を計上しています。
IAS第37号の改訂に伴い、契約が不利かどうかを評価する上での契約履行のコストは、次の両方で構成されることが明確化されました。
(a)契約履行による増分コスト(直接労務費や直接材料費など)
(b)契約履行に直接関連するその他のコストの配分(他の契約と並行して本契約を履行するために使用された有形固定資産の減価償却費の配分など)
契約履行のコストが経済的便益を上回る場合、当該契約は不利な契約に該当し、引当金を認識することが要求されますが、連結会社は、従来、(a)の増分コストのみを契約履行のコストとして考慮していたため、IAS第37号(改訂)の適用開始に伴い、LNGの販売事業における一部の契約において追加で引当金の計上が必要となったものです。
これらを除く新たな基準書及び解釈指針の適用による当連結会計年度の連結財務諸表への重要な影響はありません。
(5) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行う必要があります。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は、継続して見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りが変更された会計期間及び影響を受ける将来の会計期間において認識されます。
ロシア・ウクライナ情勢の影響
ロシア・ウクライナ情勢の経済環境に与える影響は、公的機関等が発行する経済見通しなどのとおり、情勢の緊迫化や各国のロシアに対する金融・経済制裁の継続や拡大、それに対するロシアによる国際送金規制や輸出規制などの対抗措置により、物品の供給制約、エネルギー価格の高騰に起因したインフレなどを介して経済成長見通しの下方圧力となることが想定されます。
このような環境下、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、業種や地域によって直接・間接の影響も異なりますが、翌連結会計年度も継続し、金融・経済制裁の解除、国際送金規制・供給不足の解消や貿易・サプライチェーンの正常化には時間を要する前提としています。
連結会社のロシアにおける主たる事業は、自動車・モビリティセグメントにおける販売金融事業、及び天然ガスセグメントにおけるLNG関連事業への投資です。当連結会計年度末における連結会社のロシアにおける事業に関する資産総額は180,540百万円(内、国際送金規制の対象となる現金及び現金同等物の残高は50,546百万円)です。
(ロシアにおけるLNG関連事業)
連結会社は、ロシアでLNG関連事業を行うSakhalin Energy Investment Company Ltd.(以下SEIC)に対して10%持分を有しており、その他の投資(FVTOCIの金融資産)として会計処理を行っています。2022年6月30日付のロシア大統領令(第416号)及び2022年8月2日付の政府令(第1369号)の発出に基づき、当該LNG関連事業を運営する新会社としてSakhalin Energy LLC(以下SELLC)が設立され、SEICが有する権利義務がSELLCに移転されました。連結会社は、SELLCの持分引受をロシア政府に申請し、2022年8月31日付で同申請が承認されたことにより、当該LNG関連事業に対して引き続き10%持分を有しています。当該LNG関連事業への投資に関する経済的実質に重要な変化はないことから、SELLC宛て投資の認識に当たっては純損益の認識を行わず、SEIC宛て投資に関して認識していたその他の資本の構成要素をSELLC宛て投資に関するその他の資本の構成要素として継続して認識した上で、SELLC宛て投資をその他の投資(FVTOCIの金融資産)として会計処理を行っています。
会社定款及びSELLCの出資者間協定書の条件など事業運営に係る詳細については、新たな出資者への持分移転手続きが完了し、SELLCの出資者構成が確定した後に協議する必要があり、当該投資に係る不確実性は依然として継続しています。連結会社は、当該状況を勘案し、確率加重平均による期待現在価値技法を用いたインカム・アプローチで当該投資の公正価値を測定しており、測定に用いる割引率はロシアのカントリーリスクプレミアムを考慮した上で決定しています。SELLCへの投資を通じて当該プロジェクト期間にわたる配当収入を見込む一方、その他シナリオも加味し、当連結会計年度末における当該投資の公正価値(レベル3)を83,210百万円として測定し、当連結会計年度において60,185百万円のその他の包括損益の減少(税前)を認識しています。
なお、当連結会計年度末以降に、2023年4月11日付のロシア政府令(第890号)によって新たな出資者の決定が承認されました。連結会社は、上記の公正価値に対してこの決定による影響はないと判断していますが、今後の更なる状況の変化により、その他シナリオで加味してきた不確実性が一部解消することで、確率加重平均による期待現在価値技法に用いるシナリオを再評価する必要があり、これによりSELLC宛て投資の公正価値は増加又は減少する可能性があります。
気候変動による影響
気候変動及び脱炭素社会への移行による連結財務諸表への影響は、非金融資産の減損、金融商品の公正価値、有形固定資産の耐用年数、資産除去債務等の会計上の見積りにおいて考慮されています。連結会社が2021年10月に策定した「カーボンニュートラル社会の実現に向けたロードマップ」は、パリ協定等で示された国際的な目標達成に貢献することを目指して策定されており、外部機関が公表するパリ協定に沿った脱炭素シナリオはこれらの会計上の見積りにおける重要な参照情報の一つとなります。一方で、脱炭素シナリオは需給等に関する市場全体の傾向を仮定するものの、連結会社の保有資産の優位性あるいは劣後性や、売買契約等の特殊性により、市場全体の傾向と連結会社の事業への影響が一致しない場合もあります。加えて、脱炭素シナリオを用いたシナリオ分析では数十年単位の超長期的な影響を分析するのに対し、連結財務諸表における資産及び負債の測定においては、数年から十年といった中長期的な時間軸の影響が大きく、足元の事業環境がより強く反映されることとなります。そのため、仮に脱炭素シナリオ分析において、連結会社の事業に関連する資産の価値毀損等あるいは負債の増加等の兆候が示された場合にも、それらが直ちに連結財務諸表における資産及び負債の測定に影響を及ぼすとは限らないと考えられます。会計上の見積りの設定においては、脱炭素シナリオに加え、連結会社の方針、各国の政策、外部機関の分析結果、及び各事業における固有の状況等を総合的に勘案し、合理的な見積りを行っています。ただし、将来における気候変動リスクに対する連結会社の戦略の変更や世界的な脱炭素化の潮流の変化は、これらに重大な影響をもたらす可能性があります。
連結会社では、気候変動関連のリスク及び機会が連結会社の事業に与える影響や事業戦略のレジリエンスを検討する一環として、地球温暖化を産業革命前に比べて1.5度以下に抑制するシナリオ(1.5℃シナリオ)を用いたシナリオ分析を行っています。同シナリオ分析におけるリスクサイドの分析対象事業として、気候変動の移行リスクが高く、かつ資産規模が特に大きい天然ガスセグメントのLNG関連事業、及び金属資源セグメントの豪州原料炭事業が選定されています。同シナリオ分析の詳細については、第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組「3. 気候変動リスクに対処する戦略」をご参照ください。
LNG関連事業については、1.5℃シナリオ下において天然ガス・LNGの市場全体の需要は不透明性がありますが、連結会社のLNG事業の戦略地域であるアジアでは長期にわたり一定程度の需要が想定されています。公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、既存のLNG事業における生産量の大部分を占める長期販売契約、及びスポット市場の動向予測に基づき、将来のキャッシュ・フローを見積っています。
豪州原料炭事業については、1.5℃シナリオ下においても、インドや東南アジア等新興国の需要に下支えされ、一定の需要が継続する見込みです。鉄は、脱炭素化に必要なインフラ整備にも不可欠な基礎素材として引き続き堅調な需要が見込まれる一方、新たな脱炭素製鉄法が世界的に普及するまでには相応の時間を要することが想定されます。このため、今後数十年にわたる移行期間においては、原料炭を用いる高炉製鉄が主流であり続け、高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献する高品位原料炭のニーズが高まる見込みです。豪州原料炭事業では高品位原料炭を主に生産しています。なお、リスクサイド分析対象事業の選定基準である資産規模につき、豪州原料炭事業における100%出資子会社のMitsubishi Development Pty Ltdの固定資産帳簿価額は994,604百万円となっています。上記の1.5℃シナリオの実現には多くの不確実性を含みますが、当該シナリオ下においても一定の需要が継続する見込みとなるため、当連結会計年度末において当該資産に係る減損の兆候は存在しないと判断しています。また、将来発生する鉱山の原状回復費用に関わる資産除去債務は、将来における原料炭の需給や中長期的な価格見通し等を踏まえて経済的に採掘可能な鉱山の年数に基づいて見積っており、当連結会計年度末における残高は171,266百万円となっています。
LNG関連事業及びシェールガス事業における主な投資残高、及びLNG価格の多くがリンクしている原油価格の中長期価格見通しについては、「銅及び原油の中長期価格見通し」を、また、引当金への影響については、注記20をご参照ください。
銅及び原油の中長期価格見通し
連結会社は、金属資源セグメントにおいて銅事業への、天然ガスセグメントにおいてLNG関連事業及びシェールガス事業への投資をそれぞれ行っており、前連結会計年度末及び当連結会計年度末における主な投資残高は以下のとおりです。
FVTOCIの金融資産は、将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引く割引キャッシュ・フロー法により公正価値を測定しています。持分法で会計処理される投資、有形固定資産は、減損テストが行われ、減損又は減損の戻入の兆候がある場合には資産の処分コスト控除後の公正価値又は使用価値のいずれか高い金額で回収可能価額を測定することが求められており、使用価値の測定の際には割引キャッシュ・フロー法を採用しています。銅事業における公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、銅の中長期的な価格見通しが最も重要な観察不能インプットとなっています。LNG価格は多くが原油価格にリンクしており、LNG関連事業における公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、原油の中長期的な価格見通しが最も重要な観察不能インプットとなっています。また、シェールガス事業においても、生産物の一部の販売価格が原油価格にリンクしており、減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいて、原油価格の影響を一部受けます。
FVTOCIの金融資産の主な銘柄は、銅事業においては、Minera Escondida及びCompania Minera Antamina、LNG関連事業においては、Sakhalin Energy LLC及びMalaysia LNG Satuです。なお、公正価値測定の詳細については、注記30をご参照ください。
銅の中長期的な価格見通しは、将来における全世界の銅に関する需要予測及び各銅鉱山の生産数量やコストの予測等の要因に基づき決定されており、複数の外部機関が公表する情報と連結会社の見積った中長期的な価格見通しの整合性を検証し、責任者による承認を行っています。ロシア・ウクライナ情勢、新型コロナウイルス感染症等については、短期的な需要低下の要因となる可能性がありますが、脱炭素社会に向けた取り組みが推進されることにより、風力・太陽光発電等の再生可能エネルギーを中心とした電化の進展とそれに伴う送電網の拡充や電気自動車(EV)の普及が見込まれることから、将来的には導電性に優れる銅の需要が一層増加するものと想定されます。一方、既存鉱山の生産量減少や、既存・新規鉱山開発の難易度の高まりにより、中長期的に需給は引き締まっていく見通しです。銅の中長期的な価格見通しは、毎年見直しを行っており、当連結会計年度末においては、2028年以降、第三者により公表されている見通し(2023年3月時点での金融機関等のアナリストによる価格予想の平均値1ポンド当たり約3.5米ドル(インフレの影響を除く))と近似しています。また、前連結会計年度末における中長期価格見通しは、2027年以降、第三者により公表されている見通し(2022年3月時点での金融機関等のアナリストによる価格予想の平均値1ポンド当たり約3.6米ドル(インフレによる影響を除く))と近似していました。なお、第三者より公表されている見通しは僅かに下落しているものの、資機材等の生産コスト上昇等を踏まえ、連結会社の価格見通しは、アナリストによる価格予想の平均値に近似する水準の中で、僅かに上方修正しています。
原油の中長期的な価格見通しは、将来における全世界の原油に関する需要予測及び生産数量やコストの予測等の要因に基づき決定しており、複数の外部機関が公表する情報と連結会社の見積った中長期的な価格見通しの整合性を検証し、責任者による承認を行っています。足元では、新型コロナウイルス感染症の拡大により大きく落ち込んだ需要の回復、及びロシア・ウクライナ情勢の影響長期化等に伴う地政学リスクの顕在化から価格ボラティリティが高まっています。また、長期的には、世界の気候変動リスクへの対応及びEV普及をはじめとした電化の進展等、脱炭素社会に向けた取り組みが推進されることにより、2030年代に原油需要がピークを迎えると予想しています。中長期の時間軸においては、外部機関(IEA等)が公表する脱炭素シナリオを考慮しつつも、脱炭素化の進展における不確実性と足元の価格高騰による影響等も総合的に勘案しています。原油の中長期的な価格見通しは、毎年見直しを行っており、当連結会計年度末においては、インフレの影響を除き2027年度に1バレル当たり約75米ドル(ブレント原油)になると見積っています。前連結会計年度末における中長期的な価格見通しは、インフレの影響を除き2026年度に1バレル当たり約70米ドル(ブレント原油)になると見積っていましたが、外部機関が公表する価格見通しが上方修正されていること、将来の原油需給、及び生産量減退や需要増加を補う新規投資に必要な価格水準等を総合的に考慮し、価格見通しを上方修正しています。なお、当連結会計年度末より原油の参照指標をドバイ原油からブレント原油に変更していますが、この指標変更に伴う連結財務諸表への影響はありません。
その他
上記以外に、翌連結会計年度において重要な修正をもたらすリスクのある、仮定及び見積りの不確実性に関する情報は、以下の注記に含まれています。
・金融商品の公正価値-注記7、30
・金融資産の減損-注記8
・非金融資産の減損-注記12、13、14、15
・確定給付制度債務の測定-注記19
・引当金-注記20
・繰延税金資産の回収可能性-注記28
連結財務諸表上で認識する金額に重要な影響を与える会計方針の適用に際して行う判断に関する情報は、以下の注記に含まれています。
・金融商品の譲渡-注記34
・ジョイント・アレンジメント(共同支配の取決め)及び関連会社-注記38
当連結会計年度の連結財務諸表における重要な会計上の判断、見積り及び仮定の変更に関する情報は、上記を除き以下の注記に含まれています。
・セグメント情報-注記6
・引当金-注記20
・ジョイント・アレンジメント(共同支配の取決め)及び関連会社-注記38
(1) IFRSに準拠している旨
当連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を全て満たすことから、同規則第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。
(2) 測定の基礎
連結財務諸表は、注記3に記載されている、公正価値で測定されている特定の資産及び負債を除き、取得原価を基礎として作成しています。
(3) 機能通貨及び表示通貨
連結財務諸表は、当社の機能通貨である日本円で表示しています。日本円で表示している全ての財務情報は、百万円未満を四捨五入しています。
(4) 新たに適用している主な基準書及び解釈指針
当連結会計年度より新たに適用する主な基準書及び解釈指針は以下のとおりです。
| 基準書及び解釈指針 | 概要 |
| IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(改訂) | 契約が不利かどうかを評価する際に考慮されるコストを明確化 |
IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(改訂)
連結会社は、当連結会計年度よりIAS第37号(改訂)を適用しています。経過措置に基づき、適用による累積的影響を当連結会計年度期首の利益剰余金の残高の修正として認識しており、当該修正により、17,003百万円の「利益剰余金」の減少(20,486百万円の「引当金」増加、3,483百万円の「繰延税金資産」増加)を計上しています。
IAS第37号の改訂に伴い、契約が不利かどうかを評価する上での契約履行のコストは、次の両方で構成されることが明確化されました。
(a)契約履行による増分コスト(直接労務費や直接材料費など)
(b)契約履行に直接関連するその他のコストの配分(他の契約と並行して本契約を履行するために使用された有形固定資産の減価償却費の配分など)
契約履行のコストが経済的便益を上回る場合、当該契約は不利な契約に該当し、引当金を認識することが要求されますが、連結会社は、従来、(a)の増分コストのみを契約履行のコストとして考慮していたため、IAS第37号(改訂)の適用開始に伴い、LNGの販売事業における一部の契約において追加で引当金の計上が必要となったものです。
これらを除く新たな基準書及び解釈指針の適用による当連結会計年度の連結財務諸表への重要な影響はありません。
(5) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行う必要があります。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は、継続して見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りが変更された会計期間及び影響を受ける将来の会計期間において認識されます。
ロシア・ウクライナ情勢の影響
ロシア・ウクライナ情勢の経済環境に与える影響は、公的機関等が発行する経済見通しなどのとおり、情勢の緊迫化や各国のロシアに対する金融・経済制裁の継続や拡大、それに対するロシアによる国際送金規制や輸出規制などの対抗措置により、物品の供給制約、エネルギー価格の高騰に起因したインフレなどを介して経済成長見通しの下方圧力となることが想定されます。
このような環境下、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、業種や地域によって直接・間接の影響も異なりますが、翌連結会計年度も継続し、金融・経済制裁の解除、国際送金規制・供給不足の解消や貿易・サプライチェーンの正常化には時間を要する前提としています。
連結会社のロシアにおける主たる事業は、自動車・モビリティセグメントにおける販売金融事業、及び天然ガスセグメントにおけるLNG関連事業への投資です。当連結会計年度末における連結会社のロシアにおける事業に関する資産総額は180,540百万円(内、国際送金規制の対象となる現金及び現金同等物の残高は50,546百万円)です。
(ロシアにおけるLNG関連事業)
連結会社は、ロシアでLNG関連事業を行うSakhalin Energy Investment Company Ltd.(以下SEIC)に対して10%持分を有しており、その他の投資(FVTOCIの金融資産)として会計処理を行っています。2022年6月30日付のロシア大統領令(第416号)及び2022年8月2日付の政府令(第1369号)の発出に基づき、当該LNG関連事業を運営する新会社としてSakhalin Energy LLC(以下SELLC)が設立され、SEICが有する権利義務がSELLCに移転されました。連結会社は、SELLCの持分引受をロシア政府に申請し、2022年8月31日付で同申請が承認されたことにより、当該LNG関連事業に対して引き続き10%持分を有しています。当該LNG関連事業への投資に関する経済的実質に重要な変化はないことから、SELLC宛て投資の認識に当たっては純損益の認識を行わず、SEIC宛て投資に関して認識していたその他の資本の構成要素をSELLC宛て投資に関するその他の資本の構成要素として継続して認識した上で、SELLC宛て投資をその他の投資(FVTOCIの金融資産)として会計処理を行っています。
会社定款及びSELLCの出資者間協定書の条件など事業運営に係る詳細については、新たな出資者への持分移転手続きが完了し、SELLCの出資者構成が確定した後に協議する必要があり、当該投資に係る不確実性は依然として継続しています。連結会社は、当該状況を勘案し、確率加重平均による期待現在価値技法を用いたインカム・アプローチで当該投資の公正価値を測定しており、測定に用いる割引率はロシアのカントリーリスクプレミアムを考慮した上で決定しています。SELLCへの投資を通じて当該プロジェクト期間にわたる配当収入を見込む一方、その他シナリオも加味し、当連結会計年度末における当該投資の公正価値(レベル3)を83,210百万円として測定し、当連結会計年度において60,185百万円のその他の包括損益の減少(税前)を認識しています。
なお、当連結会計年度末以降に、2023年4月11日付のロシア政府令(第890号)によって新たな出資者の決定が承認されました。連結会社は、上記の公正価値に対してこの決定による影響はないと判断していますが、今後の更なる状況の変化により、その他シナリオで加味してきた不確実性が一部解消することで、確率加重平均による期待現在価値技法に用いるシナリオを再評価する必要があり、これによりSELLC宛て投資の公正価値は増加又は減少する可能性があります。
気候変動による影響
気候変動及び脱炭素社会への移行による連結財務諸表への影響は、非金融資産の減損、金融商品の公正価値、有形固定資産の耐用年数、資産除去債務等の会計上の見積りにおいて考慮されています。連結会社が2021年10月に策定した「カーボンニュートラル社会の実現に向けたロードマップ」は、パリ協定等で示された国際的な目標達成に貢献することを目指して策定されており、外部機関が公表するパリ協定に沿った脱炭素シナリオはこれらの会計上の見積りにおける重要な参照情報の一つとなります。一方で、脱炭素シナリオは需給等に関する市場全体の傾向を仮定するものの、連結会社の保有資産の優位性あるいは劣後性や、売買契約等の特殊性により、市場全体の傾向と連結会社の事業への影響が一致しない場合もあります。加えて、脱炭素シナリオを用いたシナリオ分析では数十年単位の超長期的な影響を分析するのに対し、連結財務諸表における資産及び負債の測定においては、数年から十年といった中長期的な時間軸の影響が大きく、足元の事業環境がより強く反映されることとなります。そのため、仮に脱炭素シナリオ分析において、連結会社の事業に関連する資産の価値毀損等あるいは負債の増加等の兆候が示された場合にも、それらが直ちに連結財務諸表における資産及び負債の測定に影響を及ぼすとは限らないと考えられます。会計上の見積りの設定においては、脱炭素シナリオに加え、連結会社の方針、各国の政策、外部機関の分析結果、及び各事業における固有の状況等を総合的に勘案し、合理的な見積りを行っています。ただし、将来における気候変動リスクに対する連結会社の戦略の変更や世界的な脱炭素化の潮流の変化は、これらに重大な影響をもたらす可能性があります。
連結会社では、気候変動関連のリスク及び機会が連結会社の事業に与える影響や事業戦略のレジリエンスを検討する一環として、地球温暖化を産業革命前に比べて1.5度以下に抑制するシナリオ(1.5℃シナリオ)を用いたシナリオ分析を行っています。同シナリオ分析におけるリスクサイドの分析対象事業として、気候変動の移行リスクが高く、かつ資産規模が特に大きい天然ガスセグメントのLNG関連事業、及び金属資源セグメントの豪州原料炭事業が選定されています。同シナリオ分析の詳細については、第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組「3. 気候変動リスクに対処する戦略」をご参照ください。
LNG関連事業については、1.5℃シナリオ下において天然ガス・LNGの市場全体の需要は不透明性がありますが、連結会社のLNG事業の戦略地域であるアジアでは長期にわたり一定程度の需要が想定されています。公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、既存のLNG事業における生産量の大部分を占める長期販売契約、及びスポット市場の動向予測に基づき、将来のキャッシュ・フローを見積っています。
豪州原料炭事業については、1.5℃シナリオ下においても、インドや東南アジア等新興国の需要に下支えされ、一定の需要が継続する見込みです。鉄は、脱炭素化に必要なインフラ整備にも不可欠な基礎素材として引き続き堅調な需要が見込まれる一方、新たな脱炭素製鉄法が世界的に普及するまでには相応の時間を要することが想定されます。このため、今後数十年にわたる移行期間においては、原料炭を用いる高炉製鉄が主流であり続け、高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献する高品位原料炭のニーズが高まる見込みです。豪州原料炭事業では高品位原料炭を主に生産しています。なお、リスクサイド分析対象事業の選定基準である資産規模につき、豪州原料炭事業における100%出資子会社のMitsubishi Development Pty Ltdの固定資産帳簿価額は994,604百万円となっています。上記の1.5℃シナリオの実現には多くの不確実性を含みますが、当該シナリオ下においても一定の需要が継続する見込みとなるため、当連結会計年度末において当該資産に係る減損の兆候は存在しないと判断しています。また、将来発生する鉱山の原状回復費用に関わる資産除去債務は、将来における原料炭の需給や中長期的な価格見通し等を踏まえて経済的に採掘可能な鉱山の年数に基づいて見積っており、当連結会計年度末における残高は171,266百万円となっています。
LNG関連事業及びシェールガス事業における主な投資残高、及びLNG価格の多くがリンクしている原油価格の中長期価格見通しについては、「銅及び原油の中長期価格見通し」を、また、引当金への影響については、注記20をご参照ください。
銅及び原油の中長期価格見通し
連結会社は、金属資源セグメントにおいて銅事業への、天然ガスセグメントにおいてLNG関連事業及びシェールガス事業への投資をそれぞれ行っており、前連結会計年度末及び当連結会計年度末における主な投資残高は以下のとおりです。
| 前連結会計年度末 (百万円) | 当連結会計年度末 (百万円) | |
| (銅事業) その他の投資(FVTOCIの金融資産) 持分法で会計処理される投資 | 367,755 385,296 | 377,790 388,462 |
| (LNG関連事業) その他の投資(FVTOCIの金融資産) 持分法で会計処理される投資 有形固定資産 | 326,419 391,031 210,071 | 197,443 488,015 281,332 |
| (シェールガス事業) 持分法で会計処理される投資 | 207,428 | 225,135 |
FVTOCIの金融資産は、将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引く割引キャッシュ・フロー法により公正価値を測定しています。持分法で会計処理される投資、有形固定資産は、減損テストが行われ、減損又は減損の戻入の兆候がある場合には資産の処分コスト控除後の公正価値又は使用価値のいずれか高い金額で回収可能価額を測定することが求められており、使用価値の測定の際には割引キャッシュ・フロー法を採用しています。銅事業における公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、銅の中長期的な価格見通しが最も重要な観察不能インプットとなっています。LNG価格は多くが原油価格にリンクしており、LNG関連事業における公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、原油の中長期的な価格見通しが最も重要な観察不能インプットとなっています。また、シェールガス事業においても、生産物の一部の販売価格が原油価格にリンクしており、減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいて、原油価格の影響を一部受けます。
FVTOCIの金融資産の主な銘柄は、銅事業においては、Minera Escondida及びCompania Minera Antamina、LNG関連事業においては、Sakhalin Energy LLC及びMalaysia LNG Satuです。なお、公正価値測定の詳細については、注記30をご参照ください。
銅の中長期的な価格見通しは、将来における全世界の銅に関する需要予測及び各銅鉱山の生産数量やコストの予測等の要因に基づき決定されており、複数の外部機関が公表する情報と連結会社の見積った中長期的な価格見通しの整合性を検証し、責任者による承認を行っています。ロシア・ウクライナ情勢、新型コロナウイルス感染症等については、短期的な需要低下の要因となる可能性がありますが、脱炭素社会に向けた取り組みが推進されることにより、風力・太陽光発電等の再生可能エネルギーを中心とした電化の進展とそれに伴う送電網の拡充や電気自動車(EV)の普及が見込まれることから、将来的には導電性に優れる銅の需要が一層増加するものと想定されます。一方、既存鉱山の生産量減少や、既存・新規鉱山開発の難易度の高まりにより、中長期的に需給は引き締まっていく見通しです。銅の中長期的な価格見通しは、毎年見直しを行っており、当連結会計年度末においては、2028年以降、第三者により公表されている見通し(2023年3月時点での金融機関等のアナリストによる価格予想の平均値1ポンド当たり約3.5米ドル(インフレの影響を除く))と近似しています。また、前連結会計年度末における中長期価格見通しは、2027年以降、第三者により公表されている見通し(2022年3月時点での金融機関等のアナリストによる価格予想の平均値1ポンド当たり約3.6米ドル(インフレによる影響を除く))と近似していました。なお、第三者より公表されている見通しは僅かに下落しているものの、資機材等の生産コスト上昇等を踏まえ、連結会社の価格見通しは、アナリストによる価格予想の平均値に近似する水準の中で、僅かに上方修正しています。
原油の中長期的な価格見通しは、将来における全世界の原油に関する需要予測及び生産数量やコストの予測等の要因に基づき決定しており、複数の外部機関が公表する情報と連結会社の見積った中長期的な価格見通しの整合性を検証し、責任者による承認を行っています。足元では、新型コロナウイルス感染症の拡大により大きく落ち込んだ需要の回復、及びロシア・ウクライナ情勢の影響長期化等に伴う地政学リスクの顕在化から価格ボラティリティが高まっています。また、長期的には、世界の気候変動リスクへの対応及びEV普及をはじめとした電化の進展等、脱炭素社会に向けた取り組みが推進されることにより、2030年代に原油需要がピークを迎えると予想しています。中長期の時間軸においては、外部機関(IEA等)が公表する脱炭素シナリオを考慮しつつも、脱炭素化の進展における不確実性と足元の価格高騰による影響等も総合的に勘案しています。原油の中長期的な価格見通しは、毎年見直しを行っており、当連結会計年度末においては、インフレの影響を除き2027年度に1バレル当たり約75米ドル(ブレント原油)になると見積っています。前連結会計年度末における中長期的な価格見通しは、インフレの影響を除き2026年度に1バレル当たり約70米ドル(ブレント原油)になると見積っていましたが、外部機関が公表する価格見通しが上方修正されていること、将来の原油需給、及び生産量減退や需要増加を補う新規投資に必要な価格水準等を総合的に考慮し、価格見通しを上方修正しています。なお、当連結会計年度末より原油の参照指標をドバイ原油からブレント原油に変更していますが、この指標変更に伴う連結財務諸表への影響はありません。
その他
上記以外に、翌連結会計年度において重要な修正をもたらすリスクのある、仮定及び見積りの不確実性に関する情報は、以下の注記に含まれています。
・金融商品の公正価値-注記7、30
・金融資産の減損-注記8
・非金融資産の減損-注記12、13、14、15
・確定給付制度債務の測定-注記19
・引当金-注記20
・繰延税金資産の回収可能性-注記28
連結財務諸表上で認識する金額に重要な影響を与える会計方針の適用に際して行う判断に関する情報は、以下の注記に含まれています。
・金融商品の譲渡-注記34
・ジョイント・アレンジメント(共同支配の取決め)及び関連会社-注記38
当連結会計年度の連結財務諸表における重要な会計上の判断、見積り及び仮定の変更に関する情報は、上記を除き以下の注記に含まれています。
・セグメント情報-注記6
・引当金-注記20
・ジョイント・アレンジメント(共同支配の取決め)及び関連会社-注記38