有価証券報告書-第88期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/30 9:06
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況
<経営成績>当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて経済活動が大幅に抑制され、企業収益が減少する等の厳しい状況が続きました。先行きに関しても回復傾向は鈍く、不透明な状況が予測されています。
紙パルプ業界においても、情報伝達媒体のデジタルシフトによる印刷情報用紙の構造的な需要減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響による需要の減退が継続しており、紙・板紙合計での国内出荷量は前年実績を下回りました。
当社グループは、各種感染症対策を実施し、オンライン等非接触での販売、商談、提案活動に注力、商品供給と事業の安定した継続維持を図りました。また、需要伸長が見込める領域における高付加価値特殊紙の開発と営業活動強化、SDGs、脱プラスチック等の社会ニーズに向けた開発提案、感染症関連商品の開発と販売に注力しました。それと同時に、高効率ローコストオペレーションに向けた事業の改善を進め、業務効率化による販売管理費の低減、需要の伸長する領域に向けた商品在庫の集中拡充と、在庫内容の見直しと改善を強化しています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による需要の減少が大きく影響し、2020年度後半には販売の低下に歯止めがかかり緩やかな回復基調が見られたものの、通期では主力である和洋紙販売セグメントにおいて前期実績を下回りました。
当連結会計年度の業績は、売上高146億11百万円(前期比20.5%減)、経常損失19百万円(前期は経常利益2億49百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失34百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1億54百万円)となりました。
なお、当連結会計年度より、不動産賃貸業を主要な事業の一つとして位置づけ、不動産賃貸収入が安定的な収益源であるとの認識のもと、不動産賃貸収入及び不動産賃貸費用については「営業外収益」、「販売費及び一般管理費」及び「営業外費用」に計上していたものを、当連結会計年度より「売上高」及び「売上原価」に計上する方法に変更いたしました。また、この変更に伴い、従来「和洋紙の販売並びにこれらの付随業務」の単一セグメントとしていたものを、当連結会計年度より「和洋紙卸売業」と「不動産賃貸業」の区分に変更いたしました。
当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較分析しております。
[和洋紙卸売業]
和洋紙卸売業は、新型コロナウイルス感染症の影響による消費及び需要の低迷が継続していることから、売上高は151億54百万円(前期比20.6%減)、営業損失は15百万円(前期は営業利益1億68百万円)となりました。
[不動産賃貸業]
不動産の売買、賃貸借、管理及び仲介で構成される不動産賃貸業は、一部施設の賃料改定により不動産賃貸収入が増加し、売上高は28百万円(前期比1.9%増)、営業利益は22百万円(前期比3.8%増)となりました。
<財政状態>[資産]
資産合計は、159億19百万円(前期比5億23百万円減)となりました。
流動資産の減少(前期比5億76百万円減)は、現金及び預金2億65百万円、有価証券50百万円が増加しましたが、受取手形及び売掛金の減少2億15百万円、電子記録債権の減少4億48百万円、商品の減少2億76百万円が主な要因となっております。
固定資産の増加(前期比53百万円増)は、有形固定資産42百万円、無形固定資産18百万円が減少しましたが、投資その他の資産の増加1億14百万円が主な要因となっております。
[負債]
負債合計は、72億3百万円(前期比6億45百万円減)となりました。
流動負債の減少(前期比6億93百万円減)は、支払手形及び買掛金の減少5億85百万円、未払法人税等の減少24百万円、賞与引当金の減少20百万円が主な要因となっております。
固定負債の増加(前期比48百万円増)は、繰延税金負債の増加58百万円が主な要因となっております。
[純資産]
純資産合計は、87億15百万円(前期比1億22百万円増)となりました。
利益剰余金が82百万円減少しましたが、その他有価証券評価差額金の増加1億97百万円が主な要因となっております。
(参考)
当社単体の和洋紙卸売業の商品別の営業成績
品目別前事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
増減率(%)
金額(百万円)構成比
(%)
金額(百万円)構成比
(%)
ファンシーペーパー4,05523.43,14822.7△22.4
ファインボード2,01211.61,56411.3△22.3
高級印刷紙3,98923.03,00021.6△24.8
ベーシックペーパー5,06629.24,15929.9△17.9
技術紙2,04511.81,85013.3△9.5
その他1991.01761.2△11.8
合計17,368100.013,898100.0△20.0

(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
[ファンシーペーパー]
多様な色、表面性、風合いを持つ高付加価値特殊紙のファンシーペーパーは、新型コロナウイルス感染症の長期化による大幅な需要減少の影響が大きく、デザイン企画部門への販売促進活動を継続したものの、商業印刷物用途や紙製品の販売量が大きく減少、書籍等出版用途は安定的に推移したものの、売上高は31億48百万円、前期比22.4%の減少となりました。
[ファインボード]
ファンシーペーパーの厚物(板紙)であるファインボードは、観光及びインバウンド需要や各種イベント需要の大幅な減少が継続、商業印刷物用途や、化粧品・和洋菓子等の高級パッケージ向けの販売量が伸び悩み、売上高は15億64百万円、前期比22.3%の減少となりました。
[高級印刷紙]
独自の風合いを持ち、通常の印刷用紙より高価格帯の高級印刷紙は、エンターテイメント関連用途が堅調に推移しましたが、商業印刷物用途、名刺・封筒等の紙製品需要が減少し、売上高は30億円、前期比24.8%の減少となりました。
[ベーシックペーパー]
上質紙、塗工紙、色上質紙等の印刷用紙、包装用紙、各種板紙等で構成されるベーシックペーパーは、新型コロナウイルス感染症の影響もあり医薬品包材用途は増加したものの、商業印刷物用途の需要減退継続が影響し、売上高は41億59百万円、前期比17.9%の減少となりました。
[技術紙]
通常の紙にはない特殊機能が付与されている技術紙は、感染症関連需要も伴い医療包材及び偽造防止用紙が増加、工業品製造用工程紙も堅調でしたが、合成紙、耐水撥水性機能紙の販売が伸び悩み、売上高は18億50百万円、前期比9.5%の減少となりました。
[その他]
家庭紙、紙加工品、製紙関連資材等で構成される当区分は、家庭紙においてペーパータオル等の感染症対策需要もあり堅調でしたが、各種紙加工製品等が盛り上がりに欠け、売上高は1億76百万円、前期比11.8%の減少となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて2億65百万円増加し、32億19百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は3億14百万円(前期比13.52%増)となりました。これは主に、売上債権の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は36百万円(前期は2億2百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は85百万円(前期比8.99%減)となりました。これは主に、配当金の支払額によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前期比(%)
和洋紙卸売業(千円)14,585,58379.4
不動産賃貸業(千円)25,844102.1
合計(千円)14,611,42779.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.当連結会計年度より、報告セグメントを変更しており、前期比は前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で算出しております。
4.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
<当連結会計年度の財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容>「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。
<経営成績に重要な影響を与える要因>当社グループは「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、経営環境、事業の内容、事業体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向及び業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保及び適切な教育を実施するとともに、事業体制及び内部管理体制を強化し、社会のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に対し適切な対応を行ってまいります。
<セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容>「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。
<経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等>当社グループは、安定的な収益基盤を構築するため、売上高、営業利益及び収益性を判断する観点から売上高営業利益率を重視しております。また、株主資本利益率(ROE)を重要な指標として位置づけ、総資産利益率(ROA)も意識しております。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で先行きが不透明な中、当初は通期業績予想を未定としておりましたが、第2四半期連結累計期間の決算を公表した2020年11月12日の時点で、売上高が前期比19.5%減の148億円、営業利益が同70.7%減の56百万円とし、その達成に努めてまいりました。しかしながら、2021年1月以降11都府県に緊急事態宣言発出となる等の事態を受け、想定を下回る需要状況となり、当社の主力である和洋紙卸売業における売上高が減少し、売上高は146億11百万円、計画比1億88百万円減(1.3%減)となりました。利益面につきましても、販管費の削減を継続したものの営業利益については8百万円、計画比47百万円減(84.4%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
<キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容>「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
<資本の財源及び資金の流動性>(a)資本の財源
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社グループの運転資金需要のうち主なものは商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備投資を目的とした資金需要は、主に倉庫等における機械装置等の固定資産購入によるものであります。運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備資金の調達につきましては、自己資金を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は21億69百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は32億19百万円となっております。
(b)資本政策
当社グループが創出したフリー・キャッシュ・フローについては、有事の際に機動的な対応がとれるよう備えつつも、平時においては手元資金の適正な範囲内で、成長投資と株主還元とをバランスよく保ちながら、分配することとしております。
株主還元につきましては安定的な配当として中間配当と期末配当の年2回を基本方針としております。原則として、連結による損益を基礎とし、特別な損益の状態である場合を除き、1株当たり10円(中間配当5円、期末配当5円)の年間配当金を目処に、安定的・継続的な利益還元に努めていくこととしております。なお、2021年3月期第2四半期連結累計期間においては、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する四半期純損失を計上する等、厳しい業績結果となりました。第2四半期連結累計期間以降の見通しを総合的に勘案し、遺憾ながら中間配当を無配、期末配当につきましては、2021年3月期の連結業績を踏まえ、1株当たり5円とさせていただきました。今後の市場の回復傾向や、それに伴う業績の見通しが好転した際には、復配、増配の可能性についても積極的に検討してまいります。
成長投資については、経営状況を判断しながら、さまざまな施策の優先順位を検討してまいります。現在、大阪・名古屋に保有している事務所用の土地の有効活用を検討すると同時に、保有ビルの老朽化対応も兼ねながら収益物件として投資をすることも検討しております。また、特殊紙を中心とする紙の販売・流通を軸としたオーガニックな成長に加え、M&A等による成長機会に関しては、常時、情報を収集し、案件次第で検討してまいります。その際には、当社の事業領域との親和性に加え、事業成長性を重視した上で、成長投資としてキャッシュを一定量振り向ける準備もしてまいります。当社グループにおいては、引き続き利益成長を図りながらキャッシュの創出力を高め、資本コストと財務の柔軟性のバランスを考慮した適切な資本構成を維持していく考えです。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。