有価証券報告書-第116期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
1.企業集団の主要な事業内容
当社グループは、当社、連結子会社2社(日証金信託銀行株式会社、日本ビルディング株式会社)および持分法適用関連会社2社で構成され、証券・金融市場のインフラを支える公共的役割を強く意識しつつ、貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務を中心に、証券界・金融界の多様なニーズに積極的に応え、様々な証券・金融関連サービスを提供しております。また、貸借取引業務、セキュリティ・ファイナンス業務、信託銀行業務などを中心に、収益源の多様化と収益変動に及ぼす要因の複線化を一層推進し、各事業において収益性・資本効率のさらなる向上を意識しつつ経営目標の達成に取組んでおります。このような考え方の下、当社グループは、貸借取引を核とするセキュリティ・ファイナンス業務、有価証券運用業務、信託銀行業務、不動産管理業務からなる事業ポートフォリオにより、目指す将来像の実現を図っています。
<第8次中期経営計画>[当社が目指す企業としての将来像]
証券・金融市場のインフラ機能を支える我が国唯一の証券金融会社として、証券・金融市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指す。
[経営方針]
①証券金融会社としての社会的責任を常に認識し、堅固なガバナンス体制のもとでコンプライアンス、企業統治および経営リスクの管理を徹底することにより健全な業務運営を実践し、揺るぎない社会的信頼を確立する。
②証券・金融市場のインフラ機能を支える証券金融会社として求められる経営の安定性および財務の健全性を確保するため、強固な自己資本を維持しながら企業価値の向上を図るとともに、株主への利益還元を引き続き充実したものとしていく。
③証券金融会社の根幹である貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務をより強化し、あわせて当社・グループ会社が提供する金融・証券関連サービスの拡充・強化に務め、ビジネス基盤を一層拡大し堅固なものとする。
④経営環境の変化に機動的かつ柔軟に対応するため、迅速かつ効率的な業務運営体制を構築するとともに、人材力の基盤強化を図り、企業活力と組織変革力を向上させる。
[経営目標]
2028年度までに、連結経常利益150億円、ROE8%の達成を目指す。
[戦略]
①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の安定運用・利便性向上
株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応した制度メンテナンスを継続することで貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、貸借取引に関する積極的な情報発信やマーケットニーズの的確な把握などにより、貸借取引の利用促進を図る。
②セキュリティ・レンディングの更なる強化を軸としたセキュリティ・ファイナンス業務の拡充
当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、有価証券に着目した取引(モノ対モノの取引)の拡大や取引スキーム構築力の強化によるセキュリティ・レンディング分野の更なる強化を軸として収益機会の拡大を図る。
③海外市場におけるプレゼンス・認知度の向上
貸借取引およびセキュリティ・ファイナンスに関し、海外プロモーションの強化や海外市場関係者団体のフォーラムへの積極的な参加、クロスボーダー取引の対象市場・取扱商品拡大により、アジアにおける主要プレイヤーとしてのポジションを強化する。
④デジタル技術の活用によるビジネスのイノベーションと業務効率化
事業ポートフォリオの変化に即した戦略的なIT投資や業務効率化を軸としたデジタル技術の積極的な活用を推進し、競争力の基盤強化を図る。また、分散型台帳技術(DLT)を用いた取引の実用化に向けた検討などビジネスのイノベーションに向けた中長期的な取組みを継続する。
⑤グループ連結経営の強化
グループ会社との間で、営業、リスク管理、業務管理などの各分野で、より連携を推進するなどグループ連結経営の強化を図る。
⑥人材力の基盤強化
戦略①から⑤を担うプロフェッショナル人材を戦略的に採用・育成し、多様性・専門性・主体性の強化を軸とした人材ポートフォリオの構築により、人材力の基盤を強化する。ダイバーシティ&インクルージョン推進や働きやすい職場環境づくりを通じて社員エンゲージメントの向上を図ることにより、企業活力と組織変革力を向上させる。
2.2025年度(2026年3月期)の当社の取組み
(1)現状分析
・当社は経営の長期的展望およびその下で策定した第7次中期経営計画(2025年度まで)に基づき、証券・金融市場のインフラ機能を支えるプライム市場上場企業として、経営目標(安定的に連結経常利益100億円超・ROE5%を上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指す)の達成に向けて、経営努力を積み重ねてまいりました。事業戦略面では、収益源の多様化と収益構造の複線化の努力が一定の成果をあげており、また、コーポレートガバナンスについても取締役会審議の充実など一層の強化に努めてまいりました。
・その結果、2025年度の当社業績は、連結経常利益は149億円、ROEは7.8%となり、第7次中期経営計画で掲げた経営目標を大きく上回って推移しております。
・わが国の金利上昇の影響については、貸借取引やセキュリティ・ファイナンスにおける取引先からの資金需要の増加や当社の貸付金利の上昇など、基本的にはポジティブなものであると認識しております。こうした環境のもとで、2025年度は貸借取引業務、株券レポ取引等のセキュリティ・ファイナンス業務がいずれも堅調に推移いたしました。また、子会社の日証金信託銀行も同社の強みである管理型信託サービス等が堅調に推移いたしました。
・当社株式については、米国の関税政策が発表され経済に与える影響について先行き不透明感が広がった2025年4月の一時期を除いてPBRは1倍を上回る水準、株主総利回り(TSR)はTOPIXを大きく上回る水準で安定的に推移しており、上記のような当社の業績が一定の評価を受けているものと考えております。
(2)2025年度の取組み
(収益基盤の強化、事業戦略面での取組み)
・当社は我が国唯一の証券金融会社として、制度信用取引を支える貸借取引業務の運営を通じて、証券市場に資金や証券の流動性を供給する証券市場のインフラとしての役割を担ってきました。この役割は当社にとって非常に重要な使命であり、貸借取引業務はその核となる業務です。もっとも、収益面から見ると、貸借取引業務は、株式市況の影響を受け比較的大きく変動しやすいほか、1990年代後半に一般信用取引が導入されて以降、制度信用取引・貸借取引の役割が相対化してきました。
・このため、当社は、収益源の多様化や収益に影響を与える要因の複線化に向けて、安定的で着実な成長を実現できるような事業ポートフォリオの構築に取り組んでまいりました。こうした取組みには上記のように一定の成果が出ていると認識しておりますが、海外市場とくにアジア市場における一層のプレゼンス向上や、証券の需要に着目したストラクチャー取引の拡充により、質の向上を図りながらさらなる収益力の向上を目指します。
・セキュリティ・ファイナンス業務は、株式や債券のレポ・現先取引を通じて、証券・金融市場に在庫証券のファイナンスや担保需要の充足などの形で広く流動性を供給する業務です。このセキュリティ・ファイナンス業務は、当社の成長エンジンとして推進しています。
(コーポレートガバナンス面の取組み)
①取締役会の実効性の向上
・取締役会としては、執行側の取組みについて適切に監督すること、および第8次中期経営計画の検討も含め、今後の企業価値向上に向けた議論をより充実させることを課題として認識し、中長期的視点にたって取締役会に付議する議案や報告内容を一層充実させる一方、重要度に応じてメリハリをつけた審議、更にはそれらに資する社外取締役の情報入手の支援、議論の充実に向けた環境整備等にも取り組みました。
・取締役会では第8次中期経営計画の策定に向けたディスカッションを行うなど、毎年行っている取締役会の実効性評価の結果も踏まえて中長期的な企業価値向上に向けた適切な議題設定に努め、取締役会および委員会の議論の充実、実効性の向上に取り組みました。
②指名・報酬・監査委員会の取組み
・指名委員会では、取締役候補者の決定、執行役・執行役員候補者の決定の他に、当社の取締役および執行役・執行役員の選任に関する様々なトピックスについて審議しております。具体的には、取締役会のスキルマトリックスについて、取締役会が経営方針の決定や執行に対する監督を十分に行う観点から適切であるか当社内外の状況を踏まえて議論し、決定しております。また、スキルの複層化や年齢構成・ジェンダーの多様化の観点からみて適切な構成となっているかなどの課題について継続的かつ活発に審議しております。
・2026年1月には代表執行役の異動、執行役および執行役員の人事について決定いたしました。今回の選任にあたり指名委員会では、第8次中期経営計画に関する議論や、これまで審議・決定してきた代表執行役社長の後継者計画を含む経営陣の選任に関する考え方・公共的役割を果たす当社において企業価値向上に向けて求められる資質を踏まえ、ロングリストについての検討、ショートリストへの絞り込みを経て、審議・決定を行いました。また、第116回定時株主総会に付議する取締役候補者について、指名委員会は、第8次中期経営計画の達成に向けた実効性の高い監督や今後の経営方針の策定を適切に行う観点から、取締役会の構成等について審議し、取締役会のスキルマトリックスを踏まえ、候補者を決定いたしました。
・報酬委員会では、取締役および執行役・執行役員の個別報酬の決定の他に、当社の経営の長期的展望やこれを受けた経営計画の着実な実施に向けて、これらと整合的な報酬体系の在り方について活発に審議しております。2025年8月には業績連動型株式報酬制度を一部改定し、譲渡制限付き株式報酬の導入を決定いたしました。
・監査委員会では、取締役および執行役の職務執行の監査、監査報告の作成等のほか、内部監査部門や会計監査人とも連携し、監査の実効性向上に取り組んでおります。
(その他の取組み)
①情報開示の充実
・情報開示充実の一環として、2022年度から統合報告書を作成しております。統合報告書では、当社のビジネスモデル、経営方針、コーポレートガバナンス、サステナビリティ課題への取組みなどについて記載しております。また、株主の皆様その他各方面から当社に寄せられるご意見を踏まえ、毎年アップデートを重ねております。
・2025年度の統合報告書では、第8次中期経営計画の経営戦略や具体的な取組みについて要点を整理して示しております。また、人的資本ポリシーに基づく人材力強化に向けた取組みや、フロント収益・リスク管理を含めたRAF管理体制の強化など、収益基盤、業務を支える内部管理体制の強化に取り組む姿を示しております。コーポレートガバナンス強化については、指名委員会等設置会社への移行により経営の執行と監督を明確に分離し、取締役会の監督機能の強化と透明性の向上を実践していることを説明しています。このほか、サステナビリティに関する取組みも記載しております。
②従業員向け自社株インセンティブの付与
・2025年度の当社業績に応じて当社従業員に対して当社株式を付与する従業員向け自社株インセンティブを決議し、2026年6月12日に実施いたしました。
・この取組みの趣旨・目的は、従業員の経営目標達成にかかるモチベーションや働きがいの向上を図るとともに、当社従業員が当社株式を所有することで、企業価値向上への関心をより高め、株主の皆さまとの価値共有を進めることにより、中長期的な企業価値の向上を図ることです。
3.対処すべき課題
(外部環境の変化への対応)
・当社の業績は、証券市場の動向だけではなく金利変動の影響も受けるという特徴があります。各国の経済政策運営や中東情勢を中心とする地政学的リスクが我が国の金融政策に及ぼす影響には留意が必要ですが、我が国ではマイナス金利の解除以降、金利機能が発揮される環境となっており、当社の貸付金利は上昇し、また取引先からの資金需要も増加の動きがみられています。
・こうしたなか、貸借取引業務では、引き続き株式市場の環境変化に適切に対応し安定的な業務運営を図るほか、市場参加者の取引ニーズを的確に把握して利用促進に努めてまいります。セキュリティ・ファイナンス業務では、国内外における有価証券を介した様々なファイナンスニーズを結びつけ、業務の伸長に努めてまいります。また、外国金融機関などの取引先の拡大、取扱有価証券の多様化にも、引き続き取り組んでまいります。子会社の日証金信託銀行では、同社の強みであるニッチな分野での管理型信託サービスを中心に、持続的な成長と企業価値の向上に努めます。
(中期経営計画)
・当社は、取締役会での累次の審議を経て、当社が目指す将来像やコーポレートメッセージなどを「経営の長期的展望」にまとめたうえで、具体的な数値目標等については、3年ごとに策定している中期経営計画と当該期間中の株主還元方針を定めることによってステークホルダーの皆様にお示ししており、2025年11月には、当社を取り巻く事業環境の変化や当社の収益基盤の強化が着実に進んでいることを踏まえ、経営の長期的展望を見直し、収益力・資本効率のさらなる向上に向けてROE8%の実現を目指して取り組んでいくこと、また株主還元方針としてROE8%を達成するまでの間は引き続き総還元性向100%を継続することを明確にしています。
・2026年度から2028年度までの3年間を計画期間とする第8次中期経営計画においては、2028年度までに、連結経常利益150億円、ROE8%の達成を目指し、そのために、「貸借取引業務の安定運用・利便性向上」と「セキュリティ・レンディングのさらなる強化を軸としたセキュリティ・ファイナンス業務の拡充」を柱に、収益力と資本効率の向上を目指します。具体的には、次のような施策に取り組んでまいります。
① 証券市場のインフラとしての貸借取引業務の安定運用・利便性向上
② セキュリティ・レンディングの更なる強化を軸としたセキュリティ・ファイナンス業務の拡充
③ 海外市場におけるプレゼンス・認知度の向上
④ デジタル技術の活用によるビジネスのイノベーションと業務効率化
⑤ グループ連結経営の強化
⑥ 人材力の基盤強化
・第8次中期経営計画期間の株主還元については、ROE8%を達成するまでの間、配当および自己株式取得の機動的な実施により「総還元性向100%」を目指します。配当については、「配当性向70%」を目安とします。
(人材育成の強化)
・今後、当社のさらなる成長には、人材育成の強化とエンゲージメントの向上が重要であると考えています。より高い目標に挑戦し、実現していくために、社員がそれぞれの個性と強みを十分に発揮し、意欲的・自発的に業務の効率向上や変革に取り組み、経験と成果を積み重ねながら成長できる職場環境を作り上げていきます。当社は人材育成をはじめとした人的資本形成に関する取組みを推進するため、基本方針として人的資本ポリシーを定めております。人的資本ポリシーでは当社が到達したい目標地点をビジョンとして明確にし、社員が業務を通じて成長できるように機会の提供等、支援環境の整備を行うとともに、社員が安心して働ける職場環境づくりを推進することにコミットしています。刻々と変化する環境の中で、当社が目指す姿の実現に向けて挑戦し続けるたくましい企業マインドを醸成していきたいと考えています。
・以上のような取り組みを軸に、当社としては、引き続き、証券・金融市場のインフラ機能を支える我が国唯一の証券金融会社として、証券・金融市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指してまいります。
当社グループは、当社、連結子会社2社(日証金信託銀行株式会社、日本ビルディング株式会社)および持分法適用関連会社2社で構成され、証券・金融市場のインフラを支える公共的役割を強く意識しつつ、貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務を中心に、証券界・金融界の多様なニーズに積極的に応え、様々な証券・金融関連サービスを提供しております。また、貸借取引業務、セキュリティ・ファイナンス業務、信託銀行業務などを中心に、収益源の多様化と収益変動に及ぼす要因の複線化を一層推進し、各事業において収益性・資本効率のさらなる向上を意識しつつ経営目標の達成に取組んでおります。このような考え方の下、当社グループは、貸借取引を核とするセキュリティ・ファイナンス業務、有価証券運用業務、信託銀行業務、不動産管理業務からなる事業ポートフォリオにより、目指す将来像の実現を図っています。
<第8次中期経営計画>[当社が目指す企業としての将来像]
証券・金融市場のインフラ機能を支える我が国唯一の証券金融会社として、証券・金融市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指す。
[経営方針]
①証券金融会社としての社会的責任を常に認識し、堅固なガバナンス体制のもとでコンプライアンス、企業統治および経営リスクの管理を徹底することにより健全な業務運営を実践し、揺るぎない社会的信頼を確立する。
②証券・金融市場のインフラ機能を支える証券金融会社として求められる経営の安定性および財務の健全性を確保するため、強固な自己資本を維持しながら企業価値の向上を図るとともに、株主への利益還元を引き続き充実したものとしていく。
③証券金融会社の根幹である貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務をより強化し、あわせて当社・グループ会社が提供する金融・証券関連サービスの拡充・強化に務め、ビジネス基盤を一層拡大し堅固なものとする。
④経営環境の変化に機動的かつ柔軟に対応するため、迅速かつ効率的な業務運営体制を構築するとともに、人材力の基盤強化を図り、企業活力と組織変革力を向上させる。
[経営目標]
2028年度までに、連結経常利益150億円、ROE8%の達成を目指す。
[戦略]
①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の安定運用・利便性向上
株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応した制度メンテナンスを継続することで貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、貸借取引に関する積極的な情報発信やマーケットニーズの的確な把握などにより、貸借取引の利用促進を図る。
②セキュリティ・レンディングの更なる強化を軸としたセキュリティ・ファイナンス業務の拡充
当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、有価証券に着目した取引(モノ対モノの取引)の拡大や取引スキーム構築力の強化によるセキュリティ・レンディング分野の更なる強化を軸として収益機会の拡大を図る。
③海外市場におけるプレゼンス・認知度の向上
貸借取引およびセキュリティ・ファイナンスに関し、海外プロモーションの強化や海外市場関係者団体のフォーラムへの積極的な参加、クロスボーダー取引の対象市場・取扱商品拡大により、アジアにおける主要プレイヤーとしてのポジションを強化する。
④デジタル技術の活用によるビジネスのイノベーションと業務効率化
事業ポートフォリオの変化に即した戦略的なIT投資や業務効率化を軸としたデジタル技術の積極的な活用を推進し、競争力の基盤強化を図る。また、分散型台帳技術(DLT)を用いた取引の実用化に向けた検討などビジネスのイノベーションに向けた中長期的な取組みを継続する。
⑤グループ連結経営の強化
グループ会社との間で、営業、リスク管理、業務管理などの各分野で、より連携を推進するなどグループ連結経営の強化を図る。
⑥人材力の基盤強化
戦略①から⑤を担うプロフェッショナル人材を戦略的に採用・育成し、多様性・専門性・主体性の強化を軸とした人材ポートフォリオの構築により、人材力の基盤を強化する。ダイバーシティ&インクルージョン推進や働きやすい職場環境づくりを通じて社員エンゲージメントの向上を図ることにより、企業活力と組織変革力を向上させる。
2.2025年度(2026年3月期)の当社の取組み
(1)現状分析
・当社は経営の長期的展望およびその下で策定した第7次中期経営計画(2025年度まで)に基づき、証券・金融市場のインフラ機能を支えるプライム市場上場企業として、経営目標(安定的に連結経常利益100億円超・ROE5%を上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指す)の達成に向けて、経営努力を積み重ねてまいりました。事業戦略面では、収益源の多様化と収益構造の複線化の努力が一定の成果をあげており、また、コーポレートガバナンスについても取締役会審議の充実など一層の強化に努めてまいりました。
・その結果、2025年度の当社業績は、連結経常利益は149億円、ROEは7.8%となり、第7次中期経営計画で掲げた経営目標を大きく上回って推移しております。
・わが国の金利上昇の影響については、貸借取引やセキュリティ・ファイナンスにおける取引先からの資金需要の増加や当社の貸付金利の上昇など、基本的にはポジティブなものであると認識しております。こうした環境のもとで、2025年度は貸借取引業務、株券レポ取引等のセキュリティ・ファイナンス業務がいずれも堅調に推移いたしました。また、子会社の日証金信託銀行も同社の強みである管理型信託サービス等が堅調に推移いたしました。
・当社株式については、米国の関税政策が発表され経済に与える影響について先行き不透明感が広がった2025年4月の一時期を除いてPBRは1倍を上回る水準、株主総利回り(TSR)はTOPIXを大きく上回る水準で安定的に推移しており、上記のような当社の業績が一定の評価を受けているものと考えております。
(2)2025年度の取組み
(収益基盤の強化、事業戦略面での取組み)
・当社は我が国唯一の証券金融会社として、制度信用取引を支える貸借取引業務の運営を通じて、証券市場に資金や証券の流動性を供給する証券市場のインフラとしての役割を担ってきました。この役割は当社にとって非常に重要な使命であり、貸借取引業務はその核となる業務です。もっとも、収益面から見ると、貸借取引業務は、株式市況の影響を受け比較的大きく変動しやすいほか、1990年代後半に一般信用取引が導入されて以降、制度信用取引・貸借取引の役割が相対化してきました。
・このため、当社は、収益源の多様化や収益に影響を与える要因の複線化に向けて、安定的で着実な成長を実現できるような事業ポートフォリオの構築に取り組んでまいりました。こうした取組みには上記のように一定の成果が出ていると認識しておりますが、海外市場とくにアジア市場における一層のプレゼンス向上や、証券の需要に着目したストラクチャー取引の拡充により、質の向上を図りながらさらなる収益力の向上を目指します。
・セキュリティ・ファイナンス業務は、株式や債券のレポ・現先取引を通じて、証券・金融市場に在庫証券のファイナンスや担保需要の充足などの形で広く流動性を供給する業務です。このセキュリティ・ファイナンス業務は、当社の成長エンジンとして推進しています。
(コーポレートガバナンス面の取組み)
①取締役会の実効性の向上
・取締役会としては、執行側の取組みについて適切に監督すること、および第8次中期経営計画の検討も含め、今後の企業価値向上に向けた議論をより充実させることを課題として認識し、中長期的視点にたって取締役会に付議する議案や報告内容を一層充実させる一方、重要度に応じてメリハリをつけた審議、更にはそれらに資する社外取締役の情報入手の支援、議論の充実に向けた環境整備等にも取り組みました。
・取締役会では第8次中期経営計画の策定に向けたディスカッションを行うなど、毎年行っている取締役会の実効性評価の結果も踏まえて中長期的な企業価値向上に向けた適切な議題設定に努め、取締役会および委員会の議論の充実、実効性の向上に取り組みました。
②指名・報酬・監査委員会の取組み
・指名委員会では、取締役候補者の決定、執行役・執行役員候補者の決定の他に、当社の取締役および執行役・執行役員の選任に関する様々なトピックスについて審議しております。具体的には、取締役会のスキルマトリックスについて、取締役会が経営方針の決定や執行に対する監督を十分に行う観点から適切であるか当社内外の状況を踏まえて議論し、決定しております。また、スキルの複層化や年齢構成・ジェンダーの多様化の観点からみて適切な構成となっているかなどの課題について継続的かつ活発に審議しております。
・2026年1月には代表執行役の異動、執行役および執行役員の人事について決定いたしました。今回の選任にあたり指名委員会では、第8次中期経営計画に関する議論や、これまで審議・決定してきた代表執行役社長の後継者計画を含む経営陣の選任に関する考え方・公共的役割を果たす当社において企業価値向上に向けて求められる資質を踏まえ、ロングリストについての検討、ショートリストへの絞り込みを経て、審議・決定を行いました。また、第116回定時株主総会に付議する取締役候補者について、指名委員会は、第8次中期経営計画の達成に向けた実効性の高い監督や今後の経営方針の策定を適切に行う観点から、取締役会の構成等について審議し、取締役会のスキルマトリックスを踏まえ、候補者を決定いたしました。
・報酬委員会では、取締役および執行役・執行役員の個別報酬の決定の他に、当社の経営の長期的展望やこれを受けた経営計画の着実な実施に向けて、これらと整合的な報酬体系の在り方について活発に審議しております。2025年8月には業績連動型株式報酬制度を一部改定し、譲渡制限付き株式報酬の導入を決定いたしました。
・監査委員会では、取締役および執行役の職務執行の監査、監査報告の作成等のほか、内部監査部門や会計監査人とも連携し、監査の実効性向上に取り組んでおります。
(その他の取組み)
①情報開示の充実
・情報開示充実の一環として、2022年度から統合報告書を作成しております。統合報告書では、当社のビジネスモデル、経営方針、コーポレートガバナンス、サステナビリティ課題への取組みなどについて記載しております。また、株主の皆様その他各方面から当社に寄せられるご意見を踏まえ、毎年アップデートを重ねております。
・2025年度の統合報告書では、第8次中期経営計画の経営戦略や具体的な取組みについて要点を整理して示しております。また、人的資本ポリシーに基づく人材力強化に向けた取組みや、フロント収益・リスク管理を含めたRAF管理体制の強化など、収益基盤、業務を支える内部管理体制の強化に取り組む姿を示しております。コーポレートガバナンス強化については、指名委員会等設置会社への移行により経営の執行と監督を明確に分離し、取締役会の監督機能の強化と透明性の向上を実践していることを説明しています。このほか、サステナビリティに関する取組みも記載しております。
②従業員向け自社株インセンティブの付与
・2025年度の当社業績に応じて当社従業員に対して当社株式を付与する従業員向け自社株インセンティブを決議し、2026年6月12日に実施いたしました。
・この取組みの趣旨・目的は、従業員の経営目標達成にかかるモチベーションや働きがいの向上を図るとともに、当社従業員が当社株式を所有することで、企業価値向上への関心をより高め、株主の皆さまとの価値共有を進めることにより、中長期的な企業価値の向上を図ることです。
3.対処すべき課題
(外部環境の変化への対応)
・当社の業績は、証券市場の動向だけではなく金利変動の影響も受けるという特徴があります。各国の経済政策運営や中東情勢を中心とする地政学的リスクが我が国の金融政策に及ぼす影響には留意が必要ですが、我が国ではマイナス金利の解除以降、金利機能が発揮される環境となっており、当社の貸付金利は上昇し、また取引先からの資金需要も増加の動きがみられています。
・こうしたなか、貸借取引業務では、引き続き株式市場の環境変化に適切に対応し安定的な業務運営を図るほか、市場参加者の取引ニーズを的確に把握して利用促進に努めてまいります。セキュリティ・ファイナンス業務では、国内外における有価証券を介した様々なファイナンスニーズを結びつけ、業務の伸長に努めてまいります。また、外国金融機関などの取引先の拡大、取扱有価証券の多様化にも、引き続き取り組んでまいります。子会社の日証金信託銀行では、同社の強みであるニッチな分野での管理型信託サービスを中心に、持続的な成長と企業価値の向上に努めます。
(中期経営計画)
・当社は、取締役会での累次の審議を経て、当社が目指す将来像やコーポレートメッセージなどを「経営の長期的展望」にまとめたうえで、具体的な数値目標等については、3年ごとに策定している中期経営計画と当該期間中の株主還元方針を定めることによってステークホルダーの皆様にお示ししており、2025年11月には、当社を取り巻く事業環境の変化や当社の収益基盤の強化が着実に進んでいることを踏まえ、経営の長期的展望を見直し、収益力・資本効率のさらなる向上に向けてROE8%の実現を目指して取り組んでいくこと、また株主還元方針としてROE8%を達成するまでの間は引き続き総還元性向100%を継続することを明確にしています。
・2026年度から2028年度までの3年間を計画期間とする第8次中期経営計画においては、2028年度までに、連結経常利益150億円、ROE8%の達成を目指し、そのために、「貸借取引業務の安定運用・利便性向上」と「セキュリティ・レンディングのさらなる強化を軸としたセキュリティ・ファイナンス業務の拡充」を柱に、収益力と資本効率の向上を目指します。具体的には、次のような施策に取り組んでまいります。
① 証券市場のインフラとしての貸借取引業務の安定運用・利便性向上
② セキュリティ・レンディングの更なる強化を軸としたセキュリティ・ファイナンス業務の拡充
③ 海外市場におけるプレゼンス・認知度の向上
④ デジタル技術の活用によるビジネスのイノベーションと業務効率化
⑤ グループ連結経営の強化
⑥ 人材力の基盤強化
・第8次中期経営計画期間の株主還元については、ROE8%を達成するまでの間、配当および自己株式取得の機動的な実施により「総還元性向100%」を目指します。配当については、「配当性向70%」を目安とします。
(人材育成の強化)
・今後、当社のさらなる成長には、人材育成の強化とエンゲージメントの向上が重要であると考えています。より高い目標に挑戦し、実現していくために、社員がそれぞれの個性と強みを十分に発揮し、意欲的・自発的に業務の効率向上や変革に取り組み、経験と成果を積み重ねながら成長できる職場環境を作り上げていきます。当社は人材育成をはじめとした人的資本形成に関する取組みを推進するため、基本方針として人的資本ポリシーを定めております。人的資本ポリシーでは当社が到達したい目標地点をビジョンとして明確にし、社員が業務を通じて成長できるように機会の提供等、支援環境の整備を行うとともに、社員が安心して働ける職場環境づくりを推進することにコミットしています。刻々と変化する環境の中で、当社が目指す姿の実現に向けて挑戦し続けるたくましい企業マインドを醸成していきたいと考えています。
・以上のような取り組みを軸に、当社としては、引き続き、証券・金融市場のインフラ機能を支える我が国唯一の証券金融会社として、証券・金融市場の発展に貢献することを通じて、高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指してまいります。