有価証券報告書-第110期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 11:39
【資料】
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【項目】
143項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
[企業理念]
当社は、証券金融の専門機関として、常にその公共的役割を強く認識するとともに、証券界、金融界の多様なニーズに積極的に応え、証券市場の参加者、利用者の長期的な利益向上を図ることで、証券市場の発展に貢献することを使命とする。
[経営方針]
①証券金融会社としての社会的責任を常に認識し、新たなガバナンス体制のもとでコンプライアンス、企業統治および経営リスクの管理を徹底することにより健全な業務運営を実践し、以って、揺るぎない社会的信頼を確立する。
②証券市場のインフラの担い手として求められる経営の安定性および財務の健全性を確保するため、強固な自己資本を維持しながら企業価値の増大を図るとともに、収益環境や投資計画などを総合的に勘案し、株主への利益還元を引き続き充実したものとしていく。
③証券金融会社の根幹である貸借取引業務をより強化し、あわせて当社・グループ会社が提供する金融・証券関連サービスの拡充・強化と新規展開に努め、ビジネス基盤を一層拡大し堅固なものとする。
④経営環境の変化に機動的に対応するため、迅速かつ効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。
(2)中長期的な会社の経営戦略
第6次中期経営計画(2020年度~2022年度)
当社グループは、2017年3月に策定した第5次中期経営計画の下で、これまで培ってきた資金・有価証券関連業務の運営能力と高い信用力、市場における中立性を活かして、既存ビジネスの強化に取組むとともに、内外の新たな取引ニーズを積極的に取り込むことにより、収益基盤の強化に努めてまいりました。また、この間、当社においては、指名委員会等設置会社への移行を通じ、ガバナンス体制の更なる強化に取組んでまいりました。
一方で、当社グループを取り巻く事業環境をみますと、引き続き大きく変化する渦中にあります。すなわち、超低金利環境の継続とデジタライゼーションの急速な進展がみられるなかで、取引先証券会社や金融機関等においては、人工知能(AI)を始めとする新たな情報処理技術の活用による金融サービス事業の再構築に向けた取組みが進められています。そうした下で、国際金融規制や有価証券決済制度の見直しの影響も相まって、新たな金融取引ニーズが生まれているほか、取引ニーズの多様化がみられています。
当社グループは、証券市場のインフラの担い手として求められている財務の健全性を維持することを前提に、人的資源を含め当社が有する資本をより有効に活用することにより、免許業務である貸借取引の基盤強化と収益源の多様化への取組みを更に推進するとともに、迅速かつ効率的な業務運営体制の構築による競争力の基盤強化を図り、市場や投資家の信認に応えていきたいと考えています。
こうした考えに立って、2020年度を初年度とする新たな中期経営計画を策定しました。
[経営目標]
当社業務の核となる貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、貸借取引の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収支額(想定貸借取引収支のもとで試算される経常利益)の着実な増加を目指す。
[戦略]
①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の強化
株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応し貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、市場参加者の動向の的確な把握や貸借銘柄数の着実な増加などにより、貸借取引の利用促進を図るとともに、制度信用・貸借取引にかかる情報発信を強化し、投資家のすそ野を拡大する。
②セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化
当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、内外の金融商品取引業者等との多様な取引に積極的に対応するとともに、取引先や対象有価証券等の拡大により、セキュリティ・ファイナンス業務を強化・拡充し、収益機会の拡大を図る。
③新規業務の開発と具体化
証券金融会社としての業歴を背景とした当社の特長を活かし、内外の関係先やグループ会社との連携の下で、長期的視野に立って新規業務の開発に取組むとともに、具体化を図っていく。
④資金の効率的活用としての有価証券運用の多様化
外部環境の変化に対し、適切なリスクコントロールの下、機動的にポートフォリオの見直しを実施することで、安定した収益を確保する。また、外国国債など外貨建て有価証券による運用拡大や、外貨を利用したビジネス展開をサポートするため、外貨調達手段の拡充を図る。
⑤業務管理体制の強化
当社に求められている社会的要請に積極的に対応し、企業理念を実現していくため、コンプライアンスを経営の前提と位置付けていることをあらためて確認する。
当社に対する揺るぎない社会的信頼を確立するため、内部監査の実効性を確保し、金融業務に付随するリスクの多様化・複雑化に対応してリスク管理の一層の充実を図る。
重大な災害発生時においても証券市場のインフラとしての機能を果たせるよう、業務継続体制の更なる強化を図る。
⑥効率的な業務運営による競争力の基盤強化
取引量の増加や業務の複雑化が進む中、業務プロセスの見直しやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等のデジタル技術の活用を積極的に推進することにより、効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。
⑦多様な働き方への対応と企業活力の向上
働き方改革、定年延長など労働の在り方が大きく変化し多様化している中、人事制度の見直し等により、職員が自覚とやりがいを持って働ける職場環境を整備し、職員ひとりひとりの生産性を高め、企業活力を向上させる。
[リスクアペタイト・フレームワークの活用]
上記経営目標・戦略とリスク管理を一体運営していくための枠組みとして、リスクアペタイト・フレームワークを導入する。
(3)会社の対処すべき課題
当社は、「証券金融の専門機関として、常にその公共的役割を強く認識するとともに、証券界、金融界の多様なニーズに積極的に応え、証券市場の参加者、利用者の長期的な利益向上を図ることで、証券市場の発展に貢献する」ことを企業理念としております。
こうした企業理念の実現に向け、当社グループは第5次中期経営計画(2017年度から2019年度)の下、これまで培ってきた資金・有価証券関連業務の運営能力と高い信用力、市場における中立性を活かして、当社の基幹業務である貸借取引業務をはじめとする既存ビジネスの強化に取組むとともに、内外の新たな取引ニーズを積極的に取り込むことにより、収益基盤の強化に努めて参りました。また、昨年6月には指名委員会等設置会社へ移行し、公共的役割を担う金融機関として、ガバナンス体制の一層の強化にも取組んで参りました。
外部環境に目を向けますと、デジタライゼーションの急速な進展がみられるなかで、AI(人工知能)を始めとする新たな情報技術の活用による金融サービスの再構築に向けた取組みや国際金融規制等の見直しの影響が相まって、取引ニーズの多様化が進んでおります。また、2020年1月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が世界的な広がりを見せるなかで、日本経済のみならず世界経済の先行きに対する不透明感が急速に高まるとともに、超低金利環境の更なる長期化が見込まれております。
こうした事業環境のなか、当社は、2020年度から2022年度を対象期間とする第6次中期経営計画を策定いたしました。新たな計画では、貸借取引業務の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収支額*の着実な増加を目指して参ります。具体的には、第5次計画の成果をさらに推し進め、貸借取引業務では発行会社・貸株取引先とのリレーション強化により、株券調達力の向上に取組み、その他のセキュリティ・ファイナンス業務では取引先や取引手法、対象通貨などの多様化を通じて資金および有価証券取引ビジネスの領域拡大を図るほか、部門間連携の強化を通じた戦略的な営業活動の推進などに取組んで参ります。
また、新たに、経営管理やリスク管理を一体運営していくための枠組みとして、リスクアペタイト・フレームワークを導入し、適切なリスクテイクの管理体制を整備することといたしました。
これからも当社グループは、証券市場のインフラとして必要な財務の健全性および高い信用力を維持しつつ、人的資源を含め当社が有する資本をより有効活用した効率的な業務運営により、安定的な収益確保と充実した株主還元を実現し、市場や投資家の信認に応えて参りたいと考えております。
*「基礎収支額」:想定貸借取引収支(過去3年平均値を想定)の下で試算される経常利益