有価証券報告書-第11期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期のわが国を含む世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により厳しい状況で推移しましたが、期半ば以降、経済活動の再開が段階的に進められる中、持ち直しの動きもみられました。
このような中、当社は、2018年度から2021年度までを対象とする4か年の中期経営計画「AD Vision 2021」の後半となるステージ2計画(2020年度~2021年度)をスタートし、中期経営計画の目指す姿として掲げる「特色ある個性豊かな会社」の確立に向け、先進性・多様性・地域密着をさらに進展させるとともに、ビジネススタイル変革にも着手し、環境変化に迅速に対応できる態勢構築等に取り組みました。
当期の具体的な事業の経過及び成果等は、以下のとおりであります。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を受けつつも、営業部門、損害サービス部門、代理店・扱者が一体となった「営損代一体運営」を継続して推進し、リアル・リモート・デジタルをミックスした「新たな営業態勢」で取り組むことでお客さまからのさらなる信頼獲得に努めた結果、営業予算の達成及びマーケットシェアの拡大に繋げることができました。
当社では、社会の変化と将来を見据えた対応として、「テレマティクス※1・モビリティサービス」「自然災害対策」「地方創生」「DX※2」「プラットフォーム」の5つの部門横断プロジェクトに取り組みました。
テレマティクス・モビリティサービスプロジェクトにつきましては、中期経営計画「AD Vision 2021」のスタート年である2018年4月に、コネクティッドカー※3を対象とし安全運転の度合いを保険料に反映する国内初のテレマティクス自動車保険「タフ・つながるクルマの保険」を、2020年1月には専用のドライブレコーダーで取得した走行データを保険料に反映する国内初のテレマティクス自動車保険「タフ・見守るクルマの保険プラス(ドラレコ型)」を発売しました。
2020年度は新たな取組みとして、2021年1月に自動運転車の安全性を保険料に反映し「自動運転モード」で走行中の運転分保険料を無料とする国内初の自動車保険を開発、また、月額100円の特約保険料で簡単・手軽に加入できる「タフ・見守るクルマの保険プラスS(エス)」を発売しました。
さらに、テレマティクス損害サービスシステムについても、業界初となるAIによる相手車両の速度解析や過失割合の判定サポートといった機能を実装するなど、最先端技術を活用しお客さまへ安心をお届けする事故対応を追求して取り組みました。今後も「安全・安心なクルマ社会」の実現に向け、新たな付加価値を提供するとともに、24時間365日事故対応サービス「I’m ZIDAN」※4と合わせ、よりよいサービスを実現してまいります。
国外においても、当社はテレマティクス保険のパイオニアとして、米国・欧州・中国・東南アジアを中心に事業拡大を進めています。日本の自動車メーカーが自動車販売マーケットの大半を占めているタイにおいて、Toyota Motor Thailand Co.,Ltd.が展開するコネクティッドカーを対象とした運転挙動反映型テレマティクス自動車保険の販売を開始し、展開国は9か国に拡大しました。
また、今後拡大するオンデマンド交通※5事業やマルチモーダルサービス※6に伴うリスクに対応するべく、自治体及び企業と連携し、業界初となるMaaS※7専用保険の販売も開始しました。
自動運転分野では、新たなテレマティクス自動車保険の発売や、自動運転による移動サービスの導入を検討する自治体への支援プログラム提案などの対応を拡充しました。さらに、新たなモビリティサービスの実装に向け検討が進むスーパーシティ・スマートシティに対応すべく、空飛ぶクルマやAI・ブロックチェーンに関する技術を保有するベンチャー企業等と資本業務提携を締結し、先進技術に対する検討・研究を実施しました。
カーボンニュートラル・脱炭素社会実現に向けた電動化戦略の一環として、電動車活用推進コンソーシアムに参画しました。イタリアではトヨタのハイブリッド車向けテレマティクス自動車保険が、「インシュアテックサミット2020」の個人向け商品部門において最優秀賞を受賞しました。
今後もCASE※8・MaaS及びその先の先進的な街づくりに対応する新たな保険・サービスの検討・開発・提供を通じ、安全・安心で快適な移動の実現と、地域社会の持続的な発展に貢献できるよう取組みを継続してまいります。
自然災害対策プロジェクトにつきましては、大規模自然災害の発生時でも、平時と同等の迅速性・適切性をもってお客さまに保険金をお支払いできる態勢を実現することを目標として、2018年度から取組みを進めてまいりました。
世界初のリアルタイム被害予測Webサイトcmap.dev(シーマップ)につきましては、災害に関する緊急情報の通知機能を備えたスマートフォン向けアプリとして「被害予測アプリ cmap」を公開し、Webサイトとアプリ共通の新機能として、リアルタイム浸水危険度推定情報を追加するなど、防災・減災により役立つツールとなることを目指し、更なる開発を進めました。
また、自然災害発生時の保険金請求手続きにおける利便性の向上及び迅速な保険金のお支払いに向けては、当社ホームページにおける事故受付機能の拡充や、事故のご連絡から保険金のお支払いまでの全ての請求手続きをWeb上で完結できるサービスの提供も開始しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止を踏まえた新たな自然災害対応態勢の構築につきましては、「自然災害工程管理システム※9」を活用したペーパーレス業務を基軸に、RPA※10への移行をさらに進め、リモートでの災害対応を強化しました。これにより、全国の拠点での分散対応や在宅勤務による対応が可能となりました。
また、損害調査についても、現地に勤務する社員がお客さまを訪問し、鑑定人がバックオフィスでサポートする調査体制と、鑑定人とお客さまのビデオ通話によるリモート調査を組み合わせた新たな調査体制を構築しました。これらにより、コロナウイルス感染リスクの極小化と、迅速なお客さま対応体制の構築を同時に実現しました。
地方創生プロジェクトにつきましては、各地域の地方創生取組みの支援を継続して実施し、2021年3月時点で329の地方公共団体との連携協定を締結しています。2020年度は、連携協定先の地方公共団体を対象とする「全国地方創生交流会」のオンライン開催やWeb方式によるセミナーの実施など、対面に加えてWebを活用したハイブリッドな取組みを推進したほか、MaaSや自動運転の研究をテーマとする産学連携等にも取り組みました。
これまでICTプロジェクトとして取り組んできた「業務改革」と「事業開発」の領域を、「DXプロジェクト(業務改革)」と「プラットフォームプロジェクト(事業開発)」の新たな体制として機能特化を図り、さらなる推進力強化に向けて尽力しました。
DXプロジェクトにつきましては、既存の業務をプロセス視点で抜本的に見直し再設計したうえで、RPA等の新たなテクノロジーへの置き換えを進めるといったこれまでの取組みに加え、「新たな働き方」に向けた業務の見直しにも着手しました。具体的には、在宅勤務等の定着に向け、ペーパーレス化・印鑑レス化、対面訪問や会議・研修等のオンライン化といった取組みを強化し、デジタルシフトの観点で推進しました。
プラットフォームプロジェクトにつきましては、プラットフォーマー※11との提携を推進し、新商品・新サービスのニーズ収集を行うとともに、保険商品の流通改革を目指して取り組みました。目標として掲げた「新たな商品供給基盤の構築」の一環として、業務提携先が設立したスマートプラス少額短期保険に出資を行うとともに、次世代型保険販売システムとして開発したデジタル募集基盤※12による保険商品の提供を開始しました。
今後も、将来の環境変化に備えた新たなビジネスモデル構築に向け、当社の保険事業のノウハウとプラットフォーマーが持つリソースを融合させ、お客さまにとって付加価値の高い新しい保険商品を提供できるよう、特に“顧客視点”を重視して取組んでまいります。
また、プラットフォームプロジェクトから地方創生につなげる取組みとして、シリコンバレー所在のベンチャーキャピタルが主催する先進的なプログラムである「Smart City X※13」に参画しました。引き続き、地域社会・地方公共団体への貢献を目指し、取組みを進めてまいります。
当社は、業界に先駆けてデータを活用した商品・サービスの開発に取り組んでおり、さらなるデータ利活用に向けてデータサイエンス研究活動や教育に関する産学連携協定を締結し、社内にもデータサイエンスに専門的に取り組むデータソリューション室を設置しています。
魅力的な商品・サービスの開発や業務の高度化・効率化を全社的に推し進め、データ利活用を実現するために、全社員向けの教育プログラムを実施し、社員全員のデータリテラシーの向上に取り組んでいます。さらにデータ利活用を推進するデータサイエンティストの拡充が不可欠と考え、データサイエンスに興味のある大学生・大学院生等を対象とするインターンシップ制度を導入しています。
また、AI開発プラットフォームの提供及び開発支援コンサルティングを行うスタートアップ企業との資本業務提携も行いました。今後は、社内外の様々なデータ利活用の高度化を通じて、保険の枠を超えた事業活動の展開及び社会貢献を目指し、取組みを強化してまいります。
社会課題の解決に向けては、国際連合が掲げるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を道標(みちしるべ)とし、事業活動を通じて、事故の防止、安心・安全な社会の構築に資する商品・サービスの提供や、環境破壊や気候変動抑止に繋がる環境負荷軽減取組みを継続して実施しました。
MS&ADゆにぞんスマイルクラブの寄付・寄贈等による地域貢献活動や補助犬の育成活動、ベルマーク収集活動をはじめとした東日本大震災・熊本地震等の被災地支援等の社会貢献活動にも積極的に取り組みました。
また、スポーツ振興につきましては、所属アスリートによる小学校体験授業やオンライン講演会等を実施したほか、地域ごとにスポーツ関連団体へ寄付活動を行いました。こうした取組みが評価され、東京都スポーツ推進制度唯一の「殿堂入り企業」として2019年度に引続き顕彰を受けました。障がい者雇用「地域密着モデル」にも継続して取り組んでおり、障がい者雇用率も2020年度(平均)で2.42%と高い水準※14を維持しています。
なお当社では、金融庁が策定した「顧客本位の業務運営に関する原則」を踏まえ、「お客さま第一の業務運営に関する方針」を定めるとともに、当方針に対応した「お客さま第一の業務運営に関する具体的取組み」を公表し、取組み結果を開示しています。当社の行動規範である「全力サポート宣言(迅速・頼れる・優しい)」の具現化に向け、今後も独自性ある取組みを進め、お客さま第一の業務運営のさらなる推進に努めてまいります。
※1 テレマティクスとは…「テレコミュニケーション」と「インフォマティクス」を組み合わせた造語。カーナビゲーションやGPS
等と移動体通信システムを利用して、さまざまな情報やサービスを提供する仕組み
※2 DXとは…「Digital Transformation(デジタル変革)」の略語で、最新のデジタル技術を駆使し企業の戦略や業務フローを変革
させていくこと
※3 コネクティッドカーとは…走行データが取得できる車載通信機(DCM:Data Communication Module)を搭載した車両
※4 I’m ZIDANとは…夜間休日でも「初期対応」から「示談交渉」までの専門的な事故対応が可能となるサービス
※5 オンデマンド交通とは…定時・定路線ではなく、利用者の予約時間や場所に合わせて運航する公共交通機関
※6 マルチモーダルサービスとは…出発地から目的地までにおいて、複数のモビリティサービスを組み合わせた経路検索・予約・決済
などを可能とするサービス
※7 MaaSとは…Mobility as a Serviceの略語で交通インフラにおいて「移動」をサービスとして提供すること
※8 CASEとは…Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared/Service(シェア/サービス)・Electric(電動)
の4つの頭文字をとった造語で自動車産業に大変革期をもたらすと言われるキーワード
※9 自然災害工程管理システムとは…大規模自然災害専用に、事故受付からお支払いまでの一連のお客さま対応状況をクラウド上で管
理するシステム
※10 RPAとは…Robotic Process Automationの略語でロボットによる業務の効率化や自動化のこと
※11 プラットフォーマーとは…当社が独自に定義したオンライン上でサービスを提供し、多くの顧客を抱える事業者
※12 デジタル募集基盤とは…当社の基幹システムとプラットフォーマーが保有するアプリやWebサイトを繋ぐためのシステム基盤を
いう。このシステム基盤によりプラットフォーマーの本業サービスと連携して当社の保険商品を提供することができるもの
※13 Smart City Xとは…各産業を代表するパートナー企業とともに、「ニューノーマル時代のスマートシティ」をテーマに、世界中の
スタートアップと連携・事業共創を行うグローバル・オープンイノベーション・プログラム
※14 高い水準とは…2020年6月1日における民間企業の障害者実雇用率2.15%(厚生労働省「障害者雇用状況」集計結果より)との比
較による
このような中、当連結会計年度の経営成績は次のとおりとなりました。
経常収益は、保険引受収益が1兆3,923億円、資産運用収益が643億円、その他経常収益が81億円となった結果、
1兆4,648億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆2,017億円、資産運用費用が80億円、営業費及び一般管理費が2,170億円、その他経常費用が44億円となった結果、1兆4,314億円となりました。
以上の結果、経常利益は前連結会計年度に比べ242億円減少し、334億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ221億円減少し、212億円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
経常収益は、保険引受収益が1兆3,221億円、資産運用収益が621億円、その他経常収益が56億円となった結果、1兆3,898億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆1,498億円、資産運用費用が79億円、営業費及び一般管理費が1,970億円、その他経常費用が25億円となった結果、1兆3,574億円となりました。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ261億円減少し、324億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ231億円減少し、216億円となりました。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
海外保険子会社セグメントについては、正味収入保険料は前連結会計年度に比べ34億円増加し、655億円となりました。
経常損益は前連結会計年度に比べ17億円増加し、5億円となりました。出資持分考慮後の当期純損益(セグメント損益)は前連結会計年度に比べ8億円改善したものの、7億円の損失となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ3,288億円増加し、3兆8,446億円となりました。
当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ92.6ポイント上昇し、818.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ552億円増加し、966億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ94億円増加し、△459億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,185億円減少し、△299億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より210億円増加し、2,287億円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
損害保険業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、本項に記載した予想、予測、見込み、見通し、方針、予定等の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性が内在しており、将来生じる実際の結果とは大きく異なる可能性があります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
[連結主要指標]
正味収入保険料は、当社において料率引下げの影響により自動車損害賠償責任保険で減収したものの、自動車保険や火災保険で増収したことなどにより、前連結会計年度に比べ73億円増加し、1兆3,469億円となりました。
経常利益は、当社において自動車保険の発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)が減少したものの、責任準備金繰入額が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ242億円減少し、334億円となりました。
経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、価格変動準備金繰入額の減少による特別損失の減少があったものの、税金費用の増加により、前連結会計年度に比べ221億円減少し、212億円となりました。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響として、当社における再保険事業等で発生保険金を計上した一方で、国内の交通事故の減少による自動車保険の発生保険金の減少などがありました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
2.元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
c 正味支払保険金
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
運用資産及び有価証券の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
b 有価証券
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
当社(単体)の経営成績は次のとおりとなりました。
[当社(単体)の主要指標]
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
保険引受の概況は次のとおりであります。
正味収入保険料は、料率引下げの影響により自動車損害賠償責任保険で減収したものの、自動車保険や火災保険で増収したことなどにより、前事業年度に比べ46億円増加し、1兆2,814億円となりました。一方、正味支払保険金は、自動車保険や火災保険で減少したことなどにより、前事業年度に比べ446億円減少し、6,799億円となりました。以上により、正味損害率は58.6%と、前事業年度に比べ3.4ポイント低下しました。また、諸手数料及び集金費が増加したことにより、正味事業費率は34.9%と、前事業年度に比べ0.4ポイント上昇しました。
これらに収入積立保険料、満期返戻金、支払備金繰入額、責任準備金繰入額などを加減した保険引受損益は、責任準備金繰入額が増加したことなどにより、前事業年度に比べ136億円減少し、124億円の損失となりました。
資産運用の概況は次のとおりであります。
利息及び配当金収入が前事業年度に比べ44億円減少し549億円となり、また、有価証券売却益が前事業年度に比べ152億円減少し198億円となったことなどから、積立型保険の満期返戻金などに充当する運用益を控除した残額の資産運用収益は、前事業年度に比べ191億円減少し、621億円となりました。一方、資産運用費用は、有価証券評価損が前事業年度に比べ100億円減少したことなどにより、前事業年度に比べ128億円減少し、79億円となりました。
これらの結果、経常利益は前事業年度に比べ261億円減少し、324億円となりました。当期純利益は、価格変動準備金繰入額の減少による特別損失の減少があったものの、税金費用の増加により、前事業年度に比べ231億円減少し、216億円となりました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 正味支払保険金
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.正味損害率は正味支払保険金に損害調査費を加えて算出しております。
運用資産、有価証券、利回り及び海外投融資の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
b 有価証券
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 利回り
運用資産利回り(インカム利回り)
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.収入金額は、損益計算書における「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。
3.平均運用額は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
資産運用利回り(実現利回り)
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.資産運用損益(実現ベース)は、損益計算書における「資産運用収益」及び「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。
3.平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
4.資産運用利回り(実現利回り)にその他有価証券の評価差額等を加味した時価ベースの利回り(時価総合利回り)は以下のとおりであります。
なお、資産運用損益等(時価ベース)は、資産運用損益(実現ベース)にその他有価証券及び金銭の信託(その他有価証券に準じて処理をする運用目的・満期保有目的以外のものに限る。)に係る評価差額(税効果控除前の金額による。)の当期増減額を加減算した金額であります。
また、平均運用額(時価ベース)は、平均運用額(取得原価ベース)にその他有価証券及び金銭の信託(その他有価証券に準じて処理をする運用目的・満期保有目的以外のものに限る。)に係る前期末評価差額(税効果控除前の金額による。)を加減算した金額であります。
d 海外投融資
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.金銭の信託として運用しているものを含めて表示しております。
3.「海外投融資利回り」のうち「運用資産利回り(インカム利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 運用資産利回り(インカム利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
4.「海外投融資利回り」のうち「資産運用利回り(実現利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 資産運用利回り(実現利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
なお、海外投融資に係る時価総合利回りは前事業年度1.00%、当事業年度3.10%であります。
5.前事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国投資信託100,181百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国投資信託38,742百万円であります。
当事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国投資信託127,633百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国投資信託54,322百万円であります。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
運転挙動反映型テレマティクス自動車保険をタイ、フランス、スペインでも発売した結果、国内を含め9ヶ国に販売を拡大するなど、日本、米国、欧州、中国、東南アジアの5極を中心としたテレマティクス・モビリティサービス事業を推進しました。
海外保険子会社セグメントの経営成績は次のとおりとなりました。
[海外保険子会社の主要指標]
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.セグメント損益は出資持分考慮後の当期純損益に相当する金額であります。
正味収入保険料は、前連結会計年度に比べ34億円増加し、655億円となりました。
経常損益は前連結会計年度に比べ17億円増加し、5億円となりました。出資持分考慮後の当期純損益(セグメント損益)は、前連結会計年度に比べ8億円改善したものの、7億円の損失となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ3,288億円増加し、3兆8,446億円となりました。総資産の内訳では、有価証
券が3,234億円増加し、2兆6,395億円となりました。
当社のソルベンシー・マージン比率の状況は、以下のとおりであります。
保険会社は、保険金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。この「通常の予測を超える危険」を示す「リスクの合計額」(以下の各表の(B))に対する「資本金・準備金等の支払余力」(すなわちソルベンシー・マージン総額:以下の各表の(A))の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「ソルベンシー・マージン比率」(以下の各表の(C))であります。
ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。
イ 単体ソルベンシー・マージン比率
(注)「単体ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条及び第87条並びに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出された比率であります。
ロ 連結ソルベンシー・マージン比率
(注)「連結ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条の2及び第88条並びに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出された比率であります。
保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券の評価差額が増加したことや異常危険準備金が増加したことを主因に、当事業年度末の単体ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて88.6ポイント上昇し、790.9%となり、当連結会計年度末の連結ソルベンシー・マージン比率は前連結会計年度末に比べて92.6ポイント上昇し、818.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、保険金の支払額が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ552億円増加し、966億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ94億円増加し、△459億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、債券貸借取引受入担保金による収入が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ1,185億円減少し、△299億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より210億円増加し、2,287億円となりました。
資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。
長期的な投資資金等に対しては、自己資金を活用するほか、社債の発行による外部からの資金調達を行っております。
また、資金の流動性につきましては、大規模自然災害時に保険金の支払や市場の混乱等により資金繰りが悪化する場合に備え、流動性資産を十分に保有するとともに、資金の流出入の動向を踏まえて資産・負債両面から流動性についての評価を行い、適切な資金繰りを行っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準及び諸法令に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とする項目があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から実際の結果とは異なる場合があります。当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の事項を会計上の重要な見積りと考えております。
イ 時価の算定方法
資産・負債の一部は時価をもって貸借対照表価額としており、時価の算定は市場価格等に基づいております。一部のデリバティブ取引において市場価格がない場合には、将来キャッシュ・フローの現在価値や取引対象の市場価格、契約期間等の構成要素に基づく合理的な見積りによって算出された価格を時価としております。
ロ 有価証券の減損
保有している有価証券については、市場の価格変動等のリスクを負っており、価値の下落が著しくかつ一時的でないと判断した場合に減損処理を行っております。将来において市場価格が下落した場合等には減損処理が必要となる可能性があります。
ハ 固定資産の減損
収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、減損処理を行っております。資産又は資産グループの回収可能価額は、正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される価額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定及び予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しております。したがって、固定資産の使用方法を変更した場合又は不動産取引相場や賃料相場等が変動した場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。
ニ 繰延税金資産
繰延税金資産は将来の課税所得の見積り等を踏まえ、回収可能性に問題がないと判断した金額を計上することとしております。ただし、将来の市場環境や経営成績が著しく変化し、将来の課税所得の見積りに大きな変化が生じた場合や、税制改正により税率の変更が生じた場合等には、繰延税金資産の金額が変動する可能性があります。
ホ 貸倒引当金
貸倒引当金は、債権の貸倒れによる損失に備え、回収不能見込額を計上しております。このため、将来、貸付先等の債務者の財政状態が変化した場合等には、貸倒引当金の必要額も変動する可能性があります。
ヘ 支払備金
支払備金は、保険契約に基づいて支払義務が発生した保険金等のうち、まだ支出として計上していないものについては、個別の損害ごとの見積額を、また、まだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認められるものについては、過去のデータに基づき算定した見積額を計上しております。これらの見積りは、当連結会計年度末時点における情報に基づいて行っておりますが、損害調査の進展、将来においてインフレや為替の影響、さらには裁判の判例などの動向等により支払備金の必要額が変動する可能性があります。
ト 責任準備金等
責任準備金等は、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため積み立てているものであります。当初想定した環境や条件が変化した場合等には、責任準備金等の必要額が変動する可能性があります。
チ 退職給付債務等
退職給付債務及び退職給付費用は、割引率等数理計算上の前提条件や年金資産の期待運用収益率等の見込数値である基礎率に基づいて算出されております。このため、見込数値が実際と異なった場合、あるいは前提条件が変更された場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
④ 目標とする経営指標等の分析等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標に関し、正味収入保険料は、料率引下げの影響により自動車損害賠償責任保険で減収したものの、自動車保険や火災保険などで増収したことにより、1兆2,814億円と前事業年度に比べ、0.4%の増加となりました。正味損害率は、自動車保険や自然災害による支払などで減少したことにより、58.6%と前事業年度に比べ、3.4ポイントの低下となりました。正味事業費率は、諸手数料及び集金費が増加したことにより、34.9%と前事業年度に比べ、0.4ポイントの上昇となりました。
⑤ 中長期的な経営戦略
当社では、MS&ADインシュアランスグループの中期経営計画「Vision 2021」を踏まえ、2018年度~2021年度の
4か年の中期経営計画「AD Vision 2021」を策定しています。
当社のスローガンである「特色ある個性豊かな会社」の確立に向けて、前・中期経営計画「AD Next Challenge」で
構築した基盤・取組みを発展させ、先進性・多様性・地域密着を追求し、環境変化に迅速に対応できる態勢を目指す姿
とし、下図の取組みを行ってまいります。また、失敗を恐れずチャレンジし続け、持てる力と個性を最大限発揮するこ
とで、お客さまを全力でサポートしてまいります。

⑥ 問題認識と今後の方針について
問題認識と今後の方針は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおりであります。
当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期のわが国を含む世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により厳しい状況で推移しましたが、期半ば以降、経済活動の再開が段階的に進められる中、持ち直しの動きもみられました。
このような中、当社は、2018年度から2021年度までを対象とする4か年の中期経営計画「AD Vision 2021」の後半となるステージ2計画(2020年度~2021年度)をスタートし、中期経営計画の目指す姿として掲げる「特色ある個性豊かな会社」の確立に向け、先進性・多様性・地域密着をさらに進展させるとともに、ビジネススタイル変革にも着手し、環境変化に迅速に対応できる態勢構築等に取り組みました。
当期の具体的な事業の経過及び成果等は、以下のとおりであります。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を受けつつも、営業部門、損害サービス部門、代理店・扱者が一体となった「営損代一体運営」を継続して推進し、リアル・リモート・デジタルをミックスした「新たな営業態勢」で取り組むことでお客さまからのさらなる信頼獲得に努めた結果、営業予算の達成及びマーケットシェアの拡大に繋げることができました。
当社では、社会の変化と将来を見据えた対応として、「テレマティクス※1・モビリティサービス」「自然災害対策」「地方創生」「DX※2」「プラットフォーム」の5つの部門横断プロジェクトに取り組みました。
テレマティクス・モビリティサービスプロジェクトにつきましては、中期経営計画「AD Vision 2021」のスタート年である2018年4月に、コネクティッドカー※3を対象とし安全運転の度合いを保険料に反映する国内初のテレマティクス自動車保険「タフ・つながるクルマの保険」を、2020年1月には専用のドライブレコーダーで取得した走行データを保険料に反映する国内初のテレマティクス自動車保険「タフ・見守るクルマの保険プラス(ドラレコ型)」を発売しました。
2020年度は新たな取組みとして、2021年1月に自動運転車の安全性を保険料に反映し「自動運転モード」で走行中の運転分保険料を無料とする国内初の自動車保険を開発、また、月額100円の特約保険料で簡単・手軽に加入できる「タフ・見守るクルマの保険プラスS(エス)」を発売しました。
さらに、テレマティクス損害サービスシステムについても、業界初となるAIによる相手車両の速度解析や過失割合の判定サポートといった機能を実装するなど、最先端技術を活用しお客さまへ安心をお届けする事故対応を追求して取り組みました。今後も「安全・安心なクルマ社会」の実現に向け、新たな付加価値を提供するとともに、24時間365日事故対応サービス「I’m ZIDAN」※4と合わせ、よりよいサービスを実現してまいります。
国外においても、当社はテレマティクス保険のパイオニアとして、米国・欧州・中国・東南アジアを中心に事業拡大を進めています。日本の自動車メーカーが自動車販売マーケットの大半を占めているタイにおいて、Toyota Motor Thailand Co.,Ltd.が展開するコネクティッドカーを対象とした運転挙動反映型テレマティクス自動車保険の販売を開始し、展開国は9か国に拡大しました。
また、今後拡大するオンデマンド交通※5事業やマルチモーダルサービス※6に伴うリスクに対応するべく、自治体及び企業と連携し、業界初となるMaaS※7専用保険の販売も開始しました。
自動運転分野では、新たなテレマティクス自動車保険の発売や、自動運転による移動サービスの導入を検討する自治体への支援プログラム提案などの対応を拡充しました。さらに、新たなモビリティサービスの実装に向け検討が進むスーパーシティ・スマートシティに対応すべく、空飛ぶクルマやAI・ブロックチェーンに関する技術を保有するベンチャー企業等と資本業務提携を締結し、先進技術に対する検討・研究を実施しました。
カーボンニュートラル・脱炭素社会実現に向けた電動化戦略の一環として、電動車活用推進コンソーシアムに参画しました。イタリアではトヨタのハイブリッド車向けテレマティクス自動車保険が、「インシュアテックサミット2020」の個人向け商品部門において最優秀賞を受賞しました。
今後もCASE※8・MaaS及びその先の先進的な街づくりに対応する新たな保険・サービスの検討・開発・提供を通じ、安全・安心で快適な移動の実現と、地域社会の持続的な発展に貢献できるよう取組みを継続してまいります。
自然災害対策プロジェクトにつきましては、大規模自然災害の発生時でも、平時と同等の迅速性・適切性をもってお客さまに保険金をお支払いできる態勢を実現することを目標として、2018年度から取組みを進めてまいりました。
世界初のリアルタイム被害予測Webサイトcmap.dev(シーマップ)につきましては、災害に関する緊急情報の通知機能を備えたスマートフォン向けアプリとして「被害予測アプリ cmap」を公開し、Webサイトとアプリ共通の新機能として、リアルタイム浸水危険度推定情報を追加するなど、防災・減災により役立つツールとなることを目指し、更なる開発を進めました。
また、自然災害発生時の保険金請求手続きにおける利便性の向上及び迅速な保険金のお支払いに向けては、当社ホームページにおける事故受付機能の拡充や、事故のご連絡から保険金のお支払いまでの全ての請求手続きをWeb上で完結できるサービスの提供も開始しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止を踏まえた新たな自然災害対応態勢の構築につきましては、「自然災害工程管理システム※9」を活用したペーパーレス業務を基軸に、RPA※10への移行をさらに進め、リモートでの災害対応を強化しました。これにより、全国の拠点での分散対応や在宅勤務による対応が可能となりました。
また、損害調査についても、現地に勤務する社員がお客さまを訪問し、鑑定人がバックオフィスでサポートする調査体制と、鑑定人とお客さまのビデオ通話によるリモート調査を組み合わせた新たな調査体制を構築しました。これらにより、コロナウイルス感染リスクの極小化と、迅速なお客さま対応体制の構築を同時に実現しました。
地方創生プロジェクトにつきましては、各地域の地方創生取組みの支援を継続して実施し、2021年3月時点で329の地方公共団体との連携協定を締結しています。2020年度は、連携協定先の地方公共団体を対象とする「全国地方創生交流会」のオンライン開催やWeb方式によるセミナーの実施など、対面に加えてWebを活用したハイブリッドな取組みを推進したほか、MaaSや自動運転の研究をテーマとする産学連携等にも取り組みました。
これまでICTプロジェクトとして取り組んできた「業務改革」と「事業開発」の領域を、「DXプロジェクト(業務改革)」と「プラットフォームプロジェクト(事業開発)」の新たな体制として機能特化を図り、さらなる推進力強化に向けて尽力しました。
DXプロジェクトにつきましては、既存の業務をプロセス視点で抜本的に見直し再設計したうえで、RPA等の新たなテクノロジーへの置き換えを進めるといったこれまでの取組みに加え、「新たな働き方」に向けた業務の見直しにも着手しました。具体的には、在宅勤務等の定着に向け、ペーパーレス化・印鑑レス化、対面訪問や会議・研修等のオンライン化といった取組みを強化し、デジタルシフトの観点で推進しました。
プラットフォームプロジェクトにつきましては、プラットフォーマー※11との提携を推進し、新商品・新サービスのニーズ収集を行うとともに、保険商品の流通改革を目指して取り組みました。目標として掲げた「新たな商品供給基盤の構築」の一環として、業務提携先が設立したスマートプラス少額短期保険に出資を行うとともに、次世代型保険販売システムとして開発したデジタル募集基盤※12による保険商品の提供を開始しました。
今後も、将来の環境変化に備えた新たなビジネスモデル構築に向け、当社の保険事業のノウハウとプラットフォーマーが持つリソースを融合させ、お客さまにとって付加価値の高い新しい保険商品を提供できるよう、特に“顧客視点”を重視して取組んでまいります。
また、プラットフォームプロジェクトから地方創生につなげる取組みとして、シリコンバレー所在のベンチャーキャピタルが主催する先進的なプログラムである「Smart City X※13」に参画しました。引き続き、地域社会・地方公共団体への貢献を目指し、取組みを進めてまいります。
当社は、業界に先駆けてデータを活用した商品・サービスの開発に取り組んでおり、さらなるデータ利活用に向けてデータサイエンス研究活動や教育に関する産学連携協定を締結し、社内にもデータサイエンスに専門的に取り組むデータソリューション室を設置しています。
魅力的な商品・サービスの開発や業務の高度化・効率化を全社的に推し進め、データ利活用を実現するために、全社員向けの教育プログラムを実施し、社員全員のデータリテラシーの向上に取り組んでいます。さらにデータ利活用を推進するデータサイエンティストの拡充が不可欠と考え、データサイエンスに興味のある大学生・大学院生等を対象とするインターンシップ制度を導入しています。
また、AI開発プラットフォームの提供及び開発支援コンサルティングを行うスタートアップ企業との資本業務提携も行いました。今後は、社内外の様々なデータ利活用の高度化を通じて、保険の枠を超えた事業活動の展開及び社会貢献を目指し、取組みを強化してまいります。
社会課題の解決に向けては、国際連合が掲げるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を道標(みちしるべ)とし、事業活動を通じて、事故の防止、安心・安全な社会の構築に資する商品・サービスの提供や、環境破壊や気候変動抑止に繋がる環境負荷軽減取組みを継続して実施しました。
MS&ADゆにぞんスマイルクラブの寄付・寄贈等による地域貢献活動や補助犬の育成活動、ベルマーク収集活動をはじめとした東日本大震災・熊本地震等の被災地支援等の社会貢献活動にも積極的に取り組みました。
また、スポーツ振興につきましては、所属アスリートによる小学校体験授業やオンライン講演会等を実施したほか、地域ごとにスポーツ関連団体へ寄付活動を行いました。こうした取組みが評価され、東京都スポーツ推進制度唯一の「殿堂入り企業」として2019年度に引続き顕彰を受けました。障がい者雇用「地域密着モデル」にも継続して取り組んでおり、障がい者雇用率も2020年度(平均)で2.42%と高い水準※14を維持しています。
なお当社では、金融庁が策定した「顧客本位の業務運営に関する原則」を踏まえ、「お客さま第一の業務運営に関する方針」を定めるとともに、当方針に対応した「お客さま第一の業務運営に関する具体的取組み」を公表し、取組み結果を開示しています。当社の行動規範である「全力サポート宣言(迅速・頼れる・優しい)」の具現化に向け、今後も独自性ある取組みを進め、お客さま第一の業務運営のさらなる推進に努めてまいります。
※1 テレマティクスとは…「テレコミュニケーション」と「インフォマティクス」を組み合わせた造語。カーナビゲーションやGPS
等と移動体通信システムを利用して、さまざまな情報やサービスを提供する仕組み
※2 DXとは…「Digital Transformation(デジタル変革)」の略語で、最新のデジタル技術を駆使し企業の戦略や業務フローを変革
させていくこと
※3 コネクティッドカーとは…走行データが取得できる車載通信機(DCM:Data Communication Module)を搭載した車両
※4 I’m ZIDANとは…夜間休日でも「初期対応」から「示談交渉」までの専門的な事故対応が可能となるサービス
※5 オンデマンド交通とは…定時・定路線ではなく、利用者の予約時間や場所に合わせて運航する公共交通機関
※6 マルチモーダルサービスとは…出発地から目的地までにおいて、複数のモビリティサービスを組み合わせた経路検索・予約・決済
などを可能とするサービス
※7 MaaSとは…Mobility as a Serviceの略語で交通インフラにおいて「移動」をサービスとして提供すること
※8 CASEとは…Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared/Service(シェア/サービス)・Electric(電動)
の4つの頭文字をとった造語で自動車産業に大変革期をもたらすと言われるキーワード
※9 自然災害工程管理システムとは…大規模自然災害専用に、事故受付からお支払いまでの一連のお客さま対応状況をクラウド上で管
理するシステム
※10 RPAとは…Robotic Process Automationの略語でロボットによる業務の効率化や自動化のこと
※11 プラットフォーマーとは…当社が独自に定義したオンライン上でサービスを提供し、多くの顧客を抱える事業者
※12 デジタル募集基盤とは…当社の基幹システムとプラットフォーマーが保有するアプリやWebサイトを繋ぐためのシステム基盤を
いう。このシステム基盤によりプラットフォーマーの本業サービスと連携して当社の保険商品を提供することができるもの
※13 Smart City Xとは…各産業を代表するパートナー企業とともに、「ニューノーマル時代のスマートシティ」をテーマに、世界中の
スタートアップと連携・事業共創を行うグローバル・オープンイノベーション・プログラム
※14 高い水準とは…2020年6月1日における民間企業の障害者実雇用率2.15%(厚生労働省「障害者雇用状況」集計結果より)との比
較による
このような中、当連結会計年度の経営成績は次のとおりとなりました。
経常収益は、保険引受収益が1兆3,923億円、資産運用収益が643億円、その他経常収益が81億円となった結果、
1兆4,648億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆2,017億円、資産運用費用が80億円、営業費及び一般管理費が2,170億円、その他経常費用が44億円となった結果、1兆4,314億円となりました。
以上の結果、経常利益は前連結会計年度に比べ242億円減少し、334億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ221億円減少し、212億円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
経常収益は、保険引受収益が1兆3,221億円、資産運用収益が621億円、その他経常収益が56億円となった結果、1兆3,898億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆1,498億円、資産運用費用が79億円、営業費及び一般管理費が1,970億円、その他経常費用が25億円となった結果、1兆3,574億円となりました。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ261億円減少し、324億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ231億円減少し、216億円となりました。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
海外保険子会社セグメントについては、正味収入保険料は前連結会計年度に比べ34億円増加し、655億円となりました。
経常損益は前連結会計年度に比べ17億円増加し、5億円となりました。出資持分考慮後の当期純損益(セグメント損益)は前連結会計年度に比べ8億円改善したものの、7億円の損失となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ3,288億円増加し、3兆8,446億円となりました。
当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ92.6ポイント上昇し、818.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ552億円増加し、966億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ94億円増加し、△459億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,185億円減少し、△299億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より210億円増加し、2,287億円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
損害保険業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、本項に記載した予想、予測、見込み、見通し、方針、予定等の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性が内在しており、将来生じる実際の結果とは大きく異なる可能性があります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
[連結主要指標]
前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 比較増減 | 増減率 | ||
正味収入保険料 | (百万円) | 1,339,655 | 1,346,956 | 7,300 | 0.5% |
経常利益 | (百万円) | 57,690 | 33,447 | △24,242 | △42.0% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | (百万円) | 43,402 | 21,250 | △22,151 | △51.0% |
正味収入保険料は、当社において料率引下げの影響により自動車損害賠償責任保険で減収したものの、自動車保険や火災保険で増収したことなどにより、前連結会計年度に比べ73億円増加し、1兆3,469億円となりました。
経常利益は、当社において自動車保険の発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)が減少したものの、責任準備金繰入額が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ242億円減少し、334億円となりました。
経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、価格変動準備金繰入額の減少による特別損失の減少があったものの、税金費用の増加により、前連結会計年度に比べ221億円減少し、212億円となりました。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響として、当社における再保険事業等で発生保険金を計上した一方で、国内の交通事故の減少による自動車保険の発生保険金の減少などがありました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
区分 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率(%) | |
火災 | 252,109 | 17.8 | 11.8 | 268,522 | 18.8 | 6.5 |
海上 | 250 | 0.0 | △2.8 | 256 | 0.0 | 2.4 |
傷害 | 80,113 | 5.7 | △7.9 | 79,177 | 5.5 | △1.2 |
自動車 | 731,808 | 51.8 | 1.9 | 761,265 | 53.2 | 4.0 |
自動車損害賠償責任 | 178,442 | 12.6 | 1.1 | 153,290 | 10.7 | △14.1 |
その他 | 170,285 | 12.1 | △5.3 | 169,288 | 11.8 | △0.6 |
合計 | 1,413,010 | 100.0 | 1.9 | 1,431,801 | 100.0 | 1.3 |
(うち収入積立保険料) | (23,167) | (1.6) | (△5.0) | (19,784) | (1.4) | (△14.6) |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
2.元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
区分 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率(%) | |
火災 | 199,620 | 14.9 | 8.3 | 208,056 | 15.5 | 4.2 |
海上 | 7,345 | 0.5 | △11.3 | 7,062 | 0.5 | △3.9 |
傷害 | 57,263 | 4.3 | △11.4 | 57,976 | 4.3 | 1.2 |
自動車 | 765,963 | 57.2 | 3.6 | 786,926 | 58.4 | 2.7 |
自動車損害賠償責任 | 162,881 | 12.2 | 2.3 | 143,263 | 10.6 | △12.0 |
その他 | 146,580 | 10.9 | 1.2 | 143,671 | 10.7 | △2.0 |
合計 | 1,339,655 | 100.0 | 3.0 | 1,346,956 | 100.0 | 0.5 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
c 正味支払保険金
区分 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率(%) | |
火災 | 142,576 | 18.7 | △25.2 | 130,945 | 18.4 | △8.2 |
海上 | 5,019 | 0.7 | 6.9 | 3,991 | 0.5 | △20.5 |
傷害 | 25,967 | 3.4 | △6.2 | 25,451 | 3.6 | △2.0 |
自動車 | 411,663 | 54.1 | 1.6 | 377,302 | 53.1 | △8.3 |
自動車損害賠償責任 | 107,074 | 14.1 | △6.4 | 98,022 | 13.8 | △8.5 |
その他 | 68,667 | 9.0 | 1.5 | 75,133 | 10.6 | 9.4 |
合計 | 760,968 | 100.0 | △6.1 | 710,846 | 100.0 | △6.6 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
運用資産及び有価証券の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
区分 | 前連結会計年度 (2020年3月31日) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
預貯金 | 220,896 | 6.3 | 252,861 | 6.6 |
金銭の信託 | 2,441 | 0.1 | 2,480 | 0.1 |
有価証券 | 2,316,132 | 65.9 | 2,639,593 | 68.6 |
貸付金 | 218,147 | 6.2 | 232,949 | 6.1 |
土地・建物 | 159,969 | 4.5 | 170,600 | 4.4 |
運用資産計 | 2,917,587 | 83.0 | 3,298,486 | 85.8 |
総資産 | 3,515,805 | 100.0 | 3,844,668 | 100.0 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
b 有価証券
区分 | 前連結会計年度 (2020年3月31日) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
国債 | 487,098 | 21.0 | 449,175 | 17.0 |
地方債 | 36,695 | 1.6 | 40,145 | 1.5 |
社債 | 305,287 | 13.2 | 298,053 | 11.3 |
株式 | 697,219 | 30.1 | 952,825 | 36.1 |
外国証券 | 714,104 | 30.8 | 797,357 | 30.2 |
その他の証券 | 75,728 | 3.3 | 102,035 | 3.9 |
合計 | 2,316,132 | 100.0 | 2,639,593 | 100.0 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
当社(単体)の経営成績は次のとおりとなりました。
[当社(単体)の主要指標]
前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 比較増減 | 増減率 | ||
正味収入保険料 | (百万円) | 1,276,770 | 1,281,426 | 4,656 | 0.4% |
正味損害率 | (%) | 62.0 | 58.6 | △3.4 | - |
正味事業費率 | (%) | 34.5 | 34.9 | 0.4 | - |
保険引受利益又は 保険引受損失(△) | (百万円) | 1,126 | △12,485 | △13,612 | △1,208.0% |
経常利益 | (百万円) | 58,615 | 32,476 | △26,138 | △44.6% |
当期純利益 | (百万円) | 44,784 | 21,610 | △23,173 | △51.7% |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
保険引受の概況は次のとおりであります。
正味収入保険料は、料率引下げの影響により自動車損害賠償責任保険で減収したものの、自動車保険や火災保険で増収したことなどにより、前事業年度に比べ46億円増加し、1兆2,814億円となりました。一方、正味支払保険金は、自動車保険や火災保険で減少したことなどにより、前事業年度に比べ446億円減少し、6,799億円となりました。以上により、正味損害率は58.6%と、前事業年度に比べ3.4ポイント低下しました。また、諸手数料及び集金費が増加したことにより、正味事業費率は34.9%と、前事業年度に比べ0.4ポイント上昇しました。
これらに収入積立保険料、満期返戻金、支払備金繰入額、責任準備金繰入額などを加減した保険引受損益は、責任準備金繰入額が増加したことなどにより、前事業年度に比べ136億円減少し、124億円の損失となりました。
資産運用の概況は次のとおりであります。
利息及び配当金収入が前事業年度に比べ44億円減少し549億円となり、また、有価証券売却益が前事業年度に比べ152億円減少し198億円となったことなどから、積立型保険の満期返戻金などに充当する運用益を控除した残額の資産運用収益は、前事業年度に比べ191億円減少し、621億円となりました。一方、資産運用費用は、有価証券評価損が前事業年度に比べ100億円減少したことなどにより、前事業年度に比べ128億円減少し、79億円となりました。
これらの結果、経常利益は前事業年度に比べ261億円減少し、324億円となりました。当期純利益は、価格変動準備金繰入額の減少による特別損失の減少があったものの、税金費用の増加により、前事業年度に比べ231億円減少し、216億円となりました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
区分 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減 (△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減 (△)率(%) | |
火災 | 249,778 | 18.7 | 11.9 | 266,252 | 19.7 | 6.6 |
海上 | 9 | 0.0 | 1,611.5 | 0 | 0.0 | △99.7 |
傷害 | 79,396 | 5.9 | △6.2 | 79,117 | 5.8 | △0.4 |
自動車 | 675,992 | 50.6 | 2.3 | 697,376 | 51.4 | 3.2 |
自動車損害賠償責任 | 178,442 | 13.3 | 1.1 | 153,290 | 11.3 | △14.1 |
その他 | 153,254 | 11.5 | 2.9 | 159,811 | 11.8 | 4.3 |
合計 | 1,336,874 | 100.0 | 3.3 | 1,355,849 | 100.0 | 1.4 |
(うち収入積立保険料) | (23,167) | (1.7) | (△5.0) | (19,784) | (1.5) | (△14.6) |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
区分 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減 (△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減 (△)率(%) | |
火災 | 199,254 | 15.6 | 8.4 | 207,758 | 16.2 | 4.3 |
海上 | 7,267 | 0.6 | △10.8 | 6,996 | 0.6 | △3.7 |
傷害 | 56,916 | 4.5 | △11.0 | 57,943 | 4.5 | 1.8 |
自動車 | 713,038 | 55.8 | 4.1 | 729,539 | 56.9 | 2.3 |
自動車損害賠償責任 | 162,881 | 12.7 | 2.3 | 143,263 | 11.2 | △12.0 |
その他 | 137,411 | 10.8 | 3.2 | 135,925 | 10.6 | △1.1 |
合計 | 1,276,770 | 100.0 | 3.5 | 1,281,426 | 100.0 | 0.4 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 正味支払保険金
区分 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 対前年増減 (△)率(%) | 正味損害率 (%) | 金額 (百万円) | 対前年増減 (△)率(%) | 正味損害率 (%) | |
火災 | 142,227 | △25.2 | 73.8 | 130,612 | △8.2 | 66.3 |
海上 | 4,983 | 7.0 | 68.7 | 3,969 | △20.3 | 56.9 |
傷害 | 25,806 | △4.5 | 51.2 | 25,454 | △1.4 | 50.4 |
自動車 | 378,564 | 2.2 | 59.4 | 348,779 | △7.9 | 54.3 |
自動車損害賠償責任 | 107,074 | △6.4 | 71.4 | 98,022 | △8.5 | 74.5 |
その他 | 66,006 | 3.2 | 50.9 | 73,151 | 10.8 | 56.9 |
合計 | 724,662 | △6.0 | 62.0 | 679,990 | △6.2 | 58.6 |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.正味損害率は正味支払保険金に損害調査費を加えて算出しております。
運用資産、有価証券、利回り及び海外投融資の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
区分 | 前事業年度 (2020年3月31日) | 当事業年度 (2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
預貯金 | 174,090 | 5.1 | 201,266 | 5.4 |
金銭の信託 | 2,441 | 0.1 | 2,480 | 0.1 |
有価証券 | 2,317,658 | 67.7 | 2,643,427 | 70.6 |
貸付金 | 218,147 | 6.4 | 232,949 | 6.2 |
土地・建物 | 159,844 | 4.7 | 170,304 | 4.5 |
運用資産計 | 2,872,182 | 84.0 | 3,250,428 | 86.8 |
総資産 | 3,420,733 | 100.0 | 3,745,278 | 100.0 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
b 有価証券
区分 | 前事業年度 (2020年3月31日) | 当事業年度 (2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
国債 | 487,098 | 21.0 | 449,175 | 17.0 |
地方債 | 36,695 | 1.6 | 40,145 | 1.5 |
社債 | 305,287 | 13.2 | 298,053 | 11.3 |
株式 | 696,983 | 30.1 | 952,172 | 36.0 |
外国証券 | 715,866 | 30.9 | 801,844 | 30.3 |
その他の証券 | 75,728 | 3.2 | 102,035 | 3.9 |
合計 | 2,317,658 | 100.0 | 2,643,427 | 100.0 |
(注)諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 利回り
運用資産利回り(インカム利回り)
区分 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
収入金額 (百万円) | 平均運用額 (百万円) | 年利回り (%) | 収入金額 (百万円) | 平均運用額 (百万円) | 年利回り (%) | |
預貯金 | 435 | 191,874 | 0.23 | 18 | 196,103 | 0.01 |
金銭の信託 | 2 | 2,433 | 0.11 | 0 | 2,477 | 0.01 |
有価証券 | 50,978 | 1,909,038 | 2.67 | 47,247 | 1,926,615 | 2.45 |
貸付金 | 2,085 | 207,255 | 1.01 | 2,104 | 225,735 | 0.93 |
土地・建物 | 4,763 | 160,402 | 2.97 | 4,741 | 168,586 | 2.81 |
小計 | 58,265 | 2,471,004 | 2.36 | 54,112 | 2,519,517 | 2.15 |
その他 | 1,133 | - | - | 798 | - | - |
合計 | 59,398 | - | - | 54,911 | - | - |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.収入金額は、損益計算書における「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。
3.平均運用額は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
資産運用利回り(実現利回り)
区分 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
資産運用損益(実現ベース) (百万円) | 平均運用額 (取得原価ベース) (百万円) | 年利回り (%) | 資産運用損益(実現ベース) (百万円) | 平均運用額 (取得原価ベース) (百万円) | 年利回り (%) | |
預貯金 | △114 | 191,874 | △0.06 | 623 | 196,103 | 0.32 |
金銭の信託 | 2 | 2,433 | 0.11 | 0 | 2,477 | 0.01 |
有価証券 | 71,780 | 1,909,038 | 3.76 | 61,994 | 1,926,615 | 3.22 |
貸付金 | 2,093 | 207,255 | 1.01 | 2,110 | 225,735 | 0.93 |
土地・建物 | 4,763 | 160,402 | 2.97 | 4,741 | 168,586 | 2.81 |
金融派生商品 | △3,953 | - | - | △2,451 | - | - |
その他 | 1,092 | - | - | 947 | - | - |
合計 | 75,664 | 2,471,004 | 3.06 | 67,967 | 2,519,517 | 2.70 |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.資産運用損益(実現ベース)は、損益計算書における「資産運用収益」及び「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。
3.平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
4.資産運用利回り(実現利回り)にその他有価証券の評価差額等を加味した時価ベースの利回り(時価総合利回り)は以下のとおりであります。
なお、資産運用損益等(時価ベース)は、資産運用損益(実現ベース)にその他有価証券及び金銭の信託(その他有価証券に準じて処理をする運用目的・満期保有目的以外のものに限る。)に係る評価差額(税効果控除前の金額による。)の当期増減額を加減算した金額であります。
また、平均運用額(時価ベース)は、平均運用額(取得原価ベース)にその他有価証券及び金銭の信託(その他有価証券に準じて処理をする運用目的・満期保有目的以外のものに限る。)に係る前期末評価差額(税効果控除前の金額による。)を加減算した金額であります。
区分 | 前事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
資産運用損益等 (時価ベース) (百万円) | 平均運用額 (時価ベース) (百万円) | 年利回り (%) | 資産運用損益等 (時価ベース) (百万円) | 平均運用額 (時価ベース) (百万円) | 年利回り (%) | |
預貯金 | △114 | 191,874 | △0.06 | 623 | 196,103 | 0.32 |
金銭の信託 | △41 | 2,484 | △1.68 | 39 | 2,483 | 1.57 |
有価証券 | △59,465 | 2,416,594 | △2.46 | 352,543 | 2,302,925 | 15.31 |
貸付金 | 2,093 | 207,255 | 1.01 | 2,110 | 225,735 | 0.93 |
土地・建物 | 4,763 | 160,402 | 2.97 | 4,741 | 168,586 | 2.81 |
金融派生商品 | △3,953 | - | - | △2,451 | - | - |
その他 | 1,092 | - | - | 947 | - | - |
合計 | △55,625 | 2,978,611 | △1.87 | 358,555 | 2,895,833 | 12.38 |
d 海外投融資
区分 | 前事業年度 (2020年3月31日) | 当事業年度 (2021年3月31日) | ||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | |
外貨建 | ||||
外国公社債 | 474,275 | 65.3 | 523,890 | 64.4 |
外国株式 | 83,737 | 11.5 | 85,375 | 10.5 |
その他 | 117,966 | 16.3 | 146,978 | 18.1 |
計 | 675,979 | 93.1 | 756,244 | 93.0 |
円貨建 | ||||
外国公社債 | 10,305 | 1.4 | 2,041 | 0.2 |
その他 | 39,446 | 5.5 | 55,172 | 6.8 |
計 | 49,751 | 6.9 | 57,214 | 7.0 |
合計 | 725,731 | 100.0 | 813,458 | 100.0 |
海外投融資利回り 運用資産利回り(インカム利回り)(%) 資産運用利回り(実現利回り) (%) | 2.34 2.35 | 2.29 3.09 |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.金銭の信託として運用しているものを含めて表示しております。
3.「海外投融資利回り」のうち「運用資産利回り(インカム利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 運用資産利回り(インカム利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
4.「海外投融資利回り」のうち「資産運用利回り(実現利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 資産運用利回り(実現利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
なお、海外投融資に係る時価総合利回りは前事業年度1.00%、当事業年度3.10%であります。
5.前事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国投資信託100,181百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国投資信託38,742百万円であります。
当事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国投資信託127,633百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国投資信託54,322百万円であります。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
運転挙動反映型テレマティクス自動車保険をタイ、フランス、スペインでも発売した結果、国内を含め9ヶ国に販売を拡大するなど、日本、米国、欧州、中国、東南アジアの5極を中心としたテレマティクス・モビリティサービス事業を推進しました。
海外保険子会社セグメントの経営成績は次のとおりとなりました。
[海外保険子会社の主要指標]
前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 比較増減 | 増減率 | ||
正味収入保険料 | (百万円) | 62,041 | 65,529 | 3,487 | 5.6% |
経常利益又は 経常損失(△) | (百万円) | △1,200 | 553 | 1,753 | - |
セグメント利益 又は損失(△) | (百万円) | △1,588 | △777 | 811 | - |
(注)1.諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2.セグメント損益は出資持分考慮後の当期純損益に相当する金額であります。
正味収入保険料は、前連結会計年度に比べ34億円増加し、655億円となりました。
経常損益は前連結会計年度に比べ17億円増加し、5億円となりました。出資持分考慮後の当期純損益(セグメント損益)は、前連結会計年度に比べ8億円改善したものの、7億円の損失となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ3,288億円増加し、3兆8,446億円となりました。総資産の内訳では、有価証
券が3,234億円増加し、2兆6,395億円となりました。
当社のソルベンシー・マージン比率の状況は、以下のとおりであります。
保険会社は、保険金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。この「通常の予測を超える危険」を示す「リスクの合計額」(以下の各表の(B))に対する「資本金・準備金等の支払余力」(すなわちソルベンシー・マージン総額:以下の各表の(A))の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「ソルベンシー・マージン比率」(以下の各表の(C))であります。
ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。
イ 単体ソルベンシー・マージン比率
前事業年度 (2020年3月31日) (百万円) | 当事業年度 (2021年3月31日) (百万円) | ||||
(A) | ソルベンシー・マージン総額 | 1,148,081 | 1,438,465 | ||
(B) | リスクの合計額 | 326,916 | 363,749 | ||
(C) | ソルベンシー・マージン比率 [(A)/{(B)×1/2}]×100 | 702.3 | % | 790.9 | % |
(注)「単体ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条及び第87条並びに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出された比率であります。
ロ 連結ソルベンシー・マージン比率
前連結会計年度 (2020年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) (百万円) | ||
(A) | ソルベンシー・マージン総額 | 1,154,579 | 1,446,395 |
(B) | リスクの合計額 | 317,927 | 353,216 |
(C) | ソルベンシー・マージン比率 [(A)/{(B)×1/2}]×100 | 726.3% | 818.9% |
(注)「連結ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条の2及び第88条並びに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出された比率であります。
保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券の評価差額が増加したことや異常危険準備金が増加したことを主因に、当事業年度末の単体ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて88.6ポイント上昇し、790.9%となり、当連結会計年度末の連結ソルベンシー・マージン比率は前連結会計年度末に比べて92.6ポイント上昇し、818.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 比較増減 | ||
営業活動によるキャッシュ・フロー | (百万円) | 41,489 | 96,696 | 55,207 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | (百万円) | △55,392 | △45,972 | 9,420 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | (百万円) | 88,570 | △29,979 | △118,550 |
現金及び現金同等物の期末残高 | (百万円) | 207,649 | 228,734 | 21,084 |
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、保険金の支払額が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ552億円増加し、966億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ94億円増加し、△459億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、債券貸借取引受入担保金による収入が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ1,185億円減少し、△299億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より210億円増加し、2,287億円となりました。
資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。
長期的な投資資金等に対しては、自己資金を活用するほか、社債の発行による外部からの資金調達を行っております。
また、資金の流動性につきましては、大規模自然災害時に保険金の支払や市場の混乱等により資金繰りが悪化する場合に備え、流動性資産を十分に保有するとともに、資金の流出入の動向を踏まえて資産・負債両面から流動性についての評価を行い、適切な資金繰りを行っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準及び諸法令に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とする項目があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から実際の結果とは異なる場合があります。当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の事項を会計上の重要な見積りと考えております。
イ 時価の算定方法
資産・負債の一部は時価をもって貸借対照表価額としており、時価の算定は市場価格等に基づいております。一部のデリバティブ取引において市場価格がない場合には、将来キャッシュ・フローの現在価値や取引対象の市場価格、契約期間等の構成要素に基づく合理的な見積りによって算出された価格を時価としております。
ロ 有価証券の減損
保有している有価証券については、市場の価格変動等のリスクを負っており、価値の下落が著しくかつ一時的でないと判断した場合に減損処理を行っております。将来において市場価格が下落した場合等には減損処理が必要となる可能性があります。
ハ 固定資産の減損
収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、減損処理を行っております。資産又は資産グループの回収可能価額は、正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される価額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定及び予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しております。したがって、固定資産の使用方法を変更した場合又は不動産取引相場や賃料相場等が変動した場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。
ニ 繰延税金資産
繰延税金資産は将来の課税所得の見積り等を踏まえ、回収可能性に問題がないと判断した金額を計上することとしております。ただし、将来の市場環境や経営成績が著しく変化し、将来の課税所得の見積りに大きな変化が生じた場合や、税制改正により税率の変更が生じた場合等には、繰延税金資産の金額が変動する可能性があります。
ホ 貸倒引当金
貸倒引当金は、債権の貸倒れによる損失に備え、回収不能見込額を計上しております。このため、将来、貸付先等の債務者の財政状態が変化した場合等には、貸倒引当金の必要額も変動する可能性があります。
ヘ 支払備金
支払備金は、保険契約に基づいて支払義務が発生した保険金等のうち、まだ支出として計上していないものについては、個別の損害ごとの見積額を、また、まだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認められるものについては、過去のデータに基づき算定した見積額を計上しております。これらの見積りは、当連結会計年度末時点における情報に基づいて行っておりますが、損害調査の進展、将来においてインフレや為替の影響、さらには裁判の判例などの動向等により支払備金の必要額が変動する可能性があります。
ト 責任準備金等
責任準備金等は、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため積み立てているものであります。当初想定した環境や条件が変化した場合等には、責任準備金等の必要額が変動する可能性があります。
チ 退職給付債務等
退職給付債務及び退職給付費用は、割引率等数理計算上の前提条件や年金資産の期待運用収益率等の見込数値である基礎率に基づいて算出されております。このため、見込数値が実際と異なった場合、あるいは前提条件が変更された場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
④ 目標とする経営指標等の分析等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標に関し、正味収入保険料は、料率引下げの影響により自動車損害賠償責任保険で減収したものの、自動車保険や火災保険などで増収したことにより、1兆2,814億円と前事業年度に比べ、0.4%の増加となりました。正味損害率は、自動車保険や自然災害による支払などで減少したことにより、58.6%と前事業年度に比べ、3.4ポイントの低下となりました。正味事業費率は、諸手数料及び集金費が増加したことにより、34.9%と前事業年度に比べ、0.4ポイントの上昇となりました。
⑤ 中長期的な経営戦略
当社では、MS&ADインシュアランスグループの中期経営計画「Vision 2021」を踏まえ、2018年度~2021年度の
4か年の中期経営計画「AD Vision 2021」を策定しています。
当社のスローガンである「特色ある個性豊かな会社」の確立に向けて、前・中期経営計画「AD Next Challenge」で
構築した基盤・取組みを発展させ、先進性・多様性・地域密着を追求し、環境変化に迅速に対応できる態勢を目指す姿
とし、下図の取組みを行ってまいります。また、失敗を恐れずチャレンジし続け、持てる力と個性を最大限発揮するこ
とで、お客さまを全力でサポートしてまいります。

⑥ 問題認識と今後の方針について
問題認識と今後の方針は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおりであります。