訂正有価証券報告書-第28期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/07/17 16:42
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業績等の概要

(1) 業績
当社は、平成17年4月25日、福知山線塚口・尼崎間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。当社としては、これまでの間、「被害に遭われた方々に誠心誠意と受け止めていただけるような取り組み」「安全性向上に向けた取り組み」「変革の推進」を「経営の3本柱」と定め、全力で取り組んでまいりました。
当連結会計年度については、「福知山線列車事故追悼慰霊式」を執り行い、ご被害者への「事故現場に関するご説明会」を開催するとともに、引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応してまいりました。
「JR西日本グループ中期経営計画2017」とその中核をなす「安全考動計画2017」については、「現場起点」「お客様起点」をキーワードに、安全・CSを中心とした各戦略の到達目標の達成に向けて、計画的な取り組みを推進してまいりました。特に、最優先で取り組むべき「安全」については、「安全考動計画2017」をJR西日本グループあげて推進しており、「お客様が死傷する列車事故ゼロ」「死亡に至る鉄道労災ゼロ」という到達目標に向けて、全力で取り組んでいるところです。
今年度は将来の成長に向けたコストが先行するなか、今後の成長を確実なものとする重要な基盤整備の年と位置づけてまいりました。北陸新幹線については開業準備を進め、3月14日に長野・金沢間の営業運転の開始及び並行在来線の譲渡を行いました。また、大阪ステーションシティ・ノースゲートビルディング西館商業施設については、「LUCUA 1100」(ルクアイーレ)の4月開業に向けて準備を進め、4月2日にグランドオープンを迎えております。
当社を取り巻く経営環境は、人口減少や対抗輸送機関との競合、局地的豪雨などの増加による災害への対策、労務単価の上昇や電力料金値上げ等のコストの増加など厳しい現状が続いておりますが、一方で、訪日観光客やシニア層などの新たな需要の増加といった機会を捉え、商品・サービスの充実を図っております。また、中長期的な企業価値向上を目指し、地域の皆様との交流と連携を深め、JR西日本グループ一体でエリアに即した事業を展開することにより、鉄道の品質を高めるとともに非鉄道事業の拡大と新たな事業創造を促進するなど、持続的成長に向けた土台作りに取り組んでまいりました。
なお、湖西線については、昨年7月に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの貸付期間が終了し、有償で譲り受けております。また、当社は昨年10月にWTO政府調達協定の対象から除外されることとなりましたが、今後もこれまでと同様に、調達の透明性を高めて、安全、高品質で安価、かつ十分なアフターケアが行われる優れた製品を内外無差別に調達していくとともに、国内外の技術を積極的に活用し、さらに安全で高品質な鉄道輸送の提供に努めてまいります。
当連結会計年度においては、中期経営計画のもと取り組んだ各施策が順調に進行したこと等により、営業収益は前年同期比1.5%増の1兆3,503億円、営業利益は同3.8%増の1,397億円、経常利益は同8.0%増の1,219億円、法人税等を控除した当期純利益は同1.6%増の667億円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
① 運輸業
安全については、「安全考動計画2017」のもと具体的な取り組み、安全投資を実施してまいりました。
踏切設備の保安度向上やホームの安全対策については「昇降式ホーム柵」の桜島駅での試行を踏まえて、昨年12月から編成の異なる列車に対する機能や操作の確認等のため六甲道駅でも試行しておりましたが、検証結果は良好で実用化可能と判断し、継続設置することとなりました。さらに、ホーム上の混雑緩和のため行ってきた尼崎駅の橋上駅舎増設工事が完了し、供用を開始しました。
また、地震・津波対策として、高架橋柱の耐震補強工事や山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備、津波避難設備の充実等に引き続き取り組むとともに、東日本大震災の教訓を生かして制定した「津波避難誘導心得」及びマニュアルに基づき、訓練を実施しました。さらに、強風対策として、湖西線志賀・比良間に加え、北陸本線小舞子・美川間及び小松・明峰間に防風柵を設置することとしました。
リスクアセスメントについては、関連する情報を体系的に整理した、リスクアセスメント・ハンドブックを作成し、全社員に水平展開しました。また、「安全意識の向上と人命最優先の考動」に向けて、事故の教訓を体系的に学ぶために設置した「鉄道安全考動館」における社員教育等の取り組みを進めてまいりました。さらに、1月には鉄道安全システムや労働災害防止に関する教育を目的とした「安全体感棟」を社員研修センター内に開設しました。
輸送面については、3月にダイヤ改正を実施し、北陸新幹線長野・金沢間の開業により「かがやき」「はくたか」「つるぎ」の営業運転を開始するとともに、並行在来線については第3セクターへ経営移管しました。また、北陸エリアに特急「能登かがり火」及び特急「ダイナスター」を新設したほか、山陽新幹線「のぞみ」の一部所要時間短縮や大阪環状線の利便性向上などに取り組みました。また、広島エリアにおいては、227系近郊形車両を投入したほか、広島・横川間に新駅「新白島」を開業し、アストラムラインと直結することにより、広島市街へのアクセス向上を図りました。
さらに、可部線の延伸については平成29年春の完成に向けて着工しました。
一方、豪雨災害については、昨年度より不通を余儀なくされていた山陰本線、山口線、三江線が、地元の皆様のご協力を賜り、昨年8月までに全線での運転を再開しました。また、今年度においても、福知山線、可部線について昨年8月から9月にかけて一部線区が一時不通となっていましたが、全線で運転を再開しました。なお、昨年10月の台風19号接近に伴い、未然に被害を防止するため、お客様へ事前にお知らせしたうえ京阪神地区の在来線を全面運休する対策を実施しました。
営業面については、シニア世代の需要喚起に関する取り組みとして、60歳以上のお客様にお得な「ノリノリきっぷ」や「山陰めぐりパス50」を発売したほか、50歳以上のお客様にお得な割引きっぷや旅行商品をご提案する「おとなび」を開始しました。また、訪日観光客向けサービスの充実を図るため、「訪日観光客向け無料公衆無線LANサービス」のエリア拡大や特急「はるか」車内での「無料公衆無線LANサービス」の開始、関西空港駅での訪日観光客向け「みどりの窓口」の設置などを行いました。さらに、対抗輸送機関との競合等を踏まえ、「スーパー早特きっぷ」設定区間の拡大、3月の「山陽新幹線全線開業40周年」を記念したキャンペーンの実施、「USJスペシャルきっぷ」の発売、「リメンバー九州キャンペーン」を実施したほか、JR九州と連携した記念商品を販売するなど新幹線のご利用促進に努めました。さらに北陸新幹線金沢開業にあわせてダイヤや所要時間・商品等基本情報の発信や、「e5489」によるネット商品の充実、北陸と信越を広域に周遊できる旅行商品を発売しご利用促進を図るなど、北陸エリアへのご利用拡大に取り組みました。また、全国のJRグループで展開している「デスティネーションキャンペーン」を和歌山で開催しました。
このほか、「地域との共生」を実現していくための取り組みとして、地域と連携した「山陰いいもの探県隊」の専用WEBサイトのオープン、岡山県との観光振興等に関する包括協定の締結などを行いました。
バス事業については、利用動向に応じた輸送改善と柔軟な価格設定の実施により、お客様の利便性向上に努めました。
船舶事業(宮島航路)については、多客期に対応した営業体制等により、収入の確保に取り組みました。
この結果、運輸業の営業収益は前年同期比2.0%増の8,684億円、営業利益は同10.6%増の1,006億円となりました。
② 流通業
「JR大阪三越伊勢丹」については、昨年7月末より改装工事に着手し、4月には売場づくりの強みを再編集した店舗「isetan」として、「LUCUA 1100」に出店することとなりました。また、3月にJR西日本エリアの改札内においては最大規模となる商業施設「エキマルシェ新大阪」を開業し、好評をいただいております。そのほか、セブン-イレブン・ジャパンとの提携店舗についても、70店舗を開業し売上げも順調に推移するなど、駅の魅力向上に向けた取り組みを推進しました。
この結果、流通業の営業収益は前年同期比8.3%減の2,201億円、営業利益は同63.9%減の15億円となりました。
③ 不動産業
将来の成長に向けて新大阪駅、広島駅、金沢駅などの拠点駅でリニューアル工事を進めてまいりました。北陸新幹線長野・金沢間開業にあわせて、魅力ある商品・サービスの提供を通じた地域活性化をめざし、昨年7月には金沢駅高架下商業施設「金沢百番街あんと」、3月には「金沢百番街Rinto」を増床リニューアル開業しました。また、JR富山駅前「マリエとやま」のリニューアルに加え、新幹線高架下「きときと市場とやマルシェ」を開業しました。さらに、大阪ステーションシティ・ノースゲートビルディングについては昨年8月に東館「ルクア」のリニューアルを実施し、西館「LUCUA 1100」については、集客力・話題性の高い専門店と「isetan」を融合させた新しいタイプの商業施設を目指し、4月の開業に向けて準備を進め、4月2日にグランドオープンを迎えております。
さらに、今後の沿線開発を積極的に進める取り組みとして、岸辺駅前の用地を新たに取得しております。
加えて、大阪駅周辺地区全体の活性化を図るため、エリアマネジメント活動を周辺事業者と連携して推進しました。このほか、沿線等におけるマンション分譲等に取り組みましたが、昨年の消費税増税前駆け込み需要の反動もあり減収となりました。
この結果、不動産業の営業収益は前年同期比14.7%減の872億円、営業利益は同9.4%減の251億円となりました。
④ その他
ホテル業については、訪日観光客の獲得増大に努める等の販売拡大に取り組みました。旅行業については、訪日観光客需要の獲得に向けた営業展開の強化、インターネット販売の充実等を図るとともに、鉄道利用商品の販売拡大に取り組みました。「ICOCA電子マネー」については、交通系ICカード全国相互利用サービスを最大限活用するとともに、山陽新幹線の車内販売及び北陸地区のショッピングセンターや駅構内店舗でのICOCA決済開始など利便性向上に努めました。また、新たな事業分野へのチャレンジについては、西日本エリアの地域農業の発展に貢献するため、農業関連事業として昨年4月に資本参加した株式会社ファーム・アライアンス・マネジメントに加え、昨年10月には株式会社神明ホールディングとの業務提携を行いました。また、食品関連事業においては、株式会社五万石千里山荘への資本参加のほか、機能性食普及事業を行う株式会社グローカル・アイとの業務提携を行いました。
一方、厳しい事業環境が見込まれるゴルフ事業については、地域や会員の皆様のご理解を得たうえで、昨年10月にゴルフ場経営大手の株式会社アコーディア・ゴルフへ譲渡しました。
なお、大鉄工業株式会社と株式会社ジェイアール西日本ビルトの2社が昨年4月に連結子会社となりました。引き続き、建設工事等における安全・品質の向上を図ってまいります。
この結果、その他の営業収益は前年同期比27.2%増の1,744億円、営業利益は同31.8%増の156億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
区分単位当事業年度
自 平成26年4月1日
至 平成27年3月31日
前事業年度比
営業日数365
新幹線キロ812.6644.0
キロ程在来線キロ( 28.0 )
4,194.5
( 28.0 )
4,371.7
キロ( 28.0 )
5,007.1
( 28.0 )
5,015.7
客車走行キロ新幹線千キロ495,723101.6%
在来線千キロ818,16999.7
千キロ1,313,892100.4
定期千人1,144,14998.2
輸送人員定期外千人693,305100.1
千人1,837,45598.9
輸送人キロ定期千人キロ743,30297.5
新幹線定期外千人キロ17,366,336103.0
千人キロ18,109,639102.8
在来線近畿圏定期千人キロ18,356,67398.0
定期外千人キロ10,473,817101.8
千人キロ28,830,49099.4
その他定期千人キロ4,201,18294.8
定期外千人キロ4,937,498102.2
千人キロ9,138,68098.6
定期千人キロ22,557,85697.4
定期外千人キロ15,411,315101.9
千人キロ37,969,17199.2
定期千人キロ23,301,15997.4
合計定期外千人キロ32,777,652102.5
千人キロ56,078,811100.3
新幹線%46.846.0
乗車効率在来線%37.737.8
%40.240.1

(注) 1. キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。
2. 客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。
3. 輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
4. 乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。
なお、乗車効率は次の方法により算出しております。
乗車効率=輸送人キロ
客車走行キロ×客車平均定員(標準定員)


イ.収入実績
区分単位当事業年度
自 平成26年4月1日
至 平成27年3月31日
前事業年度比
旅客運輸収入旅客収入新幹線定期百万円9,30899.8%
定期外百万円366,597103.2
百万円375,905103.1
在来線近畿圏定期百万円115,217101.2
定期外百万円181,070101.6
百万円296,287101.4
その他定期百万円27,13799.8
定期外百万円97,673100.9
百万円124,811100.7
定期百万円142,354100.9
定期外百万円278,744101.3
百万円421,098101.2
合計定期百万円151,662100.9
定期外百万円645,341102.4
百万円797,004102.1
荷物収入百万円898.3
合計百万円797,013102.1
鉄道線路使用料収入百万円4,69099.2
運輸雑収百万円65,577100.6
収入合計百万円867,281102.0

(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ123億円増の853億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
未払金が減少したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ141億円少ない2,236億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ475億円多い2,129億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の発行が増加したことなどから、財務活動によって得た資金は前連結会計年度に比べ495億円多い16億円となりました。