有価証券報告書-第132期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/19 16:05
【資料】
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【項目】
176項目

対処すべき課題

当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、“Bringing value to life.”という企業理念のもと具体的には、次の4項目を経営方針に掲げて活動しています。
(お客様とともに)
お客様から選ばれ信頼されるパートナーであり続けるために、現場第一に徹し、創意工夫に努め、新たな価値の創造を追求します。
(株主・投資家の皆様とともに)
公正かつ透明な経営を実践し、効率的な事業活動を通じて、企業価値の増大を目指します。
(社会とともに)
良き企業市民として積極的に社会の課題に取り組み、環境の保全をはじめとして、より良い地球社会の実現に貢献します。
(グループ社員とともに)
グローバル企業として、社員の多様性と挑戦する気概を尊重し、人材育成に力を注ぎ、夢と誇りを持って働ける日本郵船グループを目指します。
(2) 中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。そしてこの企業理念に基づき、2018年3月に中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定し、①事業ポートフォリオの最適化(ドライバルク事業の抜本的見直しとコンテナ船統合会社の成功等)、②運賃安定型事業の積み上げ(物流・自動車船・自動車物流事業のシナジー構築等による強化とLNG・海洋事業の強化等)、③効率化、新たな価値創出(Digitalization and Greenへの取り組みを通じた次世代の成長分野の開拓等)を基本戦略として、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。
(“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標並びに2018年度実績)
2018年度実績中期目標
(2022年目途)
経常損益△20億円700~1,000億円
ROE△8.6%min 8.0%
自己資本比率24%min 30.0%
D/Eレシオ2.15倍1.50以下

(キャッシュ・フロー)
営業活動による
キャッシュ・フロー
452億円(単年)5,700億円(5カ年累計)
投資活動による
キャッシュ・フロー
1,322億円(単年)5,200億円(5カ年累計)

(前提)
為替レート110.67円/US$105.00円/US$
燃料油価格US$442.49/MTHSFO US$320/MT
LSGO US$620/MT

*HSFO = High Sulphur Fuel Oil, LSGO = Low Sulphur Gas Oil
(株主還元策)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして位置づけています。将来の市況変動に耐え得る内部留保の水準にも留意しつつ、業績の見通しや連結配当性向25%を目安に、利益配分を決定する方針です。2018年度以降については、「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。
(3)会社の対処すべき課題
① 安定と成長の戦略
当社グループは、2018年3月に中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しました。株主をはじめとするすべてのステークホルダーや社会から必要とされる企業であり続けるために、常に新たな価値を創造し、社会や環境の課題解決に貢献していくことが当社の責務であると考えています。海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。
中期経営計画では、ボラティリティへの耐性強化を実現し、事業成長と収益力向上に取り組んでいきます。3つの基本戦略である「事業ポートフォリオの最適化」「運賃安定型事業の積み上げ」及び「効率化と新たな価値創出」に沿った形で、既存事業の拡充に加えて情報技術・環境分野を中心とした新規事業の実現と成長分野への投資を実施します。また“Digitalization and Green”への取組みは、当社グループや当社グループの多くのステークホルダーが積極的に推進しているSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への貢献につながると確信しています。
上記に基づき、以下のような具体的施策に取り組みます。
「事業ポートフォリオの最適化」を通じ、市況耐性の高い事業運営を目指しています。定期船事業においては、コンテナ船統合新事業会社の収支黒字化に向けた構造改革を進めます。また、航空運送事業については、自社運航機材を1機種に絞り、整備体制を適正化するとともに同業他社との提携を深化させ、事業安定化に取り組んでいます。ドライバルク輸送部門では、引き続き、市況耐性への強化のための船隊管理を進めていきます。
「運賃安定型事業の積み上げ」では、物流部門・自動車船部門・自動車物流部門を成長促進事業として、ネットワークの充実と高品質かつ競争力のあるサービスの強化を図っています。グループの経営基盤であるヒト、モノ、IT、資金を活かした営業力強化とともに、デジタル技術を活用した輸送・荷役の効率化と積極的な環境対策に取り組んでいます。また、LNG部門・海洋事業部門を重点投資事業として、案件を厳選したうえで積極的に投資を継続しています。環境規制が強化されるなか、世界で先行する船舶用LNG燃料の供給・販売事業をさらに促進するとともに、変化するエネルギー需要を捉え、新たなニーズに対応する新規事業にも積極的に取り組んでいきます。
「効率化と新たな価値創出」としては、従来より技術研究開発を通じオペレーション効率化を進めてきましたが、“Digitalization and Green” による技術力・情報力・ネットワーク力により、次世代の成長分野を切り拓いていきます。サプライチェーン全体の最適化や、船上での電子通貨活用プロジェクトなど、最新のデジタル技術を駆使した効率性の追求と新たな価値創出を図ります。また、環境問題への対応が、当社グループの最重要課題の一つと認識し、輸送におけるCO₂排出の削減、SOx/NOx規制を含む環境規制への対応及び再生可能エネルギーをテーマに次世代に向けグリーンビジネスへの参入を実現します。
これらの事業戦略の遂行や次世代の成長分野への積極的な取組みにより、将来のキャッシュ・フローをより確かなものとし、資本効率とROE(自己資本利益率)を向上させ、持続的な企業価値・社会価値の創出に全力で取り組みます。
② ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組み
当社グループは、グローバルな視野をもって企業の社会的責任を果たすべく、「ガバナンス」の強化を図り、「安全」「環境」「人材」を経営の最重要課題に位置付け、ESGに対して積極的に取り組んでいます。
グループ経営の健全性と透明性をより高めるために、内部統制の強化、グループガバナンスの一層の充実、適正な事業リスク管理、コンプライアンス意識の向上を図り、積極的な情報開示に努めます。
船舶の運航などのオペレーションの安全性は当社グループのあらゆる事業の根幹であり、安全推進活動に継続して取り組みます。また、環境保全に関しては、パリ協定をふまえた温暖化防止に向けた取組みとして、船舶から排出されるCO₂排出量の中長期削減目標を策定しました。最適運航のさらなる深度化や重油に代わる新燃料としてCO₂・SOx・NOx排出量削減が可能となるLNG燃料への転換を積極的に進めます。バラスト水処理装置の搭載や燃料油に含まれる硫黄分の規制強化、シップリサイクルなどの様々な環境規制への対応に取り組みます。先進的な取組みとして、昨年、外航海運会社として世界で初めてグリーンボンド(調達資金の使途を環境改善効果のある事業に限定して発行する債券)を発行したことが評価され、環境省が主催するジャパン・グリーンボンド・アワードにおいて、環境大臣賞に選ばれました。引き続き環境投資へ積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指します。
さらに、当社グループの基本理念を支える“NYKグループ・バリュー”(誠意・創意・熱意)の実践を通じて、誇りを持って働ける職場づくりの実現を目指し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めます。当社グループは、中期経営計画においてESGの経営戦略への統合を掲げており、事業活動を通して、国連で採択された持続可能な開発目標の達成や社会・環境課題の解決に貢献します。