有価証券報告書-第131期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 14:09
【資料】
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【項目】
141項目

対処すべき課題

当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、“Bringing value to life.”という企業理念のもと具体的には、次の4項目を経営方針に掲げて活動しています。
(お客様とともに)
お客様から選ばれ信頼されるパートナーであり続けるために、現場第一に徹し、創意工夫に努め、新たな価値の創造を追求します。
(株主・投資家の皆様とともに)
公正かつ透明な経営を実践し、効率的な事業活動を通じて、企業価値の増大を目指します。
(社会とともに)
良き企業市民として積極的に社会の課題に取り組み、環境の保全をはじめとして、より良い地球社会の実現に貢献します。
(グループ社員とともに)
グローバル企業として、社員の多様性と挑戦する気概を尊重し、人材育成に力を注ぎ、夢と誇りを持って働ける日本郵船グループを目指します。
(2) 中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。そしてこの企業理念に基づき、平成30年3月に新中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定し、①事業ポートフォリオの最適化(ドライバルク事業の抜本的見直しとコンテナ船統合会社の成功等)、②運賃安定型事業の積み上げ(物流・自動車船・自動車物流事業のシナジー構築等による強化とLNG・海洋事業の強化等)、③効率化、新たな価値創出(Digitalization and Greenへの取り組みを通じた次世代の成長分野の開拓等)を基本戦略として、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。
(“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標)
2017年度実績
(ご参考)
中期目標
(2022年目途)
経常利益280億円700~1,000億円
ROE3.8%min 8.0%
自己資本比率27.0%min 30.0%
D/Eレシオ1.781.50以下

(キャッシュ・フロー)
営業活動による
キャッシュ・フロー
890億円(単年)5,700億円(5カ年累計)
投資活動による
キャッシュ・フロー
1,379億円(単年)5,200億円(5カ年累計)

(前提)
為替レート111.19円/US$105.00円/US$
燃料油価格US$341.41/MTHSFO US$320/MT
LSGO US$620/MT

*HSFO = High Sulphur Fuel Oil, LSGO = Low Sulphur Gas Oil
(株主還元策)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして位置づけています。将来の市況変動に耐え得る内部留保の水準にも留意しつつ、業績の見通しや連結配当性向25%を目安に、利益配分を決定する方針です。
(3)会社の対処すべき課題
①安定と成長の戦略
当社グループは、本年3月に新中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しました。株主をはじめとするすべてのステークホルダーや社会から必要とされる企業であり続けるために、常に新たな価値を創造し、社会や環境の課題解決に貢献していくことが当社の責務であると考えています。海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。
創業より130年を超えた現在、業界市況や事業環境の変動に止まらず、激変する世界情勢や絶え間ない社会の変容、そして国境なき経済や資本市場に翻弄されることなく、永続的に成長を遂げることの重さを実感しています。そのためにできることとして、当社が10年後にあるべき姿に真摯に向き合い議論を深めた結果、責任ある事業活動を通じて積極的に社会や環境の課題を解決し、絶えず半歩先の精神で新たな価値を創出して安定的な収益構造を確立し、正のスパイラルをもたらすことが不可欠である、との結論に至りました。新中期経営計画の行き着く先を見据え、資産流動化とコスト削減により有利子負債を削減しつつ財務の健全性を堅持します。既存事業の拡充に加えて情報技術・環境分野を中心とした新規投資の実現及び成長分野への投資により積極的に将来キャッシュ・フローを創出することで、資本効率とROE(自己資本利益率)を向上させ、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。
上記に基づき、以下のような具体的施策に取り組みます。
まず、事業ポートフォリオの最適化により、ボラティリティへの耐性を強化します。ドライバルク輸送部門においては、市況耐性の高い不定期船事業を構築し、情報通信技術等を活用した効率的な配船・運航によるコスト削減、提案型営業による顧客とのパートナーシップ強化で収益構造を改善します。コンテナ船部門では、定期コンテナ船事業の統合により効率性とスケールメリットを追求する戦略へ転換します。
また、成長分野である物流事業、自動車船・自動車物流事業及び重点投資分野であるLNG・海洋事業を強化し、運賃安定型事業の積み上げを推進します。物流事業においては、成長産業と新興市場を核に総合物流サービスの拡大、選択と集中による戦略投資、当社グループの経営基盤を活かした顧客ニーズに対応するサービスの深化により競争力の強化に努めます。自動車輸送部門においては、デジタル技術を活用した輸送・荷役の効率化と積極的な環境対応を図り、自動車産業の構造変化を見据えた高度な完成車物流の実現を目指します。エネルギー輸送事業においては、新興国需要への対応を強化し、世界で先行する船舶用LNG燃料の供給・販売事業を推進し、海洋事業では、技術力に基づく重点投資を行い、変化するエネルギー需要や新たなニーズに対応する新規事業への参画も含め事業を拡充します。
これまでの技術研究開発を通じオペレーション効率化を進めてきましたが、Digitalization and Greenによる事業変革に取り組みます。最新のデジタル技術を駆使し、サプライチェーン全体の最適化を目指しながらCO₂削減など環境負荷を低減し、社会的責任を果たします。また、再生可能エネルギーをテーマに次世代へ向けた新たな価値創出を目指します。
②ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組み
当社グループは、グローバルな視野を持って企業の社会的責任を果たすべく、「ガバナンス」の強化を図り、「安全」「環境」「人材」を経営の最重要課題に位置付け、ESGに対して積極的に取り組みます。
企業経営の健全性と透明性をより高めるために、コンプライアンス意識の向上、内部統制の強化、グループガバナンスの一層の充実を図り、積極的な情報開示に努めます。
船舶の安全運航などのオペレーションの安全性は当社グループのあらゆる事業の根幹であり、安全推進活動に継続して取り組みます。また、環境保全に関しては、パリ協定をふまえた温暖化防止に向けた取組みとして、船舶から排出されるCO₂排出量の中長期削減目標を策定しました。最適運航のさらなる深度化や重油に代わる新燃料としてCO₂・SOx・NOx排出量削減が可能となるLNG燃料への転換を積極的に進めます。バラスト水処理装置の搭載や燃料油に含まれる硫黄分の規制強化、シップリサイクルなどの様々な環境規制への対応に取り組みます。
さらに、当社グループの基本理念を支える“NYKグループ・バリュー”(誠意・創意・熱意)の実践を通じて、誇りを持って働ける職場づくりの実現を目指し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めます。当社グループは、新中期経営計画においてESGの経営戦略への統合を掲げており、事業活動を通して、国連で採択された持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)の達成や社会・環境課題の解決に貢献します。