有価証券報告書-第134期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 12:27
【資料】
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【項目】
158項目

対処すべき課題

当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、“Bringing value to life.”という企業理念のもと具体的には、次の4項目を経営方針に掲げて活動しています。
(お客様とともに)
お客様から選ばれ信頼されるパートナーであり続けるために、現場第一に徹し、創意工夫に努め、新たな価値の創造を追求します。
(株主・投資家の皆様とともに)
公正かつ透明な経営を実践し、効率的な事業活動を通じて、企業価値の増大を目指します。
(社会とともに)
良き企業市民として積極的に社会の課題に取り組み、環境の保全をはじめとして、より良い地球社会の実現に貢献します。
(グループ社員とともに)
グローバル企業として、社員の多様性と挑戦する気概を尊重し、人材育成に力を注ぎ、夢と誇りを持って働ける日本郵船グループを目指します。
(2) 中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。そしてこの企業理念に基づき、2018年3月に中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定し、①事業ポートフォリオの最適化(ドライバルク事業の抜本的見直しとコンテナ船統合会社の成功等)、②運賃安定型事業の積み上げ(物流・自動車船・自動車物流事業のシナジー構築等による強化とLNG・海洋事業の強化等)、③効率化、新たな価値創出(Digitalization and Greenへの取り組みを通じた次世代の成長分野の開拓等)を基本戦略として、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。
(“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標並びに2020年度実績)
2020年度実績中期目標
(2022年目途)
経常損益2,153億円700~1,000億円
ROE25.6%min 8.0%
自己資本比率29.4%min 30.0%
D/Eレシオ1.52倍1.50倍以下

(キャッシュ・フロー)
営業活動による
キャッシュ・フロー
1,593億円(単年)5,700億円(5カ年累計)
投資活動による
キャッシュ・フロー
168億円(単年)5,200億円(5カ年累計)

(前提)
為替レート105.79円/US$105.00円/US$
燃料油価格US$362.95/MTHSFO US$320/MT
LSGO US$620/MT

*HSFO = High Sulphur Fuel Oil, LSGO = Low Sulphur Gas Oil
(株主還元策)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして位置づけています。将来の市況変動に耐え得る内部留保の水準にも留意しつつ、業績の見通しや連結配当性向25%を目安に、利益配分を決定する方針です。詳細については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
(3) 中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題
① 安定と成長の戦略
当社グループは、 “Bringing value to life.” の基本理念のもと、10年後のありたい姿としてのビジョンの実現に向け、2018年度からの中期経営計画 “Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green” を進めています。
中期経営計画では、ボラタイルな事業環境や多様に変化する社会に対応すべく、ボラティリティへの耐性強化と事業成長・収益力向上に取り組んでいます。3つの基本戦略である「ポートフォリオの最適化」「運賃安定型事業の積み上げ」及び「効率化と新たな価値創出」に沿った形で、既存事業の拡充に加えて情報技術・環境分野を中心とした新規事業の実現と成長分野への投資を実施してきました。
「ポートフォリオの最適化」では、市況耐性の高い事業運営を目指しています。ドライバルク輸送部門は、市況耐性への強化のために事業の構造改革を実施し、引き続き徹底した市況エクスポージャー管理を行っています。定期船事業においては、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.の収支は大幅に改善しましたが、引き続き収益の安定に取り組みます。
「運賃安定型事業の積み上げ」では、物流部門・自動車船部門・自動車物流部門において、ネットワークの充実と高品質かつ競争力のあるサービスの強化を図っています。グループの経営基盤であるヒト、モノ、IT、資金を活かした営業力強化とともに、デジタル技術を活用した輸送・荷役の効率化と環境対応に取り組んでいます。また、LNG部門・海洋事業部門では、案件を厳選したうえでの投資を継続しています。環境規制が強化されるなか、世界で先行する船舶用LNG燃料の供給・販売事業をさらに促進するとともに、変化するエネルギー需要を捉え、新たなニーズに対応する新規事業にも取り組んでいきます。
「効率化と新たな価値創出」としては、技術研究開発を通じオペレーション効率化を進めてきましたが、 “Digitalization and Green” の取り組みを積極的に推し進め、技術力・情報力・ネットワーク力にさらに磨きをかけ、次世代の成長分野を切り拓いています。サプライチェーン全体の最適化や、船上キャッシュレス事業を展開するMarCoPayなど、最新のデジタル技術を駆使した効率性の追求により新たな価値創出を図ります。また、環境問題への対応が、当社グループの最重要課題の一つと認識しており、環境規制強化に着実に対応し、輸送におけるCO₂排出の削減及び再生可能エネルギーをテーマに次世代に向け、多様なグリーンビジネスの実現に取り組んでいます。
これらの事業戦略の遂行や次世代の成長分野への積極的な取組みに加え、ESG経営を成長戦略と位置づけ、環境問題を始めとする社会の課題の解決にも貢献することで、将来の収益力の最大化を図るとともに、資本効率とROE(自己資本利益率)を向上させ、企業価値・社会価値の持続的な創出に全力で取り組みます。
② ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組み
当社グループは、ESGを経営戦略に統合し、従来の経済性や規模の追求といった「Economy」のモノサシだけでなく、長期的な視点で社会・環境課題の解決に貢献する「ESG」のモノサシも判断基準に加え、企業のサステナビリティと環境・社会のサステナビリティの両立をガバナンスで支え、「ESG経営」を通じた企業価値の向上を目指します。
2021年2月3日に公表したESGストーリーにおいて、当社のESG経営が目指すものを“Sustainable Solution Provider”としました。
Sustainable Solution Providerへの道筋において、当社グループでは、以下の3つの取り組みを掲げています。詳細については、2021年2月3日に開示した、NYKグループESGストーリーをご参照ください。(https://www.nyk.com/esg/esg-story/)
1)これからのNYKグループを創る新たな価値創造の取り組み
2)新たな価値創造を推進する人・組織の強化
3)ESG経営を支える経営基盤の強化