有価証券報告書-第146期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/25 16:13
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【項目】
134項目

対処すべき課題

(1)中長期的なグループの経営戦略
当社グループは2012年4月に3つの最重要課題「2012年度経常損益の黒字化」、「安定収益体制の構築」、「財務体質の強化」を掲げ、中期経営計画「“K” LINE Vision 100 - Bridge to the Future -」を策定しました。2008年4月に策定した「“K” LINE Vision 100」に掲げた5つの継続課題とあわせ、「“K” LINE Vision 100」のテーマである「共利共生と持続的成長」の達成に向けて取り組みます。
(注:上記の課題については、次項(2)で詳述しています。)
(2)会社の対処すべき課題
中期経営計画「“K”LINE Vision 100 - Bridge to the Future -」においては3つの最重要課題、「“K”LINE Vision 100」においては5つの継続課題を掲げています。各課題の詳細は次のとおりです。
イ.3つの最重要課題
① 2012年度経常損益の黒字化
2012年度経常損益黒字化のため、コンテナ船事業での構造改革などに加え、減速航行による燃料消費量削減、一般管理費削減等のコスト削減にグループ一丸で取り組んだ結果、2012年度に286億円の経常利益を計上し、経常損益の黒字化を達成しています。
② 安定収益体制の構築
大きく変動する事業環境のもとにおいても安定的に収益を確保できる体制の構築へ向け以下の施策に取り組みます。
a. コンテナ船事業の構造改革:
・ コンテナ船事業においては、構造改革を継続的に断行し収支改善に努めます。
➢省エネ対応の新造大型コンテナ船就航により航路再編を行い、運航費単価を削減します。
➢不採算航路の整理、不経済船の返船および処分による船隊スリム化を行います。
➢減速航行による燃料消費量削減、全世界におけるコスト削減を継続して推進します。
b. ドライバルク事業、自動車船事業の安定収益拡大:
・ ドライバルク事業においては、国内外顧客との既存の中長期契約の維持に加え、新興国を中心に海外顧客との中長期契約を獲得し、安定収益の拡大に取り組みます。
・ 自動車船事業においては、日本からの完成車輸送需要への対応に加え、生産拠点の海外シフトや、中国・アジア向け需要の増加といったトレードパターンの変化に応じた航路編成を行い、安定収益幅の拡大を図ります。また、新たな事業基盤として非自走貨物の取り扱い拡大に取り組みます。
・ その他エネルギー資源輸送事業、重量物船事業、物流事業等各事業分野においても、安定収益化への取り組みを継続します。
③ 財務体質の強化
2012年度以降の投資キャッシュフロー規模を減価償却費並みの500億円以下に抑制し、資金収支を改善し、有利子負債圧縮による財務基盤強化に取り組みます。新規投資は、従来の規模拡大に軸足を置いた投資方針を見直し、安定収益、高収益分野に厳選します。
ロ.5つの継続課題
① 環境保護への取組み
船舶運航、陸上荷役作業及び陸上輸送において省エネシステムの採用、排出エネルギーの有効利用等のハード面での施策に加え、適正速力での運航の徹底等ソフト面での施策を通じて、可能な限りCO2排出量の削減を行い地球温暖化の防止に努めます。地球上の全ての人類と生物にとってかけがえのない『きれいな海と、きれいな空気の地球環境』へ向けて全力で取り組みます。
当社グループは、2008年4月の「“K”LINE Vision 100」におけるCO2排出量の削減目標を「2010年代半ばに2006年比で輸送トンマイルベース10%減」と設定し、目標達成に取り組んでまいりましたが、2011年度実績にて早くもこの目標が達成できましたので、次なる目標として、当社の創立100周年となる2019年を念頭に置き、新たなCO2排出量削減目標を「2019年までに2011年比で輸送トンマイルベース10%減」と設定しました。
(注:「輸送トンマイルベース」とは、1トンの貨物を1海里(1,852m)輸送することを基準とする。)
② 確固たる安全運航管理体制
グローバルスタンダードに当社独自のノウハウを取り入れた管理システムである「KL Safety Standard」と、検船指針である「KL Quality」の充実により、安全運航と運航全船の船質向上を確保します。また、グループ全体で情報の共有化を進めるため「KL Safety Network」を構築するなど、安全管理システムの充実と陸上支援体制の強化に努めます。更には、海外船員供給ソースにおける船員確保体制の維持、当社グループの船員教育・訓練機関である“K”Line Maritime Academyのソフト面の充実、船員育成体制の強化、魅力ある職場の提供などにより海事技術者の確保育成に努め、確固たる安全運航管理体制を目指します。
③ 最適・最強組織によるボーダレス経営
当社グループの事業活動のグローバル化が加速する中、世界各地の事業活動や企業文化などにおいて、“K”LINEスタンダードの共有によるボーダレス経営が求められています。当社はグループ企業間の協業と人材交流の推進によりグループ企業の総合力の強化に努める一方、グローバルに通用する人材育成の強化と弛まぬ業務改革の推進により、国際競争力を支える労働生産性の飛躍的向上に努めます。更に、ビジョンの共有化と役割の明確化、適材適所の人材配置と公平な処遇により、世界のグループ従業員がやりがいを持ついきいきした職場環境を目指します。こうした取り組みを通じ、コスト競争力・技術開発力の向上、高品質サービスの提供等、業界屈指の競争力の保持・強化に努めます。
④ 戦略投資と経営資源の適正配分
「“K”LINE Vision100 - Bridge to the Future -」においては、財務体質強化を優先課題とし、新規投資は安定収益、高収益分野に厳選します。ドライバルク事業においては、中長期契約の獲得を前提に省エネ型新船型を中心とした船隊整備を行います。自動車船事業においては、非自走貨物に対応する適正船型の船隊整備を行います。エネルギー資源輸送事業では、案件ごとの収益性を都度検討し、投資判断を行います。
⑤ 企業価値の向上とリスク管理の徹底
収益性と資本効率を重視した事業展開を通じて、安定収益基盤に立脚した持続的成長を目指します。一方で、その過程で予見されうるマーケット、為替、人材、安全・環境、災害等の各種の潜在的リスクの洗い出しと予防的措置の検討、それらリスク要因が顕在化した場合の迅速な対応などリスク管理を徹底します。財務面での健全性確保に加え、バランスシート外のリスクの自己管理を徹底することにより、経営の健全性を高め、安定収益基盤に立脚した持続的成長路線の上に、企業価値の向上を図ってまいります。
ハ.コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施しておりますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。
(3) 株式会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容の概要
当社は、株主の皆さま、顧客、取引先、従業員、地域社会など当社を巡るステークホルダー(利害関係者)との共存・共栄を図り、当社の企業価値・株主共同の利益の確保を目指す者が、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として望ましいと考えます。従いまして、この考え方に反する行動を取る者は、望ましくないと考えています。
当社は、当社株式について大規模買付行為がなされる場合、これが企業価値・株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。しかし、株式の大規模買付行為の中には、企業価値・株主共同の利益に資さないものも存在します。従いまして、そのような大規模買付行為を抑止するための枠組みが必要であると考えます。
② 基本方針の実現に資する特別な取組みの概要
(イ)経営計画による企業価値向上への取組み
当社は、平成20年4月に、創立100周年となる平成31年を見据えた中期経営計画「“K”LINE Vision 100」を策定し、メインテーマを「共利共生と持続的成長」として、5つの基本課題に継続的に取り組んできています。
一方、その後の世界経済情勢の急激な変化や海運市況の乱高下、自然災害の発生や円高の進行、燃料油価格の高騰等、当社を取りまく事業環境の著しい変化に対応すべく経営計画の見直しを行ってきましたが、平成24年4月には新中期経営計画「“K”LINE Vision 100 - Bridge to the Future -」を策定し、5つの基本課題に加え「2012年度経常損益の黒字化」「安定収益体制の構築」「財務体質の強化」を新たな3つの最重要課題として掲げました。必達の課題として掲げていた「2012年度経常損益の黒字化」を達成することができましたが、引き続き経常黒字の維持・継続に取り組んでまいります。
5つの継続課題
Ⅰ 環境保護への取組み
Ⅱ 確固たる安全運航管理体制
Ⅲ 最適・最強組織によるボーダレス経営
Ⅳ 戦略投資と経営資源の適正配分
Ⅴ 企業価値の向上とリスク管理の徹底
3つの最重要課題
Ⅰ 2012年度経常損益の黒字化
Ⅱ 安定収益体制の構築
Ⅲ 財務体質の強化
(ロ)コーポレート・ガバナンスに関する取組み
当社は、その社会的責任を果たし、株主等ステークホルダーの負託に応え、持続的に成長していくためにも、コーポレート・ガバナンス体制の強化とリスク・マネジメント体制の整備強化に取り組み、グループ全体に企業倫理を徹底しつつ、有機的かつ効率的にガバナンスの仕組みを構築し、収益・財務体質の強化と相まってコーポレート・ブランド価値を高めるよう、継続的に努力しています。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要
当社は、平成18年6月開催の定時株主総会において、当社株式の大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)を導入し、平成21年6月開催の定時株主総会において、その方針に所要の変更を加えたうえで更新しています。また、平成24年6月26日開催の定時株主総会において、さらなる変更を加えたうえで更新することにつき、株主の皆さまからご承認を受け、同日付で更新しました。
④ 当社の導入した買収防衛策が、基本方針に沿うものであり、当社の企業価値又は株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないことについての取締役会の判断及びその理由
(イ) 当該取組みが基本方針に沿うものであること
当社の買収防衛策は、当社株式等に対する買付等が行われる場合に、当該買付等に応ずるべきか否かを株主の皆さまが判断し、あるいは当社取締役会が株主の皆さまに代替案を提案するために必要な情報や時間を確保し、さらに株主の皆さまのために買付者等と協議・交渉等を行うことを可能とすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上するための枠組みであり、基本方針に沿うものと判断しています。
(ロ) 当該取組みが当社の株主共同の利益を損なうものではなく、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないこと
当社は、以下の理由から、当社の買収防衛策は基本方針に照らして、当社の企業価値・株主共同の利益を損なうものではなく、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しています。
(ⅰ)買収防衛策に関する指針の要件を充足していること
経済産業省及び法務省が公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性確保の原則)を完全に充足しています。また、経済産業省企業価値研究会の報告書「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」の提言内容にも合致しています。
(ⅱ)株主意思を重視するものであること
当社取締役会は、所定の場合には株主総会を招集し、買収防衛策を発動するか否かの判断を株主の皆さまに行って頂きます。
当社の買収防衛策の有効期間は、平成27年3月31日に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までの約3年間としており、かつ、かかる有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において廃止する旨の決議が行われた場合、または、当社取締役会において廃止する旨の決議が行われた場合には、その時点で廃止されます。
(ⅲ)合理的かつ客観的な対抗措置発動要件の設定
当社の買収防衛策は、合理的かつ客観的な要件が充足されない限りは発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みが確保されています。
(ⅳ)独立委員会の設置
当社は、買収防衛策に関し、当社取締役会の恣意的判断を排除し、株主の皆さまのために買収防衛策の運用に際しての判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置しており、当社取締役会による恣意的な運用ないしは発動を防止するための仕組みが確保されています。
(ⅴ)デッドハンド型買収防衛策ではないこと
当社の買収防衛策は、その有効期間の満了前であっても、当社取締役会により、いつでも廃止することができるものとされています。従いまして、当社の買収防衛策はデッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させても、なお発動を阻止できない買収防衛策)ではありません。