有価証券報告書-第150期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/21 14:09
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【項目】
141項目

対処すべき課題

(1)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、海運業界を取りまく大きな事業環境の変化に対応し持続的な成長を可能とするための経営基盤の再構築を目指し、長期の経営方針と平成29年度から創立100周年を迎える平成31年度までの3か年中期経営計画「『飛躍への再生』 Value for our Next Century」を策定しました。
長期経営方針としては以下の2つの重要テーマを掲げています。
◆ 高品質なサービスと顧客基盤に立脚した安定収益基盤と成長分野を擁する総合海運・物流企業グループ
◆ 高度なリスク管理・ガバナンス体制により、環境変化に対応しながら企業価値を持続的に創造する企業
グループ
また、目標とする経営指標につき、長期的・中期的な観点においてそれぞれ以下のとおり設定しました。
長期的な目標(平成32年代半ば)
◆ ROA(経常損益ベース)6% / ROE二桁台の達成
◆ 自己資本4,000億円 - コンテナ船事業統合による事業安定性への効果を検証し、再設定を予定
◆ 配当方針 - 安定配当方針への復帰
中期経営計画での目標
◆ 平成29年度以降3年間 - 黒字化継続
◆ 基盤となる安定型事業のROA(経常損益ベース)6%の達成と同事業規模の拡大
◆ 自己資本比率 20%半ばに向けた積上げ
◆ 配当方針 – 財務体質改善と事業基盤の安定化を最優先とし、早期の復配を目指す
(2)会社の対処すべき課題
長期経営方針に掲げた企業体を目指すにあたり、「ポートフォリオ戦略転換」、「経営管理の高度化と機能別戦略の強化」、「ESGの取組み」を3つの重要課題に掲げ、創立100周年を迎える平成31年までに達成するべく、グループ一丸となって取り組んでいます。各課題の詳細及び進捗状況は次のとおりです。
① ポートフォリオ戦略転換
ポートフォリオ戦略転換では、安定収益型事業の徹底的強化・拡大として、◆ 安定収益型 中長期契約の充実・拡大
◆ コンテナ船事業統合の完遂
◆ 市況影響型事業の縮減
◆ コスト削減の徹底的実施
を行うこととし、成長に向けた次代の中核事業の育成として
◆ 物流・完成車物流・エネルギーバリューチェーン事業の育成
◆ 技術革新・ビジネスモデル変革による新サービス・市場の創出
に取り組むこととしています。平成29年度においては、重量物船事業の売却を実施する一方で、フィリピン・チリでの完成車物流サービスの開始、ガーナ沖FPSO事業への参画、マレーシア・テナガ社発電用石炭COA獲得による安定収益基盤拡充など目標達成に向けた取組みを行ってきました。
② 経営管理の高度化と機能別戦略の強化
ポートフォリオ戦略転換を支える体制整備として、事業リスク・リターン管理の運用を開始しました。新たな事業評価指標「“K” VaCS」(注1)及び「“K” RIC」(注2)の活用に向けた準備を行うとともに、機能別戦略強化として、当社グループの力を結集した徹底的な顧客基盤の強化を行う、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)強化に向け、国内外グループ会社を含めた取組みを進めています。また、技術革新追及の一つとして、船舶の最適運航支援システム「K-IMS」の搭載を開始しました。ビジネスモデル変革に向けた取組みとして、日本初のLNG燃料フェリー就航及び国内における船舶向けLNG燃料供給事業への参画に向けた検討を開始するなど、公表時に掲げた取組みを着実に進めています。
(注1) 「“K” VaCS」 = “K” LINE Value after Cost of Shareholders’equity
株主資本コストを意識した当社独自の経済的付加価値を示す収益指標
(注2) 「“K” RIC」 = “K” LINE Return on Invested Capital
資本コストを意識した企業価値向上を図る当社独自の効率性指標
③ ESGの取組み
ESGの取組みでは、ユニット統括制強化・リスクマネジメント強化などの取組みを進める一方、環境への取組みでも、平成28年より2年連続でCDP気候変動Aリストへ選定されるなど、当社の積極的な活動が評価されています。ガバナンスへの取組み、環境への取組みは経営計画を実行していく上で、重要な取組みと考えており、当社グループは、環境・安全・ガバナンス体制整備に引き続き尽力してまいります。
◆環境対策とCSR
当社グループは重大海難事故ゼロの維持を命題として、『統合船舶運航・性能管理システム“K-IMS”』の開発・導入やエネルギーマネジメントシステムの構築等により、世界トップクラスの安全運航の維持に取り組んでいます。
また、当社グループは事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にするべく、環境憲章にその決意を掲げ、これに基づく環境マネジメントシステムにより、具体的な環境保全活動並びに数値目標を定め、その達成状況を基に改善を図っていくなど、環境保全のためのさまざまな取組みを行っています。例えば、省エネ型荷役機器導入や燃料節減によるCO2排出量削減、運航船のバラスト水管理のための処理装置の搭載、低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のための排ガス再循環装置搭載などの環境保全対策を実施しています。これらの取組みが評価され、平成29年にはCDP2017気候変動及びサプライヤー気候変動において2年連続でAリストに選定されました。また、事業以外でも会社遊休地を利用した里山保全活動など環境保護活動を積極的に実施しています。
平成27年3月には、様々な環境問題に取り組むべく環境指針『“K”LINE 環境ビジョン2050』を策定し、持続可能な社会と美しい海を次の世代へと伝えるため、「CO2排出量の半減」、「新エネルギーへの転換」、「生態系保護」、「大気汚染防止」の4つを重要な取り組むべきテーマとして定めました。
平成29年6月には、当社グループ全体で環境マネジメントを推進するための体制「DRIVE GREEN NETWORK」を構築し、運用を開始しました。これは当社グループ全体で日常業務の中に環境の課題を見出し、取り組むことで、グループ全体として持続可能な社会の実現を目指しています。
重要課題を解決するモデルとして、「環境フラッグシップの建造と実証」を創立100周年(平成31年)におけるマイルストーンに掲げています。平成28年2月には、究極の省エネと環境保全対応を追求した環境フラッグシップ”DRIVE GREEN HIGHWAY”が竣工しました。本船では竣工以来、船舶用SOxスクラバー(排ガス浄化装置)システムの実証試験を重ねてきましたが、これによる大気汚染物質の排出抑制効果が国際基準に適合していることが認められ、平成29年1月、船籍国であるパナマ共和国の承認を取得しました。
平成31年のもう1つのマイルストーンとして掲げた「当社運航船の輸送単位あたりのCO2排出量を平成23年比で10%削減」という目標は、平成27年実績で達成し、新たなマイルストーンとして「平成42年までにCO2排出量25%削減(平成23年比)」という目標を設定しました。平成29年2月、この新目標が「パリ協定」の「2℃目標」を達成するために科学的に根拠ある水準であることが認められ、国際的イニシアチブ「Science Based Target Initiative(SBTイニシアチブ)」の認証を取得しました。
「CO2排出量削減」への取組みとして、国内外主要連結グループ会社の燃料消費や電気使用量などの環境負荷データを、環境データ集計システムを通じて収集・集計を行っています。平成29年において当社及び連結子会社の事業に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)13,417,625トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)25,019トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)1,516,445トンという結果となりました。今後も、グループ全体の環境負荷を把握すると同時に、グループ各社での自主的な取組みを促し、必要に応じて追加施策を実施すべく、環境パフォーマンスの見える化に取り組んでまいります。さらに、年間の実績データは、第三者機関によるデータ精査と保証を受けた上で、社外へ開示しステークホルダーからの評価を次の施策に活かしながら、継続的な改善を図ってまいります。
そのほかにCSRとして、ステークホルダーエンゲージメントの強化及び本船見学会やボランティア活動などによるコミュニティー参画推進を行い社会面でも貢献すべく取り組んでまいります。
◆ コーポレートガバナンスの強化
グループ価値を高める戦略実施に際して最も重要となるガバナンス体制の整備に関して、当社はユニット統括制の導入による業務執行責任体制のより一層の明確化・強化や重要方針の決定に向けた取締役会モニタリング体制の強化等を実行してきました。リスクマネジメントでは、危機管理委員会とその下部組織(コンプライアンス委員会・安全運航推進委員会・経営リスク委員会・災害対策委員会)がグループのリスク管理にあたり、重要な投資については、投資委員会がその審議にあたる体制としています。
◆ 株主還元の方針
当社は経営計画の主要課題である持続的成長のために、設備投資や企業体質の充実・強化に必要な内部留保の確保などを勘案しつつ、安定的な配当を実施し、株主の皆様への利益還元を最大化することを重要課題と位置づけています。しかしながら、平成29年4月に発表しました中期経営計画において、財務体質の改善と事業基盤の安定化を当期の最優先課題と捉えており、誠に遺憾ながら期末配当については無配とさせていただきます。
次期の配当については、当面は財務体質改善と事業基盤安定化を最優先とし、現時点では未定とさせていただきます。
(3)コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施していますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。