有価証券報告書-第148期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)
対処すべき課題
(1)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、平成27年3月に平成32年3月期を目標とする中期経営計画を発表致しましたが、昨年後半から急速に鮮明化している中国及び新興国を中心とする世界経済の成長鈍化、欧州における難民問題など地政学的リスクの高まりに伴う不透明感の増大を背景とした需要低成長懸念と、船腹供給圧力の継続という事業環境の構造的変化を踏まえて、平成28年4月に中期経営計画を見直し、新たな中期経営計画 「
Value for our Next Century – Action for Future -」を策定致しました。
この中期経営計画では以下の3つの重要テーマを掲げて、持続的成長と企業価値向上に向け取り組んでまいります。
① 財務体質の強化による「安定性」の確保と事業構造改革による「競争力」の確保
② 「安定性」を基盤とした「成長性」の強化
③ ステークホルダーとの対話と協働 (持続的成長と企業価値向上に向けて)
(2)会社の対処すべき課題
中期経営計画「
Value for our Next Century – Action for Future -」における重要テーマへの取組み詳細は以下です。
① 財務体質の強化による「安定性」の確保と事業構造改革による「競争力」の確保
中国の経済成長鈍化と構造改革の行方、資源価格低迷による新興/発展途上国の経済停滞、財政危機を抱える中での欧州における難民問題など地政学的リスクによる経済への影響など世界経済の先行き不透明感が強まるなか、物流輸送需要の低成長化・新造船供給過剰による船腹需給バランス回復の長期化が懸念されます。このような事業環境の下、当社は当面、「安定性」と「競争力」の確保を最重要課題として取り組み、具体的に以下の対応をとってまいります。
◆ ドライバルク事業(特に中・小型船エクスポージャー削減)を中心とした事業構造改革の実施
◆ 安定収益事業(自動車船・LNG船・油槽船・ドライバルク長期契約船・物流)の更なる安定的拡充
◆ コンテナ船事業の競争力確保(新造省エネ大型船・更なる東西航路への集中)の一層の計画推進による
安定収益化
◆ 関係会社を含む事業全体の構造改革による資産効率性の向上
② 「安定性」を基盤とした「成長性」の強化
上記のように、当面中期的な物流需要は緩慢な成長になる可能性がありますが、長期的には人口増加やエネルギー需要の拡大を背景として、継続的に成長するものと考えます。当社グループは、まず「安定性」と「競争力」の確保を基盤とした上で、リスクを低減した事業ポートフォリオの実現を通じて、安定性と成長性のバランスを重視した事業経営を行ってまいります。
具体的には、ドライバルク事業の構造改革を中心に平成27年度~平成31年度の5年間の投資計画を3,300億円から2,300億円とし、成長に向けた戦略的投資として、収益性と安定性を重視した上で中長期契約に基づくLNG船/油槽船船隊の拡大、アジア地域等でのターミナルを含む物流需要の取込みに合計950億円、ボラティリティへの耐性を高める安定収益拡充の取組みとして、14,000 TEU型大型コンテナ船(平成30年度までに合計10隻竣工)、7,500台積み自動車船(平成29年度までに合計10隻竣工)などに合計1,050億円を投資する計画としています。
③ ステークホルダーとの対話と協働(持続的成長と企業価値向上に向けて)
当社グループは、ステークホルダーとの対話と協働による持続的成長と企業価値の向上を重要な経営方針として掲げており、以下の取組みを進めています。
◆ 企業の社会的責任(CSR)遂行によるステークホルダーとの協働
CSR基本方針として、「事業活動の影響に対する配慮」、「新たな価値の創出」を定め、特に安全運航・環境保全・人材育成に取り組む方針としております。CSR推進組織としては、社会・環境委員会とその下部組織として環境専門委員会・CSR専門委員会を設け、グループ全体の取組みを進めるとともに、主体的な情報開示・発信を強化していくこととしています。
環境保全として、当社グループは事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にするべく、環境憲章にその決意を掲げ、これに基づく環境マネジメントシステムにより、具体的な環境保全活動並びに数値目標を定め、その達成状況を基に改善を図っていくなど、さまざまな取組みを行っています。例えば、省エネ型荷役機器導入や燃料節減によるCO2排出量削減、運航船のバラスト水管理のための処理装置の搭載、低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のための排ガス再循環装置搭載などの環境保全対策を実施しています。また、事業以外でも会社遊休地を利用した里山保全活動など環境保護活動を積極的に実施しています。
平成27年3月には、様々な環境問題に真正面から取り組むべく環境指針『“K”LINE 環境ビジョン2050』を策定し、持続可能な社会と美しい海を次の世代へと伝えるため、「CO2排出量の半減」、「新エネルギーへの転換」、「生態系保護」、「大気汚染防止」の4つを重要な取り組むべきテーマとして定めました。そして、今春これらの課題を解決するモデルとして計画された次世代環境フラッグシップ ”DRIVE GREEN HIGHWAY”が竣工しました。
特に「CO2排出量の半減」への取組みとして、国内外主要連結グループ会社の燃料消費や電気使用量などの環境負荷データを、環境データ集計システムを通じて収集・集計を行っています。平成27年において当社及び連結子会社の事業に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)13,267,268トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)30,561トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)1,564,870トンという結果となりました。今後も、グループ全体の環境負荷を把握すると同時に、グループ各社での自主的な取組みを促し、必要に応じて追加施策を実施すべく、環境パフォーマンスの見える化に取り組んでまいります。さらに、年間の実績データは、第三者機関によるデータ精査と保証を受けた上で、社外へ開示しステークホルダーからの評価を次の施策に活かしながら、継続的な改善を図ってまいります。
◆ コーポレート・ガバナンスの強化
新たに定めた企業理念・ビジョンへの取組みを確実にし、持続的成長と企業価値向上に向けて、グループ内統治体制整備を含む、コーポレート・ガバナンスの強化を進めてまいります。リスクマネジメントでは、危機管理委員会とその下部組織(コンプライアンス委員会・安全運航推進委員会・経営リスク委員会・災害対策委員会)がグループのリスク管理にあたり、重要な投資については、投資委員会がその審議にあたる体制としています。
◆ 株主還元の方針
安定的配当方針は引き続き継続する計画ですが、平成27年度と平成28年度の構造改革の実施により、平成28年度の配当は未定とさせていただき、グループの「安定性」の確保に注力する方針です。その後、事業環境の構造的変化を見極め、当社グループの収益力を回復させた上で、当初の安定配当方針での株主還元を目指していく考えです。
コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施していますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。
当社グループは、平成27年3月に平成32年3月期を目標とする中期経営計画を発表致しましたが、昨年後半から急速に鮮明化している中国及び新興国を中心とする世界経済の成長鈍化、欧州における難民問題など地政学的リスクの高まりに伴う不透明感の増大を背景とした需要低成長懸念と、船腹供給圧力の継続という事業環境の構造的変化を踏まえて、平成28年4月に中期経営計画を見直し、新たな中期経営計画 「

この中期経営計画では以下の3つの重要テーマを掲げて、持続的成長と企業価値向上に向け取り組んでまいります。
① 財務体質の強化による「安定性」の確保と事業構造改革による「競争力」の確保
② 「安定性」を基盤とした「成長性」の強化
③ ステークホルダーとの対話と協働 (持続的成長と企業価値向上に向けて)
(2)会社の対処すべき課題
中期経営計画「

① 財務体質の強化による「安定性」の確保と事業構造改革による「競争力」の確保
中国の経済成長鈍化と構造改革の行方、資源価格低迷による新興/発展途上国の経済停滞、財政危機を抱える中での欧州における難民問題など地政学的リスクによる経済への影響など世界経済の先行き不透明感が強まるなか、物流輸送需要の低成長化・新造船供給過剰による船腹需給バランス回復の長期化が懸念されます。このような事業環境の下、当社は当面、「安定性」と「競争力」の確保を最重要課題として取り組み、具体的に以下の対応をとってまいります。
◆ ドライバルク事業(特に中・小型船エクスポージャー削減)を中心とした事業構造改革の実施
◆ 安定収益事業(自動車船・LNG船・油槽船・ドライバルク長期契約船・物流)の更なる安定的拡充
◆ コンテナ船事業の競争力確保(新造省エネ大型船・更なる東西航路への集中)の一層の計画推進による
安定収益化
◆ 関係会社を含む事業全体の構造改革による資産効率性の向上
② 「安定性」を基盤とした「成長性」の強化
上記のように、当面中期的な物流需要は緩慢な成長になる可能性がありますが、長期的には人口増加やエネルギー需要の拡大を背景として、継続的に成長するものと考えます。当社グループは、まず「安定性」と「競争力」の確保を基盤とした上で、リスクを低減した事業ポートフォリオの実現を通じて、安定性と成長性のバランスを重視した事業経営を行ってまいります。
具体的には、ドライバルク事業の構造改革を中心に平成27年度~平成31年度の5年間の投資計画を3,300億円から2,300億円とし、成長に向けた戦略的投資として、収益性と安定性を重視した上で中長期契約に基づくLNG船/油槽船船隊の拡大、アジア地域等でのターミナルを含む物流需要の取込みに合計950億円、ボラティリティへの耐性を高める安定収益拡充の取組みとして、14,000 TEU型大型コンテナ船(平成30年度までに合計10隻竣工)、7,500台積み自動車船(平成29年度までに合計10隻竣工)などに合計1,050億円を投資する計画としています。
③ ステークホルダーとの対話と協働(持続的成長と企業価値向上に向けて)
当社グループは、ステークホルダーとの対話と協働による持続的成長と企業価値の向上を重要な経営方針として掲げており、以下の取組みを進めています。
◆ 企業の社会的責任(CSR)遂行によるステークホルダーとの協働
CSR基本方針として、「事業活動の影響に対する配慮」、「新たな価値の創出」を定め、特に安全運航・環境保全・人材育成に取り組む方針としております。CSR推進組織としては、社会・環境委員会とその下部組織として環境専門委員会・CSR専門委員会を設け、グループ全体の取組みを進めるとともに、主体的な情報開示・発信を強化していくこととしています。
環境保全として、当社グループは事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にするべく、環境憲章にその決意を掲げ、これに基づく環境マネジメントシステムにより、具体的な環境保全活動並びに数値目標を定め、その達成状況を基に改善を図っていくなど、さまざまな取組みを行っています。例えば、省エネ型荷役機器導入や燃料節減によるCO2排出量削減、運航船のバラスト水管理のための処理装置の搭載、低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のための排ガス再循環装置搭載などの環境保全対策を実施しています。また、事業以外でも会社遊休地を利用した里山保全活動など環境保護活動を積極的に実施しています。
平成27年3月には、様々な環境問題に真正面から取り組むべく環境指針『“K”LINE 環境ビジョン2050』を策定し、持続可能な社会と美しい海を次の世代へと伝えるため、「CO2排出量の半減」、「新エネルギーへの転換」、「生態系保護」、「大気汚染防止」の4つを重要な取り組むべきテーマとして定めました。そして、今春これらの課題を解決するモデルとして計画された次世代環境フラッグシップ ”DRIVE GREEN HIGHWAY”が竣工しました。
特に「CO2排出量の半減」への取組みとして、国内外主要連結グループ会社の燃料消費や電気使用量などの環境負荷データを、環境データ集計システムを通じて収集・集計を行っています。平成27年において当社及び連結子会社の事業に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)13,267,268トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)30,561トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)1,564,870トンという結果となりました。今後も、グループ全体の環境負荷を把握すると同時に、グループ各社での自主的な取組みを促し、必要に応じて追加施策を実施すべく、環境パフォーマンスの見える化に取り組んでまいります。さらに、年間の実績データは、第三者機関によるデータ精査と保証を受けた上で、社外へ開示しステークホルダーからの評価を次の施策に活かしながら、継続的な改善を図ってまいります。
◆ コーポレート・ガバナンスの強化
新たに定めた企業理念・ビジョンへの取組みを確実にし、持続的成長と企業価値向上に向けて、グループ内統治体制整備を含む、コーポレート・ガバナンスの強化を進めてまいります。リスクマネジメントでは、危機管理委員会とその下部組織(コンプライアンス委員会・安全運航推進委員会・経営リスク委員会・災害対策委員会)がグループのリスク管理にあたり、重要な投資については、投資委員会がその審議にあたる体制としています。
◆ 株主還元の方針
安定的配当方針は引き続き継続する計画ですが、平成27年度と平成28年度の構造改革の実施により、平成28年度の配当は未定とさせていただき、グループの「安定性」の確保に注力する方針です。その後、事業環境の構造的変化を見極め、当社グループの収益力を回復させた上で、当初の安定配当方針での株主還元を目指していく考えです。
コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施していますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。