有価証券報告書-第151期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 14:17
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【項目】
173項目

対処すべき課題

(1)中期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、2017年4月に中期経営計画「『飛躍への再生』0102010_001.png Value for our Next Century」を策定し、「ポートフォリオ戦略転換」、「経営管理の高度化と機能別戦略の強化」、「ESGの取組み」を3つの重要課題に掲げ、グループ一丸となって取り組んでいます。計画初年度である2017年度では、3期ぶりに営業、経常及び当期の全段階での黒字化を達成しました。2018年度は当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS社(以下、「ONE社」という。)を含むコンテナ船事業で収益が大幅に悪化したため、計画最終年度である2019年度及びその先の収益力強化を見据え抜本的な構造改革を断行した結果、赤字を計上しました。当社創立100周年の2019年度も、これらの重要課題に次項「(2)会社の対処すべき課題」に記載の基本方針に従って、引き続き徹底的に取り組みます。
⦅中期経営計画での主な目標⦆
2018年度実績(ご参考)
2017年以降3年間の黒字化継続親会社株主に帰属する
当期純損失
(注) △1,112億円
安定事業のROA6%と規模の拡大ROA
安定収益
5.7%
270億円
自己資本比率20%半ば自己資本比率11%

(注) コンテナ船事業関連を主とした営業損失に加え、構造改革費用等の計上により損失を計上
(2)会社の対処すべき課題
① ポートフォリオ戦略転換
事業ポートフォリオ戦略転換では、本体4事業への経営資源の集中と最適なポートフォリオによる収益力の向上を図ります。事業別の取組み重点項目は以下のとおりです。
◆ ドライバルク事業
安定収益型船隊の拡充と、中小型船などの市況影響型基幹船隊の適正化
◆ 自動車船事業
航路別収益管理の徹底による航路網の合理化と、運賃修復による抜本的な収益力の改善
◆ エネルギー資源輸送事業
市況影響型事業の整理と、事業リスク・リターン評価を踏まえた事業拡充による「選択と集中」の徹底
◆ 物流事業
ケイラインロジスティックスを中心としたグローバルネットワークを含む関係会社網の再構築と、外部知見も導入した地域密着型事業の拡充促進
2018年度においては、事業ポートフォリオ戦略転換の一環として、当社の国内港湾運送事業子会社3社による共同持株社を設立したうえで、当該株式の一部を株式会社上組に譲渡することを発表、2019年4月1日に譲渡を完了しました。また、成長に向けた次代の中核事業育成に向け、国内初となる船舶向けLNG燃料供給の事業化を決定しました。
② 経営管理の高度化と機能別戦略の強化
ポートフォリオ戦略転換を支える体制整備として、事業リスク・リターン管理による定量評価の本格運用を開始しました。当社独自の事業評価指標である「"K" VaCS」(株主資本コストを意識した経済的付加価値を示す収益指標)及び「"K" RIC」(資本コストを意識した企業価値向上を図る効率性指標)を活用し、事業ポートフォリオ内での課題、問題のより明確な捕捉と、自己資本、経営資源の観点から持続的成長に向けた「選択と集中」戦略の明確化に繋がっており、より投下資本、事業リスク・リターンレベルを意識した事業経営を進めています。
(注1) 「“K” VaCS」 = “K” LINE Value after Cost of Shareholders’equity
株主資本コストを意識した当社独自の経済的付加価値を示す収益指標
(注2) 「“K” RIC」 = “K” LINE Return on Invested Capital
資本コストを意識した企業価値向上を図る当社独自の効率性指標
③ ESGの取組み
上記のようなグループ価値を高める戦略実施に際して最も重要となるガバナンス体制の整備に関して、当社はユニット統括制の導入による業務執行責任体制のより一層の強化や取締役会の実効性評価を進めることなどに取り組んできました。安全面では重大海難事故をゼロにする取組みを継続、環境面では、2016年から3年連続でCDP気候変動Aリストに選定されています。また、WWFジャパンによる「企業の温暖化対策ランキング」第8弾の中で、「運輸業」のカテゴリーにおいて、陸運・空運を含む日本企業31社中第1位に選定されるなど、当社の積極的な活動が評価されています。
当社グループは、環境・安全・ガバナンス体制整備に引き続き尽力してまいります。
◆環境対策とCSR
当社グループは重大海難事故ゼロの維持を命題として、『統合船舶運航・性能管理システム“K-IMS”』の開発・導入やエネルギーマネジメントシステムの構築等により、世界トップクラスの安全運航の維持に取り組んでいます。
また、当社グループは事業活動が地球環境に負荷を与えることを自覚し、それを最小限にするべく、環境憲章にその決意を掲げ、これに基づく環境マネジメントシステムにより、具体的な環境保全活動並びに数値目標を定め、その達成状況を基に改善を図っていくなど、環境保全のためのさまざまな取組みを行っています。例えば、省エネ型荷役機器導入や燃料節減によるCO2排出量削減、運航船のバラスト水管理のための処理装置の搭載、低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のための排ガス再循環装置搭載などの環境保全対策を実施しています。これらの取組みが評価され、2018年にはCDP2018気候変動及びサプライヤー気候変動で3年連続でAリストに選定され、また『サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード』にも選定されました。また、事業以外でも会社遊休地を利用した里山保全活動など環境保護活動を積極的に実施しています。
2015年3月には、様々な環境問題に取り組むべく環境指針『“K”LINE 環境ビジョン2050』を策定し、持続可能な社会と美しい海を次の世代へと伝えるため、「CO2排出量の半減」、「新エネルギーへの転換」、「生態系保護」、「大気汚染防止」の4つを重要な取り組むべきテーマとして定めました。
2017年6月には、当社グループ全体で環境マネジメントを推進するための体制「DRIVE GREEN NETWORK(DGN)」を構築し、運用を開始しました。これは当社グループ全体で日常業務の中に環境の課題を見出し、取り組むことで、グループ全体として持続可能な社会の実現を目指しています。DGNは3段階で当社グループ全体への導入を目指しており、2019年はphase 3と位置づけ、コンテナ船事業の統合により展開が遅れていた、海外関係会社の加入を推進します。
重要課題を解決するモデルとして、「LNG燃料船の導入」を創立100周年(2019年)におけるマイルストーンに掲げています。LNG燃料船の検討を進めつつ、2018年7月には、弊社も出資する合弁会社セントラルLNGシッピング株式会社は、LNG燃料を船舶に供給するための船舶の造船契約を川崎重工業株式会社と締結しました。本船は2020年秋頃に竣工し、国内で稼働する初めてのLNG燃料供給船となる予定です。
2019年のもう1つのマイルストーンとして掲げた「当社運航船の輸送単位あたりのCO2排出量を2011年比で10%削減」という目標は、2015年実績で達成し、新たなマイルストーンとして「2030年までにCO2排出量25%削減(2011年比)」という目標を設定しました。2017年2月、この新目標が「パリ協定」の「2℃目標」を達成するために科学的に根拠ある水準であることが認められ、国際的イニシアチブ「Science Based Target Initiative(SBTイニシアチブ)」の認証を取得しました。
「CO2排出量削減」への取組みとして、国内外主要連結グループ会社の燃料消費や電気使用量などの環境負荷データを、環境データ集計システムを通じて収集・集計を行っています。2018年において当社及び連結子会社の事業に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1(化石燃料の使用に伴う直接的な排出)12,536,134トン、スコープ2(供給を受けた電力等による間接的な排出)23,135トン、スコープ3(スコープ1・2を除くその他の間接的排出)1,424,198トンという結果となりました。今後も、グループ全体の環境負荷を把握すると同時に、グループ各社での自主的な取組みを促し、必要に応じて追加施策を実施すべく、環境パフォーマンスの見える化に取り組んでまいります。さらに、年間の実績データは、第三者機関によるデータ精査と保証を受けた上で、社外へ開示しステークホルダーからの評価を次の施策に活かしながら、継続的な改善を図ってまいります。
そのほかにCSRとして、ステークホルダーエンゲージメントの強化及び本船見学会やボランティア活動などによるコミュニティー参画推進を行い社会面でも貢献すべく取り組んでまいります。
◆ コーポレートガバナンスの強化
グループ価値を高める戦略実施に際して最も重要となるガバナンス体制の整備に関して、当社はユニット統括制の導入による業務執行責任体制のより一層の明確化・強化や重要方針の決定に向けた取締役会モニタリング体制の強化等を実行してきました。リスクマネジメントでは、危機管理委員会とその下部組織(コンプライアンス委員会・安全運航推進委員会・経営リスク委員会・災害対策委員会)がグループのリスク管理にあたり、重要な投資については、投資委員会がその審議にあたる体制としています。
(3)コンプライアンスの徹底
当社は、公正取引委員会による立入検査を受けて以降、外部専門家の協力を得て、各種コンプライアンス強化策を策定・実施していますが、これらの強化策を今後もより一層推進することにより、再発の防止に努めてまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。