四半期報告書-第22期第3四半期(平成29年10月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/02/13 11:49
【資料】
PDFをみる
【項目】
29項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1)業績の状況
(日本事業)
MVNO市場は、当第3四半期累計期間においても成長を続けており、2017年9月末時点の総務省統計では、MVNO事業者は753社、その回線数は1,012万回線で、市場シェアは6.7%に達しています。
しかしながら、圧倒的多数のMVNO事業者が注力している格安SIM市場には、大手携帯事業者も実質的に参入していることから、MVNO事業者による格安SIM市場の成長率は鈍化しています。
このような市場環境の中、当社は、ソフトバンク網との相互接続により、同社のiPhoneで利用できる格安SIMを提供することで、格安SIM市場での独自性を獲得しています。当社は、ソフトバンクのiPhoneまたはiPad向けの製品として、2017年3月にデータ通信専用製品を発売し、同年8月および11月には音声通話付製品を発売しました。また、同年12月には、月額190円から利用できるiPad向けデータ通信専用製品も発売しました。当第3四半期は、このような商品展開により、ソフトバンクのiPhoneまたはiPadの利用者で格安SIMを利用したいお客様の需要に対応できる体制が整い、ソフトバンクSIMの売上は伸長しました。
現在、格安SIMは携帯電話市場で一定の地位を占め、格安SIM事業者間の価格競争により、市場には利用形態に応じた低価格製品があふれています。このような状況で売上を向上させるには、「携帯電話を安く快適に使いたい」という普通のお客様をどれだけ取り込めるかにかかっています。大多数のお客様は、日常生活に忙しく、携帯電話の詳しい知識または携帯電話サービスの選択のために投入する時間や労力がないことが通常です。そのため、対面での説明やサポートが不可欠であり、このことが、格安SIM市場が大手携帯電話事業者に侵食されている理由の一つです。
もとより、MVNO専業事業者である当社には、自前の販売店舗はありませんが、販売店舗を持つパートナーとの提携により、対面販売拠点の拡充を進めています。当社は、提携先である株式会社U-NEXTを通してヤマダ電機における対面販売を広げ、さらに昨年10月にはパソコン・スマホの修理・販売・サポートを行うPCデポ71店舗で対面販売を開始しました。また、その後も、MVNEとしての当社の社名は出ない形での発表ではありますが、携帯電話販売の大手事業者が対面販売を開始しています。
当社は引き続き、販売店舗を持つパートナーとの提携を進め、対面による商品選択のご案内、手続支援およびサポートを行える体制を整えていくことで、格安SIM市場の拡大に取り組んでまいります。
以上の通り、当社は、当面は格安SIM、特にソフトバンク網を使った格安SIMの拡販を進めていますが、同時に、モバイル・ソリューション事業にも引き続き注力しています。
当社は、セキュアかつ信頼性の高い通信サービスを提供しており、金融機関、警察、地方自治体、鉄道などの社会的なインフラストラクチャーを提供しているお客様から高い評価を受けています。また、クレジットカード業界においても、本年6月1日に改正割賦販売法が施行され、セキュリティの強化が求められていますが、当社はクレジットカード決済分野のリーディング企業であるGMOペイメントゲートウェイ株式会社と協業し、通販事業者のカード情報非保持化を実現するソリューションの提供を開始しています(2017年10月23日に両者がそれぞれ公表している資料をご参照ください)。
当社は、昨年度に実現したモバイル事業分野における規制緩和を最大限に生かした事業戦略として、2つの柱を打ち立てています。一つは、SIMによるセキュリティ・プラットフォームです。これは、通信モジュールであると同時にICチップでもあるSIMを認証に利用してセキュアなプラットフォームを提供しようとするもので、具体的にはFintech向けプラットフォームの構築を進めています。多くの人が携帯するようになったスマートフォンは認証手段として最適であり、Fintechのようにセキュリティの確保が絶対条件である領域においても安心して使っていただけるようなプラットフォームの提供を目指しています。
もう一つは、周波数免許不要のLTEを使ったシステム・ソリューションの販売および提供です。当社は、昨年10月にLTE基地局メーカーであるBaicells Technologies社と提携することを合意し、開発及び認証取得を進めており、今年度内の試験導入を計画しています。
また、LTE技術を使ったIoT戦略実現に向け、様々な協業企業及び顧客企業と準備を進めています。
規制緩和を最大限に活かしたこれらの新たな取り組みは、格安SIM市場とは異なり、明確な技術的差別化に基づくもので、極めて大きな市場規模を想定することができるものです。これらの領域にフォーカスすることで、来期以降の収益に極めて大きな貢献が確実に見込まれることから、当社は全社一丸となって取り組みを強化してまいります。
(海外事業)
日本においてMVNO事業モデルを完成させるために生み出した格安SIMの事業は、現時点における当社の売上の中心を占めています。しかしながら、前述のクレジットカード決済システムのセキュリティ強化に関するソリューションは、当社グループが米国で2008年から取り組んできたATM及びPOS向けの無線専用線サービスが基礎になっています。当社は、Fintech等の規制緩和を受け、日本における事業展開の中心を格安SIM事業からモバイル・ソリューション事業に移行する計画ですが、このことは、当社グループがこれまで米国で行ってきた事業とより直接的なシナジー効果が得られることを意味します。当社は、SIMを使ったFintech向けプラットフォームについて、日本国内のみならず、海外でも利用できるプラットフォームとして、パートナー企業と共に検討を進めています。また、周波数免許不要のLTEについても、近々米国においても利用可能になるため、日本で先行する取組みを米国でも展開していく予定です。
以上の通り、これまで当社グループでは、海外事業でモバイル・ソリューション事業が先行した一方、日本事業では格安SIM事業が先行したことから、直接的なシナジー効果を生み出すことが困難でしたが、規制緩和が実現 した現在、当社グループとして本来進めるべき方針、すなわち技術的に差別化したモバイル・ソリューション・プラットフォームをグローバルに提供するという方針を実現することが可能となりました。
当第3四半期会計期間の売上高は、第2四半期から横ばいで推移しましたが、ハードウェア製品を除いた通信サービスの売上は、第2四半期から85百万円(12.7%)増加しています。第2四半期は第1四半期から44百万円(7.0%)増加していますので、通信サービスの売上は四半期ごとに成長しています。当第3四半期会計期間の営業損失は250百万円ですが、売上の伸長に伴い、収益も着実に改善しています。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は前年同期比188百万円増の2,247百万円(前年同期は2,059百万円)となりました。営業損失は946百万円(前年同期は1,346百万円)、経常損失は954百万円(前年同期は1,298百万円)となりました。また、日本事業及び海外事業において、過年度の営業損失により減損の兆候が認められたことから「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損損失を1,220百万円計上したことから、親会社株主に帰属する四半期純損失は2,185百万円(前年同期は1,362百万円)となりました。
(2)資産、負債及び純資産の状況
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は2,992百万円となり、前連結会計年度末に比べ324百万円減少しました。これは主に現金及び預金が194百万円、未収入金が82百万円、繰延税金資産が52百万円減少したことによるものです。固定資産は145百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,320百万円減少しました。これは主に有形固定資産が242百万円、無形固定資産が1,099百万円減少したことによるものです。
この結果、総資産は3,146百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,645百万円減少しました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は2,019百万円となり、前連結会計年度末に比べ875百万円減少しました。これは主に一年内返済予定の長期借入金が374百万円、未払金が409百万円減少したことによるものです。固定負債は66百万円となり、前連結会計年度末に比べ75百万円減少しました。これは主に長期借入金が76百万円減少したことによるものです。
この結果、負債は2,086百万円となり、前連結会計年度末に比べ950百万円減少しました。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は1,060百万円となり、前連結会計年度末に比べ695百万円減少しました。
この結果、自己資本比率は33.5%(前連結会計年度末は35.0%)となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物の四半期末残高は1,101百万円となり、前連結会計年度末に比べ43百万円増加しました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは1,100百万円の支出(前年同四半期は473百万円の支出)となりました。これは主に税金等調整前四半期純損失の計上2,130百万円、減損損失の計上1,220百万円、訴訟和解金の支払342百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは100百万円の収入(前年同四半期は327百万円の支出)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,037百万円の収入(前年同四半期は661百万円の収入)となりました。これは主に株式の発行による収入によるものです。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発活動の金額は41百万円です。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。