有価証券報告書-第14期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/30 16:01
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業績等の概要

平成27年7月31日に行われたEvD, Inc.との企業結合について前第2四半期連結会計期間に暫定的な会計処理を行っておりましたが、第2四半期連結会計期間に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。
(1) 業績
当連結会計年度(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)におけるわが国経済は、政府や日本銀行の経済・金融政策を背景に企業収益や雇用環境の改善が進み、緩やかな回復基調となりました。一方で、世界経済は、中国及び新興国経済における景気の下振れや為替の急激な変動、英国のEU離脱問題、さらには米国での大胆な政策転換を訴える新政権の発足によって、不確実性が高まり、先行きは一段と不透明な状況となってまいりました。
このような経営環境の中、当社グループは、創業以来、訴訟支援や不正調査というスピードと精度を求められる厳しい環境でデータ解析技術を磨き、その技術を人工知能エンジン「KIBIT(キビット)」(※)へと発展させてまいりました。KIBITは、わずかな教師データから人間の微妙な心の動きを理解し、経験や勘などの“暗黙知”を含めた専門家の判断の仕組みを学習・評価します。現在、KIBITは、わが国で実用化されている数少ない人工知能の一つとして、リーガル分野を越え、ビジネスインテリジェンスやデジタルコミュニケーション、ヘルスケアなど様々なシーンで、企業や社会の課題解決に向けたソリューションを提供しております。
なお、当社は、変革を更に推し進め、創業より掲げる「人と社会の未来」を創造する価値を持った企業としての意思を明確に示すため、進取の精神とともに技術の進歩性や先端性等の意味をこめて、平成28年7月1日付で社名を変更し、株式会社FRONTEOとして新たなスタートを切りました。
※KIBITとは、当社が独自開発した人工知能エンジンです。学習と評価を行う独自の人工知能関連技術(当社ではLandscapingと呼びます)と、データ分析の現場を通して集積・体系化された大規模な知識を備えており、非定型のテキストデータを解析します。そして、わずかな教師データから、それを選んだ人間の機微(人間が個人的に持つ暗黙知・判断の仕組み・感覚)を理解することができます。
リーガル事業においては、平成28年7月に米国子会社3社を統合し、内部体制の強化に向けた組織改革を実施いたしました。また、当連結会計年度後半からは、米国子会社と本社の協働によりアジアの大型案件を獲得した結果、3期連続の増収を達成いたしました。
AI事業では、ビジネスインテリジェンス、デジタルコミュニケーションの分野においてKIBITを活用したソフトウェアの導入社数が前年度比2.3倍の45社 、売上高は前年度比2.4倍と大幅な成長を達成し、製造、金融、小売、流通と様々な業種業態の企業においてKIBITを業務効率化に有効にご活用いただけるという人工知能としての汎用性に確かな手応えを掴んだ一年となりました。また、ヘルスケア分野では、その潜在市場の大きさから中期的な成長の柱と位置付け、積極的な投資を進めております。平成28年12月にはヘルスケア分野への投資資金として、第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債の発行により25億円の資金を調達いたしました。
これらの活動の結果、当連結会計年度における、売上高は11,207,730千円(前年同期比6.2%増)となりました。利益に関しましては、社名変更及び米国子会社3社統合に伴う商標権償却、買収に伴う事業規模の一段の拡大による監査工数の増加に伴う監査報酬の増加など一過性の費用を計上したことに伴い、営業損失1,206,662千円(前年同期は71,346千円の営業利益)、経常損失1,254,944千円(前年同期は25,433千円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失948,067千円(前年同期は194,529千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
各事業の概況は以下のとおりです。
(リーガル事業)
① eディスカバリ事業
eディスカバリ事業につきましては、平成27年8月にEvD, Inc.の子会社化に加え、平成28年11月にEDI,Inc.の営業権を取得したことにより販路拡大につながり売上高が大幅に増加したものの、韓国クライアントの大規模訴訟の案件数収束に加え、米国子会社統合に伴う収益認識に係る内部統制の確立を優先的に取り組んだ結果、一時的に営業活動に影響が及んだこと等により、売上高は10,447,905千円と前年度比4.5%増に留まりました。
② リーガル/コンプライアンスプロフェッショナルサービス(LCPS)事業
リーガル/コンプライアンスプロフェッショナルサービス事業につきましては、ペイメントカードのフォレンジック調査やコンサルティングサービスが好調に推移した結果、売上高は407,260千円(前年度比8.0%増)となりました。
③ その他の事業
その他の事業につきましては、米国のソフトウェア販売が好調に推移したことにより売上高は64,552千円(前年度比7.4%増)となりました。
以上の結果、リーガル事業の売上高は10,919,718千円と前年度比で4.7%増となりましたが、前述の韓国クライアントの売上減少、一時的な償却費や監査費用等の計上に加え、プロダクトミックスの変化による売上高総利益率の低下などにより、477,736千円の営業損失(前年度は598,766千円の営業利益)となりました。
(AI事業)
AI事業につきましては、第2四半期連結累計期間より、上述のリーガル/コンプライアンスプロフェッショナルサービス事業から切り離し、別掲することにいたしました。
当連結会計年度においては、ビジネスインテリジェンス、デジタルコミュニケーションの分野において当社独自の人工知能KIBITを搭載したソフトウェア「Lit i View」シリーズの売上が堅調に推移しており、eメール監査ツール「Lit i View EMAIL AUDITOR」、知財戦略支援システム「Lit i View PATENT EXPLORER」、ビジネスデータ分析システム「Lit i View AI助太刀侍」など、いずれも大手企業数社に導入されております。
なお、「Lit i View」シリーズにつきましては、平成29年4月よりKIBITに対する認知や理解、期待感を高めてより浸透を目指すことを目的として、「Lit i View EMAIL AUDITOR」を「KIBIT Email Auditor」へ、「Lit i View PATENT EXPLORER」を「KIBIT Patent Explorer」へ、「Lit i View AI助太刀侍」を「KIBIT Knowledge Probe」へと名称を変更しております。
また、第4四半期連結会計期間においては人工知能搭載ロボットKibiroの販売も開始し、一般消費者向け販売だけでなく、企業との提携も進めており、メディアへの露出の機会も増加しております。
一方、ヘルスケアの分野におきましては、「がん個別化医療AIシステム」や「転倒転落予測システム」等の案件はまだ先行投資段階にはあるものの、ファーマコビジランス等の事業化により2019年度の収益化に向けて開発を進めております。
その結果、AI事業の売上高は288,011千円(前年同期比142.2%増)となりましたが、新製品開発や営業・マーケティング活動などの費用を1,016,937千円計上したことにより、営業損失は728,925千円(前年度は527,420千円の営業損失)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、4,533,182千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は198,064千円(前期比814,631千円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は1,643,262千円(前期比3,068,193千円の減少)となりました。これは主に子会社株式の条件付取得対価の支払額828,431千円、無形固定資産の取得による支出501,887千円、有形固定資産の取得による支出328,435千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は4,563,928千円(前期比1,350,304千円の増加)となりました。これは主に短期借入れによる収入4,370,000千円、短期借入金の返済による支出3,422,000千円、新株予約権付社債の発行による収入2,500,000千円、長期借入れによる収入1,855,897千円、長期借入金の返済による支出750,641千円よるものであります。