有価証券報告書-第21期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 16:00
【資料】
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【項目】
163項目

対処すべき課題

当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、自社開発の特化型AI「KIBIT」の提供を通じて、日夜社会課題と向き合う専門家の判断を支援し、イノベーションの起点を創造し、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。
2024年3月期は、ライフサイエンスAI分野におけるAI医療機器、AI創薬や経済安全保障分野のビジネスモデル確立において確信を持つことができ、ビジネスインテリジェンス分野と合わせて今後の成長事業として位置づけております。一方、リーガルテックAI事業に関しては、全社的なコスト構造改革により、第4四半期連結会計期間から利益貢献には転じたものの、収益の回復には一定の時間を要しております。これら複数の事業において、成長種別(リニア/非連続)、成長因子を明確にし、さらなる経営資源の選択と集中を通じた事業運営を徹底してまいります。
AIソリューション事業
ライフサイエンスAI分野
ライフサイエンスAI分野では、自社開発の特化型AI「KIBIT」を中核として、AI創薬とAI医療機器の2つの領域において、さらなる事業拡大を進めてまいります。
AI創薬領域においては、DD-AIFを通じた創薬標的探索をはじめ、ドラッグリポジショニングにおける案件を複数受注し、着実に実績を積み重ね当社の優位性の検証が完了しております。その中で、当社の創薬研究者が提案する成果物に加えて、両社の研究者間で協議しながら最終成果物を創造する「共創プロジェクト型」*1のニーズが拡大しているため、これらの早期収益化を目指してまいります。
AI医療機器領域では、2024年2月に塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を締結したことにより、契約一時金に加え、開発の進展などに応じたマイルストーンフィー、並びに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティフィー等を受領する予定となっており、中長期的な収益基盤を構築しております。引き続き、世界初の自然言語処理AIを用いた医療機器及び非医療機器の共同開発、事業化、早期市場浸透を通じた社会実装を目指してまいります。また、海外市場への進出や、医療の安全推進と質の向上、患者のQOL向上のため「会話型 統合失調症診断支援AIプログラム」や「会話型 ADHD診断支援AIプログラム」等の他疾患を対象とした医療機器開発においても、新規アライアンスを視野に入れ、パイプラインの拡充を行い非連続的な成長を目指してまいります。
*1 共創プロジェクト型とは、製薬企業と当社の研究チームが協調し、検証済標的の獲得までを目指す形態。
ビジネスインテリジェンス分野
ビジネスインテリジェンス分野では、企業のDX推進や不正リスクの未然防止に関する社会的な要請の強まりにより企業の投資需要は引き続き旺盛であることから、今後もさらなる事業の成長を見込んでおります。大手顧客に対する取引拡大を軸とした活動により、さらなるリカーリング収益の拡大を通じて、当社グループの収益基盤の安定化とリニアな成長を目指してまいります。また、「KIBIT Eye」に加え、「KIBIT Knowledge Probe」、「KIBIT WordSonar for AccidentView」、「KIBIT WordSonar for VoiceView」並びに「匠KIBIT零(タクミキビットゼロ)」を製品ラインナップの中心として位置づけ、今後も、多様化する企業ニーズを的確に捉えた開発、徹底的な内部稼働率管理を通じた生産性の向上を図ってまいります。
経済安全保障分野
経済安全保障分野では、昨今の地政学リスクを背景に、調達リスクや各国の規制による制裁リスクが一層高まっております。足元では、企業におけるリスク対策だけでなく対応の遅れによる機会損失も懸念されるようになっており、政府、官公庁や大手企業において、一定規模の投資予算が確保される傾向にあります。
このような状況下、当社の「KIBIT Seizu Analysis」を活用することで、政府、官公庁及び企業は自社を取り巻く環境を可視化し、最適な戦略を策定することが可能となるため、当社に対する需要は拡大することを見込んでおります。今後も、市場環境の追い風を背景として、「KIBIT Seizu Analysis」を活用した、サプライチェーン解析ソリューション、株主支配ネットワーク解析ソリューション、最先端技術・研究者ネットワーク解析ソリューションの提供を通じてリカーリング収益の拡大を基盤としつつ、リニア且つ非連続的な成長を目指してまいります。
リーガルテックAI事業
リーガルテックAI事業では、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を利用したマーケティング活動及び営業活動の積極化を通じ、顧客基盤の強化・拡大を進め、収益相関性の高い事業運営を継続してまいります。また、当事業において2023年度に実施したコスト構造の改善効果と顧客関連資産及びのれんの全額減損による償却費負担の減少により、2025年3月期においては通期で黒字化を見込んでおります。